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| ブルターニュ地方のロマネスク Bretagne Romane |
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| フランス最西端のブルターニュ地方はかつてのブルターニュ公 国であり、ケルトやブリテンの先住民も住んでいた地方である。 この地方独自の言語であるブルトン語が話され、中世以来の収 穫祭りやパルドン祭が毎年行われるなど、ケルト色を濃く残した 地方である。 ロマネスク教会にもそうした地方色豊かな彫刻などが残る、ま ことに幻想的な雰囲気を伝えている。 |
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県名と県庁所在地 1 Ille-et-Vilaine (Rennes) 2 Côte-du-Nord (St-Brieuc) 3 Finistère (Quimper) 4 Morbihan (Vannes) 5 Loire-Atlantique (Nantes) |
中世の町ロクロナン Eglise St-Ronan Locronan Bretagne |
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| ディナン/聖ソヴール教会 Dinan / Église St-Sauveur |
2 Côte-du-Nord |
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ディナンの町は丘の上に在り、城壁に囲まれ た旧市街には石畳の道と木造の家並が残されて いる。商店が立ち並ぶ賑やかな一画に隣接して 広場があり、その正面にこの教会が建っている。 聖堂はゴシックやルネサンスに改造されてい るが、正面の門と左右のアーケード、それに身 廊右側の壁面だけがロマネスクの遺構である。 扉口上部のタンパンには、キリストと二天使 が彫られているが、明らかに後世の作品だと思 われる。二重のヴシュールには、植物模様と聖 人像が連続して彫られおり、この部分の彫刻に は12世紀創建当初のロマネスクらしい素朴さ が見られる。 柱頭には、ヘロデ王と三博士の場面や、聖イ ノセントの殉教などが描かれているのだが、残 念ながらかなり摩滅している。 アーチ上部左右に、聖マルコを象徴する獅子 と、聖ルカを象徴する雄牛が彫られている。ど ちらも天使のような羽を持っているところが面 白い。 |
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| ランレフ/聖マリー教会跡 Lanleff/Ruines de l'Église Ste-Marie |
2 Côte-du-Nord |
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サン・ブリウー (St-Brieuc) の町から、 ピエール・ロティ(Pierre Loti) の小説「氷 島の漁夫」の舞台として知られる漁港ペン ポル (Paimpol) へと向かう途中にこの名 も無き寒村が在る。 村を歩いていると、“Temple”と書か れた看板が有った。“神殿”を意味するそ の言葉から、一体どんな建築が在るのかと 思いながら細い道を曲がった。と、そこに は妙な聖堂が私達を待っていたのだった。 半円アーチ窓が連続する円形の壁の中に、 12本の柱でやはり円形の祭室が造られて いる。その間は、必然的に円形の側廊とな っているのであった。天井は完全に崩落し ているので、輪郭は城壁のように見える。 写真は円形祭室の内側から、外側に向い て側廊を眺めたもので、アーチの外側が側 廊である。 円形教会の事例は、ほぼ円形の正多角形 のものも含め、稀ではあるものの各地に存 在する。だがこの聖堂の不思議さは、ロー マ時代の神殿のようなイメージや、ケルト の土俗性を感じさせるような雰囲気に有る のだろう。いかにもブルターニュらしくな ってきた、と興奮したものである。 12世紀にこの地の領主が十字軍遠征の 際に見たエルサレムの聖墳墓教会を真似て 建てさせた、という歴史的背景も存在する。 |
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| ブールブリアック/聖ブリアック教会 Bourbriac / Église St-Briac |
2 Côte-du-Nord |
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ここはギンガン (Guingamp) の南13 Kmに位置しており、小高い丘の上に旧市 街のある静かな町だ。 教会は豊かな緑と花に囲まれた、チャー ミングな広場の中心に建っている。 鐘塔や扉口や聖堂の大半がフランボワイ アン・ゴシック様式に改築されているので、 先ず目的の地下祭室クリプトへと降りた。 なんとも狭い素朴な空間である。柱は四 本あり、円柱が二本と四角・八角が各一本 という変則的な構造である。 天井は漆喰で固められており、交差穹窿 の曲線がしなやかだった。 半地下のような構造になっているので、 窓から差し込む光が明るくクリプト内を照 らしていた。 聖堂のオリジナルを示すクリプトの魅力 は、ロマネスク行脚の楽しみの中でも重要 な要素の一つである。 |
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| トレギエ/聖テュグデュアル大聖堂 Tréguier/ Cathédrale St-Tugdual |
2 Côte-du-Nord |
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この大聖堂は、ブルターニュで最も美し いゴシック建築、と言われる。三廊式の身 廊で、高い天井や尖頭アーチなど、完全に ゴシック様式なのだが、どこかシックで落 ち着いた雰囲気である。 袖廊は南側に現在の扉口が設けられてお り、反対の北側はアスタン(Hastings)と呼 ばれる鐘塔になっている。この塔部分だけ に、12世紀建造のロマネスク様式が残さ れている。南の入口から堂内へ入り、身廊 を横切って袖廊の北側へ行くと、もうそこ が塔の内部なのである。 身廊との境界は二連アーチになっており、 アーチを支える部分には柱頭彫刻が施され ている。写真は中央の柱の柱頭で、ケルト 的な組紐や渦巻の文様で飾られている。 柱の土台である柱礎にも柱頭をひっくり 返したような部分があり、やはり同じよう な紐や渦巻が彫られていた。 ゴシック様式の回廊から、初めてこの塔 の全容を見ることが出来た。 |
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| ブレレヴネ/三位一体教会 Brélévenez/Église de la Trinité |
2 Côte-du-Nord |
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ラニオン(Lannion)の町に隣接するこの 高台地区へのアプローチは、見上げるよう な石段を登るか、裏側から通じる細い道を 車で行くしかない。 教会のテラスからの眺望は抜群だった。 身廊は三廊式で太い円柱が魅力なのだが、 かなりの部分がゴシック以降に改築されて いる。身廊の円柱と南の扉口、そして写真 の後陣部分のみが12世紀後半のロマネス ク様式である。 写真は、側廊がそのまま後陣の周歩廊に つながっている部分を写している。周歩廊 の外側には通常幾つかの放射状祭室が付い ているのだが、ここでは正面に大きな祭室 が設けられているのみである。 後陣を外の墓地から眺めてみた。小さな 窓と石を積んだ壁が、見事にロマネスクを 証明していた。 太い円柱や半円アーチの窓に安心感を覚 え、柱頭の素朴な装飾彫刻を見て喜んでし まうという、この“ロマネスク病”は完全 に重症と化してしまったようだ。 |
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| ペロス・ギレック/聖ジャック聖ギレック教会 Perros-Guirec/Église St-Jacques-et-St-Guirec |
2 Côte-du-Nord |
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ラニオンの町から真北に向かい、海岸線ま で出てから、北端の岬に近いこの町を訪ねた。 教会の起源は5世紀で、ウェールズから来 た聖ギレックに由来するという。 聖堂の建築は三廊式、天井は木造の箱型バ ジリカ形式という至極質素な様式なのだが、 身廊と側廊を仕切る北側の円柱が、写真のよ うな素朴な姿でアーチ列柱を構成しているの に目を奪われた。 柱頭の部分が円筒形のままであるのが特徴 であり、ここに様々な図案が彫られていた。 特に注目したのが写真の菊紋と渦巻だった。 菊紋は車輪で、聖カタリーナの象徴かと思わ れたが、渦巻はいかにもケルト的なモチーフ である。 柱頭の上部に浮き彫りされた顔は、ケルト 特有の生首彫刻のようにも見える。 南側の列柱には普通の形をした柱頭が付い ており、旧約聖書の物語らしい素朴で可愛い 彫刻が彫られていた。 西欧的な価値観とは異なった、ケルト的な 美意識の散りばめられた教会だった。 |
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| ランムール/ケルニトロンの聖母礼拝堂 Lanmeur/ Chapelle Notre-Dame de Kernitron |
3 Finistère |
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ランムールに着いた時は豪雨の真っ只中 だったが、郊外の静かなこの教会の前で開 門をしばらく待っていた間に、雨は奇跡的 に上ってしまった。 礼拝堂と言うにはかなり大きな建築だが、 構造は簡素な単身廊の十字形である。袖廊 の南正面が扉口になっている。摩滅したタ ンパンとヴシュールが残るこのファサード 部分と袖廊、そして身廊の西側部分が12 世紀ロマネスクである。東側部分は14世 紀以降のゴシック様式による改築が成され た祭室である。 写真の柱頭彫刻は、最も素朴さの残る袖 廊の西壁部分のものである。 アーケードの一つ一つに人間の首が彫ら れており、アイルランドで見たケルト色の 濃い生首意匠と瓜二つである。 しかし、高度の洗練された美意識を持っ ていたケルトが、なぜ生首に格別の愛着を 抱いていたのかが理解できないでいる。 |
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| ランムール/聖メラー教会 Lanmeur/ Église St-Mélar |
3 Finistère |
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この地区教会は、ランムールの町の中心 部に建っている。 聖堂建築は残念ながら後世の再建で、ゴ シックなど様々な様式が混ざってしまって いるようだ。目的は地下のクリプトなので、 さして落胆することはなかった。 クリプトは幅5m奥行8m程の広さで、 円柱が二列に4本づつ並んでいる。 天井の半円アーチや太い柱、装飾の無い 柱頭が、いかにも12世紀創建当初の素朴 な聖堂の姿を髣髴とさせてくれる。 ユニークなのは柱身に施された文様彫刻 である。中央の最も太い二本の柱に、植物 の蔓のような、また幾つもの頭を持つ蛇の ようにも見える浮彫が見られる。 何処かで見たような模様だが、モルビア ン湾のガヴリニ島にある古代遺跡で見たこ とを思い出した。古代のデザインに啓発さ れたケルトのイメージとして、中世まで伝 えられた可能性はありそうだ。 それにしても、血管の浮き出たような意 匠はなんとも薄気味の悪いものだった。 |
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| ダウラス/聖母修道院遺跡 Daoulas/ Vestiges de l'Abbaye Notre-Dame |
3 Finistère |
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モルレー (Morlaix) に泊まった翌日から、 カルヴェール (Calvaire) という十字架を表 現した一連の彫刻群を各地に探訪しながら、 半島の西部へとやって来た。 この修道院前の広場にも十字架彫刻が有っ たが、私達の目的はひたすら修道院内に残っ ている回廊だった。 全体が遺跡として保存されている中で、辛 うじて原形を最も保っているとされる回廊で すら、完全な廃墟としか見えなかった。 屋根は落ち、壁は完璧に失われている。ア ーチ列柱は苔むして黒ずみ、三方しか残って いないのである。 写真は、回廊の内庭に据えられた水盤であ る。泉水を受けるためなのか、手を洗うため のものなのかは判らない。 水盤の側面を詳細に眺めてみたが、彫られ た模様は写真に写っているだけでも、竹籠形 ・菱形・鋸刃型・車輪形など多岐にわたる。 そして、口を開いた生首が、等間隔に並んで いるのである。 フランスではこの手のイメージはブルター ニュ独特であり、古代ケルトの遺品やアイル ランドで見るケルトの印象にかなり近い。 |
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| ランギドゥ/聖ギュイ礼拝堂跡 Languidou/Ruines de la Chapelle St-Guy |
| 3 Finistère |
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半島の西端ラズ岬から海岸沿いに車を走らせ、 トロノエンの聖母 (Notre-Dame de Tronoën) と呼ばれる教会を私達は目指していた。その途中 で、全くの偶然で立ち寄った廃墟である。 隠れロマネスクの発見と自慢しようと思ってい たら、何とゾディアック叢書が既に片隅ながらち ゃんと掲載していたことを後日知るという、我が 家では問題の廃墟である。 廃墟好きの私がフランス国土地理院発行の10 万分の1の地図を見ていて発見したのだが、ここ は廃墟と言うにはかなりの建造物が残っていた。 礼拝堂は方形で三廊式。正面の薔薇窓などかな りの部分がゴシックに改修されてはいるが、身廊 の柱やアーチ壁、さらに側廊に残る半円アーチ門 などにはロマネスクがきりっと残されていた。 写真は、礼拝堂の内部を仕切る柱周辺から、祭 室方向を写したものである。おそらく、身廊を前 後に分ける横断アーチが、この柱頭の上に載って いたのだろう。柱頭の網目のような模様が、少し ケルト的な図案かもしれない。 手前半分は、外側の壁と数本の柱以外の建築の 大半が失われており、緑一色の草原の只中に浮か ぶようにして残された聖堂遺跡は、まるで難破船 の残骸のように見えた。 |
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| ロックトゥディ/聖トゥディ教会 Loctudy/ Église St-Tudy |
3 Finistère |
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この町はカンペール (Quimper ) の西 南に伸びる半島の先端に位置する港町で ある。かくも美しい教会と、深い入り江 のあるこの場所が、何故ほとんどのガイ ドブックに載っていないのだろうか。 教会は町の中心に建っており、木靴を 履いたおじさんやら、レースの円筒帽子 を被ったおばさんやらが行き交っている。 建築は三廊式、半円形祭室の周囲に周 歩廊が有り、さらに外側に三つの半円形 小祭室が飛び出すという、ブルターニュ ではむしろ珍しい“ちゃんとした”ロマ ネスクだった。 天井は木造だが、身廊も側廊も柱ごと に横断アーチで仕切られていた。壁は二 層で、上層には採光のための窓が付けら れているという、高さも十分の立派な聖 堂である。 写真は円形祭室の部分で、四本の列柱 で飾られている。この柱頭の彫刻に注目 してほしい。通常は聖書の物語やロマネ スク的なモチーフが多いのだが、ここで は植物紋様と渦巻しか彫られていない。 ブルターニュの特徴であるとともに、と てもケルト的である。 柱の台座に彫刻が施されるのも、ブル ターニュならではの特色である。 |
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| カンペール/ロクマリアの聖母教会 Quimper/Église Notre-Dame de Locmaria |
3 Finistère |
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この教会の在るロクマリア地区はカンペール発祥の 地であり、現在はカンペール焼として知られる製陶の 中心にもなっている。 カンペールに滞在していたある日、私と家人はホテ ルから市内を流れるオデット川 (Odet) に沿って約1 Km歩き、今では少し町外れといった感のある広場に 建つこの教会を訪ねた。 写真は、最初に目に飛び込んでくる鐘塔と、ロマネ スク建築の重厚さを示す後陣部分である。創建は11 世紀で、その後の改造は見られるものの、ほぼ完全に 当初の様式が保存されている。 聖堂は三廊式十字形で、袖廊左右の小祭室を併せ、 大小三つの祭室が設けられており、十字の交差部に鐘 塔が立ち上がっている。 身廊と側廊の境界は、簡素な角柱と半円アーケード で仕切られており、側壁上段に採光用の窓が並んでい る。柱に柱頭が無いので、身廊の簡素な美しさが余計 際立って見える。 交差部四隅の高い柱に、この教会ではここだけとい う注目すべき柱頭彫刻が見られた。柱頭好きとしては、 とても嬉しい発見だった。ケルティックな渦巻をアレ ンジした意匠なのだが、このレヴェルの教会にしては どこにも解説が無かったので、もしかしたら後世の作 だったのかもしれない。 教会の前がカンペール焼の即売所だったが、危険物 は取り扱わない主義の私は家人の腕を引っ張って、急 ぎ町へと戻ったのである。 |
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| フーエナン/聖ピエール教会 Fouesnant/Église St-Pierre |
3 Finistère |
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この町へ行くには、カンペールから真南に 15Km走れば着く。ここから西一帯は古代 巨石文化の遺構であるドルメンやメンヒルの 密集地帯であり、石好きの私にとっては天国 のような地方なのである。 教会の入口にカルヴェール(十字架)が建っ ているが、ブルターニュではよく見る石造彫 刻群で、磔刑とそれを取り巻く人々の群像が 彫られている。 聖堂は三廊式十字形で、西正面扉口と後陣 は後世に再建されたものである。 ここでの見所は柱頭彫刻であり、写真もそ の一つである。身廊と側廊の境目に立つ柱は 全て束ね柱であり、それぞれが柱頭彫刻に飾 られていて見飽きない。 植物模様や渦巻をモチーフとしたものが多 いのが特徴なのだが、交差部壁面に立てられ た柱頭に人物像を見つけたのが写真の彫刻で ある。いかにもロマネスク的な素朴な像で、 小さな渦巻模様も面白い。 |
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| カンペルレ/聖クロア教会 Quimperlé/ Église Ste-Croix |
3 Finistère |
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古い木組みの家並みが残る美しい町の中心 に、このユニークな教会の建築が残っている。 この教会の平面図は円形で、四方に祭室や 玄関が飛び出した格好になっている。最適な イメージは、ケルト十字だろう。 ランレフの円形教会と同様、エルサレムの 聖墳墓教会がお手本で、11世紀の創建だと いう。 中央が四本の柱で囲まれて一段高くなって おり、ここがどうやら祭壇らしい。 写真は、その祭壇のところから石段を下り た、地下の礼拝堂(クリプト)である。中央に 石棺が置かれており、地下の墓所でもある。 真っ暗な中で電灯のスイッチを探したが、あ まり気色の良いものではなかった。 背の低い円柱と、重量感のある柱頭の佇ま いに心惹かれた。 柱頭彫刻は繊細で、複雑に絡まった蔓草な どの紋様には、地中海系の植物とは異なる奥 深い森林のイメージが感じられる。ここもケ ルトなのだろうか、との想いが強い。 柱の基礎に、逆柱頭のような彫刻が見られ るが、前述の通りこれがブルターニュならで はの特徴である。 |
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| ロックマリアケール/聖母教会 Locmariaquer/Église Notre-Dame |
| 4 Morbihan |
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蟹のハサミのような二つの大きな半島が、モルヴィアン (Morbihan) という大きな入り江を囲んでいる。東側から 南に伸びる半島の先端に、このチャーミングな港町が在る。 古代巨石文化に興味のある者にとっては、この地方は涙 の出るほど素晴らしい遺跡の宝庫である。この町にも、多 くの訪れるべきドルメンやメンヒルが点在している。 が、ここではそれは別として、港の広場に面してひっそ りと建っているこの教会の扉を押さねばならない。 聖堂は三廊式だが、中央にゴシック期の鐘塔が建ってい るという変則的な建築である。祭室周辺にはロマネスク時 代の建築が残っており、半円アーチを支える柱頭には面白 い彫刻が数多く見られた。 写真はその中で最も気に入ったもので、何やら判じ物み たいでもあり、謎めいた暗号のようにも見えた。 柱頭はかなり在るのだが、大半が植物紋様と渦巻ばかり の中で、人物や動物像が彫られていたからだろう。 山菜のゼンマイみたいな渦巻やら、花束のような渦巻の 間に、犬か猫のような動物とケルト的な人面がちりばめら れている。 なぜこのようなモチーフを教会の中に持ち込んだのか、 というのはロマネスク共通の疑問だが、ここではそれを特 に強く感じてしまった。 いずれにせよ、この地とアイルランドやコーンウォール とは、海峡を隔てて直結しているのである。 |
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| ランゴネット/聖ピエール聖ポール教会 Langonnet/Église St-Pierre-et-St-Paul |
4 Morbihan |
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カンペルレの北30Kmに位置する小さな町で、 教会は町の中心部に堂々と建っている。建築の外 観はどう見てもロマネスクとは思えない、ゴシッ クとバロックを混ぜたようなスタイルだった。 内部に入って判ったことだが、三廊式の身廊の 14本の柱の内の9本とアーケード、それに後陣 祭室部分だけがロマネスクだったのである。 ロマネスクの柱は束ね柱で、後補の柱は単純な 円柱だった。束ね柱のそれぞれには、柱頭と平板 な飾り柱頭とが交互の組になって彫られている。 写真は束ね柱の内の一本で、単純だが美しい植 物模様の意匠が素晴らしかった。ライティングの 方法次第で良い写真が撮れるのだが、自然光のま まにしては内部の暗い割りには良く撮れた方かと 諦めた。 彫刻のモチーフは大半が植物模様であり、ゼン マイのような渦を巻いた草を数本握った手の像な ど、不思議なものも多かった。宗教的な気配の丸 で無い、こうした題材がなぜ選ばれたのだろうか。 きっとロマネスクの時代には、大らかで自由な発 想の出来る環境があったのだろう。 |
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| カラン/三位一体教会 Calan/Église de la Trinité |
4 Morbihan |
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ローリアン (Lorient) にしばらく滞在していたのだが、 この集落は北へ約10Kmという至便な場所に在った。そ れでもブルターニュの壮大な田園地帯を走るので、短時間 とはいえドライブはまことに爽快だった。 教会は開放的な広場に面しており、聖堂の前は小さな墓 地になっている。中央のゴシック式尖塔の屋根が黒く光っ ていた。 南正面ファサードの横に小さな回廊風のアーケードが造 られている以外には、ここも聖堂建築の大半がロマネスク とは見えなかった。事実、アーケードも後世のものであり、 なんとロマネスク時代のものは、写真の身廊部分の壁から 下だけということであった。 私がここを気に入ったのは、聖堂の幅の狭い空間がとて も人間的なスケールに感じられたからだった。何しろ、身 廊に置かれた木のベンチには、一列に六人しか座れないの である。小さな村の礼拝堂、といった風情だった。 聖堂のスケールの割には円柱が太くどっしりとしている のは、重い天井を支えていたロマネスクの名残である。 柱頭部分は妙な形をしており、彫刻らしきものは見られ ない。角柱、円柱、束ね柱が不規則に混在しているのが当 初からのものなのかは判然としないが、不思議なハーモニ ーが聞こえてくるような気がしていた。 十字交差部分の柱に、地味だが素朴な味わいのある柱頭 彫刻が数基見られた。 |
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| ブレッシュ/聖アンドル教会 Brech/Église St-Andre |
4 Morbihan |
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オーレイ (Auray) の北10Kmにあるこの町 の名は、地元では Brec'h と表記されており、 ブレックともブレッシュとも聞こえる発音をし ていた。英国のウェールズやここブルターニュ の地名の難しさは半端ではなく、容易に読める ものではない。 ここも前掲の教会と同様、建築の外観はルネ サンスやバロックなど後世の様式に改築されて いて、どこにもロマネスクらしきものは見当た らなかった。 内部に入って初めて、三廊式の身廊アーケー ド部分だけがロマネスク様式であることに気が 付くのだった。 柱は角柱なのだが、アーチの内側が二重にな っており、角柱に円柱が張り付いた格好になっ ている。円柱部分の柱頭に、魅力的な彫刻が数 多く見られた。 妙な人物像と植物模様の組み合わせが大半で、 写真はその一つである。いずれも人物像と言っ ても首だけで、やはりブルターニュならではの 特異な印象を受ける。 |
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| サン・ジルダ・ド・リュイス/聖ジルダ教会 San-Gildas-de-Rhuys/Église St-Gildas |
4 Morbihan |
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蟹の爪みたいな格好で、モルビアン湾を囲む ように突き出しているリュイ半島のほぼ先端に この町がある。 ここへやって来て、久しぶりに聖堂建築全体 がロマネスクである教会を訪ねることが出来た。 三廊式十字形の聖堂、半円筒ヴォールトと交 差穹窿の天井、交差部のドーム、側廊から続く 周歩廊と三つの放射状祭室、彫刻の施された洗 礼盤、柱頭彫刻の数々など、全てが揃った綺麗 過ぎるほど見事なロマネスク聖堂だった。 綺麗過ぎるということは古色を残すという意 識は無かったことなのであるが、様式をそのま ま伝える修復作業は立派に行われたのであり、 博物館ではない生きている教会にとっては最良 の方策だったのであろう。 写真は内陣部分のもので、柱頭の美しい4本 の円柱の向こうが半円状の周歩廊となっている。 アーケード上部に、盲アーチによる飾りアーケ ードが造られているのが珍しい。 聖堂背後から眺めた三つの祭室など、後陣全 体の姿も絵になっている。 |
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| ゲランド/聖オーバン教会 Guérande/Église St-Aubin |
5 Loire-Atlantique |
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祭りでにぎわうこの町の広場に、高い尖塔を 持つ荘重なゴシックの聖堂が堂々と建っていた。 ブルターニュでは、聖堂建築全体がロマネスク という教会には滅多に会えないらしい。 三廊式のゴシック聖堂だが、西門に近い身廊 部分の円柱と束ね柱5本だけがロマネスク時代 である12世紀後半の名残なのである。 柱だけ見るというのも情けないのだが、柱頭 に彫られた彫刻を見れば、わざわざここまでや って来た甲斐がある、という事になるのである。 写真はその柱頭の一つで、こうした人物の群 像や動物、殉教の場面と思われる激しい描写、 怪物と神話などの彫刻が、束ね柱をぐるりと囲 んでいるのである。 制限されたスペースにデフォルメされた人物 がいきいきと彫られている、まことにロマネス ク的な彫刻の傑作だと言える。 高い位置に在るので望遠レンズで撮影したが、 見学には望遠鏡が必要である。彫刻の詳細な内 容を記した案内書を探したが無かった。 興味は次第に、聖堂の前で行われていた祭の 仮装行列へと移ってしまった。 |
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| ルドン/聖ソヴェール教会 Redon/Église St-Sauveur |
1 Ill-et-Vilaine |
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ルドンの町を訪ねた時は、激しく長い夕立が降り続い ていた。おまけに聖堂内では特別のミサが行われていた ので、雨宿りをしつつ町を歩きながら時間をつぶさなけ ればならなかった。 聖堂は三廊式十字形で、巡礼教会のように周歩廊と五 つの放射状祭室が後陣に配されている。後陣部分にはス テンドグラスも見られ、祭室から東部分は完全にゴシッ クに改造されている。 身廊の柱には柱頭は無く、アーチを受ける円柱がその ままつながった形で、カニグーなどで見たプリミティヴ な柱を連想していた。 身廊部分のアーケードはいかにもロマネスク的な雰囲 気に満ちているのだが、十字交差部より奥のゴシック建 築部分とは全く違った印象を受けることになる。 交差部を下から見上げると、美しいフレスコの描かれ たドームになっていた。ここは鐘塔になっており、写真 は聖堂の外からこの塔を望遠したものである。 ミサに使用した豪華なパイプ・オルガンがまだ鳴り響 いており、荘厳な気分の中でBGM付きの見学を楽しむ ことが出来た。 明朝 St-Just の古代巨石遺蹟を訪ねてから、パリへ と戻ることになっていた。 |
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