平成23年4月(卯月)の短歌
みずみずと草萌えの香の遊歩道歩幅五センチ広げて歩む
残り雪踏みつつ歩む戸隠の風はかすかに芽吹きの気配す
盲い吾の主婦の生活のこと慣れて細く細くと春キャベツ刻む
行儀良く詰め込まれたるふきのとうパッケージの中に上品な香放つ
鶯の初音聞きたり 葉桜の並木をさらさら風渡る朝
アカシアの花の香ほのかに流れくる雨上がりたる朝光(あさかげ)の路
菜の花の園に雨降る咲き満つる香の密やかにして
菜の花は亡き母の香よ夕暮れを野良着の母と帰りたる路
このページを書いている今日はゴールデンウィーク明けの6日の夜。
フィズのブラッシングを終え、ほっと一息。気分転換のつもりで、花壇を一回り、と言えば聞こえが良いのだが・・・。花壇と言っても猫の額ほどだし、一回りとて見えるわけでもない私のこと。フィズのリードを持ってプランターや植え込みを片っ端から触り回るのである。
昨秋のこと、華厳の滝を訪ねた折に買い求めた「クロユリ」の球根をプランターに植え、忘れないように点字で花札を付けておいたのだった。それがいつの間にかすっくと伸び、小さなつぼみがいっぱい付いていたではないか!
「ほら、フィズ見てごらん!一緒に滝を見て買って来たお花よ」あんまりうれしくって思わずフィズにも見せてしまった。フィズ、私のこの気持ち、わかるわよね、きっと…。
悔しくも今日は義兄が召された日。五十一日間痛みと戦って義兄は静かに眠っていた。「アイバンクに登録していたのよ」と姉が言いながら、私の手を顔に触れさせてくれた。
「洋子ちゃんにもやりたかった」とでも言いだしそうな義兄の口元。次女の私にとって初めてのお兄さんと呼ぶことのできた人。
「安らかに安らかにおやすみなさい お兄さん」
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