平成21年3月(弥生)の短歌
写真:蓮華草
春蘭のえくぼのような花びらにそうっと触れたり 盲いの吾の手
(しゅんらんの えくぼのような はなびらに そうっとふれたり めしいのわれのて)
椿の紅 照り葉の緑の定かならぬと色弱の友の哀しみ聞きぬ
(つばきのあか てりはのみどりの さだかならぬと しきじゃくのともの かなしみききぬ)
その一輪そうっとめしいの手に触るる彼岸日向の藤五郎梅林
(そのいちりん そうっとめしいの てにふるる ひがんひなたの とうごろうばいりん)
ほのかなる香りひろげて開きゆく梅の小枝を揺らすそよ風
(ほのかなる かおりひろげて ひらきゆく うめのこえだを ゆらすそよかぜ)
スーパーのパック詰めなるフキノトウ刻めば野の香しずくこぼるる
(スーパーの パックづめなる ふきのとう きざめばののか しずくこぼるる)
ピーピピー電気に生活の支配されお湯かご飯か聞き分けて立つ
(ピーピピー でんきにたつきの しはいされ おゆかごはんか ききわけてたつ)
玄関に導きくれし盲導犬の足拭きやれば日向の匂い
(げんかんに みちびきくれし もうどうけんの あしふきやれば ひなたのにおい)
沈丁花の香り漂う日溜りに抜け毛目立ちたる犬の毛を梳く
(じんちょうげの かおりただよう ひだまりに ぬけげめだちたる いぬのけをすく)
今年も妙高高原でスノーレクを楽しんで来ました。心配していた積雪も1メートルくらいで、天候も上々。宿舎周辺の雪原をスノーシューでギュッギュッと踏みしめながら散策するのです。まっさらな雪の上に兎と狐の足跡が追いかけっこをしたように続いている様を手で触れたときの感動!「追いかけたのは狐だ」などと、勝手にストーリーを作る人もいました。
雪の下で谷川の流れる音がロマンチックに聞こえ、もう一度聞きたい思いです。でも、積った雪が凍ってできた橋(スノーブリッジといったかな?)を最後尾に渡ったときはビクビクでした。みんなの体重を支えた後、緩んできた気温も手伝って溶け、ボッチャリと落ちはしまいかと・・・。無事、渡りきってからその橋に下がっていたツララを取ってもらってほおばったら、なんとなく谷川の味がしました。
朴の木、こぶしなどの枝先には新芽がしっかりと膨らんでいました。杉林からお線香のような、花のようなやわらかな甘い匂いがふんわり風に乗ってきて、思わず鼻をくんくん。あの「花粉症」たる根源もこんなにすてきな香りを漂わせているのです。
見晴らしのよい所では、周囲にそびえる山々の様子を教えてもらい、冬山のオゾンを思いっきり吸い込んだのも滅多にできない体験でした。
冬山ハイクは、スノーシューの蟹股歩行になれさえすれば、山道の凸凹が雪で埋っているので視覚障害者にとって安心して歩けます。また、雪がクッションとなって足にかかる負担も少ないと思いました。
「童心」に返っての楽しい一時を三十一文字に残したいのに、なかなか思うように詠めないのが残念です。
ゲレンデを圧雪してゆくキャタピラー凍てつく朝の気を震わせて
スノーシュー新雪踏みて歩み行く音小気味よし冬山ハイク
ハーネスを解きやればターシャ雪原を自在に駆け回る犬にもどりて
弾丸のように雪原駆け回るターシャの顔は「笑っているよ」
ゲレンデのちびっ子広場に巨大なるかまくらドンと据えられてあり
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