鳴海の視線の先――ドアの前に立っていたのは、幼なじみの智也と美幸だった。 「それ以上そいつに何かするつもりだったら、俺を倒してからにしなっ」 智也はそう言い男に歩み寄る。 「なんでぇ。このオレに勝負しろってか? 笑わせんな、オレがてめえみてぇなガキ……」 そこまで言って男の言葉が途切れた。 男の視線がある一点から動かない。 ――視線の先には黒光りする銃。 「ガタガタ言ってないで、早く鳴海から離れろっ! さもないと引き金を引くぞっ!」 「へ、そんなもんが恐くて、こんなことがやってられっか」 男が言い終えると同時―― バンっ 智也が引き金を引き、プラスティックの弾丸が、男の後ろの壁にかかっているダーツの的の真ん中に命中し、粉々にぶち砕いた。 「わかっただろ。俺は冗談で言ってるんじゃないんだ」 智也は再び男の額に狙いを定めた。 男は動かない――いや、動けないのだ。 自分の額を狙われていて、動くに動けなくなっていた。 「――5」 「!?」 智也は言って一歩男に近づく。 「4」 また近づく。 男の方はまだ動けないでいる。 下手に動くと、その瞬間に撃たれるからである。 いかにプラスティックの弾丸とはいえ、まともに当たれば骨折ぐらいはするだろう。 「3……2……1……」 言うたびに1歩ずつ、男に近づいていく。 そして―― 「ゼロっ!!」 智也は引き金を引く。 ――カチャっ…… あれっ……!? 「あっ……そーいえば、さっきので最後だったんだ」 「アホかーっ!!」 鳴海は思わず叫んだ。 「やっぱりハッタリだったなっ!!」 ドスっ。 言った男のこぶしが、智也の腹にまともに入った。 「くはっ……」 その場にガクっと膝をついて倒れこむ。 「この程度かよ」 そう言うと、男はまた鳴海に近づいていく。 そのとき、鳴海と男との間に、美幸が割って入ってきた。 「こっちのお嬢ちゃんもオレと遊びたいのか」 美幸はその言葉にまったく動じない。 美幸は掌を男に向けて、なにかブツブツつぶやいている。 風に乗って、美幸の口からなにか言葉が流れてくる。 これは……呪文!? 鳴海がそう思った瞬間。 「ヒート・ウェイブ」 呪文の力が解き放たれ、凄まじい熱気が男を吹き飛ばす。 男は背中を壁にぶつけた。 男はまだ立ち上がろうとする。 「そうはいきませんよっ!」 言ったのは、男の一撃を受けて力尽きたはずのセバスチャンだった。 「秘技! タライ召喚っ!」 セバスチャンがそう叫ぶと、何もない男の頭上にいきなりタライが現れた。 ゴーンっ!! タライに頭を直撃され、今度こそ男は行動不能になった。 ――チンピラの男を倒した―― ――成り行き上、智也と美幸が仲間になった―― 「さて、これからどうしましょうか」 男を役所に突き出して、報酬を受け取ったあと、鳴海とその他3人は、町の門にいた。 「あの男の言っていた通り、ハミの村に行ってみましょうか」 セバスチャンの提案に思わず考え込んでしまう。 あんな奴の言っていたことを信じていいのだろうか…… たしかに、今の鳴海たちは、まともな武器という武器は持っていない。この際、手に入れてしまうというのもいいのだが。 「そういえば隣町の人が、この大陸の西端にある洞窟に、勇者のみが使える剣があるって言ってたけど」 勇者の剣か……。 結局のところ、レベルを上げながら武器探しということにはなるだろう。ならば、より利用価値の高いほうを手に入れたいところである。 さあ、どうしましょうか。 |