太陽が昇って、日付が変わっても、俺と姉貴が体を重ねた事実は変わらない。同様に、体を重ねたからといって俺と姉貴が家族でなくなるわけでもない。
 目が覚めた後、二人で姉貴のベッドの後始末をした。シーツはいろんな液体でガビガビになっていたからはがして洗濯機に放り込んだ。
 俺が破った姉貴のパジャマは捨てることになった、姉貴が弁償しろと言う。
 しょうがないから次の日曜日に二人で買いにいくことにした。姉貴は少し複雑な顔をしたが、了承した。
 夕方になると親父達が帰ってきた。当然、親父達は俺たちが何をしたのかを知らない。別にわざわざ言うつもりもないから多分、知らないままになるだろう。姉貴がバラせば話は別だが。
 その日の夕食は結婚式の引き出物というか、伊勢エビやらなにやらを食べた。
 食べながら、親父が姉貴に『男が出来たら、まず俺の所に連れてこい』と言った。多分、親父なりに結婚式を見て何か思うところがあったのだろう、と勝手に推測した。
 姉貴は一瞬俺を見て、そして親父に愛想笑いを返した。つられて、俺も笑った。


 朝。
 7つの曜日のなかで俺が最も嫌いな月曜日が来た。当然、祝日でもなんでもないので俺は学校に行かねばならない。高等学校という学校に。
 姉貴は大学、だが朝食だけ食べると今日は休講だからと言い残して自分の部屋に戻った。いい身分だ、大学生とは。
「そうそう、明」
 ふいに、母が口を開いた。親父は既に朝食を終えているから食卓には俺と母しか居ない。
「うん?」
「昨日ね、お父さんとも話したんだけど、母さん…パートで働こうかな、って思うの」
「へぇ………」
 特に関心が無かったから適当に返事を返した。
「ほら、明も来年受験だし…、美希の大学の費用とかもあるしね」
「ふぅん、いいんじゃないかな。俺は別に反対はしないよ」
 反対などする筈がない、家から人が居なくなればなるほど、姉貴と二人きりの時間が多くなるのだから。
「そう、それなら…いいんだけど…。」
 母親が家を空ける、ということに少なからず母は罪悪感を感じているように見えた。
 本当に、気にしなくていいのに。
「あ、それとね。留守中になにか変わったことあった?」
 突然の問い、少しだけ顔が強ばった。平生を、装う。
「ん?何で?」
「ちょっと、美希の様子が変だったから…。何かあったのかなって―――」
「姉貴が作った晩飯があんまりマズかったから文句言ったらケンカになった。それくらいかな」
 言葉を遮って、言った。母は一瞬、きょとんとした後、プッと吹き出したように笑う。
「だからさ、母さんが家空けるのは丁度いいと思うよ。姉貴には少し料理を覚えさせた方がいい」
 母は笑いながら、そうね、と相づちを打つ。
 本音を言えば、姉貴が料理を覚えるとか覚えないとかは別にどうでもいいことだった。ただ、これで母の帰宅が少しでも遅くなればと思った。
 丁度、朝食が終わった。あとは準備をして学校へ行くだけ。
 学校が終わったら、急いで家に帰ろう。勿論、姉貴と一緒に居るために。

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