B 朝のミュンヘン

 2週間ほど雨模様だったミュンヘンも、回復しつつあるようだ。月曜の朝8時半。ちょっと散歩に出ましょう。ホテルの前にあるのがヴィクトリエン・マーケットで、ミュンヘンの台所と呼ばれ、それほど広くもない場所だが、あらゆる野菜と果物が露天に並べられている。昨日食べた巨大な白アスパラがどっさりある。果物屋ではジュースにもしてくれるようで、準備を終えた3人のおっちゃんが話しながら飲んでいる。英語が通じそうにないのでやめたが、身ぶり手ぶりででも注文すればよかった。安くておいしそうだ。

 中央には小さなパン屋さんがあり、焼き立てのいいかおりがしている。時間のない人は、大人も子供も、手に持ってかじりながら歩いている。別に行儀が悪いわけでもないようだ。おや?この小学生の女の子はチェリーを朝ごはんにして歩いている。チェリーも旬であり、あちこちの屋台で売っている。私も買おうかと思ったが、 「屋台によっては鮮度に問題あり。少なくともよく洗うこと」との辻君の言葉を思い出した。後に買って食べたがとてもおいしかった。

 通りの向かいが、肉屋ばかり5件ほど並んでいる。牛・ブタ・羊などだろうが、たまにはうさぎもぶら下がっているそうだ。ソーセージの種類の豊富なこと!焼く、いためる、ゆでる、生で食べるなど、用途によって様々だ。なぜか働いているのは女性が多い。商店を見て歩くとすぐ、ミュンヘンで一番古いペーター教会。私は入らなかったが、展望台があるようだ。

 おや?駅のほうから中・高校生がやって来たぞ。髪の色と服はてんでバラバラだが、男女共ズボンやジーンズであることは同じだ。
 日本の女子高生のように風俗嬢のようなミニスカートなど絶対に見られない。なぜなら、ドイツにおいては、そのようなミニ姿は「おそってください」と言う意思表示であり、何をされても文句も言えないからだろう。

 ペーター教会の角を左へ行くと、昨日私がその地下の駅から出て来たマリエン広場。旅行者の集合場所だ。市庁舎の仕掛け時計グロッケンシュピールの前には8mほどの柱の上に金のマリア像。350年ほど前のもので、柱の下には4人の天使がいるのだが、1人はおらず、「天使は修理中」のカンバンになっていた。
 ここから先はショッピング・グルメ通りなのだが、どの建物も中世のままのように見えてとてもいい。
 ミュンヘンの朝は早い。どの店も9時前なのにオープンしている。これは、ビヤホール以外の店は、夜8時までしか営業できないと「法律」で決まっているせいだ。2年前までは、6時までだったらしい。すごいことだ。夜はビールか芸術でも楽しんで、さっさと寝ろ!と、国が、言っている。
 私はある小さな店の前で絵葉書を見つけた。一枚いくらで買うのだが、色々あって楽しい。4種類、20枚を手にし、中にいた美人の娘に「ここで売っているのか?」と言うと、とても愛想よく「ヤー」と言う。そしてオーバーなアクションで1枚、2枚、……と数え、「23枚ですね!」とやりやがった。
 「おまえの頭はサル以下か!」と言いたかったが、そんなドイツ語は知らない。英語で「ノー!20。ワンスモア、カウントプリーズ」とやったら、20枚になった。
 残念ながら、これもドイツだ。日本人などナメられていておつりをごまかすこともよくあるらしい。しかし、元々は日本人がまいた種のようだ。最低限のマナーも守らず、ガアガアと突き進む日本人御一行様。現地人も買えない高級品に、多少おつりをごまかされようが、文句も「言えず」(言葉がダメ)、大金をばらまくおばさま軍団。
 「帰ってしまう人はいいでしょう。でも、すんでいる人間は“アレは君の仲間かい”と言われ続けます……。」
 旅の恥は、かき捨ててはいけない。

 もう一軒のみやげ物屋は、けっこう親切だった。物価は日本と同じくらい高いが、妻にTシャツの1枚くらい買っとこう。しかしどれもでかい。もっと小さいものを、と言ううち、「子供用です」と出て来たのがちょうど良かった。なに、妻には黙っていよう。このTシャツを見た辻君は「アフリカあたりで作っている物ですね。2回も洗えば、糸がほどけて、ただの布になりますよ。」
 ……な、何、黙っていよう……。



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