イル・ド・フランス
  ノール

   シャンパーニュ
地方
     のロマネスク
 
   Ile-de-France, Nord et
     Champagne
Romanes
 
 

 県名と県庁所在地

  Ile-de-France (イル・ド・フランス)
     Paris (Paris)
     1 Hauts-de-Seine (Nanterre)  
     2
Seine-St-Denis (Bobigny)
     3
Val-de-Marne (Crétel)
     4
Eure-et-Loir (Chartres)
     5
Yvelines (Versailles)
     6
Essonne (Evry)
     7
Seine-et-Marne
(Mellun)
     8
Val-d'Oise (Pontise)
     9
Oise (Beauvais)

  Nord (ノール)
    10
Somme (Amiens)
    11
Pas-de-Calais (Arras)
    12
Nord
(Lille)

  Champagne (シャンパーニュ)
    13
Aisne (Laon)
    14
Ardennes (Charleville-Mézières)
    15
Marne  (Châlons-en-Champagne)
    16
Aube
(Troyes)
    17
Haute-Marne (Chaumont)
 
 
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 パリ聖ジェルマン・デ・プレ教会
  Paris
/Église
    St-Germain-des-Prés
 

      
1 Paris  
    
              
   
 
 サルトルやジュリエット・グレコに代表され
るような、1950年代のパリを代表する芸術
家や文学者の溜まり場だった地区である。当時
の面影を伝えるカフェやブラスリーは、現在で
も魅力的な存在となっている。パリで大好きな
場所のひとつ。

 広場の向こう側でそんな時代の変遷を見続け
てきたこの教会は、6世紀に創建されたパリ最
古の三教会のひとつとして知られる。
 8世紀には、ベネディクト会の重要な修道院
となっていたが、その後のノルマン人による破
壊や様々な変遷を経て今日の姿となった。

 正面の鐘塔門と身廊、そして北側の翼廊とが
11世紀のロマネスク様式を伝えている。
 ロマネスク時代の天井は木造だったのだが、
ここは17世紀にゴシック様式のリブ・ヴォー
ルトに改造された。
 内陣は12世紀のもので、上部の窓の下に設
けられたトリビューンのようなアーケードと、
祭壇を取り巻く周歩廊の存在が特徴である。
 身廊や翼廊に見られる柱頭彫刻の大半は11
世紀の作品のコピーであり、オリジナルはクリ
ュニー美術館に収蔵されている。
 しかし、死んだ博物をガラスケースの中に見
るよりも、活きた建築空間の中で見るコピーの
ほうに、より深い魅力を感じていた。
 
 
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 パリ旧聖マルタン・
      デ・シャン修道院

  Paris
/Ancienne Abbatiale
    St-Martin-des-Champs
 

      
1 Paris  
    
          
 
 
 共和国広場の西にある国立工芸院の一画に、
このパリ最古の中世寺院の遺構が保存されてい
る。
 円形三後陣と鐘塔に面影を残すものの、後世
にかなり改修された痕跡は顕著である。しかし
パリ市内に在っては、貴重なロマネスク遺産と
言える。建築創建は12世紀初頭である。
 身廊部分は工芸院の展示場になっているが、
祭室部分には、束ね柱と交差リブ穹窿の天井で
構成された周歩廊の付いた後陣が保存されてい
た。三連窓の下は、三連の盲アーケードになっ
ており、最もロマネスク的な装飾が残っていた
ことが嬉しかった。柱頭にもロマネスクらしい
意匠が残されている。
 
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 パリ聖ピエール教会
  Paris
/Église St-Pierre
         de Montmartre
 

      
1 Paris  
    
          
 
 
 有名なモンマルトルのサクレ・クール聖堂と
は、小道を挟んで後陣が接しているのでご存知
の方は多いだろうと思う。
 パリ最古の三教会の最後だが、起源は12世
紀前半とされる。
 奥から三つの梁間が最古とされているが、尖
頭アーケードなどが今一つロマネスクへの想い
を打ち消してしまっているように感じられてな
らない。
 しかし、パリ周辺では、12世紀半ばには既
に尖頭アーチが用いられていたらしく、いち早
く先駆けゴシックの洗礼を受けた痕跡、との理
解も出来るだろう。
 いずれにしても、文化の中央では、地方の様
に鷹揚にロマネスク様式を守る事無く、ダイナ
ミックに変貌を続けていたのである。
 
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  パリノートルダム大聖堂
  Paris
/Cathédrale Notre-Dame

      
1 Paris  
    
          
  
 
 先般の火災で、どこまでが焼失したのかが不
明なため、従前の記事をそのまま掲載した。詳
細が判明次第検討したいと思っている。

 パリ発祥の地であるシテ島
La Cité に建つ
12世紀後半創建の大聖堂だが、時代や様式を
超えた完成度を示す建築と言えるだろう。
 最終的に聖堂建築が完成したのは14世紀と
のことで、純粋なロマネスク様式は聖堂や内陣
にはほとんど残存していない、という方が正し
いのかもしれない。
   
 唯一の痕跡が三つある扉口の一つにだけ見ら
れる。正面に向かって右側の扉口は、聖アンナ
の門
Portail de St-Anne と呼ばれ、12世紀
後半ロマネスク様式の作品である。
 タンパン部分には、左右の天使に囲まれた玉
座の聖母子像が天蓋の中に彫られている。天使
の外側に彫られた人物は、左が司教モーリス・
ド・シュリーで、右は若年王ルイ七世であり、
聖堂を聖母に奉納した人として描かれている。
 二段のまぐさ石部分も12世紀のもので、上
段は聖母マリア伝、下段は聖母の母アンナの物
語が彫られている。
 いずれにせよ、題材などにロマネスク的なテ
イストは感じられるものの、ほとんどがゴシッ
ク様式の波に飲み込まれていたことは明らかだ
ろう。
 
 
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  サン・ドニ聖ドニ大聖堂
  St-Denis
/Cathédrale St-Denis

      
2 Seine-St-Denis  
    
          
   
 
 パリから10キロの地点にこの大聖堂が在る
が、ロマネスクの時代にすでにゴシック的な造
形や思想が完成していた、という意味でこのサ
ン・ドニは特別の存在である。

 抽象や象徴や神性を重んじるロマネスクより
も、具体や写実や人間性を通じて、より現実的
な世界を追求するというゴシック的な精神が、
ここサン・ドニで初めて具現化していったので
あった。1140年というロマネスクの最盛期
において、なのである。
 扉口完成当初の円柱人物像は失われ、その一
部をクリュニー美術館で見ることが出来るが、
これは正にゴシックであり、かなり写実的だっ
た。
 写真は現在の中央扉口でタンパンは「最後の
審判」というゴシック的なテーマである。円柱
人物像が彫られた姿を推測すると、かなりリア
リティに満ちた迫力であったと思われ、他の二
面の扉口と併せて、ゴシック的表現に突進する
息吹が強く感じられる。
 ここでは、好き嫌いをしっかり別にしておか
なければなるまい。何故なら、ロマネスクの中
にゴシックが台頭していった革新的な時代の最
重要とも言うべきポイントを示す、ここは正に
その無二のテキストだからである。
 それでもロマネスク本来の不器用とすら思え
る「抽象」に、こよなく愛着を感じることにつ
いては、微塵の揺るぎも無い。   
 
 
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 ガッシクール聖アンヌ教会
  Gassicourt
/Église Ste-Anne 

      
Yvelines  
    
          
   
 
 住宅街を中心としたこの地区は、セーヌ川沿
岸の町マント・ラ・ジョリ
Mantes-la-Jolie
に隣接している。マントは、コローの描いたマ
ントの橋として知られるリメーの古橋
Vieux
Pont de Limay
が在る事で有名な都市だ。

 町の広場に面して、それほどの規模ではない
が存在感のある教会が建っている。
 三廊式十字形の聖堂で、翼廊との交差部に鐘
塔が聳えている。
 内部へは南側の扉口から入ることが出来た。

 写真は南側の側廊から、身廊の西向き部分を
写したものだ。
 魅力的な柱頭彫刻の見られる円柱やアーケー
ドで構築された身廊部分は、鐘塔や西ファサー
ドと共に12世紀の建築であるという。
 残念だったのは、翼廊と祭室部分が、13世
紀から16世紀にかけてゴシック様式に改造さ
れていることだった。
 西正面のファサードはとても特徴的で、扉口
がやや幅広であり、大きなタンパンの意匠が連
続する幾何学模様だった。これは余り面白いも
のではなかった。
 ヴシュールの縁に彫られた軒持送りのような
連続するアーチと人の首の像は、ケルトを連想
させた。その内側に連なる中心が穴になった同
心円の模様も、余り類例の無いものであった。
 
 
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 ガイオン・シュル・モンシエン
     聖母被昇天教会

  Gaillon-sur-Montcient
/
     Église de l'Assomption
 

      
Yvelines  
    
           
  
 
 マントからセーヌ沿いに15キロ上流に行く
と、川の北側にムーラン
Meulan という小さ
な町がある。パリの中心からは、約30
キロ

流ということだ。
 そこからセーヌの支流であるモンシエン川に
沿って数キロ山側に入ったところに、この小さ
な教会のある村がひっそりと佇んでいる。
 この村の広場に車を停めながら、礼拝堂のよ
うにチャーミングな建築に見とれてしまった。
 しかし、扉口は押せども引けども開かず、ま
た人の気配も無いので鍵の所在も不明だった。


 聖堂を詳細に眺めてみると、かなりの増改築
が重ねられて来たように見える。
 創建時の姿に近いのは、写真の北側扉口のあ
る身廊部分と鐘塔だけかも知れなかった。
 現在は鐘塔の東側、つまり写真の塔の向こう
側に身廊や側廊が見られるのだが、従来は塔の
東には祭室のみがあったのではないか、と思わ
れた。つまり、写真に写っている部分のみが従
来の教会だったのではないか、と勝手に想像し
ていた。

 パリ近郊に残る一連のロマネスク小聖堂は他
にも在り、セーヌ川沿いには
Épône, Juziers,
C
omeilles-en-Vexin, Poissy
などなど見るべ
き教会が点在するのだが、実はほとんど知られ
ておらず、ガイドブックにも無縁であり、また
大半が門戸を閉ざしていることは何とも残念で
ならない。
 
 
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 エタンプノートルダム
     参事会教会

  Etampes/Collégiale
     Notre-Dame
 

      
Essonne  
    
           
   
 
 かつてはオルレアンに通じる街道に面した重
要な町であったが、現在はやや取り残された感
がある。旧市街には、往年の繁栄を物語る教会
や、多くの古い建築を見る事が出来る。
 冬のブルターニュを旅した帰路にパリ周辺を
歩いたのだが、その際にこの町を訪ねたのだっ
た。生憎の雨模様だったのでスナップ写真しか
無いが、パリから至近の美しいロマネスク彫刻
を御紹介したくて掲載した次第である。故に、
愚妻の存在を御容赦願えれば幸甚である。

 写真の豪壮な彫刻群は、聖堂南門のものであ
る。イメージはシャルトルの王の門に近いが、
大半の聖人の顔が失われているのは惜しい。
 柱に彫られた細長い聖人の像は、衣の襞など
技術の優れた彫像で、これらもシャルトルを連
想させるような傑作である。

 壁面上部の左右両側には天使の像が有り、躍
動する美しさを見せているが、残念なことにこ
こでも首部が失われている。宗教戦争の愚行だ
ろうが、いつの世にも、歴史が示すのは人間の
弱さそのものなのかもしれない。  
 
 
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 メルヴィイエール旧教会跡
  Mervillier
/Ruines
     d'Ancienne Église
 

      
Essonne  
    
          
 
 
 この村がシャルトルの東に在ることが判った
ので、すぐに村までは行けたのだが、それから
このタンパン彫刻を見るまでに、どれだけの苦
労をしただろうか。
 今までに、ここまで所在が不明だった事例は
無い。
 地図には勿論掲載されていないし、村の誰に
聞いても判らないのである。それは、最後の最
後に偶然会った人の自邸の、全くプライヴェー
トな中庭の壁に保存されていたのだった。

 小さなタンパンだが、デフォルメされた人物
像が魅力的であり、判じ物みたいな不思議な図
像は、何が表現されているのか正直言うと判ら
ない。
 キリスト、天使、聖母、聖人、騎士と思しき
図像は想像できても、どういう場面かは全く
不明である。それでも惹かれるのは、抽象が凝
縮されたロマネスク的な宇宙観、曼荼羅のよう
な世界観を感じるからなのだろうか。
 
 
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 サン・ルー・ド・ノー聖ルー教会
  St-Loup-de-Naud/
      Église St-Loup
 

      
Seine-et-Marne  
    
          
   
 
 教会に祭られた聖人の名前をそのまま名乗っ
ているこの町は、セーヌ河の上流、フォンテー
ヌブローよりさらに奥のプロヴァン
Provins
近い。訪れたのは夏の盛りで周辺は緑濃く、
野草が咲き乱れる美しい町だった。
 立派な鐘塔が町のどこからも見えるので、教
会へは容易にたどり着くことが出来る。

 聖堂は三廊式でそれぞれに祭室が備えられて
おり、後陣の姿は見応えがある。塔の有る交差
部から奥は11世紀、身廊から正面入口にかけ
ては12世紀との案内が有った。かなりの修復
と改造があったようだが、往時の面影は充分に
残されているようだった。

 正面入口の門に施された彫刻が圧巻だった。
タンパンには四福音書家に囲まれた栄光のキリ
スト像が彫られ、マリア像や聖人像がかなりの
密度で加えられている。写真は、タンパンの下
の門の、支柱に彫られた聖ルーの像である。柱
の長さに合わせた細長い像で、まことにロマネ
スク的であると同時に、ゴシックの予感をすで
に包含した美しい彫刻である。
 
 
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 シャトー・ランドン聖母教会
  Château-Landon
/
     Église Nottre-Dame
 

      
Seine-et-Marne  
    
           
   
 
 フュザン川 Le Fusain に沿った段丘上に展
開する町で、町へ通じる橋からは二本のロマネ
スク様式の鐘塔が眺められる。
 北側は旧聖トゥガール教会
St-Thugal の塔
で、南側が写真のノートルダムの塔である。

 町のほぼ中央に建つこの教会は、三廊式十字
形の聖堂で、写真のような三つの後陣を配して
いる。11世紀創建という古い教会だが、現在
の建築は12世紀のものが大半で、創建時の名
残は身廊北側の壁面と列柱にのみ見られる。
 北側は採光窓の付いたアーケードで、角柱と
一体化している。南側は拡張されており、変則
的なプランとなっている。柱は束ね柱で、尖頭
アーケードが意匠されている。
   
 西正面の扉口にはタンパンがあり、網目模様
が彫り込まれているが創建当初のものとは思え
ない。翼廊の南北にも同様の扉口が設けられて
いるが、ヴシュールやタンパンには雰囲気は見
事に伝わっているものの、見るべき彫刻や装飾
は無かった。

 この町には、ロマネスクのフレスコ画が残る
旧聖セヴラン修道院
St-Séverin や、優雅な玄
関付き鐘塔の旧サン・タンドレ
St-André
多くのロマネスク関連寺院が点在している。
 
 
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  モンドルヴィル旧聖ペ教会
  Mondreville
/Ancienne
     Église Ste-Paix

      
Seine-et-Marne  
    
           
  
 
 シャトー・ランドンの西7キロに在る村で、
ロワールの北端、同じポーチの在る
Boësse
ボエスからも程近い鄙びた村である。ここがパ
リから数十キロの場所とは、とても信じられな
いような素朴な農村だった。
 写真は、教会正面のポーチ部分全景である。
 聖堂は単身廊の素朴なプランで、鐘塔だけが
飛び出した形式になっている。様式はロマネス
ク風だが、後補によるものかもしれない。
 ポーチは、ボエスより幅は狭いが奥行きがあ
る。側面にも小さなアーケードが有るのが最大
の特徴だ。
 柱頭には、単純だがセンスの良い意匠が彫ら
れており、小さいが美しいアーケードになって
いる。
 雲が低く垂れ込めた冬の空の下で、教会は訪
れる人も無く、ひっそりと身を縮めているよう
に見えた。この静寂こそ、ロマネスク行脚には
冬が最適、と言わしむる所以である。
 
 
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 ブランスル聖ルイ聖ルー教会
  Bransles
/Église
      St-Louis-et-St-Loup
 

      
Seine-et-Marne  
    
           
   
 
 ヌムール Nemours の町から南西へ30キ
ロ、シャトー・ランドンからは西へ10キロの
辺り、県南端の田園地帯に位置するひなびた農
村である。

 集落中心の広場に近い場所に、写真の鐘塔が
シンボリックに建つ姿が直ぐに目に入る。
 コンパクトでチャーミングな佇まいがすっか
り気に入ってしまったのだが、創建された12
世紀の面影をとどめているのは、どうやら後陣
・鐘塔とそれに続く梁間一つだけの様だった。
 身廊と北側の側廊、玄関のポーチなどは後世
の追補であるらしい。南側の側廊は無い。従来
は単身廊であったという。
 アーケードや天井など、内陣のアーチ構造は
全て尖頭形で、当初からのものか後世の改修に
よるものかの判別はつかなかった。

 この人間的なスケールの聖堂の中で、無心で
祈る村人たちの姿を想像すると 大寺院が誇る
権威や威光とは全く無縁で純粋な、無垢の信仰
の形が見えてくるように思えた。広場でサッカ
ーに夢中になっている子供たちの歓声が、静謐
な聖堂にも響いていた。
 
 
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  ラヴィルテルトル聖母教会
  Lavilletertre
/
     Église Notre-Dame

      
Oise  
    
           
   
 
 ボーヴェからは南へ約45キロ、ポントワー
ズからは西北へ25キロという位置の村で、パ
リ近郊とは思えないほど広大な小麦畑と深い森
を抜けて行ってようやくたどり着く。
 牧歌的な美しい村の教会は、ここでも扉口を
固く閉ざしたままだった。向かいの役場も閉ま
って人の気配が全く無いのである。

 写真は西側の正面扉口と鐘塔で、未練がまし
い私達は扉の鍵穴から中を覗いて見た。運良く
大きな穴だったので、身廊の概要を見ることが
出来た。
 三廊式十字形の聖堂であり、束ね柱のアーケ
ードは尖頭アーチが連続していた。
 天井は身廊も側廊も尖頭アーチ形であり、横
断アーチと交差リブ・ヴォールトによって構築
されていることが判った。
 また真正面には柱頭の植物模様の彫刻が見え
たが、穴からの撮影は不可能だったので、中へ
入れない無念さが増幅してしまった。

 聖堂の周囲を回ってみた。翼廊と祭室後陣部
分には半円窓が見られ、後世に改築されたこと
は歴然としているものの、ロマネスク教会の雰
囲気を失っていないことが嬉しかった。
 正面扉口の三重ヴシュールに、それぞれ異な
った意匠の連続幾何学模様が施されており、こ
れも非凡なアイディアであると言える。  
 
 
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 ボーヴェ聖エチェンヌ教会
  Beauvais
/Église St-Étienne 

      
Oise  
    
        
 
 
 未完のゴシック大聖堂に驚愕した後に、私達
は町並の間を歩いてこの教会を訪ねた。
 11~12世紀に建造された聖堂は、身廊と
翼廊にその面影を留めているものの、新しい身
廊や祭室や後陣が、完全なゴシック様式で翼廊
の更に奥に増設された格好で改築されているの
だった。
 複雑な植物の蔓に絡まる二頭の龍が彫られた
タンパンが、北側の旧身廊の扉口に見られる。
ファサード全体で、ロマネスク門の素晴らしさ
を伝えているように思えた。
 最も注目したいのが写真のバラ窓で、これは
翼廊の北側の二つの窓の上に設けられている。
 運命の車輪
Roue de la Fortune と呼ばれ
るバラ窓で、逆時計回りする車輪が描かれてい
るのである。

 輪郭外側の右側に頂上の天国を目指して登る
人物像が、そして左側には天国から滑り落ちて
いく人々が描かれている。車輪全体が“最後の
審判”を下しているのか、それとも運命の気紛
れに翻弄される無常や不安を表現したものなの
だろうか。
 柱頭のある12本の支柱はキリストの十二使
徒であり、中央にキリストのシンボルが嵌め込
まれているらしい。
 サン・ドニのファサードや、後のゴシック聖
堂に多大な影響を与えたと言われている。
                  
 
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  ブリー聖ルシアン教会
  Bury
/Église St-Lucien

      
Oise  
    
        
   
 
 ボーヴェの町からテレーン川 Thérain の谷
間を南東に25キロ下ったあたり、緑濃い森に
囲まれてこの村がひっそりと眠っている。
 教会の扉は閉まっていたが、役場の親切な職
員が、嬉しいことに長い昼休み中にも関わらず
門の鍵を貸してくれた。

 三廊式十字形の典型的なロマネスク聖堂なの
だが、ここでも翼廊から東の祭室や後陣や鐘塔
はゴシック様式に改造されている。
 ヴシュールに刻まれたジグザグ模様が特徴的
な西門を入ると、身廊と側廊を仕切るアーケー
ドが目に入った。そのアーチの輪郭にも、ジグ
ザグ状の連続模様が幾重にも彫られていた。
 天井は完全なゴシック様式で、尖頭形の横断
アーチと交差リブ・ヴォールトによって構成さ
れていた。

 写真は側廊の柱頭部分で、そこは丸で彫刻美
術館のようであった。聖ドニの“首提灯”に似
た像など興味深い図像に満ちていたが、最も面
白かったのは写真左上の両手を挙げて座る人物
像だった。
 北側側廊の一画で、四隅の柱頭から延びるオ
ジーブの根本に、各々計四人の人物像が彫られ
ているのだった。いずれも不思議なバンザイの
スタイルである。
 柱頭の上部、オジーブの形にフィットさせた
意匠と言え、とてもロマネスク的な発想の感じ
られる図像であることが嬉しかった。
 
 
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 ヴィラー・サン・ポール
     聖ポール教会

  Villers-St-Paul
/Église St-Paul 

      
Oise  
    
        
 
 
 サンリス Senlis の北、オワーズ川 Oise
北岸に広がる静かな住宅街の続く町である。
 教会の扉は、隣接する司祭の家に頼んで開け
て貰う事が出来た。
 12世紀半ばの創建との事だが、聖堂の大半
はゴシック様式や後世の改造が目立っている。
 写真は北側廊から身廊方向を撮ったもので、
アーケードは尖頭アーチながら、柱頭の彫刻に
優れた意匠が見られることがお判りいただける
ものと思う。
 不思議な形をした植物や渦巻のような蔓、蛇
を小脇に抱えた人物や何かのために並立する人
物などなど、私達を惑わせるロマネスク彫刻の
役者達が勢揃いしたかのように思えた。
 正面入口の門は、タンパンが失われているも
のの、重厚なヴシュールや側柱、柱頭などに見
るべき部分が多く、大いにロマネスク・エッセ
ンスを満喫したのだった。
 
 
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 リュイ聖ジェルヴェ・
    聖プロテ教会

  Rhuis
/Église St-Gervais-
       et-St-Protais
 

      
Oise  
    
        
   
 
 前述のヴィラーからオワーズ川沿いに東へ約
20キロ行くと、そこはもうコンピエーニュの
森にかなり近い閑静な村であった。
 教会は村外れの小高い場所に建っており、ガ
イドブックにちらっと載っていた三階建ての鐘
塔が直ぐに目に入った。

 11世紀に創建された三廊式の聖堂だが、半
円形の祭室は中央に一つだけしか見られない。
側廊の延長線の片側に鐘塔が在るだけなので、
やや不自然なプランではある。鐘塔手前の建築
は近代になって増築されたものらしい。
 正面のファサードは創建時代の遺構らしいの
だが、特徴の無い意匠だった。身廊部分は漆喰
で塗り固められていた偏平な壁面が単調で、柱
頭彫刻も無く余り魅力的な聖堂とは言い難いも
のだった。
 写真の後陣部分は11世紀の遺構だが、身廊
が短い割にはその半円祭室が10m近くも突き
出しているので、やはり両側に小祭室があった
ことが想像されてしまう。

 鐘塔はこの地方に多い三層式の典型で、重厚
感の備わった堂々たる11世紀の建築である。
 
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 サン・ヴァー・ド・ロンモン
        聖ヴァースト教会

  St-Vaast-de-Longmont
/
      Église St-Vaast
 

      
Oise  
    
        
   
 
 前述のリュイからは数キロしか離れていない
ヴェルベリー
Verberie の町から、山手に向
かって隣接する小村である。
 教会建築は深い森を背景とした高台に建って
おり、聖堂まで通じる山道は昼も暗いほど鬱蒼
と繁った木々の間を抜けていくことになる。
 正面の鉄製外門が閉まっていたので、聖堂へ
のアプローチを半ば諦めかけていると、停めた
車の中にいた若い男女が裏の墓地から入れるこ
とを教えてくれた。
  
 背後から聖堂を眺めて驚いた。中央の半円形
の後陣と中央に聳える三層の鐘塔は、この地で
は見慣れた様式なのだが、北側にのみ半円形の
小後陣が付いていたのだった。
 従来は単身廊だった聖堂に、北側だけに側廊
と祭室が設けられた格好となっている。創建時
から二身廊だったものかどうか、を知る手がか
りは見付からず判然としなかった。

 西側の正面に回り込み、扉口を見て再び驚い
た。写真が、その西側の門である。
 様々な意匠の門を今まで見てきたが、ここの
門はかなり変った部類に入るだろう。
 入口そのものはバロック的なデザインに改造
されているが、四重のヴシュールが尖った四角
錐の連続模様で覆われ、それが更に側柱部分ま
で続いているのである。こんな小さな教会に、
かくも斬新で大胆なデザインの門が制作されて
いる事に再度驚いていた。   
 
 
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 モリアンヴァル聖母教会
  Morienval
/Église Notre-Dame 

      
Oise  
    
        
   
 
 コンピエーニュ Compiègne の町外れにあ
る静かな宿に滞在していたのだが、そこはコン
ピエーニュの壮大な森の丁度北側に当たる。
 モリエンヴァルは森を隔てた真南に当たり、
森を抜けるのに何と20キロ車を走らせねばな
らない。
 鍵を管理するお宅を見つけ、何とか聖堂の中
へ入ることが出来た。

 石積みの美しい聖堂で、写真は身廊から翼廊
との交差部と祭室を眺めたものである。
 身廊の横断アーチ上に意匠されたアーケード
が、とても洗練されたデザインに感じられた。
 三廊式の身廊には二本の中間柱によって作ら
れた三つのベイがあり、それぞれの束ね柱の柱
頭には、優れたデザインと幻想的なモチーフの
彫刻を観ることが出来た。渦巻き模様を進展さ
せた意匠が多く、コンピエーニュの森の連想か
らまたもやケルトがイメージされてくる。

 聖堂建築の外観はとてもユニークだった。
 西の正面中央に鐘塔が聳え、その真下が扉口
となっている。門の部分は改造されていてロマ
ネスクではなかった。
 最大の特徴は、翼廊と思われた交差部両側の
翼の部分に塔が二本建っていることだった。
 正面と併せ、三本の塔が聳える光景は壮観で
あり、東側から後陣を見たいと思ったが、背後
は崖になっていて近づけなかった。
 しかし、森へ向かう山道から眺めた、逆光の
中の三本の塔の姿は忘れ難いものだった。
 
 
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 ベルジー・ル・セック
    聖クェンタン教会

  Berzy-le-Sec/Église St-Quentin 

      
13 Aisne 
    
        
 
 
 ゴシックの遺構が残るソアッソン Soisson
の町からは、南へ4キロという至近距離に位置
している。
 丘陵の上に開けた閑静な村で、教会は写真で
見るように、村の礼拝堂に相応しいとてもチャ
ーミングな聖堂だった。
 教会の歴史は9世紀までさかのぼるのだが、
現在見る建築は12世紀半ば以降の増改築の結
果である。
 正面のファサードは単純だが内部は三廊式聖
堂で、二本の中柱のある三連アーケードが両側
に設けられ、側廊との仕切りになっている。
 翼廊は無く中央に鐘塔が聳え、半円形祭室が
後陣に突き出している。
 鐘塔と側廊の接点部分が不自然に感じられた
が、翼廊が壊されたか、側廊が後から増築され
たかのどちらかだろう。
 鐘塔を支える柱に施された柱頭彫刻は、聖書
の逸話を主題としたものが大半で、彫りの鮮や
かな秀逸な作であった。   
 
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 バーロン聖レミ教会
  Baalons/Église St-Rémy 

      
14 Ardennes 
    
         
 
 
 ランスの北東約60キロ、シャンパーニュ地
方の北端、ベルギー国境まで30キロ程度、と
いう場所にある何とも鄙びた農村である。
 教会とは名ばかりで、村の礼拝堂と言うに相
応しい小建築だった。
 大半が後世の建築で、三廊式の側廊も増築さ
れたもののようだ。
 だが、ここでの目的はひとえに写真のタンパ
ンにあったのである。
 半円形の上部は喪失したと思われるが、図像
の中心部が見事に保存されていることが嬉しか
った。
 ランスの大聖堂でゴシック彫刻を代表する写
実的な天使の微笑みを受けた直後だったので、
いかにもロマネスク的な素朴な図像に会えて久
しぶりに感動した。
 笏杖と書物を持つ聖人の両側に、剣や法具を
持った二天使が立っている。左は羽根を上げ右
は下げている、意味は不明だが対比が面白い。
 
 
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 ランス旧聖レミ修道院
  Reims/Ancienne Abbaye
       St-Remy
 

      
15 Marne 
    
          
   
 
 ランスやエペルネ Épernay を訪れる人の目
的は明白である。それは決してロマネスクやゴ
シックの教会等ではなく、フルーティーな甘い
香りと繊細な発泡が魅力である琥珀色の液体に
こそ、その目的が集中しているに違いないので
ある。おかげで、ドンペリよりもクリュッグや
ベルエポックのほうが、遥かに美味いことも知
った。
 ここでは「団子」の話題は置いておいて、し
っかりと「花」のお話をしなければならない。
 「花」の代表その一番はゴシックの傑作であ
る大聖堂
Cathédrale と、12世紀の内陣が
残されたこの教会であろう。

 ゴシック初期と重複した12世紀後半のロマ
ネスクで、両方の美しさが生かされた荘重な傑
作であろう。
 三廊式の内陣や礼拝堂付き翼廊、小祭室付き
周歩廊が廻らされた祭室など、はっきりとした
巡礼教会の様式である。
 写真は身廊から側廊方面を眺めたものだが、
半円アーチを組み合わせたトリビューンや、天
井に展開する交差オジーブが見事に調和して、
壮大な空間を創出した。精神は完全にゴシック
的であるが、ロマネスク的な素朴さの残る壁面
には愛着を感じる。大き過ぎるのだが、十分に
美しいのである。
 
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 ヴェルテュ聖マルタン教会
  Vertus/Église St-Martin 

      
15 Marne 
    
           
   
 
 シャンパン街道 La route du Champagne
はランスを出発すると、葡萄畑に囲まれた小さ
な村々を巡りマルヌ川を渡り、エペルネイの町
を過ぎてからこの村で終点となる。花と団子の
両方が楽しめる魅力の街道なのである。

 写真は後陣の眺めで、左の鐘塔は翼廊の上部
に建てられた格好となっている。塔の部分は1
2世紀だが、後陣・祭室部分は15世紀以降の
再建であるらしい。
 ロマネスクは全体の3割程度で、大抵は取り
上げないが、周囲の葡萄畑に敬意を表した。

 内陣は三廊式十字形だが、祭室は方形で余り
魅力的ではない。身廊の列柱は11世紀との事
だったが、交差オジーブの天井には些かがっか
りしてしまった。
 しかしゴシックの台頭が早いこの地方では、
致し方の無いところである。
 教会背後に村の貯水槽が有り、対岸は民家と
接しているという特異な配置で、白鳥などの遊
泳する珍しい光景だった。

 この後宿泊したシャンピオン
Champillon
のオーベルジュは、瀟洒な料理と芳醇なシャン
パーニュでもって私たちを満足させてくれた。
団子の有難味を満喫させてくれる、至福の場所
だと言えるだろう。   
 
 
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 サン・ティエリー聖イレール教会
  St-Thierry/Église St-Hilaire 

      
15 Marne 
    
           
 
 
 ランスの町を囲む外環自動車道路の外側、町
から8キロの場所だが、葡萄と小麦の畑に囲ま
れた何とものどかな村だった。
 12世紀に建造された聖堂で、正面に鐘塔門
のある三廊式の整然としたバシリカ式の建築だ
った。
 正面に設けられた玄関間のようなアーケード
も美しかったが、何と言っても、聖堂の背後か
ら眺めた写真の後陣が気に入ってしまった。
 朴訥とした石の壁の風情が何とも良いし、三
つの後陣が生き生きとしているように感じられ
た。窓の大きさが気になったが、ゴシックの地
とてこの程度の修復は許容範囲だろうと納得し
ていた。
 内陣のアーケードが角柱で、柱頭も無く、意
匠以前のつまらなさを感じただけにそう思われ
たのかもしれない。
 
 
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 クールヴィル聖ジュリアン教会
  Courville/Église St-Julien 

      
15 Marne 
    
           
 
 ランスの西25キロ付近のフィスム Fismus
という町から、アルドル Ardre という細い川
が流れる、小さな谷間を少し入った酪農の村で
ある。
 聖堂は三廊式で、身廊の高い天井は横断アー
チのある円筒ヴォールトだった。柱や壁には不
規則な大きさの石を、いかにも武骨に積んだよ
うな素朴さが残っており、今回の旅の中で、こ
れぞロマネスクと感じさせてくれた教会の一つ
だった。
 写真は北側廊から身廊方向を撮ったもので、
側廊の天井は低い交差穹窿である。
 低い位置にある柱頭彫刻が素晴らしく、写真
中央の柱頭のように、各種の花を図案化したも
のが中心だった。非凡な技術を持った石工の仕
事だろう。
 半円の代わりに三つの半六角形の突き出した
後陣の眺めも捨て難い魅力を秘めていた。
 
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  ワッシー聖母教会
  Wassy/Église Notre-Dame

      
17 Haute-Marne 
    
           
 
 
 シャンパーニュ南部の町で、 St-Dizier
ン・ディジエ
の20キロ南に位置している。
 12世紀の創建だが、ファサードは基礎を残
してゴシックに改造され、聖堂両側の側廊の外
壁面には小礼拝堂が増築されている。
 祭室も近年の改造なので、創建当初の外観が
見られるのは、翼廊部分と交差部に建つ鐘塔の
みかもしれない。
 しかし内陣のアーケードや束ね柱や柱頭部分
は12世紀のものであり、特に柱頭には卓越し
た彫刻が数多く残されていた。
 写真はその内の傑作の一つで、植物と人物と
を絡ませた深い彫りが印象的だった。葡萄の蔓
と一体化した葉人間のようでもあり、聖樹信仰
からケルトへと思いは広がっていく。
 教会の鍵を開けるために、観光案内所の方の
お世話になった。
 
 
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 ヴィニョリー聖エチェンヌ教会
  Vignory/Église St-Étienne 

      
17 Haute-Marne 
    
            
   
 
 前述のワッシーからマルヌ川に沿って南下、
ショーモン
Chaumont 方面へ向かい約45キ
ロ車を走らせる。緑濃い谷間の町で、マルヌ川
沿いの国道からは少しだけ高い場所になる。

 11世紀に建造されたこの聖堂は、翼廊の無
い三廊式バシリカ聖堂である。
 珍しいのは、側廊を真っ直ぐ進むと、そのま
ま祭室の外側に造られた周歩廊に続き、ぐるっ
と回って反対側の側廊へと戻る、そういう設計
なのである。
 周歩廊には三つの半円形小礼拝堂が設けられ
ており、側廊の北側の先端上部に鐘塔が建てら
れている。後方から撮った写真でそうした構造
が想像出来るはずである。池に写った聖堂の姿
は、当地方の観光ポスターになっていた。

 身廊と側廊の間を仕切る高い天井まで届くア
ーケードは、三段のアーチで構成されており、
身廊はかなり巾の狭く感じられる空間となって
いる。そんな圧迫感を和らげているのが、二段
目のアーケードで、これは側廊の上に設けられ
たトリビューン(階上回廊)の開口部である。

 柱頭には見るべきものが多く、特に周歩廊の
内側に並ぶ祭室の円柱に集中している。ライオ
ンなどの動物をモチーフとした傑作で飾られて
いるのである。  
 
 
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 ラングル聖マンメ大聖堂
  Langres/Cathédrale
     St-Mammés
 

      
17 Haute-Marne 
    
            
  
 
 シャンパーニュの最南端に位置しており、ブ
ルゴーニュ北端のディジョン
Dijon まで60
キロ足らずである。

 大聖堂の建造は12世紀とも言われるが、現
在残っている聖堂は13世紀のものである。
 三廊式で翼廊部分があるのだが、前述のヴィ
ニョリーと同じ様式で、側廊から祭室の周歩廊
へと直結している。側廊の上部は後陣も含めて
ぐるりとトリビューンになっており、二連のア
ーケードがその開口部を装飾しているという大
層豪華な設計である。
   
 身廊アーケードは尖頭アーチで構成されてお
り、天井も横断尖頭アーチと交差リブ・ヴォー
ルトが基本となっている。
 13世紀はロマネスクも後期であり、ゴシッ
ク的な意匠の事例はシャンパーニュには事欠か
ず、さらにブルゴーニュの巡礼教会にも似たプ
ランを取り入れているところが、この教会の渾
然とした面白さとなっているのだろうと思う。
 ちなみに、後陣に張り出した五つの小祭室は
14世紀、西正面のファサードは18世紀の建
築である。
 
 
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