平成23年5月(さつき)の短歌
夕暮れの風はひんやりブラウスの裾ひるがえし早苗田渡る
雨上がりの朝の遊歩道すがすがと芽吹きの風をいっぱいに吸う
雨音の路地低くして向かいなる自販機の音ま近に聞こゆ
更ける夜の静けさの中に夫といて離れ住む子のことなど語る
さりさりと菜(さい)食む音の何か欲しごそごそ探す月末の冷蔵庫
厨辺(くりやべ)は吾が安らぎの場所なりてレースの暖簾に替えてもの書く
取り上げし受話器に蛙の音も混じり懐かしき友の声聞こえくる
片言のばーば呼ぶ声聞こえ来る長電話なる友に孫いて
「ねっ、ばーば!バーバちゃん」受話器を持っていた手がしびれ、そろそろ切るタイミングをさがしていた矢先に聞こえてきた片言のかわいい声!「え?お孫さん来ていたのね」
すると、彼女はいままで私とおしゃべりしていた声とは全く別の声、つまり、すっかりおばばの声で「よちよち、もうちょっとだから待っててね」笑い声を残してそそくさと電話は切れてしまった。
おもむろに受話器を置き、しびれた手をさすりながらホンワリと余韻を味わっていた私である。そうなのだ、私にも同じくらいの孫がいてもいいのに…。
飼い猫に「テテ」という名を付けし娘は電話の度に鳴き声聞かす
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