平成24年11月(霜月)の短歌
舞来るも散り敷くも哀し黄葉の美人林のただなかに立つ
(まいくるも ちりしくもかなし こうようの びじんばやしの ただなかにたつ)
ブナ落ち葉我が踏みしめて地に返す美人林の時雨ひねもす
(ブナおちば わがふみしめて ちにかえす びじんばやしの しぐれひねもす)
前になり後になりして枯れ落ち葉信号待つ間を追い越し行けり
(まえになり あとになりして かれおちば しんごうまつまを おいこしゆけり)
握りたるハーネス軽し枯葉色のジャケットまといて落ち葉踏み行く
着込みたるセーター脱ぎて「昨日まで寒かったのに」と独り言を言う
「違うのよ」「誤解なのよ」と言えぬ吾に尖りし声の電話切れたり
「シメジ、シイタケ、エリンギ、マイタケ九十八エーン!」露店の人だかりに吾も入りぬ
この月初めに県内盲導犬ユーザーの研修会に参加し、温泉に、またおいしい料理にと晩秋の末の山を堪能して来ました。
明くる日は心配していた雨にも遭わず、そう寒くもないお天気。10時過ぎに旅館の車で「美人林」に案内してもらいました。ちょうど紅葉のシーズンで観光客が訪れていましたが、私たちに遭うとブナの黄葉どころではなかったようです。「まあ、かわいい!」「お仕事中だから触ったらダメ」「頑張ってね!」「すごいもんだ…」などと、あちこちから聞こえて来ました。
散り敷いた落ち葉の上を風を感じて歩いたときの爽快感!パートナーの生き生きした動きと一体になって、つい早歩きになってしまいました。ブナのすべすべした幹に触れさせてもらったり、落ち葉を拾ってみたり。でも、私はあの風の感触やカサッという枯葉を踏む音は、これから到来する冬を前にした物悲しさを感じずにはいられませんでした。
今度訪ねるときは、新緑のシーズンにしよう…などと思いながら暮れゆく松之山を後にしました。
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