富山県の公共交通の発展を願っての富山県への質問
 
この質問は2001年11月1日、「北陸線・ローカル線の存続と公共交通をよくする富山の会」の結成準備に当たり富山県に対しておこなったものです。11月12日に回答があり、11月17日の「会」の結成総会で発表しました。
   富山県への質問        富山県からの回答
〔質問@〕
 北陸線とともに、富山港線、高山線、氷見線、城端線を守り、存続させることは、県民の足を守るとともに、地域の産業や経済の発展にとって、また環境問題や、駅を中心としたまちづくりなどからもかかせないものです。
 県は、将来にわたって北陸線と各ローカル線を存続させるとともに、この鉄道を富山県の総合交通体系の基軸にすべきであると考えますが、どのようにお考えですか。お聞かせ下さい。


 
 県土の均衡ある発展を図るとともに、本格的な高齢社会の到来に備え、県民が真に豊かさを実感できる社会を実現していくためには、全県域を網羅する交通ネットワークの充実・強化が必要です。
 特に、定時性や安全性、大量輸送性に優れた鉄道網の維持・整備は、県民の足の確保と活力ある地域社会の形成にとって不可欠であり、また、地球環境にやさしい交通体系を構築していくうえからも極めて重要であると考えています。
 このため、県としては、市町村、交通事業者、経済界、利用者の代表等からなる富山県公共交通利用促進協議会を通じ、パンフレットやポスターを作成し県民に対し鉄道等の利用啓発を行っているほか、市町村が行うパークアンドライドの推進のための駅周辺の駐車場、駐輪場の整備などの鉄道の利用促進策について支援を行っているところであり、これからもこのような施策を積極的に展開し、鉄道の維持活性化に努めて行きたいと考えています。
〔質問A〕
 12年後の北陸新幹線建設の条件として、並行する北陸線はJR西日本から経営分離するといわれていますが、並行在来線・北陸線は、なぜJR経営から分離しなくてはならないのですか。その根拠はどのようなものでしょうか。
 また、各ローカル線は、並行在来線ではなく経営分離の対象とはならないものと考えますが、県としてはどのようにお考えですか。また、JR西日本との間では、どのような話し合いがおこなわれていますか。お聞かせ下さい。




 
 並行在来線については、旧運輸省の見解により「新幹線が走ることにより優等列車(特急列車)が転移する線区」とされており、北陸新幹線の並行在来線は、北陸本線が該当することになります。
 この並行在来線については、平成2年12月の政府・与党申合せ等により「建設着工する区間の並行在来線は、JRの経営から分離することを認可前に確認すること。」とされています。
 今年の5月に上越・富山間がフル規格により着工いたしましたが、これまでの政府・与党の申合わせに沿って、並行在来線となる北陸本線の直江津・富山間が北陸新幹線の開業時にJR西日本の経営から分離されることになっております。
 県としては、経営分離される並行在来線については、沿線住民の生活の足を確保するため、沿線市町や経済界などの協力を得ながら、県が責任をもって、第三セクターによる経営を存続します。
 また、ご質問の各ローカル線とは、富山港線や氷見線などの支線のことを指していると解釈しておりますが、これらの支線については、旧運輸省の見解に示されているように、並行在来線に該当しないものと考えております。
 
〔質問B〕
 1999年12月県議会予算特別委員会で県は、JR西日本と北陸三県で北陸新幹線に関する「連絡協議会」を設置する、とした報道があります。
 この「連絡協議会」は設置されたのでしょうか。設置されたのであれば、その内容はどのようなものですか。また、そこでの協議の内容を公開してください。

 
 北陸新幹線の建設促進に伴う諸課題について協議検討を行うため、新潟県、富山県、石川県、福井県の北陸4県及びJR西日本で構成する「北陸新幹線に関する連絡協議会」を平成12年3月に設置したところであります。
 この連絡協議会については、@北陸新幹線の建設促進に向けた今後のとりくみ A経営分離後の並行在来線のあり方 などを協議、検討する場としています。
 これまでの協議においては、北陸4県と JR西日本が一致協力して、北陸新幹線の建設促進を働きかけていくことを確認しています。
 今後とも、協議内容については、県議会、報道機関等を通じて公表していきたいと考えております
〔質問C〕
 北陸新幹線の建設工事がはじまり、新潟県境から富山までを経営分離し、第三セクター化することが現実の問題となってきています。県の試算では、県東部の第三セクター化では、開業10年目でも黒字になる見通しはないなどとする報道があります。県は、北陸線のJR西日本からの経営分離後の経営について、コンサルタント会社に依頼し、試算をおこなったということですが、そのすべての内容を公開してください。






 
平成12年12月の政府・与党申合わせにより、長野から富山までのフル規格による整備が決定され、富山以西についても段階的に整備をすすめる方針が明らかにされたところであります。
 並行在来線の概略収支については、現在の富山までの暫定的な整備を前提として、県内東部区間の試算結果をまとめたところですが、この富山までの開業の場合には、黒字転換しないと見込まれており、今後、徹底したコストダウン等により経費の削減を図る必要があると考えております。
 なお、富山以西についても、昨年の政府・与党申合せにより、段階的に整備を進める方針が明らかにされていることから、県内全域の概略収支も併せて試算したところであり、この場合には、第三セクターが鉄道資産を取得する場合で開業7年目、第三セクターが試算を取得しない場合すなわち上下分離方式を採用した場合には、開業4年目に黒字転換するとの試算結果が示されております。
 県としては、県内全域を含む区間での並行在来線経営が行われるよう、富山以西のフル規格整備の早期実現に向けて、引き続き、政府等関係機関に強力に働きかけていきたいと考えています。
(概略試算結果)
〔質問D〕
 北陸線の第三セクター鉄道会社化は、現在どのような準備がされているのでしようか。その現状をお聞かせ下さい。






 
 並行在来線の第三セクター化にあたっては、
@県民の通勤・通学の足を確保するため、関係市町村、経済界等の協力を得ながら、県が責任をもって存続を図ること。
A経営主体については、関係市町村と協議し、決定すること。
B経営分離に係る関係市町村の財政負担は、過大とならないよう配慮するとともに、列車の運行形態については、関係市町村と協議し決定すること。
等を基本方針として、新幹線の開業時期を視野に入れて、十分に検討していきたいと考えております。
 
〔質問E〕
 北陸線は、東北本線に匹敵する日本海側の貨物輸送の大動脈です。北陸新幹線の建設にともない北陸線が第三セクターになれば、鉄道貨物輸送がどうなるのか危惧されます。
 九州新幹線は2004年度に開業するということですが、経営分離される八代〜川内間は赤字が必至であり、「バス転換」することも検討されているという報道があります。もし「バス転換」となれば、線路の切断であり、鉄道貨物輸送はできません。
 そこで、お伺いしますが、北陸線が第三セクターになれば、鉄道貨物輸送はどのようになるのでしょうか。現在、検討されている内容について明らかにしてください。
 
 北陸本線の鉄道貨物輸送については、日本海側の物流の手段となっていることや、エネルギー効率が高く環境にやさしいことなどから、重要な輸送機関であると考えております。
 第三セクター化された並行在来線においても、鉄道貨物が日本海側の物流の重要な手段として、存続されることが必要と考えておりますが、鉄道貨物輸送については、全国的な輸送ネットワークの確保という重要な問題であることから、国においても十分に検討されるものと考えております。













 
〔質問F〕
 今年3月JR西日本は、城端線、氷見線、富山港線の無人駅拡大、列車本数削減、最終列車の繰り上げなどを計画したのにたいして、県議会をはじめ、沿線自治体、県立高校長会、PTAなどの運動が実り、利用者の願いにそった一定の改善がなされました。
 この3月ダイヤ改正の対象ではなかった高山線は、今後列車本数削減などの計画があるのでしょうか。そのような事態になった場合、県あげて住民の要求にそって運動を展開されることが必要と考えますが、県としてはどのようにお考えですか。
 
 高山本線は、沿線住民の通勤・通学の足の確保や観光振興などの面で、重要な役割を果たしていることから、県としては、岐阜県や沿線自治体等で構成する高山本線強化促進同盟会において、JR西日本等に対しこれまでも複線電化やサービスの向上等について要望してきているところであります。
 また、来年3月のダイヤ改正の際には、富山県公共交通利用促進協議会、沿線市町村(高山本線強化促進同盟会員)、そのほか関係の皆さんと一体となって、利用客の利便性の低下を招くことがないよう、 JR西日本金沢支社等に対して強く要望していきたいと考えています。








 
〔質問G〕
 来年2月改正道路運送法が施行されます。県内ではバス路線過疎地域や空白地域がますます増える状況にあります。運政審が全国のバス事業者におこなったアンケート(97年)では、全国全系統の2割、民間の赤字系統の3割が「廃止希望」という衝撃的なデーターがでました。県内でも規制緩和によって路線バスの廃止が急速にすすむことが予想されます。県内のバス路線は、今後どれだけ廃止が予想されるのでしょうか。その系統名を把握されておればお答え下さい。
 また、補助制度の変更にともなって、これまでの補助路線で補助を受けられなくなる路線があるのではないでしょうか。その場合の対策はどのようになるのでしょうか。
 
 県内の民営乗合バス路線の利用者は10年前と比べ半数以下となっており、今後ともモータリゼーションや少子化の進展によりバス路線の減少が懸念されます。
 今後、バス路線がどのくらい廃止されるのかについては、現時点で予想することはできませんが、路線の維持確保のためには、利用客の増加と利便性の向上が重要であることから、利用促進活動を積極的に展開してまいりたいと考えております。
 貴会におかれましても、バス利用の促進に一層のご協力を賜りますようお願いします。
 また、国の補助制度の変更に伴う補助対象路線への影響については、これまでの補助路線で国庫補助の対象外となる路線が生じることとなるため、県では、13年度に新たな県単独補助制度(富山県生活路線運行費補助金)を創設し、生活路線の維持確保のための枠組みを整えたところであります。
〔質問H
 生活交通の確保に向けて「地方公共団体がより主体的に関与していくこと」(運輸政策審議会自動車交通部会答申、平成11年4月)が求められるというのが国の考え方だということですが、具体的にはどのように対処される方針ですか。
 また、県が主体となる「地域協議会」は、どのように設置されるのでしょうか。鳥取県では県、関係市町村とともにバス事業者、PTAや高齢者代表、バス事業者労組代表などで構成していますが、富山県の場合どのようなメンバーになるものでしょうか。なるべく具体的にお答え下さい。

 
 生活交通の確保を図るためには、何によりも地域住民のより一層の利用が重要であることから、公共交通の利便性の向上と啓発活動の推進が必要であると考えています。
 このため、県では、富山県公共交通利用促進協議会を昨年6月に発足させ、公共交通の利用促進策や啓発稼働を展開しているところであります。
 また、昨年度に「富山県公共交通活性化総合対策補助制度」を創設し、公共交通活性化の計画づくりや施設設備等に対する市町村の主体的な取り組みを総合的に支援することとしたところであります。さらに本年度は、新たに県単独の「富山県生活路線バス運行費補助制度」を創設し、国庫補助の対象外となる生活路線の確保に努めているところであります。
 ご質問の「地域協議会」については、本年5月末「富山県生活路線バス協議会」としてすでに設置したところであります。
 この協議会は、国土交通省中部運輸局自動車部長、国土交通省中部運輸局富山陸運支局長、富山県生活環境部長、市長会代表、町村会代表、富山県バス協会会長、関係市町村、交通事業者及び交通事業労組の代表などで構成されています。
 
 
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