全身の血液が沸騰してしまいそうなくらいに滾って、血管が破裂しそうなくらいに駆けめぐる。
 意識も景色も遠くうつろに、ただ鼓動の音だけがドクドクと聞こえる。
「はぁはぁ―――!」
 ぐちゅりっ!
 後ろから、姉貴の腰を掴んで引き寄せ、突き上げるっ。
「ふぅっ…ッく!」
 苦しげな声を上げて、姉貴が一瞬だけ上体を反らせる。
 グッタリと、俯せに尻だけを擡げて締め付けてくる。
「美希は…背中弱いんだよな…っ!」
 グンッと突き上げ、背中をツツと指で撫でる。
「ひゃぅっっ!…ば、かぁっ…せなか…だめっ…っっ!」
「でも、こうすると…凄い…締まってッ…っっ!」
 ぐぷっ!ぬちゅぐちゅっ、ごぷっ!
 ギュウゥと収縮する姉貴のそこを強引に肉槍で犯す。
 何度も撃ち出した濁液が蜜と混じってゴポリと漏れてくる。
「ふぁっぁあッ!あぁあっあっ!あきらっっぁあッ!ぁっぁああぁあぁッ!!」
 ビクビクと姉貴の膣内が震えて、締め上げてくる。
 構わず―――突く!
「ぁっぁああぁっ!あき、らぁッ…やっっ、も、う…許しっっきゃひッ!!」
 ぐちゅっ!にちゅっぐちゅっ!
 遮二無二に腰を振って姉貴のナカをかき回す。
 白んだ空も、流れる汗も、波の音も、全部が快感にかき消される。
「だめ、だっ…まだっ、俺は美希が欲しいっっ…!」
 悲鳴に近い声を上げて嘆願する姉貴を、構わずに犯した。
 断続的に聞こえる、濁った水音が少し、遠く聞こえた。
「ひぁっぁあぁっぁっ!!ら、らっ…めっ…もうっっ……〜〜〜っっ!!」
 ビクリッと、姉貴が竦んで、震えた。
「っっ!!」
 刹那、何度目かの射精が、絶頂が来た。
 ビュッ、と初めに比べるまでもなく少量の精液を姉貴の膣内に吐きだした。
「あ―――れ…?」
 くらりと、目眩がした。
 視界は真っ暗に、頭の中は真っ白に。
 体から力が抜けて、姉貴に被さるようにして倒れ込んだ。

 ―――夜が、明けようとしていた。

「んっっ……」
 目が覚めると、金縛りになっていた。…それが目覚めの感想だった。
 いや、正確には金縛りとかそういう類じゃなくて、何かが上に乗っているような、そんな重さだった。
 特に右手が痺れて全く動かないというか…まぁ、勿論犯人は―――
「おはよう、明」
「ん…おはよ…姉貴……」
 姉貴は俺の右腕をマクラにするように寝転がっていた。いつからそうしていたのだろう…とてつもなく右手が痺れている。
「む〜…」
 急に、姉貴が不満そうな声を漏らした。
「………?」
「…名前で呼んでって…言ったのに…」
 口を尖らせて、そんなコトを言ってくる。そういえば…昨夜そんなコトを言ってたような…。
「…いや、なんか呼びにくいな…と…」
 エッチの時ならどうということは無かったのにがやっぱり普通の時に姉貴を名前で呼ぶのは些か抵抗があった。…というか無性に恥ずかしくなってきた、今更ながら。
「やっぱほら…姉貴は姉貴なワケで―――」
「…まぁ、別にいいんだけど」
 姉貴はぶっきらぼうに、俺の必死の言い訳を言葉で切る。
「…ねぇ、明、昔はあたしのこと『姉貴』じゃなくて『お姉ちゃん』って呼んでたよね?」
「へ…?なんでいきなりそんな昔のこと……」
 確かに、姉貴が言うとおり昔はそう呼んでた気がする。でも、ハッキリと覚えてないということは相当昔―――
「なんかさ…、明の寝顔みてたら…昔のこといっぱい思い出しちゃった」
 悪戯っぽく笑う姉貴。なんか…嫌な予感がした。
「おねしょして叱られてる所とか、ケンカして負けて、泣いて帰ってきた時のこととか、ね…」
「…みっともないところばっかりだな…。もっと格好いいところを思い出してくれよ」
「ふふっ…、明が格好いい所なんて…あった?」
「……………………」
 そう言われると、でてこない。
 つまりは、俺は姉貴の前でロクな姿を見せてなかったというコトだろうか?
「俺は―――」
「うん?」
「俺は、姉貴の格好いいところ…覚えてるけどな」
「格好いいって………せめて可愛いとか言いなさいよね?」
「俺を泣かした奴らをその倍泣かしたのは…確か姉貴だよな?」
「…そんなコトしたっけ…?」
 姉貴は惚ける。だが俺はしっかりと覚えている。

 3人相手にケンカをして、当たり前のように負けて、ボロボロになって泣きながら帰ってきた俺を一番初めに見つけてくれたのが姉貴だった。
 驚く姉貴に泣きじゃくりながらしがみついて、ケンカした事を言った。勿論、負けたコトも。
 今となってはどっちが悪かったとか、そういうことは覚えていない。それでも、3対1ということに姉貴が激しく腹を立てて、姉貴と一緒にもう一度ケンカをしにいったんだっけ…。
 姉貴があんなに怒っている所を見るのは初めてだった。ケンカ相手達は姉貴を連れてきた俺をバカにして、それでまた姉貴が怒って、ケンカが始まった。
 二年生三人と、五年生と二年生のケンカは結果的には俺たちが勝ったわけなのだけれど、必ずしも大勝利というわけにはいかなかった。
 子供には子供のルールがある、同年代のケンカに上級生を連れてくるのは一種のタブーだ。
 その後も俺は姉貴のいない場所でからかわれ続けた。今思うと、それまでの俺はいろんな意味で軟弱だったと思う。
 だから俺は強くなりたいと思った、そして何度も挑んで、ケンカで三人に勝った。
 そういえば、その時からだった気がする。姉貴のことを『お姉ちゃん』ではなく、『姉貴』と呼び始めたのは。
 急にそう呼びだした俺を、姉貴は嬉しそうにバカにしてたっけか…。

「なによ、また上の空?」
 姉貴の不満そうな声が聞こえた。飛んでいた意識が戻ってくる。
「ん…、俺も昔のことを思い出してた。いつ頃から姉貴のコト好きだったのかな〜って」
「……いつ頃から好きだったの?」
 途端、姉貴が目を輝かせて、興味津々といった具合に聞いてきた。
「……秘密。」
「…ふぅん、そういう事言うんだ…?」
 不満を露わに、姉貴が呟いた途端―――
「痛っってぇ!!!」
 急に太股を抓られた。
「次は直接、アレを抓ってあげようか?」
 姉貴は笑顔で怖いことが言える人間だ。
 …俺が不能になったら困るのは姉貴なのに…。
「…む、なんか今、変なこと考えたでしょ?」
「…いや、別に」
 俺という人間は結構考えてる事が顔に出るタイプなのかもしれないと思った。
 …浮気したら、絶対にバレるな…。まぁ、絶対にしないだろうけど…。
「あれ…そういや今時間は?朝飯は―――」
「9時。朝ご飯は電話で断っといたけど?明も寝てたし…」
「そ、か…腹減ってるけどその倍は眠いからもっかい寝ようかな…」
 ふぁ…とあくびがこみ上げてくる。もともと、姉貴が人の腕をマクラなんかにしなければ目も覚めなかったというのに。
「明が寝るならわたしも寝ようかな」
「…姉貴あんまり眠そうじゃないな…」
「そう?明は凄い眠そうね……やっぱりあんた体力無いよ、絶対…」
 どうだろう、ほぼ一晩中ヤれば誰でもぐったりなりそうなものだが…。
「姉貴がタフすぎるんだよ…、ふぁ…ぁ……」
 瞼を閉じると急激に眠気が増した。
 側に姉貴の体温を感じながらの二度寝…、幸せ…だった。



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