平成21年1月(睦月)の短歌
響きくる太き汽笛を腑にしかと受けとむ吾の21年明く
(ひびきくる ふとききてきをはらわたに しかとうけとむ あの21ねんあく)

「こんにちは」はにかみながら頭下げる息子の連れ来し彼女ちはるさん
(「こんにちは」 はにかみながら ずをさげる むすこのつれこし かのじょちはるさん)

上の座に隅を焼べいる弟の渋き咳ばらい父に似て来ぬ
(かみのざに すみをくべいる おとうとの しぶきせきばらい ちちににてきぬ)

両の眼を天にあずけて盲導犬と新年のウォークゆっくり歩む
(りょうのめを てんにあづけて もうどうけんと しんねんのウォーク ゆっくりあゆむ)

アイスバーンのように凍てつく坂の道27キロの盲導犬に導かれ行く
(アイスバーンの ようにいてつく さかのみち 27キロの もうどうけんに みちびかれゆく)

頭からいやしっぽから食べようかふっくら鯛焼き掌にのせながら

ふんわりと揚げたる寒の牡蠣フライ夫の晩酌に磯の香も添え
(ふんわりと あげたるかんの かきフライ つまのばんしゃくに いそのかもそえ)

 20センチほど雪が積ったのは近年に珍しい。引き綱を3,4メートルほど長くしてターシャを駐車場や花壇で遊ばせてやると、跳ね回る様がその綱に伝わってくる。それが面白くって日に数回も繰り返すのだが。その雪も今朝はカチカチに凍って、4本の足がぱりッぱりッと小気味よい音を立ててかけ回るのだ。
   真っ新な今日の始めに真っ新な雪をけ散らし犬が尾を振る
   新雪をけ散らしながら駆け回る盲導犬は犬にもどりて
 外は凍てつく寒さなのに、家の中に「春」をみつけた。昨年の暮に取り込んでおいた鉢植えのみに水仙がみごとに咲いたのだ。窓越しに差し込む日差しがすっかり「春」を思わせたのだろう。手のひらに乗るほどの小さな鉢なのに六つも蕾をつけて、その一つが今朝開き清そな香りを漂わせている。この蕾がみんな開いて、もっと香りが広がる日を待ちながら1月を見送ろう。
   一番雪の消ゆるを待ちて取込みし窓辺の水泉ぬくぬく伸びる
   淡淡(あわあわ)と日差し入りくる窓際に春に先駆け水仙の咲く

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