平成25年10月(神無月)の短歌
小春日にのわのわ愛犬寝そべりてくっくと寝言しばらく続く

里山の日暮れは早し盲導犬にびっしり付たるイノコズチ除る(とる)

公園の小春日和に温もりて落ち来る枯葉を犬と見ている

緑葉の活力なべて幹に返し紅葉を装い地に戻り来る
(みどりはの かつりょくなべて みきにかえし もみじよそおい ちにかえりくる)

「こんなにも不器用なるや左手は」右腕骨折せし夫の溜息

無沙汰なる友の訃報を聞きし宵着信履歴に友の名たどる

通夜の経途切れたる間を聞こえ来る爪繰る音と深き溜息

 この10月の天候は何と忙しかったことか。初旬は真夏を思わせるほどの暑さで、仕舞い込んだばかりの夏物を引っ張り出さなければならなかった。かと思えば、夕方にはいきなり十度以上も気温が下がって重ね着をする始末。いったい本来の「天高く馬肥ゆる秋」はどこへ行ってしまったのだろう。それに台風の大ラッシュ。毎週のように「予想外の大きな台風」の天気予報で事欠かなかった。
 今日はそんな10月最後の日、久しぶりにお日様がのぞいてくれている。近くの保育園の子どもたちのにぎにぎした一団が家の前を通って行った。花壇の手入れをしている私に「こんにちは!」と先生の声。それに続いて子どもたちの元気な声が飛んできた。私も負けないぐらいのニコニコ顔で「お散歩なのね」と手を振った。ああ、これが本来の「秋」なんだろうな・・・。
 「フィズー」家に戻り呼んでもわがパートナーが飛んでこない。もしかして…こんな日はきっと二回で日向ぼっこしているに違いない。驚かせてやろうと足音を立てないように階段を上がり始めたら、やっぱり…聞こえて来たのだった。「クックッ」フィズの寝言が。

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