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| スペイン・アラゴン地方 のロマネスク紀行 Aragón Románico |
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アラゴン地方はカタルニャとナヴァラに挟まれており、ピレネー 山脈山麓からエブロ川流域、さらにイベリア山脈まで続く広大な地 域である。 ロマネスクの聖堂はピレネー山麓に多く、ソンポール峠を越えて フランスからやって来るサンチャゴ巡礼の通り道でもあった。 |
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アルケサール アラゴン屈指の美しい町 右奥の小高い所が教会 Alquézar Aragón |
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| ルサス/聖クリストフォル教会 Luzas/Iglesia Sant Cristfol |
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カタルニャとの州境に近いこの村は、私達が訪 ねた昼下がりには村中がひっそりと静まり返って いて、広場には人っ子一人見当たらず、教会の門 も堅く閉ざされていた。 途方にくれた私は、ある民家の裏でようやく一 人の老人を見つけ話しかけると、彼が私を一軒の 家まで連れて行ってくれた。中から出てきた中年 の婦人は、唯一この村で英語が話せる村の“広報” のような人だった。中学の先生だそうだ。 ロマネスク教会への来意を告げると、快く扉の 鍵を開けてくれて、自由に見学して良いと言う。 鐘塔のてっぺんまで登り、家内と二人鐘楼の窓 から下を見ると、婦人と老人がこっちを見上げて 手を振っているではないか。アラゴンの人達のフ レンドリーな暖かさを、最初から知ることとなっ たのである。 教会の内陣は想像以上にプリミティヴで、半円 筒の天井、身廊のアーチ列柱、柱頭彫刻の素朴さ などが先ず私達を喜ばせた。 写真は、側廊から中央の祭室方向を眺めたもの である。柱頭には、馬か犬か判らないほど素朴な 動物像などが彫られていた。 それにしても、美しいア−チ構成である。 |
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| ロダ・デ・イサベナ/大聖堂 Roda de Isábena/Catedral |
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ルサスの“広報”によれば、この地域 での一押しのロマネスク教会だそうだ。 町は丘の上に密集した集落で、中央の 広場に面してこの大聖堂が建っていた。 正面の扉口はアーチ状のヴシュールで 飾られているが、柱頭などはかなり小粒 で、年代は後期まで下がるだろうと思わ れた。聖堂は三廊式だが、やや大仰で感 動には結びつかなかった。 しかし、聖堂に隣接する回廊に入った 時には、全く違う空気がここには流れて いる、と感じたのだった。 写真で見るとおりの素朴な列柱であり、 柱頭彫刻もさして優れた造形とは思えな い。しかし、瞑想に相応しいこの静寂で 質素な空間の爽快さは、妙にかしこまっ てよそよそしい聖堂内部に比べ、よりロ マネスク的だと感じられたのだった。 今更言うほどのことでも、というよう なプリミティヴな感慨がかえって嬉しか った。 |
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| オバーラ/聖マリア修道院 Obarra/Monasterio de Santa Maria |
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カタルーニャのボイ谷から峠をひとつ 越えれば、この修道院の建つオバーラは 直ぐなのだという。以前カタルーニャを 旅した際には、ここの存在については不 勉強だった。 渓流に架かる石橋を渡ると、覆い被さ るような迫力のある断崖を背にした聖堂 の建築が目に飛び込んできた。余りにも ドラマティックなロケーションであるこ とに、完全に言葉を失っていた。 聖堂は写真で見るとおり三廊式のバジ リカで、身廊と側廊を仕切る左右各6本 の束柱の立つ壮麗な建築だった。柱頭な どほとんど無い、無骨に切石を積んだだ けという剛健かつ素朴な建築だった。 外壁や後陣の唯一の装飾であるロンバ ルディア帯のリズミカルな美しさを眺め ながら、草の上に寝転がってみた。 アラゴンならではの、荒々しい風光と 融合したロマネスク聖堂の、何と絵にな ることだろうか。 |
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| アインサ/聖マリア教会 Ainsa/Iglesia de Santa Maria |
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フランス国境のピレネーから流れるアラ (Ara) とシンカ (Cinca) という二本の川が合流する河 畔の高台の上に、城壁に囲まれたままて中世から 何も変わらず今日までやってきたような町アイン サが在った。 石畳の大広場 (Plaza Mayor) は半円アーチの 並ぶアーケードが美しく、レストランや民芸品の 店が軒を並べていた。 教会は広場を少し入った所にあり、写真の鐘塔 が見えるので直ぐにそれと判る。 教会の建築は素朴な方形バジリカ形式で、写真 の鐘塔が正面に建ち、アーチ門が聖堂側面に付い ていて、右奥に半円形の祭室が付いている。 切石積の窓の無い壁面や半円筒形の天井は、最 も初期ロマネスク的な素朴な美しさを見せてくれ るのだ。 陽が落ちてから入った地下祭室 (Cripta) は、 ほの暗い中に白い柱頭とレンガのアーチが浮かん で幻想的ですらあった。 広場に面した Posada Real という旅籠に泊ま ったが、夜の広場のテラスで飲むワインの雰囲気 は格別で、夜間照明に浮かび上がった教会の鐘塔 が一段と美しく見えたものである。 |
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| サンタ・マリア・デ・ブイル/聖マリア教会 Santa Maria de Buil/Iglesia de Santa Maria |
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地図の上での直線距離だと、アインサ の町からこの村まではほぼ南に10Km だが、未舗装の山道を車で登ると実感は 遥かに遠い。 数軒の農家しかない、心寂しいこんな 寒村を訪ねることなどそう無いだろう。 しかし、不思議なことに、この村には 由緒ある教会が二つも在った。 ロマネスクのこの教会は数軒の集落か ら近く、坂道の下からも装飾アーチの美 しい三つの祭室のある後陣の姿が見えて いた。 教会の中に入った時の驚きを、一体何 と表現すればいいのだろうか。“すごい っ!”ではなく“あれ?”だったのだ。 なぜなら、本来ならば祭室に向かって左 右に横断するように構築するべきアーチ の梁が、ここでは写真のように前後縦に 二本通ってしまっているのだった。 見慣れてしまうと、その素朴で自由で 奇抜な発想が素晴らしく思えてくる。 掃除に来た農家の家族との触れ合いも 素敵だった。 |
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| アルケサール/聖マリア教会 Alquézar/Iglesia de Santa Maria |
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絵画的な美しさに満ちたこの山間の町 は、近年芸術家達が住み着いたり、また 観光的に再開発されたりして急速に発展 したらしい。(表紙写真参照) 教会は旧市街のチャーミングな家並を 抜けた所に聳える岩山の上に建っており、 それはあたかも要塞のように見えた。 建物に入るとすぐ回廊になっており、 そこは凡庸な柱頭ばかりだったが、それ に続く教会入口前のアーケードに造られ た柱頭彫刻は、他に類を見ないようなユ ニークな造形だったのである。 写真はその内の一つで、最後の晩餐か カナの饗宴だろうと思ったのだが、何か が違うので詳細に眺めた。 中央でのけ反って踊る踊り子、左端で は何やら首をぶら下げているようにも見 える。当然、サロメが踊る、ヘロデ王の 宴ということになる。 他にも、アブラハムの犠牲やノアの箱 舟など旧約の主題が中心だった。 |
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| ウエスカ/聖ペドロ・エル・ヴィエホ教会 Huesca/Iglesia de San Pedro el Viejo |
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現在は単なる地方都市のような静かな 町だが、一歩旧市街を歩いてみれば、こ こがかつてはアラゴン王国の都だったと いうに相応しい歴史的な風格が感じられ てくる。 教会は11世紀創建の元修道院付属教 会で、聖堂には王の墓も在るという由緒 を誇っている。扉口のタンパン彫刻など、 見逃せない傑作が多いが、ここでは回廊 の柱頭彫刻を取り上げたい。 全部で38本の柱頭が並んでいるが、 改修されたものも多く含まれていて、見 学は容易ではない。各柱頭の制作年代を 明記した資料が少ないからである。ゾデ ィアック叢書アラゴン編によれば、どう やら半数近くが創建当初のものであるら しい。 目の大きな人物像は、王家霊廟の在る サン・ファン・デ・ラ・ペーニャの彫刻 に共通するもので、強い影響を受けたも のと考えられる。 |
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| ロアーレ/ロアーレ城教会 Loarre/Iglesia de Castillo de Loarre |
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ウエスカから西北に進路を取り、原野の中をひ たすら車で突っ走った。オリーブの木しか生えて いないような荒野である。 コウノトリの巣のように見えていた岩の上の塊 が、接近するに従って壮絶な断崖の上に建てられ た城砦だと判ってくる。何とも凄まじい、としか 言いようの無いほど孤絶感に満ちたたたずまい。 登山道を車で登って行くだけでも、迫って来る 城郭の迫力に鳥肌が立つほどだった。 城門の中には修道院が併設されており、11世 紀のアラゴン王の創建になるという。 写真は、修道院付属教会の内陣から、祭室方向 を眺めたものである。聖堂は細長い単身廊のバジ リカで、特に美しいのは、正面祭室後陣の下部壁 面に彫られた盲アーケード装飾だろう。 アラゴン王の教会にしては派手な部分は全く見 られず、控えた品格ある美しさはさすがと言うべ きであり、その中にあって唯一優美な装飾となっ ている。 入口の門、石の階段、半円アーチの通路、小さ な礼拝堂など、全ての建築が城砦と一体化してお り、ロマネスクの世界にどっぷりと浸ることが出 来る。 教会上部のテラスからの眺望は絶景だった。 |
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| アグエロ/サンティアゴ教会 Agüero/Iglesia de Santiago |
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ウエスカからの国道を更に北上する と、峠を登り始める辺りから、薄ピン ク色をした巨岩が林立する不思議な光 景に出会う。 この小さな集落は、そうした奇妙な 形をした岩山に抱かれるような姿をし ていた。 ロマネスク教会は、町を見下ろす高 台に建っていた。 教会建築として奇妙に感じられたの は、三身廊部分が失われていて、現存 するのは三つの祭室と後陣だけだった からである。 写真は南門で、壮麗なタンパンと豪 快な柱頭彫刻が残されていた。タンパ ンの彫刻は“東方三博士礼拝”で、御 公現を意味する重要な主題とされる。 柱頭にサロメの踊りが確認できた。 後陣の美しさに驚き、失われた身廊 の礎石を歩きながら、往時の聖堂がい かに壮大であったかを偲んだ。 |
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| ビオタ/聖ミゲル教会 Biota/Iglesia San Miguel |
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ウンカスティリョに向かう途中のこの町の入口 で、Iglesia Románico 12e と書かれた看板を発 見した。寄らないわけにはいかない。 教会は旧市街の閑静な広場に面して建っており、 改築の痕跡は残るものの、単身廊バシリカの素朴 な様式は伝えられている。 正面扉口のタンパンを見て驚いた。主題も構成 も、前掲のアグエロのタンパンにとてもよく似て いるのである。何らかの啓示を、アグエロから受 けたものだろう。 聖堂の南側面にも扉口が設けられており、ここ にも見事なタンパン彫刻と円柱や柱頭の装飾が施 されていた。 タンパン彫刻の主題として、教会の守護神であ る大天使聖ミカエルと二天使が彫られていた。 私が最も気に入ったのは、門の両側の円柱と柱 頭だった。写真は左側部分で、円柱には様々な種 類の細かい連続模様が彫られており、高度な技術 を誇示している。 柱頭には楽器を弾く人や踊る人が、奇妙な動物 や植物と共に描かれている。脈絡の存在は不明だ が、アグエロで確認できたサロメの踊りだろうか。 |
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| ウンカスティリョ/聖マリア教会 Uncastillo/Iglesia de Santa Maria |
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ウンカスティリョは信仰の町に相応しく、ロマ ネスクの寺院だけでも遺跡を含めると4箇所残っ ている。その中で、最も優れた意匠を見ることが 出来たのは、この教会南門の扉口だった。 聖堂のプランは、この地域に共通した単身廊の バジリカ様式で、南側面に鐘塔と南門が設けられ ている。 ここの門にはタンパンは無いが、複雑な構造の ヴシュールはとても壮麗な美しい彫刻だった。 大きく三重になっており、外側に連続する人物 像が特に傑作だった。 人間の四季の営みを表したものなのか、様々な 職業を示したのかは不明だが、目の生き生きとし た力強い表現は、抽象の向こう側に何かとてもリ アルなものが見えるような気がして、私にはとて も興味深く思えた。 大げさに言えば、ロマネスク美術の本質が見え たような気がした、ということなのである。あく まで“気がした”だけのことなのだが。 柱頭にはアダムとイヴ、エジプトへの脱出など を主題とした彫刻が確認できた。 |
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| ソス・デル・レイ・カトリコ/聖エステバン教会 Sos del Rey Católico/Iglesia de San Esteban |
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初めてこの地方を訪れたのは、1980年の年末 休暇を利用した旅だった。このソスではパラドール に泊まったのだが、夜遅く到着し朝早く出立したの で、町はほとんど見ていなかった。 今回ようやく再度パラドールに泊まり、旧市街や ロマネスク教会をゆっくり歩くことが出来た。 高台に密集する家並の屋根が美しい町で、教会の テラスからの町全体の眺望は抜群であった。 従来の教会は三廊式だったが、16世紀に側廊の 壁を除いて、外側に礼拝堂などが拡張されたために、 祭室部分以外はどうもロマネスク的ではない、とい う印象が余りにも強く感じられてしまった。 地下祭室には創建当初の雰囲気が残されており、 柱頭彫刻にも傑作があったが、スペインでは珍しい 案内人の厳しい撮影禁止の目が光っていた。 更に注目すべきは正面ファサードで、特に扉口の 装飾彫刻は見逃せない。 タンパンには、四福音書のシンボルに囲まれた栄 光のキリスト像が彫られている。円柱に彫られた細 長い聖人像は、シャルトルやサングエッサに似て、 ゴシックへの過渡期の特徴を備えている。 写真は気に入った像で、マグダラのマリアだろう。 |
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| シレサ/聖ペドロ教会 Siresa/Iglesia de San Pedro |
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ハーカの西を流れるアラゴン・スボル ダンという渓流に沿って、ピレネーの山 懐深く入った山里である。ピレネーの鋭 い峰々が間近に迫っている、静かな寒村 だった。 しかし、そんな鄙びた村に、何故かく も立派な教会が建てられたのかが不思議 なほど、豪壮な建築が村の入口にそびえ ていた。 11世紀末に、古くから在った修道院 に加えて、現在残っている教会堂が建て られたらしい。写真は南側から聖堂の翼 廊部分を眺めたものである。 単身廊と半円形祭室、交差する翼廊と で構成された十字形聖堂である。天井は 半円筒ヴォールトで、飾りの無い清楚な 雰囲気には品格が感じられる。 祭室壁面にのみ、盲アーケードと控え 壁が交互に意匠されていて華やいでいた。 村の住人が交代で鍵を管理しており、 その人の家を探すのに少し苦労した。 |
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| ハカ/大聖堂 Jaca/Catedral |
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ピレネーのソンポルト峠を越えて来た サンチャゴ巡礼路は、この町から折れて ナヴァラ地方へと向かう。旧市街はいか にも古い宿場町の面影を伝えており、市 場や露地を歩くのは実に楽しかった。 そんな町の中心に、11世紀創建とい われるこの聖堂が建っている。 西扉門の半円形タンパンは、組み合わ せ文字と二頭の獅子などが彫られている。 ギリシャ文字のXPI狽sO買Lリスト スの頭二文字XPと、十字や花模様とを 組み合わせたシンボルは、キリストが偶 像化される前の伝統の名残だろうと思う。 聖堂は側廊の付いた身廊と三つの祭室 だけという単純なプランだが、どっしり とした太い柱には堂々たる風格が見える。 高い位置で見え難いが、しっかりとした 彫りの柱頭は見逃せない。 写真は、表へ出た南の柱廊門に彫られ た柱頭彫刻で、楽器を持ったダヴィデ王 や楽師達、イサクの犠牲などを描いた繊 細な彫りが素晴らしい。 |
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| イグアセル/聖マリア教会 Iguácel/Iglesia de Santa Maria |
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辺鄙な場所に在るロマネスクの教会は、 今までに相当数多く訪ねたつもりでいた。 しかし、この教会へのアプローチほど、艱 難辛苦と恐怖を感じたことはかつて無かっ た。10Km続く尖った石だらけの路面の 急峻な山道。車は、橋の無い三本の川を渡 らねばならず、その一つは車幅いっぱいの ダムの堰堤になっていたのである。 ハカからは、ピレネーの谷深く分け入っ た聖域で、着いてみると道中が嘘だったか のような、鳥の声と渓流の音だけに支配さ れた別世界だった。 聖堂は写真で見るような単身廊のバジリ カ建築で、素朴な石積以外にはほとんど装 飾の無い、まことに素朴だが凛としたたた ずまいが美しかった。周囲の紅葉が映え、 清楚で簡潔な聖堂建築のシルエットを浮き 上がらせていた。 何という平和な雰囲気なんだろうかと、 すっかりロマネスク的美の境地に没入して しまった。復路にも通り抜けねばならない はずの戦慄を、その時はすっかり忘れてい たのである。 |
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| ラレーデ/聖ペドロ教会 Larrede/Igresia de San Pedro |
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アインサからピレネーの山麓を縦断し、ハーカに 向かう途中の町サビニャニゴ (Sabiñanigo) の手前 に位置している重要な教会である。 教会の聖堂や鐘塔の全てが、これほどまでに均整 のとれた状態で、創建当初のまま保存されている例 はまことに希少だからである。聖堂の一部や塔その ものが、後世に再建されているのが普通である。 建築は11世紀末のもので、単身廊に翼廊の十字 形である。写真は後方からの眺めで、半円形の後陣 と翼廊の片側に建てられた鐘塔が写っている。 すっくと立つ塔は清楚で優美であり、ピレネー地 方を代表する鐘塔のひとつと言えるだろう。 後陣の装飾が美しく、特に盲アーケードと縦格子 の意匠が珍しい。これをそっくり真似たロマネスク 聖堂が手前のブサ (Busa) という地区に建っていた。 小さな窓が数箇所しか無いという、石の塊みたい な、なんとも無骨で重々しいはずのロマネスク建築 だが、ここではとても軽やかで華麗であるとすら見 えてくる。 内陣への入口は側面の南門からで、隣家のお嬢さ んが鍵を開けてくれた。 積まれた石が、その重量感を感じさせないほど軽 快に作り出すアーチ曲線の美しさに感嘆した。 ここからハーカは20Kmほどだ。 |
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| サン・ファン・デ・ラ・ペニャ/修道院 San Juan de la Peña/Monasterio |
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アラゴン地方の西端に位置するこの修 道院に行くには、ハカから雪のオロエル 峠を越えねばならなかった。 日本から持参した、簡易チェーンがよ うやく役に立った。 聖堂は岩山をくりぬいたような場所に 建てられており、余りに奇怪な佇まいに 驚いたものだ。 9世紀の創建で、アラブの影響が色濃 いモサラベ様式の地下教会が残っている。 プレロマネスクのような、荒削りのまま 積まれた石が魅力的である。 馬蹄アーチの門を抜けると、回廊部分 に出られる。回廊は一部分しか残ってい ないが、特異なロケーションもさること ながら、柱頭に彫られた彫刻の独創性に は仰天した。 「アダムとイヴ」「カインとアベル」、 そして「キリスト生誕」「エマオへの道」 など聖書の物語を主題にしたものが多い。 ペーニャ様式とも言えそうな眼の大きな 人物像が特徴で、自由な発想が生んだ大 らかな図像に感動した。 |
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| サンタ・クルス・デ・ラ・セロス/聖マリア教会 Santa Cruz de la Serós/Iglesia de Santa Maria |
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ハカの町からそれ程遠くはないのだが、 少し山へ入り込んだだけでかなりの積雪 だった。サン・ファン・デ・ラ・ペニャ の僧院とは山一つ隔てた村で、雪がなけ れば林道を経由して直接行けるとのこと だった。 正面扉口のタンパンには、ハカに似た XP、キリストのシンボルであるクリス モンと、二頭の獅子が描かれている。 平面プランは簡素な十字形で、単身廊 に翼廊と一つの祭室だけが付いている。 南の翼廊の上が鐘塔になっていたので、 最上階まで登ってみた。ロマネスク式の 窓からの眺めは素晴らしく、白銀のピレ ネーを背景にした情緒ある村の雪景色を 堪能することが出来た。 写真は北東からの全景だが、かつて存 在した女子修道院に付属していた教会ら しい質素な佇まいがとても美しく感じら れた。 この写真は1980年の年末に訪ねた 時のものである。 |
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| サンタ・クルス・デ・ラ・セロス/聖カプラシオ教会 Santa Cruz de la Serós/Iglesia de San Caprasio |
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2005年秋のこの村の訪問は、1980年以来 25年振りのものだった。 前回は写真を失敗していたので今度こそと考えて いたが、後陣背後にスペースが無く、ワイドレンズ を使用したにも関わらず余り上手くいかなかった。 単身廊のバジリカで、教会というよりも礼拝堂と いった感じのチャーミングな建築である。11世紀 の創建らしいが、プリミティヴな構造からはもっと 古いのではないか、とすら思えてくるほどピュアな 美しさが感じられた。 壁面には盲アーケードと控え壁、内陣上部に素朴 な鐘楼が作られているのが、この聖堂精一杯の装飾 なのである。 内陣には石積の壁があるのみで、アーケードや柱 頭などは一切見られなかった。 町はかなり開けて別荘の分譲などを誘致しており、 新築中の邸宅も見られた。四半世紀の時の移り変わ りを実感せざるを得なかった。 前回は雪のためサン・ファン・デ・ラ・ペーニャ へは直接登れなかったが、今回は改良された林道を 行くことが出来たが、これを喜ぶべきかどうか心境 は甚だ複雑だったのである。 |
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