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おまけ

なぜ速度制御は行われなかったか

「速度制御をやろう!!」
これは、去年からの(極めて個人的な)悲願でもある。しかし結局今年 も採用されることはなかった。なぜか私の担当したところは不採用が多い 気がする。採用されたのも結構あるが。では、技術的にそう困難ではない 速度制御がなぜ行われていないのか。
速度制御を行うにあたって必要なこと。それは、速度の監視とそれに見合 うフィードバックである。ロータリエンコーダがついているため、車輪の 回転数の時間微分(時間差分?)をとれば速さは分かる。もちろんモータ に出力する信号を変えればフィードバックをかけることもできる。しかし 速度制御は行われなかった。その理由は、速度の計測の分解能の荒らさお よびモータへの出力の分解能の荒らさにある。 エンコーダで計測できる最小の距離は約1cm(車輪1回転(約24cm)を 24分割)。そのためかなりおおざっぱにしか速さは分からない。モータ の出力も整数値で指定するため、連続に変えていくことができない。その ため、なめらかな制御は期待できない、というのがおおかたの予想であっ た。また、速度制御は簡単なのですぐにできる、後回しでも良い、という 心理が働いたことも結局採用されなかった理由としてあげられると思う。 結局2年続けて速度制御アルゴリズムは不採用だった。
グランドファイナルに向けて速度制御をしようかという話もあったが、 試験期間と重なり、単位を落としてはいけないという事で作業は中止。
なぜ、私がここまで速度制御にこだわるのかというと、私はYosaQのフルス ピードを見たことがないからである。ある程度でも速度制御を行えば、YosaQ の驚異の走り(中井談)が見られたかも知れない。ちなみに、モータを 急に回したらギアが壊れたという現場は見たことがある。いまだにその全て の能力は見せていないというところがYosaQのすごいところだと私は思う。

平行移動の困難

ハードウェアとしての能力は十分にありながら結局制御の主役になることは できなかった平行移動。その困難とは。
実は前輪と後輪を同じだけ傾けなければならないということである。 そんなこと当たり前だと思われる方も多いだろうが、これは非常に難しい。 実は、去年は平行移動に、ほぼ同じハードウェアで挑戦し、一応成功して いる。しかし、あの平行移動は完全にシーケンシャルに平行移動をしただ けで、制御らしい制御は行っていない。単に前輪と後輪に同じ角度だけ車 輪を傾けるように信号を与えただけである。
このように信号を与えたのでは、車輪のガタなど様々な要因により、前輪と 後輪は同じ角度になることは望めない。
ほんの少しのずれなら、何とかなるのでは?と思ったがやはり理想の 平行移動をしてくれることはない。そこで、理論的に前輪と後輪の傾きが ほんの少しだけずれた場合、どのような移動を見せるのか、実験してみた。



右図において、太線で示したところは、車体。$\theta_f$$\theta_r$は それぞれ前輪、後輪の傾き。dfdrはそれぞれ微少時間の後に前輪、 後輪の進んだ微少距離をあらわす。
詳細は抜きにして、計算結果を示すと、近似的に
\begin{displaymath}
df:dr = cos \theta_r : cos \theta_f
 \end{displaymath} (6)
となる。




\includegraphics {algorithm/parallel.eps}



この結果を用いて数値シミュレーションを行う。


  
図: 前輪32度、後輪30度でのシミュレーション 図: 前輪30度、後輪32度でのシミュレーション
\begin{figure}
 \begin{center}
 
\includegraphics [scale=.7]{algorithm/parallel1...
 ...ncludegraphics [scale=.7]{algorithm/parallel2.eps}

 \end{center} 
 \end{figure}

理論的にも、ほんの少しのずれがすぐに反映されているのが分かる。 この車体の傾きを検出することのできるセンサがYosaQには搭載されてい ないので、平行移動は結局断念した。超音波センサをうまく利用すれば 廊下に対する車体の傾きが分かるのでは?とも思ったが、ロボットコンテ スト当日が近づいていたので平行移動に関するテストは行われなかった。


Takao NAKAI
1999年1月18日