平成25年2月(如月)の短歌
街角の八百屋、花屋の閉店(とざ)されて寒風まっすぐ突き刺さりくる

桜草、水仙、パンジー、チューリップ春めく花舗に手袋を脱ぐ

にょろにょろの蛇をつかみて目ざむれば深爪の拇指ひりひり疼く(うずく)

「ただいま」へ応えのなきは知りにつつ二度目を少し大き目に言う

うなづき合いケーキ選べる老夫妻の後に並びて順を待つ吾

やわらかな物言いするは男の子学生どやどやバスに乗り来る

 普段は夫との生活なので食卓はその席だけ使うように片隅に寄せて置いて十分なのだが、子供たちが来たときには席の確保に大変である。
「家具だってそのときの状況によって買い換えた方がいいのよ」と娘に言われ、長年使ってきたスチールの戸棚を処理することにした。なるほど届いた収納棚は、レンジや炊飯器、ポットが納められるようにできていて、それでいてスマートなのである。だが、その整理には嫌というほどの現状に直面させられてしまった。
一日かけてもその中身の移動に満足できないでいる。その上「えーっと、あのお茶はどこだったっけ…」などと、欲しい物のありかに戸惑ってしまう。こんな場合、若いころにはすぐに対応できたはずなのだがと痛感すること仕切り。

 それにしてもまた買い来しか調味料似たるパックが戸棚に並ぶ
  (それにしても またかいこしか ちょうみりょう にたるパックが とだなにな   らぶ)

 あらあら、なんとまあ―、またここにも!買い貯めならぬ「忘れ買い?」思わず三十一文字になった作である。
●教訓「ときには身辺処理も大切である」
  なぜなら、自ら健忘症をチェックすることができるからである。

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