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| 英国(南部)のロマネスク Romanesque in South Britain |
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キリスト教の定着していた8〜9世紀にかけ て、バイキングが波状的に来襲した。デーン人 とアングロ・サクソンがイングランドを分割し、 その後さらにノルマンが上陸して征服した。 ロマネスクの時代は、王権を巡る様々な争い が繰り返される時代でもあったが、反面あらゆ る文化や芸術活動が活気に満ちていた時代でも あった。 様々な民族の文化が融合された英国のロマネ スクには、大陸とは一味違った面白さがある。 だが、歴史の悲劇はカトリックとプロテスタ ントの激しい対立を生み、ロマネスク以前の多 くの古い文化財が破壊されてしまった。 ロマネスクの微かな痕跡を求めて、イングラ ンド南部からウェールズへと旅をした。 ケルトの石造十字架 Celtic Cross Church of SANCREED (Cornwall) |
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| ロチェスター/大聖堂 Rochester/Cathedral |
Kent (England) |
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カンタベリー (Canterbury) とロンドン の中間に位置するこの町は、12世紀の城 を中心とした城下町であった。 城壁に登れば、この壮麗な大聖堂建築の 全貌を眺望出来る。 この城や大聖堂を創建したのは、ロンド ン塔を設計したGundulfで、この地の主教 だった11世紀の人だそうだ。 大半がネオゴシックの再建だが、正面入 口のファサードは12世紀ロマネスク時代 のものである。 このタンパンには、四福音書家のシンボ ルに囲まれた栄光のキリスト像などが彫ら れている。 ヴシュールは繊細で端正な装飾であり、 円柱に彫られた細長い人物像はフランスの 影響を受けている。 身廊の下部とトリビューンは太い柱に支 えられており、随所にノルマン的な装飾や 意匠が見られる。 12世紀の回廊の跡が残っており、ノル マンらしいアーチが残されている。 |
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| パトリックスブーン/聖マリー教会 Patrixbourne/St.Mary's Church |
Kent (England) |
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ケント地方はロンドンに近い割には牧歌的な雰 囲気を残しており、ハーフティンバーの木造家屋 が続く町並みが残っていたりする。 この愛らしい村もそんな一つで、前出のバーフ レストンから更に北へ少し行った所にある。 町外れの森に囲まれたこの教会は、木造の切妻 屋根に尖塔が立っており、とてもロマネスク時代 の聖堂とは思えない。 しかし、墓地を抜けて南側の入口に立った時、 写真のような見事な門を発見した。 半円アーチの重厚なヴシュールに囲まれたタン パンや、柱頭彫刻の有る柱から成る門の姿は、フ ランスなどで見た典型的なロマネスク様式である ことが嬉しかった。 渦巻き状になった蔓草の中に、人間の顔や鳥な どの動物が埋め込まれた意匠が、連続して半円ア ーチ装飾の外側を飾っている。やはり、何処かに ケルトのイメージが残っているのだろうか。 タンパンは、四福音書家のシンボルに囲まれた 栄光のキリスト像だが、これは少しだけ新しいも のかもしれない。 |
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| バーフレストン/聖ニコラス教会 Barfreston/Church of St.Nicholas |
Kent (England) |
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ドーヴァーから少し北に入った小 さな村に、写真の奇妙な教会建築が 建っていた。 聖堂内部には繊細なアーチ装飾が 残されてはいたが、壁はすっかり修 復されてややイメージに合わない。 しかし、この後陣や側面の外壁は、 連続する盲アーチや軒持ち送り彫刻 や小さなレリーフ彫刻などで飾られ ていて、独特の雰囲気だった。 軒持ち送りの彫刻は、フランスの サントンジュやアイルランドなどで 見られるような、ケルトのイメージ に近い人間や動物の首をアレンジし た意匠だった。 上部の薔薇窓がさらにユニークだ った。転法輪のような柱で区切られ た中にステンドグラスが嵌め込まれ、 輪郭に動物や植物の精密な模様が彫 り込まれている。 余り洗練された建築ではないが、 奇妙に印象に残るデザインの聖堂だ った。 |
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| クレイトン/洗礼の聖ヨハネ教会 Clayton/Church of St John the Baptist |
West Sussex (England) |
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教区教会 (Parish Church) と表記されてい るが名ばかりで、まるで山小屋か個人の礼拝堂 みたいに何とも粗末な教会建築だった。 ブライトン (Brighton) の北6マイルほどの、 田園地帯にある寒村の外れである。 運良く扉が開いていたので、鍵の心配も無く 堂内へ入ることが出来た。 狭い方形の聖堂で、祭室との境界は半円アー チ門の壁で仕切られている。祭室部分は後世の 追補だろう。 仕切り壁の表裏と身廊手前の両側壁面に、ロ マネスク時代のフレスコ壁画が保存されている。 ロマネスク・アーチの上部に描かれているの は、両側から天使に支えられた玉座のキリスト 像だ。技法はやや稚拙だが、大胆な構図と躍動 的な描写が面白い。 さらに左右両側の壁へと、聖人像や逸話が展 開されていく。 壁の天地巾が広がるほど人物も細長くなると ころは、いかにもロマネスク的ではないか。 損傷や退色が激しいので、図像の主題がはっ きりしないのが残念だったが、建築が修復され る中で壁に描かれたフレスコ画が今日まで保存 されてきたことについては、奇跡的という言葉 しか思いつかない。 |
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| オールド・ショアーム/聖ニコラス教会 Old Shoreham/ Church of St Nicholas |
West Sussex (England) |
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西サセックス州にはロマネス クの小教会が点在しており、私 たちはブライトンの町に滞在し ながら探訪を楽しんだ。 ショアームは海岸の町だが、 教会は入り江に沿って少し山手 へ入った閑静な場所に建ってい た。 かつては単身廊十字形で三つ の半円形祭室のあるプランだっ たのだが、半円部分に英国式の 方形祭室が継ぎ足されたのだと いう。 身廊と翼廊の十字交差部分に ロマネスク鐘塔が建っており、 その下部は方形の空間となって いて、写真のように半円多重ア ーチが四方を囲んでいる。 石材がいかにも古そうで、み るからに重厚な雰囲気が感じら れた。 猫や人面など、ややケルティ ックな図像も見ることができる。 |
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| ステイニング/聖アンドリュース教会 Steyning/Church of St Andrews |
West Sussex (England) |
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ショアームの北数マイルにある町で、美しい木 組みの家並みで知られている。古い民家のたたず まいを楽しみながら町の北へと歩くと、林に囲ま れた墓地の奥にこの教会が建っていた。 現在残っている建物は、大半が15〜16世紀 のものであり、ロマネスク時代のものは写真に写 っている身廊の柱とアーケード、祭室との境界ア ーチ壁、それに外壁の一部と南側の扉口だけなの である。 この円柱が片側三本だけの小規模な身廊なのだ が、その割には太く豪快な素朴さがとても良い。 アーケードの輪郭に彫られた飾りアーチが唯一の 装飾となっている。 身廊と祭室を仕切るアーチ壁が、この教会では 最も古い部分で12世紀初めの遺構だという。し かし、漆喰で壁面が塗り固められているので、は あそうですかとしか言いようが無い。 アーチの下の柱頭に渦巻状の植物模様が彫られ ているのが、微かにそれを証明しているかもしれ ない。 |
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| ハーダーム/聖ボトルフ教会 Hardham/Church of St Botolph |
West Sussex (England) |
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ステイニングから更に西北へ約 10マイル行ったあたりに、この 田園の集落がある。ここも村の集 会場みたいに小さな聖堂で、何故 西サセックス地方にはこの様な小 さい教会ばかりが残っているのか が疑問に思えた。 大掛かりな改修の対象外で、小 さい教会だけが残った、とも言え るかもしれない。 単身廊の小堂で、祭室の仕切り 壁も含め、身廊から祭室まで全て の壁にフレスコが描かれている。 写真は仕切り壁に描かれた「受 胎告知」で、微かにブルーの色が 残っている。 教会の説明には12〜13世紀 の作と記されているが、いずれも 後世に修復されたことは確かなよ うだ。 アダムとイブ、訪問、エジプト 逃避、などといった聖書の重要な モチーフが描かれている。 |
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| イースト・メオン/全聖人教会 East Meon/ Church of All Saints |
Hampshire (England) |
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このチャーミングな町は、ポー ツマス (Portsmouth) の北約14 マイルの丘陵地帯にある。 藁葺屋根の民家を見ながら、町 外れの教会まで歩いた。 十字形の単身廊だが、南側にの み側廊が設けられている。 鐘塔とその下の身廊交差部、南 面の扉口だけがロマネスク様式だ が、再建されたものらしい。 ここでの目的は、西の扉付近に 置かれた石造の洗礼盤である。立 派な四脚の基礎に載り、分厚い石 がくり抜かれている。 見所は四方の側面に彫られた彫 刻で、アダムとイブの物語が絵巻 物のように連続した場面として描 かれているのである。 写真は面の一つで、天使からア ダムは鍬で耕すことを、イブは糸 を紡ぐことを教えられる場面だ。 こんな見事な彫刻の施された洗 礼盤は珍しい。 |
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| チチェスター/全聖人教会 Chichester/Church of All Saints |
West Sussex (England) |
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1990年の正月休みに、ストーンヘンジやラ ンズエンドを目的に、英国の西 (West Country) を旅したことがあった。その時、ここと前出のロ ムゼイを訪ねたのである。 英国にはロマネスクは残っていないとばかり思 っていたので、現地で知ったこの二つのロマネス クとの出会いは唐突ではあったが感激的だった。 私達はこの教会と町の佇まいが気に入って、マ ーケットクロスの在るチャーミングな旧市街のホ テルにその晩一泊してしまったのだった。 聖堂の外壁建築は後世に大改修されているのだ が、身廊の柱の全てと壁面の一部はれっきとした ロマネスク様式である。躍動的だがすっきりとし た意匠で、トリビューンの有るアーチ列が格別美 しく感じられた。 特筆すべき石造レリーフが壁にかかっているの だが、ガラスケースに覆われていて写真は失敗し た。ラザロの蘇生という奇跡の場面で、キリスト や使徒の群像がいかにもロマネスク的な素晴らし い彫刻だった。再訪を期してから、もう10年以 上経ってしまった。 |
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| ロムゼイ/修道院附属教会 Romsey/Abbey Church |
Hampshire (England) |
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歴史の深い港町サザンプトン(Southampton) の西北15Kmに在るこの町は、10世紀初頭 に創建された女子修道院 (Nunnery) を中心に して発展した。 12世紀には最盛期を迎えたが、その後の修 道院廃止令により衰退したという。しかし、こ の附属教会だけは教区教会 (Parish Church) と して存続したので、この美しいロマネスク時代 のノルマン建築遺構を今日こうして見る事が出 来る、と案内に書いてあった。 確かに、単純だが大らかで、随所に装飾を施 したノルマンらしい見事な建築である。 写真は、身廊と翼廊の十字交差部で、三層の アーチがトリビューンや高窓を構成していて壮 大な空間を形成している。 太い柱の三廊式で、左右の翼廊に小礼拝堂が 付いている。建築は全体的に、武骨で愛嬌は無 いが、質実な美しさに満ち溢れていた。 柱頭の彫刻に興味があったが、かなり高い所 にあるためによく見えないのが残念だった。 |
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| セント・ジャーマンス/小修道院教会 St Germains/Priory Church |
Cornwall (England) |
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英国南西部のコーンウォール には、ほとんどロマネスク教会 の遺構は残されていない。ケル トとアーサー王伝説に彩られた 夢多き場所だが、宗教的には辺 境の地だったのだろうか。 プリマスから入り江に沿って 10マイルほど西に行くと、急 斜面の上にこの町がひろがって いる。 教会の大半がゴシックに改造 されており、鐘塔を見てもロマ ネスクの片鱗すら見えなかった。 現在の扉口が南側に開いてい るので、この西正面は死角とな っていたのだが、行って見て驚 いた。何たる重厚な門の装飾で あることだろうか。 12世紀ノルマン、と説明に は書いてある。七重ヴシュール のアーチ飾りは損傷が激しいが、 それでも創建当初の図抜けた意 匠の迫力を今日まで十分伝えて いる。 |
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| ブラドフォード・オン・エイヴォン/聖ローレンス教会 Bradford-on-Avon/Church of St Lawrence |
Wiltshire (England) |
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織物産業で栄えたこの町の起源 は古く、エイヴォン川に沿って広 がっている。川に架かるタウン・ ブリッジは、礼拝堂のある魅力的 な中世の石橋だ。 この石橋の少し下流に、英国で 最も美しいサクソン教会の一つと 言われるこの建築が残っている。 教会の起源は7〜8世紀だが、 完成したのは1001年とされている。 建築は、単身廊バジリカの北側 に扉口が張り出したような格好に なっており、南側にも狭いアーチ の扉口が開いた、何ともプリミテ ィヴな聖堂である。 写真は後陣部分で、高い壁の上 部に連続する盲アーケードが彫ら れている。 祭室の内壁に架けられた左右二 つの天使石像は、サクソン彫刻で ある。 |
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| マームズベリー/マームズベリー修道院 Malmesbury/Malmesbury Abbey |
Wiltshire (England) |
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太い円柱が並ぶ三廊式の聖堂 は、トリビューンより上の採光 窓や天井などがゴシックに改造 されている。曲線が少なく、方 形を基本とした英国の聖堂プラ ンは、何度見ても今ひとつ気に 入らないままだ。 しかし、ここには目を見張る ような逸品があった。 南の扉口の左右内壁に、写真 のようなレリーフが飾られてい たのである。タンパンの様に見 えるのだが、この部分はロマネ スク時代からあったらしい。 彫刻はやや写実的でゴシック の影響が混在するが、素朴さの 残る素晴らしい彫りである。 左右に六人づつ、十二使徒の 像が彫られているのだ。 上部の空間を天使の像で埋め る、という意匠も秀逸だ。 |
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| ケニントン/聖スウィシンス教会 Quenington / Church of St Swithins |
Gloucestershire (England) |
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バイブリー (Bibury) に泊まり、 蜂蜜色をしたコッツウォーズの村 や町を歩いていた或る日、ロマネ スクが残るというこの村の教会を 何気なく訊ねた。 村の礼拝堂のような規模が好ま しかったが、予想通り教会の建物 は後世に修復されている。 しかしロマネスクは、南北両側 の扉口にしっかりと生きていた。 タンパン、飾りアーチ、柱頭、 装飾柱などに施された彫刻が、門 全体として保存されているのだ。 幾何学模様や連続模様を中心と しており、技巧的でないおおらか さが素晴らしい。 写真は南門のタンパン彫刻で、 聖母マリアに戴冠するキリストと、 四福音書家の象徴が彫られている。 ロマネスクらしい好みの彫刻に 出会うことが出来た。 北門のタンパン彫刻は、地獄の キリストが主題となっている。 |
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| セント・オールバンズ/聖オールバンズ大聖堂 St Albans/Cathedral St Albans |
Hertfordshire (England) |
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ロンドンの北郊外にあるこの町へは、ロンド ン滞在中にはなかなか行く時間がとれなかった。 しかし、幸運は掴み取るもので、帰国当日に出来 た少しの時間の余裕を利用して、空港へ直行せず 寄り道をしたのだった。 ここ聖オールバンズの殉教地に修道院が建てら れたのは8世紀だったが、11世紀にサクソン様 式に立替えられた。 建築中央の鐘塔や翼廊部分には、煉瓦が積まれ ているのが最大の特徴だろう。 ゴシック的な改造が繰り返されたので、当初の 面影を探すのが大変だが、三廊式身廊の北側の列 柱と壁面には11世紀サクソン建築の姿を見るこ とが出来る。写真がその部分である。 単純だが質実なアーケードから、初期サクソン の美意識を感じ取ることが出来そうだ。 柱のフレスコ画は近年発見されたもので、宗教 改革時に塗り込められていたものだそうだ。ボラ ンティアのガイド女史が、ロマネスク時代のもの と説明してくれたが、どう見ても13世紀以降の ゴシック色の強いものではないだろうか、と感じ た。 すぐ近くのDintonという美しい家並のある町に も寄ったのだが、ヒースローまでの渋滞にハラハ ラもさせられたのだった。 |
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| ノーリッチ/大聖堂 Norwich/Cathedral |
Norfolk (England) |
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イングランド中部のダーラム(Darham)と並んで、 アングロ・ノルマン様式を代表する堂々たる大聖堂 である。 基礎は11世紀の創建で、現在見るアーチ天井は 15世紀半ばに完成している。 聖堂は三廊式十字形で、祭室には周歩廊と放射状 小祭室があり、14本の列柱で仕切られた身廊アー ケードの長さは、壮麗な天井の美しさと共に圧巻で ある。 創建当初のロマネスクの姿はトリビューンまでで、 それより上の採光窓部分と天井はゴシック様式にな っている。 写真は、後陣周歩廊の北側部分である。半円横断 アーチや天井の交差穹窿、壁面下部の連続する盲ア ーケードなどにロマネスクならではの簡素な造形美 を見ることが出来る。 この聖堂を背後から眺めた姿は、ゴシックとのご ちゃ混ぜとはいえ、特に後陣の小祭室部分と鐘塔が まことに華麗な絵となっていた。 反面、宗教が創出する想像を絶するような非人間 的スケールの聖堂が、信者をして果たしてどこまで 神の世界に近付き得たのか、を考えざるをえなかっ た。 |
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| キャスル・エーカー/小修道院跡 Castle Acre/Priory |
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ノーリッチの西28マイルに Swaffhamの町があり、ここは そこから北へ数マイル行った田 園地帯の城下町である。 この修道院遺跡は町外れの草 原の中に、今は静かに眠ってい るように見えた。 多くの建造物のあった修道院 だが、ほとんどが礎石や基礎を 残すのみである。 修道院付属教会の西正面ファ サードだけが、写真のように唯 一昔日の面影を伝えている。 重なり合った盲アーケードの 装飾がノルマン的であり、これ を全面に用いた意匠は、今でも とても鮮烈な印象を受ける。 教会堂は三廊式十字形であっ たらしく、11〜12世紀に建 造されたという。 扉口の奥が身廊なのだが、円 柱の礎石と崩落した両側の壁が 残るのみだった。 しかし、廃墟や遺跡の好きな 小生には、精神が浮遊出来るた まらない世界だった。 |
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| イーリー/大聖堂 Ely/Cathedral |
Cambridgeshire (England) |
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この大聖堂の建築はノルマン主教シメオンとい う人が1189年に完成させたもので、ノルマン・ロ マネスクの傑作とされている。 しかし、ここでもゴシック以後の改修が激しく、 身廊と翼廊、八角塔の一部以外は全てロマネスク ではない。 身廊は三層で、二階トリビューンの上に採光窓 の階が設けられている。 身廊の天井はファン・ヴォールトと呼ばれる扇 形の構造として知られるが、これは14世紀以降 のものである。 身廊の円柱が豪快であり、交差穹窿の天井を持 つ側廊が最もロマネスク的だ。 南側の側廊に、二つの特別な扉口が造られてい る。一つは翼廊脇のMonk's Doorで、かつては回 廊へ続く門であった。細密なレリーフ彫刻が見事 だった。 もう一つは写真の門で、Prior's Doorwayと呼 ばれているので修道院長が入るためのものなのだ ろうが、こちらもかつての回廊へと通じていた。 円柱や装飾アーチの彫刻は精密な模様のノルマ ン彫刻で、いずれも見るからに壮麗な門となって いる。 タンパンの彫刻は、天使に支えられた玉座のキ リスト像である。深く彫り込まれている傑作だが、 ロマネスクならではの大らかさにはやや欠けてい るような気がした。 |
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| キルペック/聖マリー聖デヴィッド教会 Kilpeck/Church of SS Mary and David |
Hereford and Worcester (England) |
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この教会の外観を見た人は、半円の後陣以外に ロマネスクを予感させる要素はほとんど無いと思 うことだろう。しかし、このちっぽけな聖堂には、 色んなロマネスクの魅力がびっしりと詰まってい たのだった。 単身廊の小さな聖堂は、横断する二つの半円ア ーチで三つの空間に仕切られている。 最初のアーチの両側の柱に、片側三人づつ縦に 並んだ使徒像が彫られていた。鍵を持っているの が聖ペテロであることしか判らなかったのだが、 ロマネスク的な風貌とゴシック的な細長い体躯と が融合して、味のある造形となっている。 写真は南側の扉口である。赤い石が使用されて いるので、やや風変わりな印象を受けるが、彫り は鋭く見事な装飾だ。図像がくっきりし過ぎてい るのは、近年少し洗われたのかもしれない。 それにしても、見事な門である。両側の柱に彫 られた、蔓草に絡んだ人物像や大蛇か龍のような 図像の生々しさや、飾りアーチの帯に彫られた奇 怪な動物やメダイオンの面白さは尋常ではない。 後陣の軒持ち送りに彫られたユニークな彫刻群 も含め、英国では久しぶりにロマネスクを満喫さ せてもらったのだった。 |
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| ケンプリー/聖マリー教会 Kempley/Church of St Mary |
Gloucestershire (England) |
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イングランド南西部のグロスター(Gloucester) からウェールズ国境にかけて、ロマネスクの彫刻 や壁画を伝える小さな教会が多数点在している。 先述のキルペックを筆頭に、Rowlstone、Here- ford、Eardisley など個性的な教会が多い。 ここもその一つで、方形の鐘塔の下が祭室にな っており、そこに二つの部屋が繋がっただけの何 ともお粗末な建築である。 しかし、祭室の天井から壁一面、さらに仕切り のアーチ壁にまで、びっちりとフレスコ画が描か れていたのだ。 写真は、仕切りアーチの向こうに、祭室の壁と 天井を眺めたものである。 フレスコは赤色が主体となっており、他の色は かなり退色している。天井には四福音書家のシン ボルや、大勢の天使たちに囲まれた栄光のキリス ト像が鮮やかに残っている。 両側の壁には十二使徒が描かれており、こんな 狭い空間の中であたかも曼荼羅のように、新約聖 書の世界が創出されていたのである。 今日まで残ったロマネスクの教会には、小さな ところが多いのだが、小さいが故に宗教改革や修 道院破壊の嵐といった網の目から逃れ得たのだろ うと思う。 |
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| セント・デイヴィッズ/大聖堂 St David's/Cathedral |
Dyfed/Pembrokeshire (Wales) |
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憧れのウェールズを歩く機会を 得たのだが、古代の巨石遺跡ばか りを追いかけたために、ロマネス クは手薄になってしまった。 イングランド同様に、大半のロ マネスク教会は修復されてしまっ ているので、何箇所か訪ねたのだ が正直がっかりする所が多かった。 そんな中で抜群の存在感を示し ていたのが、ペンブロークシャー (Pembrokeshire)の最先端にある この町の大聖堂だった。 教会の起源は6世紀にまでさか のぼるのだが、現在の建築は12 世紀後半に建てられたもので、そ の後多くの改修や増築を繰り返し てきた。 三廊式十字形の聖堂で、堂内で はアーチ列柱だけがロマネスク様 式である。 写真の西正面ファサードにはロ マネスクの扉口と盲アーケードが あり、紫色の石材が特異な印象を 与えている。 |
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| カリュー/ケルト十字架 Carew/Celtic Cross |
Dyfed/Pembrokeshire (Wales) |
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セント・デイヴィッズから半島を南下すると、 ミルフォード (Milford) の入り江に出る。この町 はその水辺の南東端にあり、14世紀初めの瀟洒 な城館で知られている。 城へ通じる門を入ったすぐ右側に、写真のシン ボリックなケルトの十字架が建っていた。 11世紀に西ウェールズを統治した Maredudd ap Edwin を祝福して建てられたのだという。 日輪のついた頭部のケルト十字は、肩の部分で 太い軸柱に接続されている。何とも妙な意匠の十 字架があったものだ。 表面に彫られた模様は、いかにもケルトらしい 組紐模様や北欧の幾何学模様である。同じような 模様が、裏面にもびっしりと彫られている。 アイルランドにはケルズの書など多くの写本が 伝えれれているが、細密な模様は写本の影響によ るものだろう。 精密であればある程神聖であったのだろうし、 荘厳の証しとなったのだろう。 ウェールズの歴史的モニュメントとして指定さ れており、各種のパンフレットの表紙を飾ってい るのを幾つも見た。 |
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| フィットフォード/ケルト十字架 Whitford/ Maen Achwyfan Cross |
Clwyd/Flintshire (Wales) |
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コンウィ(Conwy)とチェスターのほぼ中間に、 フィットフォード(Whitford)という町がある。 ここから1マイル西の小麦畑と牧草地が続く雄 大な景色の中に、この十字架がすっくと、しかも 孤独な姿で立っていた。 十字架の名前が“Maen Achwyfan”と記されて いたが、何と読めば良いのか見当もつかないので、 ふり仮名は書かないことにした。第一、ここの州 名の CLWYD ですら、どう読めば良いのだろうか。 高さ4m弱の堂々とした石造十字架で、彫刻が とても鮮明に残っている。コーンウォールのもの (当サイトの表紙参照)に比べると、十字の日輪 部分がアイルランドのものに近い。 軸部に彫られた装飾模様は、布目模様や渦巻、 十字を変形させた幾何学模様などが中心で、とて もケルト的なデザインである。 この地域にはケルンや古墳が密集しており、古 代人の祭祀の場であったのだろう。この十字架は もちろん中世のものだが、ケルトが古代の巨石文 化圏を自分達の祭祀の場として共有していたこと は間違いない。 |
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