平成21年4月(卯月)の短歌


コンクリートの割れ目に咲く薄紫のスミレ草。スミレさん、頑張れ!
写真:薄紫のスミレ

囀りの澄みてひろがる春の日はうら哀しかりめしいの吾の
(さえずりの すみてひろがる はるのひは うらがなしかり めしいのわれの)

ツクシ摘む背なに春の日やわらかしま昼静かに潮騒のして
(つくしつむ せなにはるのひ やわらかし まひるしずかに しおさいのして)

満開の君子蘭諸手に愛でている盲いなる吾を花見詰むるか
(まんかいの くんしらんもろてに めでている めしいなるあを はなみつむるか)

かすかにも見ゆる日ありき新緑を際立たせ降る雨音を聞く
(かすかにも みゆるひありき しんりょくを きわだたせふる あまおとをきく)

いかり草の咲き継ぐ山を登り来て潮騒遠く風を聞きいる
(いかりそうの さきつぐやまを のぼりきて しおさいとおく かぜをききいる)

鶯の初音聞きたり雪柳の匂う小道の朝日浴みつつ
(うぐいすの はつねききたり ゆきやなぎの におうこみちの あさひあみつつ)

花冷えの続く日々なりデパートのマネキンははや初夏の色着る
(はなびえの つづくひびなり デパートの マネキンははや しょかのいろきる)

縁側の日溜りに寝そべる犬の尾を素足に寄りて踏んでみんとす
(えんがわの ひだまりにねそべる いぬのおを すあしによりて ふんでみんとす)

咲きにおうライラックの下抜けるときふわっと花房顔に触れくる
(さきにおう ライラックのもと ぬけるとき ふわっとはなふさ かおにふれくる)

 私の趣味の一つに「寝る」ことがあるといっても過言ではない。人はよく「枕が替わると寝付けない」とか「コーヒーやお茶を飲んだから寝付けなかった」などと言うが、いつでも、どこでも寝ることができるのだ。たとえ悩み事に遭った時でも、気づくといつの間に「朝」が来ているのだから。
昨日から「若葉冷え」というにぴったりの寒さと雨風。6時に携帯の目覚ましに起こされ、いつものように耳を澄ますと外は風と雨が降っている様子。朝の散歩はこれで取り消しと決め、目覚ましを7時に延長してまた夢の中へ・・・。
遠くで誰かに呼ばれているみたい?しかもどんどんトーンが高くなってくる・・・。「おいっ!飯はまだか!いったい何時だと思ってるんだ!」  えっ?!
とっさに押した携帯から「ただいま午前7時45分です」・・・。似たもの同士、隣の盲導犬なる愛犬のターシャをたたき起こして、今度は夢中で現実の主婦に身支度を整えたのだった。

「あらあらこんなに寝坊しちゃって」エプロンきりっと厨に立ちぬ
(「あらあら こんなにねぼうしちゃって」エプロンきりっと くりやにたちぬ)

冷蔵庫のひんやり暗闇好むらし 葱の切り口いつも伸びている
(れいぞうこの ひんやりくらやみ このむらし ねぎのきりくち いつものびている)

冷蔵庫にもやし、キャベツ、肉ありて 今日のお昼は焼きそばにしよう
(れいぞうこに もやし、キャベツ にくありて きょうのおひるは やきそばにしよう)

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