平成25年3月(弥生)の短歌
春日向つぼみほころぶパンジーのつぶやきを聞く「はーるがきたよ」
(はるひなた つぼみほころぶ パンジーの つぶやきをきく 「はーるがきたよ」
ほのかにも香り漂う水仙の花ある部屋に毛糸編みおり
ゆくりなくラジオより流れ来るコロプチカに編む手を止めてステップ踏みぬ
盲導犬は盲導犬を見返りぬ使用者同士のすれ違うとき
(もうどうけんは もうどうけんを みかえりぬ ゆーざーどうしの すれちがうとき)
踏み外し両膝つきて転びたり春日に温きコンクリートは
昨秋、ふとしたことから気の合った友だち3人で村上の「人形さまめぐり」に出かけようということになった。この話が持ち上がったとき、正直私はその気になれなかった。なぜなら「伝統ある雛人形はガラスケースに納められていて、見えない者にはつまらない」と決め込んでいたのである。だが、観光課の職員から意を尽くして説明していただいたお蔭で見えないハンディーなど吹っ飛び、楽しい村上の旅となったのである。
かつて城下町として栄えていたころのイメージを復元したという黒塀に触れたりして、観光ボランティアさんの説明に耳を傾けながら次の町屋まで歩く。早春の風を感じながら…。
古の暮らし偲びつつ巡る路地 寺町・細工町・鍛冶町・大工町
(いにしえの くらししのびつつ めぐるろじ てらまち・さいくまち・かじまち・だいくまち)
辻ごとに風情異なる城下町村上町屋の雛をめぐる
(つじごとに ふぜいことなる じょうかまち むらかみ まちやの ひいなをめぐる)
町屋は狭い間口だが、奥行きはかなりある。お茶屋、小物屋、お菓子屋、お食事処と巡った。中でも私が感動したのは、やはりこの手で触れて対面することができた大浜人形だった。それは土で作られている人形で、江戸時代の末期に瓦職人が仕事の合間に作ったそうな。土とは思えないほどすべすべしたまろやかな感触の人形が寄り添っている。幾万の人の手に撫でられて来たことだろう。
小物並ぶ町屋の奥の雛段に寄り添い在す大浜人形
(こものならぶ まちやのおくの ひなだんに よりそいおわす おおはまにんぎょう)
ちょこなんと我が盲導犬も鎮座して村上町屋の雛にま向こう
(ちょこなんと わがもうどうけんも ちんざして むらかみまちやの ひいなにまむこう
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