平成24年2月(如月)の短歌
いそいそと新しき包丁にリンゴ剥く長くなーがく良きこと在らん

寒風の吹きすさぶ夜はまるまりて胎児のように小さく眠る

寒の夜のしじまに生るる音数う切りたるストーブの冷めゆく音も
(かんのよの しじまにあるる おとかぞう きりたるストーブの さめゆくおとも)

間を置きてまたも窓打つ吹雪の夜未だ帰り来ぬ夫を案ずる
(まをおきて またもまどうつ ふぶきのよ まだかえりこぬ つまをあんずる)

深呼吸二つ三つしてまた握る除雪のシャベルは至大に重し
(しんこきゅう ふたつみつして またにぎる じょせつのシャベルは しだいにおもし)

寒中のアイスバーンの坂道を盲導犬はゆっくり導きくるる

帰り来て氷雨に濡れし盲導犬の冷たき足裏手で包みやる
(かえりきて ひさめにぬれし もうどうけんの つめたきあうら てでつつみやる)

 久しぶりに来た娘とコーヒータイムにでもということになり、夫が率先して準備を始めた。私の役目は3カップの水を沸かすだけ、夫は豆をひき湯を注ぐ。たちまち部屋にコーヒーの香りが広がりホットな雰囲気になる。パソコンのこと、職場のことなどと娘を中心に話が弾んだのだが…。
 「あれっ!お母さん、フィズの様子がおかしい」と娘が叫んだ。「発作を起こしたみたいだぞ!」と夫も叫ぶ。たった今までコーヒータイムに参加して私のそばにいたはずのフィズが手に触れない・・。私もあわててその音のする方へ耳をそばだててみたら…。フィズは部屋の真ん中であおむけになって4本の足としっぽを激しく動かしながら「フガフガ」と声にならない声を出している。「なーんだ、発作じゃなくって嬉しいダンスをしてるんだよ」私は思わず吹き出してしまった。
 いつものコーヒータイムはフィズが中心なのだが、この日は娘にその中心を奪われたので、フィズは犬なりの頭で考え出した結果のデモンストレーションだったのだ。
突然こんな動作をしたら誰もがフィズに注目してしまうことを計算しての仰向けダンス。それからはフィズの話題に盛り上がってしまったことはここに記すまでもない。

平成24年3月の短歌へ。
平成24年1月の短歌へ。
限りなく透明な世界のトップページへ。
すずらんのトップページへ。