平成26年3月(弥生).4月(卯月)の短歌
まさぐれば幹の温とし 山法師のつんつんとして数多角ぐむ
(まさぐれば みきのぬくとし やまぼうしのつんつんとして あまたつのぐむ)

やわらかき土の感触伝いくる春めく朝をスニーカー軽ろし
(やわらかき つちのかんしょく つたいくる はるめくあさを スニーカーかろし)

プランターの土盛り上げて尖りたるチューリップの芽吹きに触れぬ

里山の花を揺らして風わたる桜、木蓮、たんぽぽ、すみれ

秘伝なる黒蜜の甘に癒さるる亀戸天神の末吉の御神籤
(ひでんなる くろみつのかんに いやさるる かめいどてんじんの すえきちのみくじ)

タンデムの自転車に乗り風を切るかすかに軽しブレーキの音
(タンデムの じてんしゃにのり かぜをきる かすかにかろし ブレーキのおと)

うたた寝を破られ身に沁む肌寒さ新緑揺れてあられ窓打つ
(うたたねを やぶられみにしむ はださむさ しんりょくゆれて あられまどうつ)

 間借りからスタートし、念願の一軒家を構えて約半世紀を支えてくれたこの治療院を閉鎖し、第三の人生の設計図に向けて心機一転することとなった。
   半世紀もの生業を支え来し治療院の看板今し撤去るる
   (はんせいきもの なりわいを ささえこし ちりょういんのかんばん いましと   らるる)

 3月末の夕暮れ、無造作にガラガラと撤去されてゆく看板の音を夫と直立して聞いていた。二人で話し合って決めたこととはいえ、その音は言いようのないさみしさを残して胸に突き刺さってくる。数限りない思い出が頭の中を駆け巡り、思わず手を合わせていた。
 夫は「何事も引き際が肝心」だという。私も大賛成である。日当たりや風戸牛など、我が家で一番条件の良かった治療室をりほーむし、5月直前にようやく第三の人生をスタートすることができるようになったのである。
日々、生活しながらのりほーむは大変であったが、過ぎてみればみんな楽しい出来事に代わってしまうから不思議である。
   「おはよう」とカーテン開けるリビングに手足投げ出しのわのわと犬

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