平成23年3月(弥生)の短歌
地震ふるらん揺るる手すりに縋りつつ夫の呼びいる階下へ急ぐ
(ないふるらん ゆるるてすりにしがみつつ つまのよびいる かいかへいそぐ)
エリアメール告ぐる携帯握りしめ横揺れのなかストーブを消す
(エリアメール つぐるけいたい にぎりしめ よこゆれのなか ストーブをけす)
スーパーにはやも失せしかほうれん草原発事故の風評押し寄す
(スーパーに はやもうせしか ほうれんそう げんぱつじこの ふうひょうおしよす)
留守電のぶっきらぼうなる子の声へ「生きているの」とメッセージする
つい一言多くなりしか吾の掛けし電話は息子の方より切らる
(ついひとこと おおくなりしか あのかけし でんわはむすこの ほうよりきらる)
片言のばーば呼ぶ声聞こえ来る長電話なる友に孫いて
さえかえり凍てつく朝盲導犬の時おり薄ら氷を踏む音のして
(さえかえり いてつくあした もうどうけんの ときおりうすらい ふむおとのして)
カーラジオの音楽しばし聞こえきぬ筋向いなる自販機の前
一冬を咲き継ぎて来しシクラメンの花がらをつみ日向へ移す
(ひとふゆを さきつぎてこし しくらめんの はながらをつみ ひなたへうつす)
3月11日、私にとっては一番のんびりできる時間の午後2時過ぎ、突然家のあちこちからみしみし…「おやっ」と思う間もなく家ごと揺れる気配。そのままはっきりした横揺れとなった。「地震だぞ!」と夫が階下で怒鳴っている。何より先にストーブを消さなければ、それから携帯を持って・・・フィズと戸口へ向かった。
夫は意外と冷静で「こんなときは急いで外へ出てはダメ!とにかく玄関の戸を開けることが先決だ」と言う。かなり長く大きな横揺れが続いていた。私はフィズにハーネスを付け、厚手のコートと長靴を履いて玄関の柱にしっかりつかまっていた。夫が持ってきたラジオで震源地が県内でないことを知り家に入りかけた、が、またあの横揺れが…。もう大丈夫だと言われても、まだ揺れている気がして、しばらくはストーブをつけることができなかった。
日が経つにつれ、東北関東大地震、予想をはるかに超えた大津波、そして福島原発事故による放射性物質漏れによる被害の惨さが明確に伝えられ、それを聞くたびに胸が痛む。それにしても、毎日送られてくる福島原発のニュースには恐怖と怒りに似たものを感じる。これさえなければもっと早くから行政はじめ被災者やボランティアの人々も復興へ向かって足並みがそろっていたと思う。
柏崎原発を抱えるわが新潟県も「対岸の火事」と言ってはいられない、注視して事態を見守らねばならない。
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