作成:2003/07/30 |
追記;2005/02/18;「ついに冷水病ワクチン完成」を追記
2007/06/30;神奈川水試ワクチン開発 .
2007/10/26;アユ冷水病の病理と死因
2010/10/20;冷水病感染アユからの菌放出
滋賀県がアユの冷水病でワクチンにめど
平成になって鮎釣り愛好家の間で冷水病というアユの病気が話題になり出してから十年以上になります。
あんなに放流したアユがどこに行ったのか全く見えないとか、白っぽく弱ったアユがフラフラ流れているとか、死んだアユが淵に真っ白になってたまっていたとか、いろいろな話が聞かれます。また、放流したアユが冷水病にやられて解禁前に全滅してその年は鮎釣りが出来なかったという話も各地で話題になりました。
冷水病は大変な病気だというのは知られるようになりましたが、それが具体的にどのような病気で、釣り人はどんな注意をすれば良いのか、などはあまり知らされていないように思います。鮎釣り愛好家皆さんの参考になればと思いまとめてみました。
冷水病とは?
もともとは北米のマスの病気で、低水温期の稚魚に発生し、死亡率が高いことから、bacterial coldwater diseaseと呼ばれていたもので、英語病名を直訳して冷水病とよばれている。
1985年頃からヨーロッパと日本で冷水病がサケ、マス養殖場で見られるようになったといわれているが、どのようにして病原菌が入ってきたのかは明らかにされていない。(銀鮭を輸入したときに病原菌が付いていて、それが広まったという説がもっともらしい。)
アユにおいては、冷水病菌を保菌した湖産稚アユの放流が原因と云われ出して十年以上になる。どのように琵琶湖とアユ蓄養業者のイケスに冷水病菌が広まったのか、その感染源と感染経路はBSE狂牛病のときと同様に不明のままである。
◎原因
冷水病は、(Flavobacterium psychrophilum)フラボバクテリウム・サイクロフィラムという細菌(グラム陰性の長桿菌)によって引き起こされる細菌感染症で、ギンザケ、ニジマス、アユの養殖場で全国的に発生している。
アユでは、昭和62年(1987年)に徳島県の養殖場で琵琶湖産稚アユ輸送後2〜3日に大量死し冷水病菌が確認されたのが最初で、その後全国的に発生するようになった。
河川でのアユ冷水病が初めて確認されたのは平成3年で、以後5,6月に集中して全国で発生している。
(参照:アユの話、3.稚アユ放流の実際、(2)湖産稚アユさえ放流すれば、の脱線2.冷水病の問題)
◎症状
アユ冷水病の症状は、鰓や肝臓の貧血、体表の白濁、鰓蓋下部の出血の他、体表の潰瘍等の穴あき、尾鰭の欠損・びらん症状を特徴とする。
左の写真と「養殖場で認められたアユ冷水病魚の症状」を見てその深刻さを実感して下さい。
アユ養殖場は全国に約400あり、その40〜50%で毎年冷水病が発生している。
当初は、冷水病は稚魚期の低水温期に発生すると云われていたが、最近の傾向では、すべての成長段階で発生しており、水温も12〜26℃の広い範囲で発病している。
アユの場合には、これらの症状が養殖場だけでなく、冷水病菌を保菌したアユが放流されると放流後に河川で他のアユにも感染して発病し大量死を起こすことが全国的に問題となっている。
冷水病菌は河川水のなかでも生存できる厄介な菌です。
冷水病がどのように感染するのか判明しました。
アユ冷水病の病理と死因 ((独)農研機構 「研究成果情報」)
アユ冷水病原因菌,Fravobacterium
psychrophilum,は体表の微細な傷から感染すること,また感染した冷水病菌はコラーゲン性結合組織や筋肉中で増殖し,炎症を形成することを明らかにした。さらに冷水病罹患アユの直接の死因は患部からの急速な出血による失血死であることが示唆された。
(独立行政法人水産総合研究センター養殖研究所 病害防除部 病原体制御研究グループ)
冷水病に感染して4日目から菌を排出する。死んだ鮎から冷水病菌が高い水準で放出される。
リアルタイム PCR を用いた実験感染アユにおける Flavobacterium psychrophilum の排菌量の推定
(日本水産学会誌 Vol. 76 (2010) , No. 4 pp.705-707 (受付 February 3, 2010)(受理 March 27, 2010) )
要旨: アユの冷水病菌の排菌量についてリアルタイム PCR(R-PCR)を用いて推定した。2.1×104 CFU/fish の冷水病菌を接種したアユを個体別に飼育した。試験開始の翌日から小型水槽に取り上げ,10 分間静置した後,そこから 50 mL の水を採取した。採取した水から DNA を抽出し,R-PCR を行った。4 日後以降はすべての個体から排菌が確認され,11 日後にすべての個体が死亡した。推定された排菌量は死亡の 2〜4 日前から徐々に増加した。また,死亡日以前よりも死亡後に有意に増加し,死亡後は高い水準で維持された。
大原 健一1), 景山 哲史1), 桑田 知宣1), 海野 徹也2), 古澤 修一2)
1) 岐阜県河川環境研究所 2) 広島大学生物圏科学研究科
***冷水病とおもえる鮎は川から出して、持ち帰るのがよいようですね!***
◎河川での感染源
*保菌放流種苗(放流した保菌稚アユから病気が広まる)
琵琶湖産の80%以上が冷水病菌を保菌しているとも云われている。
保菌アユを運搬した水を川に捨てて感染することも報告されている。
湖産だけでなく人工産、海産でも発症している養殖場が多数ある。
(養殖場に菌が居付いているか、他から持ち込まれる。)
*解禁後に持ち込まれる保菌オトリアユ(保菌のオトリから川のアユ全体に感染)
保菌アユから感染するだけでなく、保菌オトリを運んだオトリ缶の水からも感染します。
オトリ屋で生簀に保菌アユを入れると、その生簀の排水からも感染することが確認されています。
*保菌生息アユ(春〜初夏の冷水病では死ななかったが、秋に再発する)
*(冷水病発生河川で釣りをした人のタビ、ウェーダー、タモ網、引き船なども感染源になっているという。)
*流域にある養殖場(菌が養殖場の排水から川に流れて感染)
アユ以外の養殖場、養魚場も冷水病菌に汚染されている場合が多いと言う。
*アユ以外の魚種(アユから感染し、それがまたアユに感染させる?)
−アユ冷水病対策協議会調査研究部会グループ報告会より− (2004.08.05追記)
近年、これらアユ以外の魚種が保菌している冷水病菌と、アユが保菌している冷水病菌とでは、遺伝子の型が違っていることが分かってきました。さらに、遺伝子型の異なるオイカワ由来の冷水病菌とアユ由来の冷水病菌を用いて感染試験を行うと、オイカワ由来の冷水病菌はアユに対しては病原性がなく、逆に、アユ由来の冷水病菌はオイカワに対しては病原性がないことが分かりました。すなわち、天然河川において、アユ以外の魚種がアユ冷水病の感染源となっている可能性は極めて低いと考えられます。(福井県内水面総合センター、2004研究情報より)
*河川における冷水病菌をめぐる在来魚と放流アユとの関係
◎河川で感染し発病すると半月〜一月の間にほとんどが死ぬ
岡山県東部の吉井川支流の香々美川での調査
(岡山水試一河川の発病経過からみたアユの冷水病の特性)
冷水病フリーの人工産アユだけをを放流した川では終期まで冷水病は発生しなかったが、4/25に冷水病フリーの人工産アユを放流し元気に成長しているのを確認した後で、5/8に冷水病の保菌魚が混入した琵琶湖産を放流したところ2週間後の5/21から冷水病特有の傷をおったアユが観察され6月上旬に大量斃死が発生した。
冷水病が発症したアユのいる水槽の水を混ぜるだけで無菌のアユが冷水病に感染することが確認されており、感染したアユの80%以上が死亡するともいわれる。養殖場で冷水病が発生すると、その排水が川に流れ込みその川のアユに感染して大量死がおきアユがほとんどいなくなる場合もある。生き残ったアユも秋に水温が低下してくると再発症するものが出てくる。
◎アユ以外の川魚も冷水病に感染する
冷水病の感染が確認された魚は31種(H10〜14年に、都道府県から水産庁に報告されたもの)、
イワナ、サケ、ニジマス、ヒメマス、サクラマス、ヤマメ、アジメドジョウ、イトヨ、カジカ、カマキリ、アブラハヤ、ウグイ、オイカワ、カマツカ、カワムツ、チチブ、ヨシノボリ、ウキゴリ、ヌマチチブ、ギンブナ、タモロコ、ニゴイ、コイ、フナ、ゲンゴロウブナ、ワカサギ、オオクチバス、シラウオ、マルタ、ボラ、(イワシ富山県)
◎決め手となる冷水病の予防法、治療法はまだ見つかっていない
平成10年〜12年に水産庁が中心となり「アユ冷水病対策研究会」が予防法、治療法を調査・研究しているが、未だに決め手となる方法が見つかっていない。(アユ冷水病対策研究会は解散し、13年度からは新たに「冷水病対策協議会」を構築して再スタート。)治療薬やワクチンの研究も行われているが、これで大丈夫というものはまだ開発されていない。
養殖場や川に冷水病菌が入らないように消毒を徹底することが大切のようだ。
・ | 消毒方法 次の(1)〜(4)の何れかで消毒して下さい。 |
(1)日光消毒;裏表を充分日光に当て乾燥し日光消毒する。 | |
(2)消毒アルコール(エタノール80%液)を霧吹きで裏表に満遍なく吹き付ける。 (台所用としてスーパー、薬局で売っている。) |
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(3)逆性せっけん液の100〜200倍稀釈液 を霧吹きで裏表に満遍なく吹き付ける。 (日本薬局方塩化ベンザルコニュウム液 オスバンS 殺菌消毒剤(逆性石けん液) (商品名) が薬店薬局で購入できます。600ml¥800.-) アレルギーのある方は、噴霧消毒した後5分以上おいてから、水で洗い流して下さい。 |
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(4)台所用や洗濯用の殺菌、漂白剤で消毒する。 材質をいためないかどうか不明です。確かめてから使ってください。 |
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*消毒と殺菌についてはこちらをご覧下さい。 |
アユの主な病気.pdf (日本水産資源保護協会パンフレット)
冷水病の状況を下のページで確認して下さい(検索すればこれ以外にもいろいろあります) | ||
環境水におけるアユ冷水病菌Flavobacterium psychrophilumの定量的モニタリング (<特集>水産微生物のリアルタイムモニタリング) |
近畿大学農学部 | |
アユ冷水病の病害発生阻止に関する研究 | アユ冷水病防疫対策共同研究チーム 高知大農学部水族病理学研究室他 |
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アユ冷水病に関する質問主意書及び答弁書 www.monjiro.org中村敦夫公式サイトでは、すでに 削除されていますが貴重な内容なのでコピーを掲載します。 アユ冷水病に関する質問主意書(質問第二六号) 答弁書第二六号 |
平成15年 4月24日 質問者:中村敦夫 6月17日 答弁者:内閣総理大臣 小泉純一郎 |
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アユ冷水病対策研究会取りまとめ | アユ冷水病対策研究会 水産庁 | |
アユ冷水病の現状と対策について −アユ冷水病対策研究会全体会議の概要− |
アユ冷水病対策研究会 水産庁 | |
アユ冷水病対策について 「アユ冷水病対策協議会取りまとめ (平成16年3月)」 「アユ冷水病防疫に関する指針 (平成16年3月)」 「アユ冷水病対策のポイント」 |
アユ冷水病対策協議会 (社団法人 日本水産資源保護協会) |
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H6〜9 :アユの冷水病関係地域合同検討会 H10〜12:アユ冷水病対策研究会 H13〜 :アユ冷水病対策協議会 |
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広報誌「みなも」 H14、2頁目:冷水病はアユだけのものか? |
新潟県内水面水産試験場病理環境課 | |
アユ冷水病等に関する疫学調査 | 群馬県水産試験場 | |
アユ冷水病のまん延防止について | 群馬県農業局農政課 | |
群馬県 上州漁業協同組合 | ||
釣り人が出来る冷水病対策 | かわ遊び・やま遊びのページ | |
多摩川における放流アユの 不漁原因と冷水病の関係 | 東京都水産試験場 奥多摩分場 | |
アユ冷水病対策としての薬浴法の検討 | 養殖研究所 | |
神奈川県下で発生したアユの冷水病について | 神奈川県 水産総合研究所内水面試験場 | |
腸溶性マイクロカプセルに内包させた アユ冷水病ワクチンの経口投与の有効性 |
神奈川県 水産総合研究所内水面試験場 | |
アユの冷水病について | 神奈川県 内水面試験場home page | |
アユ冷水病について | 福井県内水面総合センター | |
滋賀県水産試験場 | ||
岡山県の河川におけるアユ冷水病の感染経路の推定 | 岡山県水産試験場魚病指導センター | |
アユの冷水病に対する注射ワクチンの予防効果 | 岡山県水産試験場 | |
一河川の発病経過からみたアユの冷水病の特性 | 岡山県水産試験場 | |
失敗は成功のもと (冷水病に強いア ユの生産方法がわかった時)の話 |
岡山県水産試験場 水試だより303号(H16.11.15) |
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最近問題になっているアユの魚病について | 徳島県水産研究所 | |
養殖アユの疾病状況について | 和歌山県 水産試験場 | |
アユ種苗来歴カード | 和歌山県 水産試験場 | |
冷水病に強いアユ ( |
広島県水産試験場 組織変更でタイトルしか見られなくなりました。 |
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冷水病対策研究 アユの冷水病対策 |
島根県内水面試験場 | |
鮎の冷水病対策オゾン殺菌装置 | 菱明技研(株) | |
PCR法による魚病細菌・ウィルスの検出 | ||