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| コルシカ島ロマネスク紀行 Corse Romane |
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県名と県庁所在地 1 Haute-Corse (Bastia) 2 Corse-du-Sud (Ajaccio) |
Tollare コルシカ島最北端の小さな漁村 |
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「地中海に浮かぶ山」と称されるフランス領のコルシカ島は、2000m級の山岳が連なる 急峻な地勢が続いている。東西83Km、南北183Kmという、意外に大きな島である。 二つの県で構成されており、東海岸の一部以外の場所はほとんどが山岳地帯である。 古代巨石文明の遺跡も残るほどの歴史の島で、イタリアのピサ共和国に支配された11 〜13世紀に、トスカーナの建築家によってロマネスク様式の教会が数多く建てられた。 素朴なバジリカ建築にピサ・ルッカ様式の装飾が施された簡素な建築が多く、荒廃した 聖堂の廃墟が特に美しかった。 アジャクシオ Ajaccio はナポレオンの誕生した町で、ボナパルト家は町の名門として 知られる。 |
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| マリアナ/旧聖母被昇天教会 Mariana/Église Santa Maria Assunta |
Haute-Corse |
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バスティア (Bastia) の町の南に広がるビグーリア池の 近くにバスティア国際空港がある。そこからさらに南に 広がる広大な草原一帯はマリアナと呼ばれ、4世紀に起 源を持つ古い聖堂が建っていたらしい。 その遺跡からは聖堂跡や洗礼堂跡が発掘され、円柱や モザイクも発見された。 遺跡に隣接して、写真のような堂々たる教会が12世 紀の初めに建てられた。現在は聖母被昇天教会となって いるが、かつてはカノニカの大聖堂 (Cathédrale de la Canonica) と称されていた。 聖堂は方形のバジリカで、三廊式の威厳に満ちた建築 である。天井は高く、窓はほとんど無い。身廊には左右 6本づつの角柱がアーケードを構成して、側廊とを仕切 っている。 写真は遺跡から眺めた後陣で、ロンバルディア帯と盲 アーケードだけが壁面を装飾する手段となっている。 切石を積んだだけの素朴な建築だが、だからこそそれ が薄っぺらではない圧倒的な存在感を示している。 西正面扉口タンパンの縁飾りに、数種の動物像が刻ま れており、まぐさ石部分の植物模様と共にとても印象的 だった。 |
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| マリアナ/聖パルテオ教会 Mariana/Église San Parteo |
| Haute-Corse |
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前述の聖母被昇天教会からほど近い牧草地の真ん中に、 この聖堂だけがポツンと建っている。 もの凄い悪路だったが、聖堂の近くまで車でなんとか 近づくことが出来た。聖堂の背後で、羊飼いがおびただ しい数の羊を追っているという、何とも牧歌的な風景だ った。 この教会はどうやら現在は使われてはいないようで、 西正面の木の扉をこじ開けて見た内陣は、すっかり荒れ 果てており、祭室付近では発掘調査が行われたような跡 が残されていた。 聖堂は方形バシリカ建築で、柱の無い単身廊である。 両側面の壁には窓がほとんど無く、小さな半円アーチ の採光窓が二つづつ開いているだけだった。 写真は、東南側から眺めた後陣部分である。この半円 形の突起が無ければ、建築全体は単なる箱型の倉庫みた いなものとしか見えないだろう。 しかし、単純に見える壁面をじっくりと眺めてみると、 大小様々な切石を積み上げた当代の石工達の、地味だが レヴェルの高い技術を見ることが出来る。 装飾は後陣部分に集中しており、半円アーケードや柱 頭彫刻によって荘重な雰囲気が創出されている。 南側にある小さな扉口のまぐさ石には、向き合った二 頭の獅子らしき動物が彫られていて注目される。 |
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| シスコ/聖ミケーレ礼拝堂 Sisco/Chapelle San Michele |
| Haute-Corse |
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コルシカ島の北部は突き出した半島にな っており、キャップ・コルス (Cap Corse) と呼ばれている。半島は全体が山深い傾斜 地で、各集落は孤立しており、それぞれへ は海岸線から登っていくしか手段は無い。 シスコへは東海岸から登り、集落の外れ に車を停め、この教会へはそこから山道を 徒歩で30分登らねばならなかった。 沢を渡り、生い茂る薮をかき分けて進ん だのだが、その日は霧が深く誠に心細い思 いだった。しかし、突如霧が晴れて目の前 に、写真のような光景が表れたのは奇跡と も思えるような感激だった。 鍵が固く、内陣へは入れなかった。だが、 半円の後陣を備えた単身廊の礼拝堂は、孤 立した岩盤の上に建てられており、小振り ながら何とも愛すべき孤高なる佇まいを見 せていた。 聖堂の西側扉口付近にはやや平らな場所 があるが、後陣の背後は切り立った断崖と なっている。かくも緊迫した場所で、人は 一体何を求め何を祈ったのだろうか。 |
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| オルカーニ/聖キリコ礼拝堂遺跡 Olcani/Vestiges de la Chapelle San Quilico |
| Haute-Corse |
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キャップ・コルスで印象に残ったもう一 つの教会である。この集落へは、車一台が ようやく走れる程の道だけが、西海岸から の唯一のアプローチとなっている。 この教会は、現在は完全な廃墟で、集落 からはかなり離れた山の中にあった。 写真で見る通り、聖堂の屋根は落ち壁は 苔むし、後陣には雑草が生い茂るといった 惨憺たる有様だった。 しかし、廃墟好きの小生の目には、この 自然の美しさに同化したかの如き、かつて の祈りの場であった荘重な建築の落日の残 影が、とても美しいものに思えた。 コルシカ島に残るロマネスク聖堂に共通 するのは、バジリカ型に半円形後陣という トスカーナの様式である。しかし、余りに 不便な僻地であるが故に、ピサやルッカと は違って無駄な装飾を排し、簡素に造らざ るをえなかったことが、コルシカならでは の清楚だが凛然とした聖堂の多くを産み出 したのだろうと思う。 忘れられないプレ・ロマネスク廃墟の聖 堂の一つとなった。 |
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| サン・フローラン/聖母被昇天教会 St-Florent/Église Santa Maria Assunta |
| Haute-Corse |
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現在のサン・フローランの町に隣接する、かつてネッ ビオ (Nebbio) と呼ばれた場所に建つ旧大聖堂でもあった 立派な教会である。 残念ながら扉口が堅く閉ざされており、開扉の手段も 判らず内陣への入場は諦めた。 西側正面は、下層に五連上層に三蓮のアーケードが造 られており、そのいずれもの中央部分だけが開口部とな っている。 アーケードの柱頭部分に、龍や羊などの彫刻が見られ たが、三廊式と思われる身廊にも渦巻模様を中心とした 見事な柱頭彫刻があったはずで、それだけが少し心残り ではあった。 身廊の長さが28m近い壮麗な建築だが、様式は方形 のバジリカに半円の後陣が付けられたという至極簡素な ものなのである。 写真は北東側から眺めた後陣部分で、後陣の高さだけ でも10m、屋根は13mもあるコルシカ屈指の大教会 だった。 ここでも盲アーケードとロンバルディア帯だけが、壁 面を飾る唯一の方策となっている。ワンパターンと言っ てしまえばそれまでだが、歴史の中で時代が示す様式と いうものはそういうものだろうし、その変遷こそが時代 の移り変わりを示しているのである。しかし、それにし ても、このスタイルが島じゅうに残されていることに、 閉鎖的であった僻地の島の歴史を感じてしまう。 |
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| ミュラート/聖ミケーレ教会 Murato/Église San Michele |
| Haute-Corse |
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コルシカを代表する美しいロマネスク聖堂の 一つだろう。 ミュラートの町外れ、連なる山々の峰を一望 できる高台の草原に、この聖堂だけがポツンと 建っている。最初に見た聖堂の姿は飛び立つ鷺 か鶴のようで、息を飲む景色とはこういうこと なのだろうと思った。 正面のポーチと鐘塔が見事で、単調な構造の 中で大きなアクセントとなっている。 壁面を彩る青い石は、近くの谷で採れる蛇紋 大理石で、白い石は石灰岩である。不規則に積 まれているが、調和の取れた不思議な意匠であ る。正面扉口玄関間の円柱やアーケードの縁飾 り部分のみ、二色が規則的に交互に並べられて いる。 聖堂は方形のバジリカ様式で、単身廊に円形 後陣が張り出した素朴な建築である。 小さな窓の周辺などに、ロマネスク的なレリ ーフ彫刻がはめ込まれていた。原罪や天使像が モチーフとなっている。 ここからさらに続く渓谷の奥には、珠玉のロ マネスクが密集している。 |
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| ラパール/聖チェザリオ教会遺跡 Rapare/Ruines de l'Église San Cesario |
| Haute-Corse |
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この村は、前述のミュラートから山筋を一つ隔てた谷間 の静かな集落である。 この教会の遺跡へは、村の脇から続く細い山道をひたす ら登らねばならない。時折石畳の坂や石段が現れ、さらに 細い急坂が続くのだが、ハイキングコースとして比較的整 備されているようだ。 教会の建つ斜面までは、休憩時間も入れて約30分とい うところだろう。溢れる程の清冽な鳥の声が、流れ出る汗 をスーっと引かせてくれた。 聖堂の内部と後陣部分は修復中で、工事用の足場が組ま れていて写真にはならない。後陣が特に美しいのでやや残 念だったが、ここでも青石を使った壁面が見事だったので、 正面の写真を掲載することにした。 斜面にへばり付くように建てられた聖堂は単身廊のバジ リカで、青石のほかには茶色や赤など様々な石が使われて いる。山の上という立地条件からも、この山で産出する石 が中心となっているようだ。 天井は落ち、内陣の敷石は失われているという、見るか らに完璧な廃墟だったが、かつての姿を髣髴させる雰囲気 が十分に保たれているのが嬉しかった。 後陣の唯一の装飾となっているロンバルディア帯の彫刻 が、崩落寸前の聖堂の歴史の証しのようにも見えた。 一日も早い修復工事の完成を祈念しながら、出発前にバ スティアのホテルで作った握り飯を家内と二人で食べた。 |
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| サント・ピエトロ・ディ・テンダ/旧聖ピエトロ教会 Santo-Pietro-di-Tenda/Ancienne Église San Pietro |
| Haute-Corse |
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さらに谷の奥の集落だが、いくら探してもこの教会の所 在が知れなかった。それもそのはずで、町からかなり離れ た谷底のオリーブ林の中にひっそりと建っていたからだっ た。おまけにそこは、オリーブ農園を経営する個人の所有 する土地の中だったのである。 聖堂の見学を申し出ると、若い学者風の主人は私達を快 く迎え入れてくれた。彼の奥さんのお父さんがこの教会を 管理していたそうで、娘夫婦一家が住み着いてオリーブ園 を経営しているということらしい。 単身廊の聖堂の内部は荒廃しており物置同様だったが、 正面ファサードや写真の後陣の外面は完璧な状態で保護さ れている。 御主人が私を誘って「屋根に上ろう」と言う。高所恐怖 症の私だが、彼の友情に報いるために決死の覚悟で上った 屋根のてっぺんから撮ったのがこの写真である。 この後私達は何と、鼠小僧のように屋根伝いに歩いて、 聖堂の屋根にまで上ってしまったのである。 屋根の素材はこの近くで採れる緑泥片岩という偏平な石 で、日本でも庭石や板碑などに使われることで知られる。 後陣の壁面にはロンバルディア帯装飾と、渦巻模様など のレリーフが施されていた。 彼はこの地方ではオリーブ栽培の名人として著名で、話 はロマネスクから離れ、もっぱらオリーブ農園の経営に関 することが中心となってしまった。 |
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| ルミオ/聖ピエトロ聖パウロ教会 Lumio/Église San Pietro e San Paulo |
| Haute-Corse |
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島の北東部の山間地一体はバラーニュ (La Balagne) 地 方と呼ばれる景勝の地で、美しい山上都市や小さな教会な どがが散りばめられた魅力的な場所である。 そこに以下の三つの教会が在るので、私達はリル・ルッ ス (L'Île-Rousse) という港町に泊まり、じっくりとこの地 方を歩くことにした。 手始めはカルヴィ (Calvi) へ行く途中のこの町で、町外 れの大きな墓地の中にこの教会が建っていた。 西正面のファサードは要塞風で、余り優れた意匠ではな いが、扉口の両側に彫られた狛犬のような獅子頭の像はと てもロマネスク的な大らかさが良かった。 聖堂は単身廊の箱型で素朴なのだが、内陣は改造が目立 って感動からは程遠いものだった。 この教会のハイライトは、何と言っても写真の後陣部分 だろう。五連の半円盲アーケードが美しく、特に半円アー チの中に彫られた幾何学模様がユニークである。 二重に彫られた菱形や円形が不規則に並んでいるのだが、 何かを暗示するのか、それとも単なる思いつきのデザイン なのかは判然としない。似たような意匠は、この後に訪ね るサルデーニャ島にもあったので、一種の流行だったのか もしれない。 さして傑出した意匠とは思えないが、装飾の少ないコル シカのロマネスク教会建築においては、異彩を放つ存在に 見えてきてしまうのである。 |
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| アレーニョ/三位一体教会 Aregno/Église de la Trinita |
| Haute-Corse |
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ルミオから山道を8Kmほど登ったところにこの小さな 集落があり、この壮麗な教会は墓地を背にして町外れの 山際に建っていた。 建築は一連の単身廊バジリカ様式だが、建築全体の石 の色使いの見事さと、写真のファサードの意匠や彫刻が 見事であることで知られている。 上部の二段に重なった盲アーケードの意匠はいかにも ピサ風であり、はじけるように多彩な石の色が躍動感に 満ちた意匠を演出している。まるで現代アートの絵画の ように見えてくるから不思議だ。 扉口の上に半円形のタンパンがあり、その左右に人物 像の彫刻が飾られている。左側は長いスカート状の衣服 を纏った女性のようであり、右側は巻物を持って膝まづ く男性の像である。何を意味するのかは、判じ物めいて 解らない。 さらに、ファサードの頂点には、片足を組んだ半跏の 男性像が置かれている。遠くを見据えるようなポーズが 面白いが、これも意味は不明だ。 アーケードの縁飾りにも繊細な装飾が施されており、 ファサード全体があたかも彫像やレリーフのキャンバス になっているかのように見えた。 内陣は、間口が狭い割には奥行きがあり、天井が高い ので、窓の無い左右の壁が息苦しいほどの圧迫感を感じ させる。このある種の威圧感を受ける聖堂は、当初から 意図的に設計された空間だったのだろうか。 聖堂の背後からの眺めは、前方に広がる山並みを背景 にして、パッチワークのように多彩な石を積んだ後陣の 美しさがとても印象的だった。 |
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| モンテマジョーレ/聖ライニエ礼拝堂 Montemaggiore/Chapelle St-Rainier |
| Haute-Corse |
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アレーニョから一つ峠を越えたところに、 小高い台地の上に家々が密集した山上都市と も言うべきこの集落が見えた。イタリアでは 珍しくは無いが、島全体が山岳地帯であるコ ルシカでも、あちこちで見かけた光景ではあ った。 墓地に囲まれたこの聖堂は、町とは谷を一 つ隔てた斜面に建っていた。 建築はアレーニョの教会にとてもよく似た 構造であったが、こちらのファサードは装飾 のほとんど無い至極簡素な造りになっている。 使用されている石の種類は、ほとんど同じ だろうと思う。 扉口が閉まっていて中へは入れなかったの だが、単身廊に祭室というプランは外観から も推定出来る。 後陣も同様だが、アレーニョに比してこの 聖堂には、彫刻などの装飾というものがほと んど見られないが、それがかえって簡素な味 わいを醸し出しているように思えた。 後陣の眺めがまた格別素晴らしかった。写 真には写っていないが、聖堂の向こう側に山 上に密集する集落の姿が見え、遠く地中海ま でも眺めることが出来たのである。 |
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| ヴァル・ディ・ロスティーノ/聖マリア教会遺跡 Valle-di-Rostino/Ruines de l'Église Santa Maria |
| Haute-Corse |
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18世紀にジェノヴァ共和国からのコル シカ独立運動の拠点となった、カスタニッ ツィア (Castagniccia) と呼ばれる山岳高地 の入口にこの村がある。 農場の入口に車を止め、荒れ果てた山道 を20分ほど行くと、写真の後陣を中心と した教会の遺跡が潅木の林の向こうに見え てくる。 10世紀のプレ・ロマネスク遺構であり、 写真の後陣の佇まいにもその風格が滲み出 ているように思えた。水色の石使いが印象 的で、プリミティブな石の積み方が何とも 言えず魅力的である。 聖堂の構造は単身廊のバジリカで、崩落 した壁面は後陣も含め、かなり上手に修復 されているという。それは、手元に修復以 前の写真があるので、比較してみて明らか である。 聖堂に隣接して、同時代の洗礼堂遺跡が 残っている。不規則な八角形で、外壁しか 残存しないが、入口に飾られていた「原罪」 を主題にしたタンパン彫刻が面白い。一体 どのような洗礼堂だったのだろうか。 |
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| カンビア/聖キリコ教会 Cambia/Église San Quilico |
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前述のロスティーノから、迷路のよう な山道を登ってさらに山奥へと進み、よ うやくこの村を探し当てた。しかし、教 会はさらに谷の奥で、駐車場から15分 程、急坂を下りなければならなかった。 彫刻好きの私には、この教会の二つの タンパンが一番の目的だった。 教会へ着いてみると、聖堂の壁面全体 が修理中で、足場が建築を覆っているこ とにがっかりした。しかし、足場に登ら せてもらうと、通常では見ることの出来 ないアングルでタンパン彫刻を観ること が出来たのだった。 写真は南門のタンパンで、蛇を退治す る男の像だ。通常はタンパンを真正面か ら眺めるのは不可能なので、修復工事が もたらした幸運と理解した。 12世紀創建の単身廊の聖堂は素朴さ が魅力で、西扉口のタンパンに彫られた アダムとイヴの「原罪」と共に楽しめた。 帰る頃には、足場の存在が全く感じら れなくなっていたのが不思議だった。 |
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| コルソーリ/聖マリア教会 Corsoli/Église Santa Maria |
| Haute-Corse |
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前述のカンビアとは山続きの村で、教 会へは別の山道を徒歩で登らねばならな かった。山道の途中からは、サン・キリ コ教会に近い農家の建物が見えるほどの 距離なのである。 ここは13世紀に建てられたのだが、 隣接するサン・キリコの建築にとてもよ く似ている。 ここにも西と南に扉口があるのだが、 タンパンには何も彫刻されていなかった。 同じ単身廊の聖堂でも、祈りの場とし ては、この規模の空間が一番相応しいよ うに思える。 それにしても、長方形と半円をくっつ けただけの単純なプランの建築の、一体 どこがかくも魅力的なのだろうか。 近くに半円アーチ門の残る礼拝堂の遺 構があり、積まれた偏平な石の美しさが 感じられた。 もしかしてという予感が的中し、その 横に片岩を利用したメンヒルを発見した のだった。 |
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| コルト/洗礼の聖ヨハネ教会遺跡 Corte/Ruines de l'Église San Giovanni Battista |
| Haute-Corse |
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城塞の町コルトの中心から南東へ3 Km、人里離れた山麓にこの古い教会の 遺跡が残されている。 この教会がいかに古いかは、聖堂の 石をみただけで容易に感じ取ることが 出来そうだ。 創建は9世紀というプレ・ロマネス ク建築なのである。 写真は南側からの眺めで、右側が十 字形の洗礼堂、左側が教会堂の後陣で ある。 洗礼堂は十字形に、ビザンチン風の 三つのドームを備えた素朴な建築。 教会聖堂の身廊部分は礎石しか残っ ていないのだが、三廊式バジリカで左 右に五本づつの角柱が立っていた。 しっかりと残された後陣部分が最も 魅力的で、乱雑に積まれながらプロポ ーションの美しさを形成している力強 さに、草創期の持つエネルギーのよう なものが感じられる。 芸術というものは押しなべて、後年 に至るほど技巧のみに走り過ぎ、創造 的な力強さを喪失していくのである。 |
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| カルビーニ/洗礼の聖ヨハネ教会 Carbini/Église San Giovanni Battista |
| Corse-du-Sud |
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ロマネスク教会の分布の希薄なコルシカ 南部にあって、唯一とも言える壮麗な建築 群である。ポルト・ヴェッキアの町からは、 細い山道を約25Kmも山奥へ分け入らねば ならない。 鄙びた寒村だが洒落た家並が多く、教会 の洗練された佇まいからも歴史や文化のレ ヴェルの高さを感じさせた。 12世紀に建立された聖堂と鐘塔で、緑 濃い山並みを背景にすっくと建つ姿は何と も秀麗であった。 聖堂は単身廊で、屋根の下に彫られたロ ンバルディア帯と後陣の軒持ち送りだけが 装飾らしい加工で、それ以外は単なる石積 みの家にしか見えない。 コルシカのロマネスク教会の大半がこの スタイルなのだが、簡素質実すぎて愛嬌が 無いように見えてしまう。しかし、本来の 信仰の場には、余計な装飾や絵画彫刻など といった“色物”は不要なのであり、そう 考えると凛とした気高さが感じられて来る ような気もする。 何にしても、これがコルシカのロマネス クの魅力なのである。 |
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| フィガニエッラ/聖母被昇天教会 Figaniella/Église Santa Maria Assunta |
| Corse-du-Sud |
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港町プロプリアーノ (Propriano) から 渓谷上の尾根伝いに車を走らせると、最奥 に近い辺りでこの集落が見えてくる。教会 の鐘塔が目印となって、私達を導いてくれ るようだった。 町外れの高台に建つ教会のテラスからは、 通過してきた村々や遥かヴァリンコ湾をも 臨むことが出来た。 12世紀に建造された単身廊の聖堂は、 堅固なイメージが目に付くのだが、総体的 には前述のカルビーニの建築にとてもよく 似て静謐な落ち着きが感じられた。 鐘塔は後世に改造されたものだろうが、 雰囲気的にはこの聖堂にとても同化してい るように思える。 後陣も含め、軒下のアーケード状装飾が 特徴的で、単調になりそうな壁面を躍動的 に飾っている。 聖堂の周囲に白い百合の花が咲き乱れて おり、まるで聖母マリアの純潔を象徴して いるかのように見えた。 |
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| フィガーリ/旧聖キリコ礼拝堂 Figari/Ancienne Chapelle San Quilico di Montilati |
| Corse-du-Sud |
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フィガーリの町の中心から北東へ5Km、 そこから山の中へ入ってしばらく進むと一 軒の農家へ突き当たる。一瞬戸惑うが、こ の小さな礼拝堂はその農家の敷地の中に保 存されているのだった。 これぞロマネスク、と言えそうなほど愛 らしい素朴な建築ではないか。 12世紀に建てられた礼拝堂で、間口が 3m奥行が7.5mという規模だ。 窓と言えそうなものは後陣に一つあるだ けで、正面の入口の他は全くの石壁だけの 構造である。積まれた石の配列が、とても 美しい。 内部は勿論単身廊で、半円筒の蒲鉾型ア ーチの天井が、ロマネスク建築の原点を示 しているようだ。無駄を排した構造体その ものが示す無垢の美しさ、とでも言うしか 説明がつかないような感動。 これほど小規模で地味な小堂が、多少の 修復はあったにせよ、900年もの間生き 続けてきたことは奇跡に近いだろう。人里 離れた山奥と言う立地条件と、この地の人 々の素朴な信仰心とが、この貴重な礼拝堂 を守り続けてきたのだろう。 |
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| ボニファチオ/聖マリア・マジョーレ教会 Bonifacio/Église Santa Maria Maggiore |
| Corse-du-Sud |
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断崖の上に建ち並ぶボニファチオの旧市街を、海側の 船上から眺めた奇異な光景への感動が忘れられない。 家々の土台となっている崖の一部はえぐれていて、ま るで天空に浮かぶ船のように見える。 そんな旧市街の中央に、12世紀から13世紀にかけ て建立されたこの教会がある。 写真は後陣部分と鐘塔で、密集した旧市街の家並に埋 まるようにして建っている。 聖堂そのものは後世にかなり修復されているのだが、 塔の窓の周辺などに残るレリーフ彫刻は創建当初のもの である。写真ではよく見えないが、イスラムの影響を感 じさせるような繊細なアラベスクにも似た植物模様や、 素朴な動物像などが確認出来た。 聖堂正面は玄関間のようなアーケードになっていて、 古い形式を残している。上部のバラ窓などがゴシックや ルネサンス期の改築を示しており、三廊式の身廊部分も 同様の改造が行われたようだ。 祭室の天井の、大きな半球形のドームが印象的だった。 私達はこの港町に宿泊し、翌朝のフェリーでサルデー ニャ島のサンタ・テレザ港へと渡った。 |
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