平成22年6月(水無月)の短歌
足取りのもつるる歩み伝いくる帰路のハーネス ターシャ十歳
(あしどりの もつるるあゆみ つたいくる きろのハーネス ターシャ10さい
普段着でリュックを背負えば言わずとも市場へ案内す盲導犬は
(ふだんぎで リュックをしょえば いわずとも いちばへあないす もうどうけんは)
ピヨピヨとカッコカッコの響き合う初夏のゼブラゾーン盲導犬促す
(ピヨピヨと カッコカッコの ひびきあう しょかのゼブラゾーン もうどうけんうながす)
子どもらの視線の中にりんと立つターシャのな前吾が告ぐるとき
(こどもらの しせんのなかにりんとたつ ターシャのなまえ わがつぐるとき)
子どもらに盲導犬の話する吾が足下にターシャ伏せいる
「誰か来たの?」誰より先に尾を振って戸口へかけ行く盲導犬ターシャ
全身で綱引き遊びをせがみ繰る ハーネス取ればターシャはラブちゃん
哀しみは胸内深く折りたたみ最後の散歩のハーネス握る
(かなしみは むなうちふかく おりたたみ さいごのさんぽの ハーネス握る)
伏せたまま吾のみじっと見てるとう ターシャよ!静かに静かに撫でやる
しゃがみこみ夫の撫でいる声優し「八年間をありがとうターシャ」
ハーネスに縺るる歩み伝いくぬ ターシャよ!盲導犬のリタイア迫る
美容院、八百屋、魚や、郵便局に ハーネスワークをありがとうターシャ
あうはわかれのはじめなり。真夜に聴くターシャの寝息とそぼ降る雨音
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