平成24年1月(睦月)の短歌
太々としじま貫き響き合う年明けの汽笛吾の腑に留む
(ふとぶとと しじまつらぬき ひびきあう としあけのきてき あのふにとどむ)
とそ少し飲み過ぎたかなと言いにツツ寝そべる夫へ愛犬寄り行く
ほころびし水栽培のヒヤシンス仕事始めの部屋に匂えり
烈風の吹き下ろし来る高台に冬が居座り遠吠えを為す
(れっぷうの ふきおろしくる たかだいに ふゆがいすわり とおぼえをなす)
ぴったりと寄り添いて来る愛犬に編む手を止めて呼吸を合わす
指先の覚えしままにキーを打つ文字の生れ(あれ)くるパソコン不思議
総合学習に書きくれし子らの点字文パズル解くごと吾が指たどる
冬は冬らしく積雪がなければ…などと言っていたものの、いざ降り積もってしまうと見えない者にとっての歩行は大変である。その日はこの15日の日曜日のこと。
散歩に出て間もなく、雪と風が激しくなり、あっという間に路面に雪が積もってしまった。普段は路上の凹凸や歩道と車道の段差、点字ブロックなどを目印にして盲導犬のフィズに指示を出して歩行しているのだが、こんなに急に雪が積もった場合は、それらの手がかりがなくなってしまう。その上、雪は周囲の音を消してしまうので状況が全くつかめない。いつもの交差点を確かに渡ったはずなのに…あれっ、おかしい!風向きが違う?。いつまで歩いても家にたどり着けず、しばらくうろうろ歩くほかなかった。「どうしたんですか?」と近づいて来るかわいい声に「助かった!」と心の中で叫んだ。
それは町内にある山ノ下小学校5年生の女の子だった。昨年、総合学習の授業にうかがったときのことを覚えていて声をかけてくれたのだった。部活に行く途中だと言うので学校の前まで一緒に歩いてもらった。そこから先はフィズと歩き慣れた道なので無事に我が家に帰り着くことができた。
もう20年にもなるだろうか、近くの学校でお話しさせていただく機会が年に数回ある。ごく当たり前の私自身の体験談しかお話しできないのだが、子供たちと交流させていただくことにより、みんなが安心して暮らせる町作りの一助になっているのだと思う。実際、私自身がその恩恵あってこそ、日々この町で暮らしているのだと実感した最近の出来ごとだった。
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