第3回

 鳴海の視線の先――ドアの前に立っていたのは、幼なじみの智也と美幸だった。
「それ以上そいつに何かするつもりだったら、俺を倒してからにしなっ」
 智也はそう言い男に歩み寄る。
「なんでぇ。このオレに勝負しろってか? 笑わせんな、オレがてめえみてぇなガキ……」
 そこまで言って男の言葉が途切れた。
 男の視線がある一点から動かない。
 ――視線の先には黒光りする銃。
「ガタガタ言ってないで、早く鳴海から離れろっ! さもないと引き金を引くぞっ!」
「へ、そんなもんが恐くて、こんなことがやってられっか」
 男が言い終えると同時――
 バンっ
 智也が引き金を引き、プラスティックの弾丸が、男の後ろの壁にかかっているダーツの的の真ん中に命中し、粉々にぶち砕いた。
「わかっただろ。俺は冗談で言ってるんじゃないんだ」
 智也は再び男の額に狙いを定めた。
 男は動かない――いや、動けないのだ。
 自分の額を狙われていて、動くに動けなくなっていた。
「――5」
「!?」
 智也は言って一歩男に近づく。
「4」
 また近づく。
 男の方はまだ動けないでいる。
 下手に動くと、その瞬間に撃たれるからである。
 いかにプラスティックの弾丸とはいえ、まともに当たれば骨折ぐらいはするだろう。
「3……2……1……」
 言うたびに1歩ずつ、男に近づいていく。
 そして――
「ゼロっ!!」
 智也は引き金を引く。
 ――カチャっ……
 あれっ……!?
「あっ……そーいえば、さっきので最後だったんだ」
「アホかーっ!!」
 鳴海は思わず叫んだ。
「やっぱりハッタリだったなっ!!」
 ドスっ。
 言った男のこぶしが、智也の腹にまともに入った。
「くはっ……」
 その場にガクっと膝をついて倒れこむ。
「この程度かよ」
 そう言うと、男はまた鳴海に近づいていく。
 そのとき、鳴海と男との間に、美幸が割って入ってきた。
「こっちのお嬢ちゃんもオレと遊びたいのか」
 美幸はその言葉にまったく動じない。
 美幸は掌を男に向けて、なにかブツブツつぶやいている。
 風に乗って、美幸の口からなにか言葉が流れてくる。
 これは……呪文!?
 鳴海がそう思った瞬間。
「ヒート・ウェイブ」
 呪文の力が解き放たれ、凄まじい熱気が男を吹き飛ばす。
 男は背中を壁にぶつけた。
 男はまだ立ち上がろうとする。
「そうはいきませんよっ!」
 言ったのは、男の一撃を受けて力尽きたはずのセバスチャンだった。
「秘技! タライ召喚っ!」
 セバスチャンがそう叫ぶと、何もない男の頭上にいきなりタライが現れた。
 ゴーンっ!!
 タライに頭を直撃され、今度こそ男は行動不能になった。
 ――チンピラの男を倒した――
 ――成り行き上、智也と美幸が仲間になった――

「さて、これからどうしましょうか」
 男を役所に突き出して、報酬を受け取ったあと、鳴海とその他3人は、町の門にいた。
「あの男の言っていた通り、ハミの村に行ってみましょうか」
 セバスチャンの提案に思わず考え込んでしまう。
 あんな奴の言っていたことを信じていいのだろうか……
 たしかに、今の鳴海たちは、まともな武器という武器は持っていない。この際、手に入れてしまうというのもいいのだが。
「そういえば隣町の人が、この大陸の西端にある洞窟に、勇者のみが使える剣があるって言ってたけど」
 勇者の剣か……。
 結局のところ、レベルを上げながら武器探しということにはなるだろう。ならば、より利用価値の高いほうを手に入れたいところである。
さあ、どうしましょうか。

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