イタリア中部 (北東)
      のロマネスク
 (エミリア・ロマーニャマルケ)
  Emilia-Romagna/Marche      
 
 

 イタリア中部(北東)の県
と県都

  EMILIA-ROMAGNA
   1 Piacenza  2 Palma
   3 Reggio nell'Emilia
   4 Modena  5 Ferrara
   6
Bologna  7 Ravenna
   8
Forli    9 Rimini

  MARCHE
   1 Pesaro e Urbino (Pesaro)
   2
Ancona   3 Macerata
   4
Ascoli Piceno
 
 
 
 
  パルマの大聖堂 Duomo
  
Palma Emilia-Romagna
 
 イタリア中部(北東)といっても別段厳密な
規定をしたわけではなく、エミリア・ロマーニ
ャ州とマルケ州を併せた地域、アペニン山脈の
北東側と御理解頂きたい。
 掲載する上での便宜が、私的地区別とした唯
一の理由である。
 この地域には、モデナ、ボローニャ、ラヴェ
ンナ、ペーザロ、アンコーナといったイタリア
を代表するような歴史都市が集中しており、ビ
ザンチンからロマネスク、ゴシックからルネサ
ンスへの変遷が記録された、芸術的な香りの濃
い地方である。
 両州境の空白地は、小国として著名なサン・
マリノ共和国である。
 
 
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 ピアチェンツァドゥオーモ
  Piacenza/Duomo
   
     1 Piacenza (Emilia-Romagna)
 
        
 
    
 
 ポー川の直ぐ南に位置している町で、古代ロ
ーマ帝国の植民都市として栄えてきた。州境に
かなり近く、中世にはロンバルディア都市同盟
にも加わった歴史もあり、ロンバルディアの雰
囲気が色濃い町である。

 三つの扉口のあるファサードには薄いピンク
色の大理石が使用されており、扉口それぞれに
設けられた柱廊付きの小玄関からはとても優雅
な印象を受ける。

 12~13世紀に建造された大聖堂は壮麗な
建築で、三廊式の身廊と翼廊の交差部に八角形
の円蓋と鐘楼を持つ、言葉では見事としか言い
様のない空間を構成していた。
 ロンバルディア・ロマネスク様式のプランが
基礎だが、写真に見る如く、身廊上部の三連窓
の様式や天井の交差ヴォールト等のゴシック様
式がかなり古くから取り込まれていたらしい。

 隣接するロンバルディアの
Cremona クレ
モナなど、ロンバルディア様式の大聖堂という
のはいずれも壮大華麗な建築であり、思わず目
を見張らされてしまうのだが、ロマネスク好き
の感性を震えさせるような魅力に満ちていると
は、残念ながら言えそうもないのは何故なのだ
ろう。
 
 
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 カステッラルクアート聖マリア
     ・アスンタ参事会教会

  Castell'Arquato/Collegiata
    di Santa Maria Assunta
 
   
     1 Piacenza (Emilia-Romagna) 
 
        
 
 
 
 ミラノからの高速道路を走り、ピアチェンツ
ァの次のフィオレンツオーラの出口を下りる。
 南へ15キロほど進むと、正面に小高い丘が
現れ、近づくほどにその頂上に城郭や教会の塔
や集落が見えてくる。
 麓の駐車場に車を止め、中世の面影を伝える
古い家並の続く石畳の道を登って行った。
 終点は広場になっており、市庁舎、城塞と共
に、この教会の建物が美しい空間を構成してい
た。
 写真は三廊式バシリカの後陣部分で、左端に
は礼拝堂が付け足されている。
 見事に均整の取れた、この地方屈指の秀逸な
後陣だといえる。
 北扉口のタンパンや重厚な身廊の柱頭等に、
彫りの深い技巧的な彫刻を見る事が出来た。
 12世紀創建当初の作品である。
 この日は日曜日、広場は各種の露店で賑わっ
ており、軽食ながら楽しいランチを味わうこと
が出来た。
 
 
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 ヴィゴロ・マルケーゼ
     聖ジョヴァンニ教会

   Vigolo Marchese/
    Chiesa di San Giovanni
 
   
    1 Piacenza (Emilia-Romagna) 
 
        
 
 
 
 カステッラルクアートから北西へ6キロ行っ
たところに小さな集落があり、そこに目を見張
るような秀麗なロマネスクの建築が保存されて
いたのだった。
 町外れの閑静な場所で、いずれも11世紀初
頭に建てられた三廊式のバシリカ聖堂と洗礼堂
が並んで建っている。とりわけ美しいのが円形
の洗礼堂で、外壁には太い12本の柱と深いア
ーケードと、三つの半円形後陣が付いている。
 薄焼の赤い煉瓦を積んだ建築は、北イタリア
のロマネスクの特徴でもあり、ロンバルディア
様式であると共にビザンチン的でもある。
 扉口などに彫刻など一切の装飾の無いのは東
方の様式のようでもあり、従来のロマネスク教
会を見慣れた目にはむしろ斬新な美しさが感じ
られて嬉しかった。
 デジカメ写真の取り込みに失敗したので、写
真はヴィデオの静止画を使用したためかなり粗
悪である。
 
 
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 パルマドゥオモ
   Parma/Duomo 
   
     2 Palma (Emilia-Romagna) 
 
        
 
 
 
 旧市街にあるドゥオモ広場に立てば、12世
紀のドゥオモ、13世紀ゴシックの鐘塔、そし
て12世紀初頭に創建された洗礼堂などの歴史
的建築を一目で眺められる。
 (当ページの表紙参照)
 ドゥオモの正面扉口は、獅子が両側に座る柱
廊式玄関になっており、有名な十二ケ月を表し
た装飾彫刻がアーチに彫られている。内陣は三
廊式で壁一面のフレスコ画が目に入るが、これ
は15~16世紀のものである。よく見れば、
幾つかの柱頭彫刻が、見事なロマネスク時代の
作品だった。
 写真は右翼廊の壁にはめ込まれた「キリスト
降架」のレリーフで、12世紀アンテラミの作
品である。ロマネスク的な抽象と、静謐な悲嘆
と感動の瞬間のリアリティとが見事に融合し、
神々しい程の気品が感じられる彫刻である。キ
リストや聖母や天使達の表情や、衣服の襞や髪
などの表現には、並々ならぬ美意識が秘められ
ている。
 
 
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 フィデンツァドゥオーモ
   Fidenza/Duomo 
   
     2 Palma (Emilia-Romagna) 
 
        
 
   
 
 パルマとピアチェンツァの中間に位置する小
さな町だが、ドゥオモのファサードは、エミリ
ア・ロマーニャ地方に点在するロンバルディア
様式を代表する傑作である。
 モデナ・ノナントラ・フェラーラ・ピアチェ
ンツァ・ヴェローナなど、それぞれにライオン
の彫像の有る柱廊式玄関を備えた教会が残って
はいるが、彫刻の高雅な美しさと、扉口の均整
の取れた設計という意味において、このフィデ
ンツァが最も印象深い。

 広場に面して扉口は三つ有るが、写真の中央
扉口が左右の二つに比べ最も装飾的である。
 壁面に彫られたレリーフには、ロマネスクら
しくデフォルメされた図像や、ゴシックの影響
を受けた写実的な聖人像などが、彫刻コンクー
ルの展示かと思われるほどの密度で並べられて
いる。

 どのような主題が多いのか、を見た。キリス
トの洗礼やエルサレム入城などというお馴染の
テーマはすぐ分かったが、聖人の殉教場面など
不明なものも多かった。いずれにせよ、高い技
術と美意識を持った設計家や石工が存在した事
の証明となっている。
 
 
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 モデナ司教座大聖堂
  Modena/Cattedrale 
   
     4 Modena (Emilia-Romagna) 
 
        
 
 
 
 ここも大きな町の大聖堂なのだが、ほぼ建築
全体が12世紀ロマネスクのままの状態で残さ
れているので、ひとまわり華奢な感じがして抵
抗感を少しも感じさせないのかもしれない。
 13世紀ゴシック様式のバラ窓も、軽快感に
満ちている。
 身廊の三廊式に従って、ファサードの扉口は
三つの開口部を持っている。中央はライオン像
に守られたポーチだが、左右四つのレリーフは
「アダムとエヴァ」や「カインとアベル」等、
旧約の創世記が主題となっている。
 内部は天井の15世紀リヴ・ヴォールトを除
けば、ロマネスクの半円アーチ列と見せかけト
リビューンで構成された荘厳な雰囲気に溢れて
いた。
 祭壇を取り囲んでいるレリーフや説教壇の彫
刻も12世紀のものであり、当地の優れた芸術
家や石工達の仕事をこの目で見る事が出来る。
 
 
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 ノナーントラ
    ノナーントラ大修道院

   Nonàntra/
     Abbazia di Nonàntra
 
   
    4 Modena (Emilia-Romagna) 
 
        
 
 
 
 ここは、モデナの東8キロに位置する小さな
町で、かつては城壁に囲まれた城塞都市だった
という。
 修道院は8世紀の創設で、12世紀に起源を
持つロマネスク様式の
San Silvestolo 聖シル
ヴェストロ教会が付属教会として修復された。
 聖堂は三廊式で、写真はその後陣である。ロ
ンバルディア帯が美しい壮麗な意匠の建築であ
る。
 祭室が半二階になっており、下部は地下祭室
クリプトとなっている。後陣下部の窓はクリプ
トのものである。
 正面扉口は可愛いライオンのポーチで、左右
の柱とヴシュールには、訪問や受胎告知などの
浅浮彫が彫刻されている。
 身廊は素朴な束ね柱と半円アーチによって仕
切られており、彫刻の無い柱頭がかえって力強
い素朴な美しさを象徴しているようである。
 
 
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 フェッラーラ大聖堂
  Ferrara/Cattedrale 
   
     5 Ferrara (Emilia-Romagna) 
 
        
 
 
 
 町の中央に位置する、文字通りの大聖堂であ
る。壮大な規模の割りに威圧感が無いのは、ゴ
シックのような天井の高さが無いからかもしれ
ない。
 聖堂の外壁は、下部がロンバルディア様式の
ロマネスクで、上部は連窓付きの小開廊という
ゴシックである。
 身廊は三廊式だが、大半がルネサンスやバロ
ックに改造されていた。
 写真は西正面中央扉口のタンパン彫刻で、龍
と闘う聖ゲオルギウスが中央に彫られている。
 マグサ石部分には、キリスト誕生を中心とし
た逸話の場面が描かれている。
 大きな町の大きな教会は基本的には好きでは
ないが、エステ家の興廃に興味を抱く家人に付
き合って訪ねたのであった。
 家人には済まないのだが、美意識を刺激され
たのは、このタンパンだけだった。
 
 
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 ポンポーザ
    ポンポーザ大修道院

  Pomposa/Abbazia di Pomposa 
   
     5 Ferrara (Emilia-Romagna) 
 
        
 
    
 
 フェッラーラ Ferrara の東、アドリア海に
面したポー河の河口近くに、この広大な旧ベネ
ディクト会修道院の敷地が広がっている。

 写真は、修道院付属のサンタ・マリア聖堂の
正面と鐘塔である。赤い煉瓦の色が印象的で、
ラヴェンナのビザンチン様式の聖堂に似ている
が、この部分は11世紀の建築である。塔の右
側は柱廊付玄関であり、三廊式の身廊を持つバ
ジリカ聖堂の正面入口を保護するかのように、
11世紀に増築されたものである。

 聖堂の建築年代は8世紀まで遡るらしいが、
中央祭室と壁面の一部だけが創建当初のもので
あり、他は10~12世紀の改修が混在してい
るという。
 祭室や壁面に描かれたフレスコ画は、ロマネ
スクではなく14世紀である。床面にはモザイ
クで象や獅子が描かれており、ビザンチンの面
影を伝えている。

 盛夏の青空に映える塔のレンガ建築は、ロン
バルディア帯や飾りアーケードで装飾されてお
り、ポプラの木とのコントラストが鮮やかで、
目に染みるような美しさを味わう事が出来た。
 
 
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 アルジェンタ
   聖ゲオルギウス教区教会

  Argenta/Pieve di San Giorgio 
   
    5 Ferrara (Emilia-Romagna) 
 
        
 
 
 
 ラヴェンナとフェラーラの中間、レーノ川に
沿った干拓地の中心都市である。
 教会は6世紀創建のビザンチンの遺構で、川
の対岸に広がる自然公園の林の中にひっそりと
建っていた。
 素朴な聖堂が好ましいが、単身廊内部の壁は
白く修復されていた。天井は木造で、後陣は半
八角形である。左右の壁にフレスコの断片が残
っていたが、ロマネスク期のものらしい。
 扉口のタンパンには、聖ゲオルギウスの刃の
車輪による殉教の場面が描かれている。
 左右の柱に彫られた「十二か月の仕事」が興
味深い。
 
 
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 ボローニャ聖ステファノ教会
  Bologna/
    Chiesa di Santo Stefano
 
   
    6 Bologna (Emilia-Romagna) 
 
        
 
 
 
 昔訪ねた時には長い昼休みに当ってしまった
ために、中を見ることが出来ず涙を呑んだこと
があった。
 今回はラヴェンナに泊まった翌朝一番に訪ね
たので内部を詳細に見ることが出来たのだが、
残念ながら堂内は全て厳しい撮影禁止となって
いた。
 ここは四つの古い教会の集合体で、写真は多
角形をした、12世紀の聖セポルクロ教会であ
る。起源は7世紀まで遡るそうで、当初は正八
角形であったらしい。ボローニャの守護聖人聖
ペトロニオの墓所である。
 最も古い聖ヴィターレ教会、中庭、回廊、聖
十字架教会など、街中に在って、修道院のよう
な静謐な空間を形成している。
 装飾は少ないが柱の太い質実剛健な赤レンガ
建築には、素朴な中に洗練された美しさを秘め
るこの地方特有の高雅な魅力が感じられた。
 
 
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 ラヴェンナ
    聖フランチェスコ教会

  Ravenna/
    Chiesa di San Francesco
 
   
     7 Ravenne (Emilia-Romagna) 
 
        
 
 
 
 初期キリスト教美術を代表するビザンチン式
のモザイクで知られるこの町に、10世紀創建
のロマネスク教会があることはほとんど知られ
ていない。
 鐘楼の存在でそれと判るこの教会は、「聖女
の行列」のモザイクで知られる聖アポリナーレ
・ヌオヴォ聖堂の西200mに位置している。

 三廊式のアーケードはロマネスクの様式を示
しているのだが、聖堂全体は幾度も修復を繰り
返してきたそうで、第二次大戦のダメージが最
も大きかったそうである。
 写真に見える、ギリシャ大理石の美しい円柱
や、古い主祭壇などは創建時の名残だろう。
 もう一つ、創建当初の姿を留めるクリプトが
在るのだが、水に浸かってしまったために、小
さな窓からのぞいて見ることが出来るだけだっ
た。     
 
 
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 ブリジゲッラ聖ジョヴァンニ・
   イン・オッターヴォ教区教会

  Brisighella/Pieve di
    San Giovanni in Ottavo
 
   
     7 Ravenne (Emilia-Romagna) 
 
        
 
  
 
 ラヴェンナの町の南西30キロの町ファエン
Faenza からさらに10キロ先にある小さ
な町である。教会はさらに町を外れた牧歌的な
アペニン山麓に位置する。

 創建は10世紀初頭であり、エミリア最古の
ロマネスク聖堂とされている。
 聖堂は三廊式バジリカで、いかにも古色蒼然
とした佇まいが魅力的だった。
 身廊を仕切るアーケードの円柱や柱頭には、
明らかにローマ時代の遺構の部材が再利用され
ていた。
 写真は後陣の眺めで、積まれた石の壁に古び
た風情が感じられ、思わず手の平で触ってしま
った。

 エミリアからエトルリアへと通じる古い街道
に面して建つ、貴重な遺構である。
 
 
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 フォルリ聖メルクリアーレ教会
     Forli/Chiesa
     di San Mercuriale
 
   
     8 Forli (Emilia-Romagna) 
 
        
 
    
 
 ラヴェンナの南西30キロに位置する、人口
11万の県都である。古代ローマの時代から、
エミリア街道の要衝として繁栄してきた。
 教会に隣接する鐘楼は想像を超えた高さで、
いかにも町のシンボルといった佇まいの古塔だ
った。12世紀の建築で、ロンバルディアの風
情を備えている。

 教会のファサードには三つのアーケードが並
び、中央に大理石の扉口が設けられている。左
右には小ぶりの盲アーケードが連なっている。
 中央のタンパンに深い浮彫の彫像が見られる
が、左に東方三博士の夢、右に三博士の聖母子
礼拝の場面である。タンパンの主題としては珍
しいが、ゴシック色が見られる13世紀の作品
だそうだ。

 聖堂は三廊式で、写真は身廊と側廊の間に設
けられたアーケードである。入口に近い梁間に
二段のアーケードが設けられているが、トリビ
ューンなどの格別の意匠ではない。
 イタリアではごく普通だが、天井は木造であ
り天井を石で覆う努力をしたフランスとは違っ
た面を見ることが出来る。
 側廊の交差穹窿は美しく、やはり石の天井が
良いとつい思ってしまう。
 
 
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 サン・レオ
    聖母被昇天教区教会

  San Leo/Pieve di
     Santa Maria Assunta
 
   
     1 Pesaro e Urbino (Marche) 
 
        
 
    
 
 リミニ Rimini からは南西に33キロ、地図
上ではサン・マリノ
San Marino の少し奥、
というイメージである。
 今回私たちはアペニン山脈を横断する高速道
路のサルシナ
Sarsina から、モンテフェルト
ロ山塊を抜けるコースを選んだため、険しく狭
い山道を余儀なくされたが、反面急展開する峻
険な山並の連続に感動することが出来た。
 サン・レオは、そんな岩山の一つの頂上に築
かれた、難攻不落の城塞を中心に開けた山上都
市である。

 城門を入ると直ぐに、歴史的な香り高い建造
物が立ち並ぶダンテ広場に出る。
 先ず目に入るのは、いかにも古そうな教会の
石積の三後陣であろう。ロンバルディア帯と付
け柱装飾が素朴だ。
 この教会がこの地区の教区教会で、バシリカ
とも呼ばれている。
 9~11世紀の創建で、切石造りの初期ロマ
ネスク様式を今日まで伝えている。
 写真は南側廊から祭室方向を撮ったもので、
ローマ時代の円柱と石積の角柱が混在していて
面白い。
 祭室は階段上に設けられており、四本柱のチ
ポリウム(9世紀)が祭壇に設けられている。
階下に素朴なクリプタが在る。
 
 
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 サン・レオ大聖堂
   San Leo/Duomo 
   
    1 Pesaro e Urbino (Marche) 
 
        
 
    
 
 広場から教区教会の横を抜けて、少し奥へと
行った所にドゥオモが建っている。
 ここはかつてローマの神殿が建っていた神聖
な場所とのことで、振り返ると教区教会の側面
が良く見える。神託を受けるに相応しい、見え
ざる磁場のような力が働いているのだろうか。

 聖堂は12世紀の建築で三廊式、写真で見る
ように身廊は四つの梁間で仕切られているが、
天井は横断アーチに半円筒ヴォールトで構築さ
れている。震える程嬉しいロマネスク建築では
ないか。
 ここでも祭室が壇上に在り、階段を上ると低
い位置に柱頭の置かれた円柱の建つ、素朴で美
しい三つの半円形後陣に心動く。
 祭室下は地下礼拝堂(クリプタ)で、円柱と
粗石積みの交差穹窿で創出された空間は、見事
ではあるが聖堂の素朴さとはやや異なった印象
を受けた。横断アーチのように用いられた分厚
いリブの繊細さを欠いた意匠のせいかもしれな
い。
 しかし、柱頭に彫られた小動物の姿は、何と
も愛らしいもので、教会の図像といった意義と
は別の感慨を抱かせてくれたのだった。
 聖堂後方から眺めた後陣はロマネスクらしい
素朴さと無骨さを備えていた。少し離れた所に
建つ方形の鐘楼は12世紀とはいえ、余り魅力
は感じられなかった。
 
 
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 サン・ヴィットーレ・
   デッレ・キウーゼ

        
聖ヴィットーレ教会
   San Vittore delle Chiuse/
     Chiesa di San Vittore
 
   
    2 Ancona (Marche) 
 
        
 
 
 
 サン・マロートからアペニン山脈を縦断する
ような形で北上し、アンコーナへ続く国道へと
出た。
 このあたりはフラサッシ峡谷といい、深い谷
と切り立った断崖が続いている。
 この村は温泉で知られており、教会は温泉施
設の並ぶ小さな集落の一番奥の小高い場所に建
っいた。
 クーポラや後陣の姿からは、明らかにビザン
チンの影響を受けていることが分かる。
 聖堂はほぼ方形で、縦横三列九つのベイから
成り、中央にドームが設けられた東方様式なの
である。
 太い円柱、豪快な半円アーチ、窓の無い荒削
りの壁、など11世紀ロマネスク建築が、ぴっ
たりとビザンチンのスタイルに融合しているの
だ。
 装飾だらけの教会を見慣れた目には、この無
垢な石積の聖堂が限りなく純粋な建築美を示し
ているように見える。
 
 
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 アンコーナ聖マリア・
    デッラ・ピアッツァ教会

  Ancona/Chiesa di
    Santa Maria della Piazza
 
   
     2 Ancona (Marche) 
 
        
 
 
 
 アンコーナの旧市街、港の中央にほぼ面した
小さな広場の奥に、この小さな教会が建ってい
た。現在の聖堂は5世紀の古い教会の上に構築
されており、床のガラスを通してそれが見える
ようになっていた。
 身廊は三廊式でクリプトの上段に祭室が設け
られているが、かなり修復されている様に見え
た。
 ここではやはり、写真の扉口とファサードが
見所だろう。
 13世紀の作だが、壁一面に彫られた四層の
ブラインド・アーケード (盲アーチ列柱) は、
デザインとしても奇抜でとても鮮烈な意匠だと
思う。
 扉口のヴシュールに彫られた繊細な動植物模
様や、最上部と中段に付けられた帯状のレリー
フの彫刻には石工の非凡な才能を見ることが出
来る。
 
 
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 アンコーナ聖チリアコ大聖堂
  Ancona/Duomo
      di San Ciriaco
 
   
     2 Ancona (Marche) 
 
        
 
   
 
 アンコーナの町外れ、アドリア海に突き出た
小さな岬の高台に、この壮大な歴史的遺産が建
っている。

 建築はギリシャ十字形で、身廊も翼廊も三廊
式となっている。写真はクーポラのあるその交
差部で、手前が身廊入口、右奥が祭室であり、
左階段の上は北翼廊の礼拝堂となっている。
 大規模な聖堂の割りに整然とし、一番嫌いな
威圧感というものを感じさせないのは、権威を
誇示するために飾る小道具類が一切無いからな
のかもしれない。

 正面玄関柱廊はライオンの居るロンバルディ
ア・ロマネスク、扉口の先尖アーチ門はゴシッ
ク、平面図はビザンチン、内部構造はロマネス
ク、といった複合建築でありながら、それぞれ
が控えめな主張しかしていないところに、絶妙
の均整感が生まれているのかもしれない。

 アンコーナで最も期待していたポルトノヴォ
の聖マリア教会
Santa Maria di Portonovo
完全に修復中で、境内に立ち入ることも出来な
かった。また来い、ということらしい。
 
 
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 チヴィタノーヴァ・マルケ
    聖マリア・ア・ピエ・
      ディ・キエンティ教会

  Chivitanova Marche
   
/Chiesa di Santa Maria
      a Piè di Chienti
   
    3 Macerata (Marche) 
 
        
 
      
 
 アドリア海沿いのチヴィタノーヴァからは、
キエンティ川を約7キロ西へ遡ることになる。
 ここでも親切な鍵番の老婆が、本来ならば締
めるはずだった昼の休みの時間を延長して扉を
開けてくれた。下手をすれば、3時間は待たね
ばならなかったところだった。
 9世紀創建と伝えられる三廊式十字形の古い
聖堂であり、最大の特徴は、祭室に周歩廊が設
けられ、小祭室が放射状に飛び出していること
と、二階に周歩廊もそのままトリビューンが設
けられ、さらに天井がもう一段高くなっている
ことであろう。
 祭室のドームに後世のフレスコ画が描かれて
いる以外、ほとんど目立った装飾の無い聖堂な
のだが、トリビューンの示す立体感が調和のと
れたハーモニーとなっており、あたかも建築が
奏でる荘重な音楽を聞く様な気分になっていた
のだった。
 
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 マチェラータ聖クラウディオ・
     アル・キエンティ教会

  Macerata/Chiesa di
    San Claudio al Chienti
   
     3 Macerata (Marche) 
 
        
 
      
 
 キエンティ川の上流、高速道路のマチェラー
タ・インターからほど近い田園地帯の只中に、
麦畑や牧草地に囲まれてポツンと建っている。
 後方からの外陣の眺めは抜群だったが、外見
はほとんどビザンチンで、平面図も方形を三列
づつに区切り、三つの祭室の飛び出す様式の後
陣が付いたものである。
 後方から見るとよくは分からないが、正面か
ら見ると、二本の円塔に挟まれて上下に二つの
扉口が設けられ、上階へは直接石段で登れるよ
うになっている。
 つまり聖堂は完全に二層になっていて、円塔
内の螺旋階段のみで連絡出来るようになってい
たのだった。
 上下どちらも見事なまでに質素な内陣で、交
差穹窿の天井から柱頭無しでそのまま柱になる
という意匠は、現代建築ではないかと思えるほ
どで、むしろとても斬新な印象を受けてしまっ
た。    
 
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 サン・マロート聖ジュスト教会
   San Maroto/
      Chiesa di San Giusto
   
     3 Macerata (Marche) 
 
        
 
         
 
 アッシジの南の町フォリーノ Foligno から
西へと向かい、イタリアの背骨であるアペニン
山脈を越えてマルケ州に入る。
 峠から少し下った谷間の寒村で、地図にも載
っていないのだが、教会は見晴らしの良い高台
に建っているので、峠越えの国道からも直ぐに
それと判った。

 隣家の老人の話では、週に一回司祭がミサの
ために巡回して来た時だけ扉が開くそうで、残
念ながら私達は内陣へは入れなかった。
 写真で見る通り、聖堂は完全な円形であり、
四方に半円形の礼拝堂が付いている。
 ロンバルディア帯だけの装飾で、とても質素
に見えるが、二重の屋根の形や高さが絶妙であ
る事が建築全体に軽快な美しさを見せている。
背後の山から見下ろしたら見事だろうと意見が
一致したが、急峻な坂道に向かって歩き出すこ
とはなかった。
 堂内の天井を見上げて、半球形のドームを眺
めたかったのだが、きっと大仰ではないこじん
まとしたチャーミングなドームであっただろう
と想像している。
 聖堂は12世紀のものであり、鐘塔は後世の
追補である。
 
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