三ラウンド・システム 竹蓋幸生

トップページ トピックス 三ラウンド・システム 略歴 主な業績

はじめに システムの構造 システム使用の効果 システムの拡張

システム使用の効果

三ラウンド・システムによる指導の効果(1)
 図−1のシステムを使って指導すると難しい素材をどのくらい易しいと感じられるようになるかを模式的(figurative)に示したものが図−2である。模式的とは言ってもそれを裏付ける実験データもあるので、妥当性の高い模式図である。

1) 学習機会を素材の長さではなく、学習の深度(学習目標)で3分割し、教材を「3回に分散」して学習することで各回の難易度がまず1/3になる
2) その上で「各回のタスク間に有機的な関連」があるものにすると、先行するタスクの実践が後続のタスクの実践を容易にするので、各回の難しさを1/6にすることができる
3) 各タスクの実践に際して提示される「ヒント情報」がタスクの難易度をさらに1/2にするので、全体としては1/12の難しさになる
4) さらに残る「4種の情報」(事前情報、参考情報、補助情報、発展情報)提示の効果で、結果としては、素材のまま伝統的な手法で学習する場合の難易度と比較して約1/24の難易度になる

ということである。

図−2 各種の方策で低くなる素材(タスク)の「難易度」
図−2 各種の方策で低くなる素材(タスク)の「難易度」

ページ先頭へ
三ラウンド・システムによる指導の効果(2)
 図−2に示したように、素材の難しさを1/24にも低下させて、易しいと思わせることのできる指導法であるため、実際にそれを使った効果としても、図−3に見られるように、指導前に信じられないほど得点の低かった学習者が「絶望することなく」学習を続けられる。

 プリテストで11〜20点、に過ぎなかった学習者の得点が58点、それに21〜30点の者が53点上昇していることが図−3に示されている。このことは、これまで必要だと思っても使えなかった、レベルの高い(難しい)教材が3Rの出現によって使えるようになったことを意味する。

図−3 プリテストの得点別に見た三ラウンド・システムによる「指導の効果」
図−3 プリテストの得点別に見た三ラウンド・システムによる「指導の効果」

ページ先頭へ
三ラウンド・システムによる指導の効果(3)
 3Rの使用により得られるもっとも重要な効果はそれによって、英語力が大きく高まるということである(図-4:左側の斜めに上昇している実線)。しかも高まった英語力は、図−4の右側の下降しない波線に見られるように、極めて強く定着するだけでなく、図−5に見られるように他技能の向上という形での大きな転移もある。図−5に示したのは読解力の向上であるが、語彙指導を適切にした場合、聴解力養成からの転移は60〜80%に達している。

図−4 教材の理解力向上と「定着度」
図−4 教材の理解力向上と「定着度」
図−5 他技能への「転移」
図−5 他技能への「転移」

 3Rはその指導効果が高く、構造も具体的であるため、CALLで使われるCD-ROM教材制作のための基礎理論としても採用され、すでに11枚のCD-ROMが完成している。そのうちの3〜5枚を貸与して約6ヶ月自習させた学習者10名のうち、勤務や就職試験のため多忙でその学習を終了しなかった者を除いて、7名の学習者が、表−1に見られるように、目標のTOEIC 900点以上、それにTOEFL 580点以上(1名 577点)を達成した。3Rが他の下位目標の達成と合わせて、開発時に設定した最終目標をもほぼ達成していることを示している。

TOEFL-PBT   TOEIC
被験者 指導前 指導後 被験者 指導前 指導後
1 603 647 A 874 920
2 573 580 B 865 905
3 567 580 C 860 915
4 553 597 D 835 915
5 543 597 E 831 930
6 543 590 F 825 925
7 540 577   G 815 900
平均 560 595   平均 844 916
表−1 千葉大学教育学部での指導実績の一部

 効率の面から見ても、実験室環境(3R:実験)ではCALLシステムによる約20時間の指導でTOEICに平均103の上昇(学習開始時630以下の学習者のみ4群、21名)を、そして英語力レベルの上級学習者を含み、語彙指導を付加したCALLによる自習環境(3R:自習)では、約70時間の学習でTOEFL-PBTにほぼ24の上昇(ほとんど学習しなかった者のマイナス・スコアも含む64名の学習者の平均)を記録している。(図−6)

図−6 指導効率の比較:3R対伝統的指導
図−6 指導効率の比較:3R対伝統的指導

 3Rのもう一つの特徴は、図−7に見られるように、TOEFL−PBTのスコアで400から600まで、どのレベルの学習者にも実質4ヶ月の指導(CALLによる自習)、またはそれ以下で23〜44の上昇と、幅広い能力レベルの学習者に有効に使えるということである。

図−7 幅広いレベルで安定的に使える3Rの指導法
図−7 幅広いレベルで安定的に使える3Rの指導法

 図-8には、平成12年度に三ラウンド・システムで学習した千葉大学教育学部英語科の学生20名の「Equal-Appearing Intervals法による指導システムの心理的評価」を含めた。


調査方法: アンケート(無記名)
実施日: 平成12年11月21日(火)、28日(火)
回答者: 千葉大学教育学部英語科「心理言語学講義」受講者20名
使用教材: CD-ROM教材「Listen to Me!」シリーズから、1〜3枚を選択して学習
(College Lectures, People Talk, TV-News, Movie Time 1, Movie Time 2)

■授業計画表
■CALL学習
  三ラウンド学習
  辞書情報
  ヒント情報
  解説
  ユニット・テスト
■教材 内容
  難易度
■語彙学習
  分散学習
  カセットテープ
  パソコン
  印刷資料
 

小テスト(毎週実施)

■講義「心理言語学講義」
■教科書『英語教育の科学』
■学習は興味が持てる
■学習を続けたい

図−8 千葉大学における英語コミュニケーション能力養成指導についての学習者による心理的評価

戻る  ページ先頭へ  「システムの拡張」へ

yuk@mue.biglobe.ne.jp Copyright 2002 Yukio Takefuta All Rights Reserved.