18トリソミーについて(2005年2月生命予後についてを追加)
  18トリソミーとは・・・・

人間の体は、全ての細胞に通常46本の染色体があります。
そして、それぞれが二本一組の対をなしています。
このうちの22対(44本)は、常染色体とよばれ、男女に共通しますが、
残りの一対は性染色体で、男性はXY、女性ではXXです。
22対の常染色体には、1番〜22番の番号が付けられています。

18トリソミーとは、人の体にある18番の染色体が、通常では2本あるところ、
1本多い状態、つまり3本になっている染色体の数的異常です。

数的異常で、最もよく知られているのがダウン症で、21トリソミーと言います。

我が家にあった「家庭医学大全科」(法研)には、以下のように書かれていました。

18トリソミーは、ダウン症についで多い数的異常ですが、約5000人に一人の頻度で
出生します。しかし、心臓や腎臓や中枢神経系の奇形が重篤なため重度の発達遅滞を
伴い、1歳までにその約90%が死亡してしまいます。また、女子に多く、出生時に
頭蓋変形や独特の手指の屈曲などの特徴的な外表奇形がみられます。

染色体の数の異常は、生殖細胞(卵子や精子)をつくる細胞分裂(減数分裂)の時に
突然変異が生じ、通常ならば46本の細胞が23本と23本に別れるところ、
24本と22本など、異常な染色体数の卵子や精子ができることで生じます。
1本過剰な場合をトリソミー、不足することをモノソミーと言います。
18トリソミーは、第18番の染色体がトリソミーになった卵子か精子が、
通常の卵子か精子と受精された場合に生まれてくるのです。
生まれてくるトリソミーは、21トリソミー(ダウン症)の他にも、13トリソミーもあります。
流産児を調べてみると、その他の番号の様々なトリソミーが見られます。
よって、その他の番号のトリソミーは、残念ながら出生に至らぬまま力尽きてしまうことが
わかります。

トリソミーの発生頻度は、一般にダウン症について指摘されているように
母親が高齢になると発生頻度が高くなることが知られています。

 ほとんど全ての夫婦が、染色体異常を経験していると考えられるわけ・・

染色体異常には、数の異常の他にも、構造異常があります。これは、染色体が数箇所で
切れてしまい、その切断断片が別の染色体部位に再びくっついてしまうというものです。
構造異常には、遺伝子に過不足を伴わない均衡型異常と、過不足を伴う不均衡型異常
あります。前者は通常、無症状とされます。

このように、一口に染色体異常と言っても、実に様々なタイプがあります。
それが、23対(46本)について、それぞれにおきる可能性があるので、その種類は
大変な数に及びます。そこで、染色体異常の発生頻度をみてみると、

卵子の異常   約25%
精子の異常   約15%
受精卵の染色体異常率   30〜40%
自然流産時の染色体異常率  約50%
新生児期での異常率   0.6%


となり、驚くべき高い頻度でおきている現象と考えられるのです。

つまり、ほとんど全ての夫婦が染色体異常を経験しているが、
そのほとんどが「着床」までたどりつかない、またたどり着いても流産してしまう場合が
多いと考えられるわけです。
染色体異常は、誰にでも起こりうることなのですが、受精卵を含めた胎児が命に縁が
ない場合は「うちには(うちの家系には)、誰もそのような人はいない」という状況になるし、
命に縁がある場合は「染色体異常児が生まれてくる」ことになります。
このことを、ほとんどの人が知らないで過ごしているのです。

染色体異常は、人にとって稀なことではなく、
またほとんどの場合遺伝するものではなく、
(染色体異常がある人が親になる場合を除く。その場合は ケースにより様々です。)
そして、同じ染色体異常であっても、一人一人の症状は様々なのです。


  18トリソミーに種類ってあるの?

18トリソミーの大多数は、先ほど書いたように、数の異常がある卵子か精子が受精して
生まれる標準型トリソミー(フルトリソミー)です。この場合、体細胞の全てが
18トリソミーになっています。
たつきの場合、特に何も言われませんでしたが、フルトリソミーだと思っています。

その他に、受精後の分割分裂の初期に、一部の細胞が染色体不分離を起こしてしまい、
正常細胞とトリソミーの細胞が混在してしまうモザイクトリソミーもあります。
モザイクトリソミーについては幅があり、限りなくフルトリソミーに近い状態から、
ほとんど正常に近い場合も考えられます。モザイクトリソミーの正常細胞とトリソミーとの
混在比率は、臓器や、時期によっても変わってくるので判定は非常に難しくなります。
大まかに言えば、モザイクトリソミーの場合は、フルトリソミーよりも症状が軽いと推定
できますが、どのくらい軽いのかはそもそも比率の判定も困難ですし、個々の状況に
よって全く違ってきます。

また、その他に、18番染色体の一部が3本になっている部分トリソミーもあります。
これは、染色体の構造異常(転座や重複)が原因となります。

18トリソミーのうち、フルトリソミーは約80〜85%(95%としている文献もありました。)、
モザイク型は約10%、転座型は約5%といわれています。

  次子の再発率は?

ダウン症の場合、統計的に、次子の再発率は一般の場合よりもやや高くなる傾向が
知られています。18トリソミーの場合は、ダウン症よりも症例が少なく、十分な統計が
とれていないようです。
そのような状況ですが、今のところ18トリソミーの次子の再発率は、約1%以下と考えられて
います。日本で、71例の18トリソミーの家族の次子の出生前診断を行い、
同じ染色体異変を伴った症例は0(0%)と言う報告があります。
(鈴森 薫著 「出生前診断」診断と治療社)

ただし、部分トリソミーの場合は、両親のどちらかに均衡型の相互転座(通常無症状)を
認める場合があり、それが認められた場合は次子の再発率が高率となるため、
両親の染色体検査を行うよう言われる場合があるようです。
(両親の染色体検査については、フルトリソミーでも薦める病院もあるようです。
 私の場合は、「両親の染色体検査も次子の羊水検査も必要ない」と言われました。)

★ご参考★ 実際に遺伝カウンセリングを受けた方のお話です。

  まとめ? 私が思ったこと・・・。

染色体という言葉も普段聞きなれませんし、それが「異常」だなんて言われて・・・・・
私は恐怖感で一杯になりました。初めは、何か「異常」な生き物がお腹に宿ってしまったか
のような気すらしました。(たっちゃんごめんね)

どうしてこんなことになっちゃったのだろう?
何かの罰なのか?これから私の人生は暗転してしまうのだろうか?等と、
果てしない不安に襲われてしまいました。

でも、よ〜〜く考えてみると、染色体の一つ一つに載った遺伝情報は100%私たち
両親から伝えられたもの
。染色体の数が違ってしまっただけなんですね。
ただの、かけがえの無い、かわいい〜我が子なのです。
時間の経過と共に、そして沢山のお友達に支えられて、今では、そのように思っています。
いろいろなことを教えてくれる、とっても頑張りやさんの子ども達です!

 18トリソミーについて最近の動き

18トリソミーのような重篤疾患をもつ子供の治療について、ガイドラインを作る動きが
あります。染色体異常であるというだけで、治療を控えるということではなく、
お子さんお一人一人について、十分に検討され、また両親に対するフォローが
十分にされていくことを願っています。

 詳しくはこちらをご覧下さい⇒ガイドラインについて

「18トリソミーの会」のHP内の、「18トリソミーってどんな病気」の中に、
「臨床医の立場から」という項目があります。
18トリソミーをめぐる医学の視点について書かれており、大変参考になります。
是非、ご参考になさってください。 ←こちらからどうぞ!

 生命予後について・・・(2005年2月

先天異常に関する最もスタンダードな教科書である
”Smith’s RecognizablePatterns of Human Malformation”では、
13および18トリソミーに対する新生児期のケアは
「診断がついたら延命のための侵襲的治療は中止すべき(第4版)」という表現から
「診断がついたら延命のための侵襲的治療の制限を真剣に考慮すべきである。
両親と児の状況は個々に異なる事を考慮しなければならない
(第5版)」
という表現に変りました。

親の会でおこなわれた 平成15年の9月に「第一回 公開セミナー」の資料では、
詳しい解説、成長についてや、手術例等も書かれており、大変参考になります。
ごくごく一部の記述ですが、ここには以下のように書かれていました。
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「生命予後に関して、最近発表された、18トリソミーの予後に関する米国の大規な
研究によれば、平均寿命が10〜14.5日、一年以上の生存が5.6〜9%という
ことでした。これは積極的な治療をおこなっている病院、そうでない病院を
全て含めた結果であり、米国の平均的な状況を反映していると思われます。
長野県立こども病院では、すべての18トリソミーのお子さんに対して、
生命を維持し苦痛を取り除くために必要な呼吸循環補助と経腸栄養を可能にする
消化管手術を行っていますが、開院依頼10年間に入院した18トリソミーのお子さん
26人の平均寿命は280.5日、1歳以上の生存は23%でした。この事実は
治療方針によって生命予後が大きく変りうることを示しています。」

「現時点で核になる情報は、『約5〜10%のお子さんが一年以上特別な治療を要する
こともなく生存し、ゆっくりながらも確実に発達をとげていく』という事実です。
現在の標準的な小児科医療を適応するならば、さらに多くのお子さんがより長く快適に
生存することが可能になるかもしれません。」

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参考(この記述の参考にしました。本文で紹介したものは省いています。)

「18トリソミーの会」のHPにある「18トリソミーってどんな病気?」
「ぐーぐーhandbook」 18トリソミーの会・・・親の気持ちを含めて大変詳しく書かれています。
「小児科診療・第64巻・増刊号」

「18トリソミーの会」のリンクから様々な専門的なサイトへ行けますので、
  ご参考になさってください。
 間違えなどありましたら、ご指摘ください。

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