ラウンド・システム 竹蓋幸生

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はじめに システムの構造 システム使用の効果 システムの拡張

システムの拡張

中核システム
 実験室環境では、CALLによる約20時間の指導で、4群21名の学習者が平均でTOEIC 103の上昇を記録した。実験室環境とは、動機づけ、教材内容の選択、難易度の調整、動機づけ、学習計画、学習環境等、すべての学習条件を理想的に近いものにして1991年から1995年の4年の期間に竹蓋研究室での一連の博士論文作成研究として行われた指導実験のことである。

 この期間に使われた指導システムが三ラウンド・システムの原型で、「三ラウンド制のヒアリング指導システム」と呼ばれていたものである(竹蓋、1997)。現在でもこの部分は指導システムの中心部分であり、重要部分を構成しているので、三ラウンド・システムの「中核システム(Core System)」と呼ばれている。


複合システム
 1997年頃から、指導システムの評価をTOEFLに変えたが、TOEFLがより広範な語彙力を要求するテストであるにもかかわらず、指導要領の変更などもあり、学習者の語彙力の低下が年々著しくなってきた。このため、独自に「語彙指導システム」を作成(竹蓋、1997)し、「中核システム」と結びつけて学習させるための「複合システム(Unified System)」(図-9)を構築した(竹蓋順、2000)。

 中核システムと語彙指導システムは別個のシステムであるが、二つのシステムをバラバラに使うのでなく、「指導計画で二つのシステムによる学習を緊密に結びつける」形をとっているので、二つの要素からなる複合システムと呼んだものである。

図−9 複合システム(US)
図−9 複合システム(US)

 学習計画(竹蓋順、2000)で結びつけられることによって、「複合システム」はもう一つの特徴を持つようになった。それは、中核システムよりも自習がし易くなったということである。

 実際に1997年度から1999年度にかけて千葉大学で行われた指導はこの計画にしたがって、主に「自習形式」で行われたものである。複合システムを使用して、1997年度から1999年度の3年間に行われた自習形式の指導では、延べ64名の学習者が参加した。彼(女)らは、各年度の後期(実質約4ヶ月)に平均約70時間をかけて学習し、TOEFL-PBTの公開テストを全員が個々に受験した。その結果として平均24の上昇が記録されている(図−10)。自習であるからあまりまじめに学習しない者もあり、学習後と学習前のスコアの差がマイナスになる者も64名中9名あったが、そのような学習者のスコアを含めて、全員の平均で24の上昇があったということである。

図−10 プリテストのスコアと実質上昇量の関係
図−10 プリテストのスコアと実質上昇量の関係

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総合システム
 次の段階として、学習者の数が増え、しかも自習による学習では、同じ教材を使用しても効果に大きなバラツキのでることがわかり、複合システムを要素とする、さらに高次の「総合システム(Integrated System)」の必要が見えてきた。その大学生用総合システムのプロトタイプとして、竹蓋(1997)には、能力のバラツキに対応するための5段階(縦軸)、それに興味のバラツキに対応する5種類(横軸)、最低でも、計25種の教材を要素とするシステムの必要が示唆されている(図−11)。

図−11 総合システム(IS)の全体像
図−11 総合システム(IS)の全体像

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 総合システムや、複合システムの要素である中核システムによる指導だけでも、あまり高くないレベルでは総合力を評価できると言われるTOEICやTOEFLのスコアが上昇する英語力を養成することが可能である。しかし、真の実用になるレベルのコミュニケーション能力の養成を目指すのであれば、総合システムを要素とする、さらに高次なシステム、「包括システム(Comprehensive System)」が必要であることも竹蓋他(2002)には示唆されている。

 包括システムとは、図−12に見られるように、マルチメディア・パソコンを活用した自習に、日本人英語教師、原語話者教師、友人、学習環境等のすべてが緊密に連絡をとってそれぞれの持ち味を最高に活かした協力体制での指導をするということである。

図−12 包括システム(CS)
図−12 包括システム(CS)

 現状は、9枚のCD-ROMにまとめられた9種の中核システムとそれに組み合わせて複合システムを構成できる語彙指導システムが4セット制作されている状況で、まだ総合システムの完成にはいたっていない。しかも、総合システムまでの指導は、1人または2〜3人の教師で可能であるが、包括システムでの指導は全学的な理解と協力体制、管理者、経営者のリーダーシップが得られないと効果的に機能しないので、真のシステムの実現までには少し時間が必要である。

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