<エピローグ 『きつねのおやこどんぶり』>

 丁度一週間後の夜に、それは来た。
 深夜、午前1時を少し回ったくらいの時間帯。
 月彦は唐突に眠りから覚めてぱちりと目を開けた。
「ん……」
 明かりの消えた室内は暗い。
 が、カーテンの隙間から差し込む月明かりはいつになく明るい、恐らくは満月なのだろうか。
 夜空に煌々と輝く真円の月―――やや興味を引かれるも、わざわざベッドから出て見に行こうというとは思わない。
 隣には薄い桃色のパジャマを着た真央がすうすうと寝息を立てていた。
 寝返りをうった為か、初めはきちんととまっていたはずの胸元のボタンが一つ外れて谷間の闇がより一層強調されていた。
 真央は寝るときだけはノーブラだ、それは月彦が一番よく知っていた。
 月彦はごくりと喉を馴らしつつも、頭を振ってその雑念を打ち消した。
 さすがに安眠中の愛娘を起こしてまで、自らの欲望を満たしたいと考えるほど彼も鬼畜ではなかった。
 俺ももっかい寝よう―――と月彦が瞼を閉じる。
 その時、何かがちょんとベッドの上に飛び乗るのを感じた。
 人ではない、猫か犬か…そういった小動物の類のようだった。
「ん…?」
 月彦は気怠そうにもう一度目を開け、”重み”を感じた方を見た。
「…なんだ、キツネか」
 暗い室内だったが、その黒い輪郭と鈍く光る金色の目がハッキリと見えた。
 さもつまらないものでも見たような呟きを残して、再び月彦は瞼を閉じた。
 半分以上寝ぼけていた月彦の意識が急激に覚醒したのはその直後だ。
「キツネだってッ!?」
 月彦は叫ぶような声を上げて、大げさに体を起こそうとした。
 が、その両肩をぐいと押されて、それは拒まれた。
「しーっ、静かに」
 聞いたことのある声だった。
 この人を嘲るような独特のイントネーションは忘れたくても忘れられなかった。
「なっっ、お前っっ―――むぐぐっっ」
 視界に飛び込んできた女の姿に、月彦は悲鳴のような声を上げる―――それは女の掌によってふさがれた。
「ひさしぶり、元気してた?」
 女―――真狐は口の端を歪ませながら、まるで自慢するようにその長い髪を大げさにかき上げた。
 金色に輝く髪が闇を舞うと、ふわりと心地よい香りが漂ってきた。
 香水やそういった化学薬品の匂いではない、もっと原始的な、牝そのもののフェロモンのような匂いだった。
「な、何しにきやがった!」
「夜這いよ、決まってるじゃない」
「なっっ…んんっくっ!」
 月彦が何か言葉を発するより早く、真狐の唇がそれを塞いでいた。
 ずるりと、触手のように長い舌が巧みに口腔内に滑り込んでくる。
「んーっ…」
 真狐は喉を鳴らしながら、体を月彦へと預けてきた。
 両腕を後頭部へと回し、舌を蠢かせながら噛みつくようにして唇の結合をより濃密なものにする。
 ちゅっ、ちゅっ…と、室内に淫らな音が漏れた。
「んあっ…んむっ…う……んっ…ふ……んっ…」
 二人の吐息の合間合間に衣擦れの音が混じる。
 月彦の微かな抵抗と、それを抑制する真狐の手さばき。
 だがそれもすぐに止んだ―――月彦が抵抗をやめたからだ。
 強ばっていた体の力を抜き、真狐の舌の動きにエスコートされるように自らも舌をくねらせる。
 野良犬が零れたミルクを舐めているような音が、ぴちゃぴちゃと漏れた。
「んっ…んっ……」
 食らいつくようなキス。
 唇の結合をより密なものにしながら、真狐は体重をかけてくる。
 背筋がゾッとするような、柔らかい肉の感触が月彦の体前半分に伝わってきた。
「うっ…ぁっ…」
 思わずそんな声を漏らしてしまいそうになるのを、真狐の唇が再び塞ぐ。
 その手がざわざわと月彦の体を這い回り、顔、そして髪を撫でた。
 慈しむような手つきだった。
 そのまま、耳の裏を通って首筋へ。
 そこで、真狐の手は止まった、唇も、糸を引いて離れる。
「ねえ…破っていい?」
 月彦のシャツに指をかけながら、そんなことを囁いてくる。
 寝間着用に着ている、幾分ゆったりしたTシャツだ、ちなみに下はトランクスしか履いていない。
「なっっ…だ、ダメに…決まってるだろ!」
 雰囲気に流され、思わず頷いてしまいそうになるのを月彦は慌てて拒絶した。
「なによ、ケチ」
 月彦があからさまに拒絶したからか、真狐はつまらなそうに口を尖らせた。
「じゃあ、早くそれ脱いじゃってよ」
「な、何で脱がなきゃいけねーんだよ!」
 月彦は声を荒げるも、それは隣で寝ている真央を意識した音量だった。
 つまりは、小声だ。
「嫌がってるフリなんかして、月彦もシたいんでしょ?」
 そんなことはない―――と、月彦が反論しようとした矢先、真狐はそのしなやかな指先で月彦の下半身の怒張をやんわりと撫でた。
 既に血が集中しきっているそこは月彦の反論の意志を挫くほどの証拠能力を備えていた。
 月彦はちらりと、真央の方を見た。
 先ほどと同じ姿勢、規則正しい寝息のリズムは変わっていなかった。
「真央のこと、気になる?」
 くすくすと笑みを漏らしながら、真狐はその左手を伸ばして眠っている真央の頬を軽くむにいと摘む。
「なっ…バカッ…!」
「大丈夫。真央なら朝まで絶対目を覚まさないわ」
 そういう術をかけたから―――と、真狐は小声で囁く。
「だから…ほら、ね?」
 月彦の右手首をそっと握り、自らの胸元へと誘う。
 前回の時と同じ着物、たっぷりの乳房をもてあますように不自然に張りつめているその内側へと。
「ほらって……あ、あのなぁっ……」
 言い返そうとした矢先―――掌にあの、解けるような柔らかさの肉の感触が伝わってくる。
 反射的に、月彦は右手に力を込め、その肉の塊を握りしめる。
「ン……そう、もっと…強く、ね…」
 真狐は心地よさそうな吐息を漏らして、再び月彦に被さってくるとその右耳をちゅっと唇で吸った。
 強く―――言われた通りに、月彦は右手に力を込めてぐにぐにとその塊をこね回した。
「んっ……ぁっ…んっ…」
 湿っぽい声が、月彦の耳にかかる。
 月彦がぎゅうと揉み捏ねる都度、切なげな声が、耳元に。
「ねぇ…分かる? 乳首、ピンッピンに勃ってるの」
 囁き。
 月彦にそれを実感させるように、ぎゅうぎゅうと自ら胸を押しつけてくる。
「この前のこと思い出しただけで、そうなっちゃうの…。月彦のせいよ…?」
 開いている手が、月彦の胸から腹、股間へと這っていく。
 そしてトランクスの上から、怒張したそこを撫で、さする。
「こんなので奥までグチョグチョに掻き回されて、何回も何回も中出しされて、濃ぉい精液グリグリ塗りつけられてイかされて…」
 真狐は僅かに息を乱しながら、しなやかな手つきで月彦の股間をまさぐり続ける。
 既に怒張したそこはトランクスから先端部分がはみ出し、ぴくぴくと震えていた。
 真狐は指を引っかけ、トランクスを降ろして竿部分を露出させるとそこを直に擦り始める。
 親指で、既に先端にぬらぬらと滲み始めている蜜を亀頭全体に塗りつけ、
「…あんなスゴい事されたら病みつきになっちゃうじゃない」
 悪魔っぽく囁き、耳の中にまで舌を這わせてくる。
 そして小さく、『真央が懐く筈だわ…』と呟いた。
「……はぁ…」
 恍惚と呟く真狐の表情と、その手つきに月彦は反論、抵抗の虚しさを感じた。
 いや、むしろ反抗すればするほど燃え上がるタイプだと月彦は見た。
「ねぇ、ほら…、早くぅ」
 真狐は自らも着物を着崩しながら、月彦のTシャツの裾をまくり上げるようにして急かしてくる。
 月彦も観念したように、体を浮かしてシャツを脱いだ(脱がされた)。
「今日は、真央ともシてないんでしょ?」
「っ…まあ…な」
 下半身を巧みに扱かれ、月彦は体を強ばらせてその快感に耐えた。
 さすがに手慣れている―――と思った。
「そ、…じゃあ、たっぷり出るわね」
 ツツ…と、付け根の方から焦らすように裏筋を撫で、囁き。
 さらに、月彦の左手を自らの腰のくびれ、それよりも下、着物のスリットの奥のショーツへと導く。
「ね…、脱がせて」
 甘えるような声で真狐は囁き、月彦の指先に自らの股間を塗りつけた。
 指の先に、ぬるぬるとした液体の感触があった。
 ショーツの薄地の布を通してしみ出た、欲情の蜜だ。
 熱く、糸をひくようにして月彦の指に絡み付いてくる。
「……っ……」
 月彦は渋々…という具合に両手を真狐のショーツに引っかけ、するすると肉付きの良い太股を降ろしていく。
 わざわざ相手に”脱がせてもらう”というコトもまた、真狐自身のエロチズムの一環なのだろう。
 巧みに体を入れ替え、慣れた動作でショーツから片足を抜き、腰帯を解いてするすると着物を脱ぎ捨て、全裸になる。
 薄暗い室内だったが、しかしその白い肢体の輪郭はハッキリと月彦には見えた。
 ふわさっ…。
 真央のものよりも一回り大きな尻尾が得意げに揺れる。
 ふわさっ、ふわさっ。
 尻尾が揺れる都度、ある種の”香り”が月彦の鼻腔をついた。
 前回の時も、その前…真狐に攫われレイプ同然に犯された時も嗅いだあの香りだ。
 先ほど嗅いだフェロモンとも違う、そのような生やさしいものではない。
 甘く、嗅いでいるだけで脳髄がシビれてしまいそうな、気怠い香り。
「真央より、イイでしょ?」
「…体つきだけは、な」
 それは認める―――と、月彦は呟いた。
 真央の体がまだ未完成の、熟す前の果実だとすれば真狐の体は熟し切ったそれといえた。
 胸元の大きさ、柔らかさもも腰のくびれも、尻の肉付きも全てが牡を喜ばせる為に磨き上げられたような一体感があった。
 さらに、この男を狂わせる毒粉が加われば、いくら月彦でも真狐の誘惑に打ち勝つことは容易なことではなかった。
「……強がっちゃってサ、あたしのコト好きなクセに」
 ふふんっ、と鼻を鳴らして真狐が得意げに上体を起こした。
 一方、月彦はあんぐりと口を開けたままあっけにとられていた。
 勘違いも甚だしい、否定しようという気すら起きない発言とは正にこれのことだと思った。
「……はぁ」
 またため息が出る。
 そして、半ばやけくそという具合に―――
「っきゃっ…!?」
 真狐が喋る都度、たぷたぷと細かく揺れる、目障りなほどに巨大なそれを両手で握り、持ち上げた。
 重い―――というのがまず第一の感想だ。
 そして柔らかい、弾力は在るが、その外側表面の皮膚は文字通り溶けそうな程に柔らかかった。
「ぁっ…だめっ……そんなっ、急にっ………強くっ…………ぁっ…」
 強気そうな、人を食ったような独特のイントネーションが一転弱々しいそれへと変わり、ふさふさの尻尾の動きも戸惑うように控えめなものになる。
 月彦は構わず、眼前の美狐の巨乳を揉み捏ねた。
 圧倒的な質量は掌にはとうてい収まりきれない。
 片方の乳を両手で捏ねても良いくらいだ。
 ぐにぐにと握力の限りを込めて指を埋没させて、こね回せばこね回すほど鬱憤が溜まり、ムラムラと欲望が擡げてくる、真狐の乳はそんな独特の質感があった。
「あはぁぁっっ…ンッ…イイ、よぉ…おっぱい…気持ち、イイっっ……」
 両手をそっと月彦の両手首に添えて、自ら月彦の愛撫を促すようにして、法悦の声を上げる。
 月彦も真狐のそんな期待に応えるように、ぎゅうっ、ぎゅうと普通なら悲鳴を上げるほど強く握りしめ、さらに縁を描くようにこね回し、たっぷたぷと弾力を楽しむように時折唐突に手を離しては、その揺れる様を見た。
「…吸って、いいか?」
 両腕の筋肉が疲れ、怠くなるほどに乳房をこね回した後、月彦は小声で呟いた。
「ン…いいよ、月彦の…好きなように、シて」
 頬を上気させ、湿った吐息を漏らしながら、真狐はまるで赤子でも抱え上げるような手つきで、月彦の後頭部に手を回し、自らの胸元へと導く。
「ぁ…あんっ」
 ちうと月彦が痛烈に吸い付く―――同時に、真狐は月彦の髪を掻きむしって小さく声を上げた。
 月彦は構わず、ピンピンに勃起した乳首を唇でしっかりくわえ込むと、その先端を舌で撫でながらちうちうと吸い上げた。
 愛撫というよりは、母親の乳にすいつき、ミルクをねだる赤子のような吸引だった。
 これだけ大きけりゃ…出るんじゃないか?―――そんな考えが、月彦の頭に浮かぶ。
 その考えを試すように、月彦は自分が吸い付いている方の乳房をぎゅっ、ぎゅっと搾るように捏ね、ちぅぅうぅッ!と思い切り吸い上げる。
「あんっ…! もう、そんな、しても……何も、出ないんだからっ…」
 真狐の声は一際震えていた。
 月彦の髪をカリカリと掻きむしりながら、時折痙攣するようにびくびくと尻尾を震わせる。
「んっは…残念だな。これだけ大きけりゃ…もしやと思ったんだけどな」
「飲みたかったの? それとも…搾ってみたかった? …あっ、やっっ……噛んじゃっっっッ〜〜〜ぅぅぅうッ!!」
 吸っていた乳首とは別の、もう片方の乳首に吸い付くと、勃起したその先端の柔らかい肉を奥歯でくにくにと甘噛みする。
 後頭部を掻きむしる真狐の指の動き、力の込められ具合から、それが”吸う”や”揉む”より余程彼女に快感を与える行為だということを、月彦は悟った。
 微かに、意地悪っぽく口元を歪ませて、くにくにと甘く噛みながら、先端を舌で撫で、さらに空いている方の乳首も指でつまみ上げ、乳肉を捏ねながら親指の腹と人差し指でこね回す。
「やっっやだっっ…ダメッ…つきひこっっそんなっっ…ぁっっッ…っっくっぅぅんっ…だめっっ、い、イクッ…おっぱいだけでイッちゃうゥっっ!!!」
 ギリッ…と後頭部に爪を立てて、豊富な谷間に月彦の顔を無理矢理埋めさせるように体を強ばらせて、真狐はびくんと大きく体を震わせた。
 びくんっ、びくんっ、びくんっ!
 立て続けに、数度。
 体を震わせた後、
「はぁぁぁっぁぁぁ……」
 蕩けたような声を出して、一気に脱力した。
 全身が一気に蒸気して、雪のように白かった肌がうす桃色に染まり、玉のような汗がそこかしこに浮かぶ。
「…本当に、胸だけでイッたな」
 圧倒的な乳圧の狭間から月彦は顔をようやく抜け出させて、仕返しだと言わんばかりに、真狐の狐耳の内側にそっと意地悪く吹き込む。
「あんっ…だってェ……ホントに、胸、弱い、の……」
 くたぁと月彦にもたれ掛かり、脱力しつつもそのい指先は月彦の強ばりへと伸びる。
「ねぇ…次はこれでイかせて?」
「…ああ、わかっっ……ん?」
 月彦が体を起こそうとした時だった。
 何かが右太股の辺りに当たる感触―――それはすぐに痛みへと変わった。
「痛ッてッ!…な、何っ―――」
 激痛の正体を探ろうと、布団を捲った月彦の顔が強ばったのはすぐだった、もちろんそれは痛みのせいなどではない。
 ぶうと頬を膨らませて、もの凄い形相で月彦を睨みながらその太股を力一杯つねる、真央の姿が見えたからだった。

「あら真央。おはよう、早いのね」
 真っ先に声を出したのは真狐だった。
 長い髪をかき上げ、くすくすと嘲るように笑いながら、”娘”を見下ろす。
「お、おいっ…真狐っ………お前、さっき真央は朝まで起きないって…」
 狼狽えた声で月彦が見上げる―――が、真狐は何でも無さそうな顔をして、
「嘘に決まってるじゃない」
 むしろ『本気にしてたの?』という意味で意外そうな声を出す。
「う、嘘って…あのなぁっっ…い、痛っっ痛たたたたっ…真央っ、ちょっ…痛いって!」
 月彦は悲鳴を上げて真央の手を引きはがそうとするが、よほど力が籠もっているのか、スッポンのように離れない。
「……………………………………………」
 真央は無言でひたすら、つねる右手に力を込め続けていた。
 ジロリと月彦を睨む目は嫉妬どころではない、殺意すら感じられるほどだ。
「………父さま、どうして母さまとエッチしてるの?」
 漸く開いたその唇から漏れたのは、普段の真央の愛くるしい声からは想像もつかないような低い声だった。
 怒っているのは明白。
 返答に詰まる月彦をせき立てるように、さらに右腕に力を込める。
「いだだッッ…ち、違ッ………真央、これはエッチしてたんじゃなくてだな、真狐が一方的に夜這いしてきて―――」
「………月彦も乗り気だったクセに」
 月彦の言葉を遮るように、真狐がぼそりと漏らす―――その途端、つねる手に籠もる力がまた強くなる。
「いっっづッ…! ま、真狐っ……よけーなコトっっ…!!!」
「だって、ホントの事じゃない」
 くすっ、と真狐は笑みを見せたかと思うと、刹那のうちにその姿が霧のように消えた。
「きゃっ…!」
 という真央の声と、太股をつねっていた手が離れるのはほぼ同時だった。
「なぁに、真央…妬いてるの?」
 声がした方を月彦は見る―――ベッドの上に太股をそろえて座っている真央の背後に、真狐は回っていた。
 その両手はしっかりと、パジャマの上から真央の胸を掴んでいた。
「いちち…」
 月彦は漸く解放された太股のつねられていた場所に息を吹きかけ、凝視した。
 暗くてイマイチ見えないが、恐らくは痛々しく、紫色に変色していることだろう。
「やっ、嫌っ…母さま、離れてっっ」
 真央はいやいやと首を振り、背後にぴったりと張り付いている真狐を振り払おうと体を揺さぶる。
 が、体捌きの巧さは真狐の方が遙かに上だ。
 真央の抵抗もさして気にとめることなく、もぞもぞと胸元を撫で、
「ふぅん、今起きたばっかりってワケじゃなさそうね。乳首、勃ってるわよ…真央?」
 月彦にもしっかりと聞こえるように、態と大きな声で囁く。
 途端に、かあぁと真央の顔が真っ赤に染まった。
「う、嘘っっ…勃ってなんか…っっンぅう!!」
「嘘、じゃないでしょ? パジャマの上からでも分かるくらいぷっくり勃ってるじゃない」
 言葉の通り真狐はパジャマの上からコリコリと真央の乳首を指先で転がし、弄ぶ。
「あッ…! やっっ…だめっっだめっっ…かーさまっ…かあさまっっ…そこ、だめっっ…コリコリって、しない、でッッ…あッあァッ!」
 ゴクリ…。
 真央の悶える様を見て、なま暖かい唾の塊が喉を駆け下りていく。
 月彦は食い入るように、二人の絡みを凝視していた。
 自分以外の人間(といっても、真狐は妖狐だが)に愛撫されて、悶える真央を見るのは始めてのことだった。
 わき上がる、僅かな不快感―――その正体は嫉妬か、それとも…。
「わぁ…こっちももうグッチョリ…。パジャマのズボンまでびしょびしょじゃない」
「ひゃっぁっ…そ、それ…は…母さまがっ、胸、触った…からっぁ…ふぁっっ…!」
 真狐の右手が、パジャマのズボンの上から真央の股間を撫でる。
 しゅっ、しゅっ…という衣擦れの音は殆ど聞こえない。
 その代わりに、にちゃにちゃと、蜂蜜をかき混ぜるような音が、微かに…。
「だ、だめっっぇ! かーさまっ…音、立てないでっっ…!」
 慌てて、真央は耳を伏せ、太股をきゅっと閉じる―――を、真狐は左手でついとしこった乳首をつまみ上げ、
「閉じちゃダメ、真央の一番いやらしいトコロが大好きな”父さま”に見えないでしょ?」
 意地悪く笑いながら、その闇の中でよく光る目で月彦の方をチラリと見る。
「いィッいいっぁッふっっ…やっっやっァッ、と、父…さま、ァ…」
 真央はがくがくと太股を震わせながら、潤んだ瞳で月彦を見る。
 羞恥と、”何らかの期待”が籠もった目だった。
「いやらしい娘ね、寝たふりしながらこっそり自分でイジってたんでしょう?」
「っっっ、ち、違っっ…そんな事っ…してなっっッきゃんっっ!」
「嘘ね。お尻の方にまでシミが広がってぬるぬるしてるじゃない」
 真央に自覚させるように、その股間から尻までの間を撫で、貼り付けさせる。
「それに、何もしてないのにこんなに濡れてるんだとしたら そっちの方が尚更いやらしいわ」
「っっ……そん、なっっ…だって……」
 真央は言葉に詰まり、そして助けを求めるように月彦の方を見る。
 その視線に触発されて、月彦が何か助け船を口に出そうとしたときだ、真狐の方が一瞬早く口を開いた。
「ねぇ、月彦。足…痛いでしょ?」
「えっ…あ、ああ…まぁ、それなりに…」
 曖昧な口調。
 真狐の意味深な笑みを見ても、その意図するところが月彦には分からない。
「でも、真央も悪気があってやったんじゃないのよね?」
「……う、うん…」
 一転して、母狐の優しい口調に真央は辿々しくも頷く。
 そしてしゅんと耳を伏せたまま、『父さま、ごめんなさい』と小声で呟いた。
「あ、あぁ…いや、別に真央が謝る事じゃ…」
 浮気(というのも変だが)しようとしていたのは本当だし…と月彦は心の中で呟く。
「真央、月彦は謝罪なんかより、真央がオナニーするところ見たいんだって、どーする?」
 悪戯っぽく囁く、母狐の言葉に月彦と真央が同時に『えっ…』という声を上げた。
「そうよね、月彦?」
 犬歯を見せてにやにやと謀るような笑みを月彦に向ける。
「あ、あぁ…そうだな。見てみたい…かもな」
 真狐が勝手に打ち上げた提案だったが、月彦は即座に同意してみせた。
 真央が自慰をして乱れる様を見てみたい―――それは確かに、月彦の本音だった。
「えっ…えっ……父さま…そん、なっ……」
 真央は戸惑い、月彦と真狐を交互に見ては加速度的に顔を赤く染めていく。
 今にもぷしゅーっ、と煙が出そうな程に。
「ほら、真央、早く。かーさまもここで見ててあげるから」
 真狐は真央の肩に顎をのせ、腹の辺りを両手で抱きしめ、にやにやとさも楽しそうな笑みを漏らす。
「うっっ…やっっぁ……そんなコト……………でき、ない………………」
 真狐の心底愉しそうな笑みと、月彦の期待するような視線から逃げるように、真央は顔を真っ赤にしてうつむく。
 だが、そんなコトで月彦が―――否、それよりも背後にいる淫魔の化身のような母狐が承知する筈はなかった。
「出来ないの? 真央…折角”父さま”が見たいって言ってるのに?」
 真央の狐耳をついと摘み、その中に唇を埋めるようにして、真狐は小声で囁いた。
 父さまに嫌われてもいいの?―――と。
「っっっ……!」
 その一言で、真央は微かに顔を引きつらせた。
 無論、その呟きが聞こえなかった月彦には、真狐が何を囁いたのかは皆目検討がつかない。
 ただ、その一言で真央がその気になったことは確かだった。
「…っ…………」
 真央はチラリと月彦に目をやり、その視線が自分の方へしっかりと向けられているのを確認する。
 父さまに見られている―――そう認識するだけで顔はもとより、体中が上気し、火照るのを感じた。
「…ンっ…」
 艶めかしい息づかい、真央はゆっくりと、自らの胸を揉み始める。
 やんわりと、控えめな動作。
 揉むと言うより、撫でるというのが的確なその浅い、緩慢な動作をしばしの間続けた。
「ふっ…んっ…ぅ……ンッ……」
 濡れた唇からは、艶めかしい吐息だけが漏れる。
 感じていないわけではなかった、ただ嬌声は意図的に押し殺していただけだ。
 だが、それも時間の問題だった。
 掌に当たる、パジャマの下からせり上がってくるコリコリとした突起の感触。
 それと掌が当たり、擦れるたびにピリピリと痺れるような快感が背中へと走り、駆け上がってくる。
「はぁ…はぁ……ふぅ……ンッ…」
 真央の息は徐々に荒くなる。
 月彦の方へ時折目をやりながら、その都度、自分の自慰姿を観察されているということを再確認する。
 じゅんっ…。
 そんな音が、体の奥から聞こえたような気がした。
「ッ……やっ……!」
 真央は咄嗟に太股をきゅうと閉じ、まるで尿意を我慢するように片手でそこを押さえた。
「はぁぁあっぁっっ……」
 びくんっ、と体が軽く跳ねた。
 掌に当たるのは、下着とパジャマを通り越してわき出た自らの熱い蜜の感触。
 それも下半身のジンジンと痺れるような疼きと共に今なお、止めどなく溢れてくる。
 際限なく…。
「ずいぶん気持ち良さそうね、真央?」
「っっ…!」
 心中をズバリ言い当てられ、真央はギクリと体を強ばらせた。
 真狐はといえば、真央のそんな反応すら予想通りという顔をして、
「ほら、真央。もう服の上からじゃ我慢できないんでしょ?」
 真央の喉の辺りを撫でながら、囁きかけてくる。
「脱いで、直に…ね」
「…ぁっ……ぅ」
 真央は熱に魘されたような声を上げながら、おずおずとそのパジャマのボタンに手を掛けた。
 ぷつり、ぷつりと一つずつ丁寧に、その紅色のボタンが外される。
 首の下に僅かに見えていた白い素肌がその都度、徐々に下へ下へと切り込まれていく。
「下もよ、真央?」
「っっ……」
 微かな躊躇いの吐息。
 また、月彦の方へ一瞬だけ真央は視線を走らせた。
 そこにはいつもの慈愛に満ちた、頼るべき父親は居なかった。
 食い入るようにして、衣類を脱ぎ捨てていく自分の痴態を凝視する、一匹の牡の姿だけが在った。
 月彦はトランクスだけを身につけていた―――が、目の前で繰り広げられる真央の痴態劇にすっかり怒張した肉柱が今にもトランクスを突き破らんばかりに仰天していた。
 真央も、濡れた目でそれを見る。
「ぁ…やっっ…ぁ……」
 実父の興奮の様を見て、真央もまた下腹の奥が疼くのを感じた。
 じっとりとした熱い蜜がまた、パジャマのズボンに濃いシミを、否…それは既にベッドシーツにまで染みこみつつあった。
「っ…く、ぅ………」
 自らの体内から溢れる熱い淫汁と、月彦の視線に催促されるように、真央は両手の親指をパジャマのズボンに引っかけた。
 腰を浮かせて、ずりずりとそれを脱ごうとする―――を、真狐が咎める。
「ダメよ、真央。ショーツもちゃんと脱がなきゃ、真央がイジってる所、”父さま”に見えないでしょ?」
「っっそんなっっ……母さまっ、お願いっ…それだけは…許…して……」
「許す許さないはあたしが決めることじゃないわ。ねぇ、月彦?」
 真狐は同意を求めるように、視線を走らせる。
「そうだな、真央。ちゃんと全部脱ぐんだ」
 少し低い声、威圧するように月彦はハッキリと言った。
 普段の月彦なら絶対に出さない類の声だった、特に、真央に対しては。
 そういった理性云々を凌駕してしまうほど、今眼前で繰り広げられている痴態劇は月彦の興味をかき立ててならなかった。
「ほぉら、真央…”父さま”もああ言ってるわよ?」
 くつくつと笑みを漏らしながら、狐耳の中に唇を差し込む。
 脱ぎなさい―――耳の裏を舐めながら、そう囁きかける。
「ひうっっ……ぅっっ………」
 真央は強ばりを通り越して、怯えるような顔で月彦と、真狐の顔を交互に見比べた。
 そして、”拒否”が不可能だということを思い知った。
 無言で、ショーツに親指をかける。
 ゆっくりと、太股を通し脹ら脛を通し、足首を通して、ぐしょぐしょになったそれを脱ぎ捨てた。
 途中、幾度と無く月彦の方を真央は見た。
 ショーツを脱ぐ自分を観察しながら、実父がゴクリと何度も生唾を飲み干すのを、だ。
「ぁっ……ぁ、ぁっ…………」
 震える右手が、閉じられた太股の付け根に辿々しく埋没していく。
 薄い恥毛の先にすぐ、湯気が立ちそうなほど熱気を帯びた蜜の泉源があった。
 そしてすぐに、指先が勃起した淫核を捕らえた。
「ぁっ…ぁっ、あッ、んっ…!」
 声を抑えようとは思っていた。
 だが、それを上回る量の快感が止めどなく溢れてきて、たまらず真央は声を上げていた。
 にゅりにゅる。
 にちゃにちゃ。
 ちゅぷっ…。
 指を動かす都度、淫湿な音が室内に爆ぜる。
 真央は両耳を閉じてその音から逃げる―――が、もちろんそれは真狐が許さない。
 狐耳の先を摘み、最も音が大きく聞こえるように広げた、くつくつと意地の悪い笑みを浮かべて。
「ダメじゃない、真央…ちゃんと脚開かなきゃ」
「っっぁっ、…やっ、やぁっ……かっ、さま…ダメッ…!」
 ぴっ、と狐耳から手をどけて、今度は真央の両太股をすくい上げるようにして広げた。
 丁度月彦に対して大股を開くような格好になる。
「い、イヤッッ……と、さまっっ……見ない、でっっ……」
 悲痛な声。
 だが、月彦が目をそらす筈はなかった。
 むしろ目を細めて食い入るようにその場所を凝視した。
 そう、真狐に両足を持たれ、開かれて晒さし出されて尚かつ、淫らに快感を求めるその指の動きを。
「あはぁあっッ…んっぁ……ぁっ、ふぁっ……かあさまっ、だめっ……やめ、て……!」
 白い太股を震わせ、腰をくねらせて真央は”抵抗”をする。
 だがそれは拙く、あまりにか弱い抵抗だった。
 一番の抵抗の武器となるはずの両手がひっきりなしに自分を慰める道具として使われているからだった。
 右手の中指と薬指はぐっぽりとその秘裂に埋まり、掌の肉でピンピンにしこった淫核をこねくり回し、その都度溢れた蜜が粘着質な音を立てて弾け、糸を引いて右手に絡み付いてくる。
 左手も、今だ成長途中の乳房を丹念にこね回し、桃色の突起を焦れったそうに弄り、忙しなく動き続けていた。
「いつもそんなに激しくシてるの? それとも今日は…大好きな”父さま”の前だからサービス?」
 密着しながら真狐はうっとりと目を細める。
 くすっ、と鼻で笑いながら、
「…こんないやらしいオナニーする見たの初めだわ」
 態と、意地悪く囁きかけた。
「ぁっッ………い、やっ………かあさまっ………言わなっ………で…………っっぅうう……ッ!」
 真央は言葉も絶え絶えに、自慰に没頭する。
 息づかいはますます荒く、ぐっちゃぐっちゃと粘質の水音もますます激しく。
「はっぁっふっ………ッ……らめっ、あんっ…………指、止まらなっっ…やっっぁぁっ…ぁああッあああァァッ!!!」
 のけぞり、ピンと足先まで張りつめながら、真央は大声を上げた。
 ぷちゅっ…!
 深々と指の埋まったそこから痙攣する肉襞の圧力を示すように、蜜が飛んだ。
「ぁっ、ああぁあっッ…!……だめっっ…ぁっ、っッ… イクッ…イッちゃうっっ…ッッ!……ッ!!」
 びくんっ、びくんっ、びくんっ!
 月彦の目の前で、真央は淫らに声を荒げながら絶頂を迎えた。
 何度も全身を震わせ、その都度ぴゅっ…と甘酸っぱい蜜を飛ばして、ベッドシーツにいくつものシミを拵えた。
「…真央、」
 もはや何度目か分からない。
 月彦は生ぬるい唾をゴクリの飲み、絶頂の余韻でとろけきっている真央の肢体を舐めるように見た。
 全身はすっかり上気し、まだ幼さを残した秘裂は透明な蜜にテラテラと輝き、男を誘うようにヒクついていた。
 もう、我慢できない―――と、月彦が真央に飛びかかろうとするのを遮ったのは真狐だった。
「だーめ、月彦。まだダメよ」
 ぐったりと脱力しきった真央をベッドに仰向けに寝かせ、今度は自らがその上に被さる。
「もっとほぐした方が美味しくなるんだから」
 真狐はそう言うと、月彦に見せつけるように、真央に唇を重ねた。

「はぁんんっくふっ…んぶっんっ……!」
 くぐもった声。
 それがどちらが漏らしたのかは月彦には判別がつかない。
「んぁっ…はんっ、んぷっ…!」
 組み敷かれながら、真央が逃げるように手足をばたつかせる―――も、真狐の動きの方がやはり上手だった。
 寝技の攻防―――というにはあまりに艶めかしい、女二人の絡み合い、月彦は”オアヅケ”を食らったまま動くに動けなかった。
「んはっ…ふふっ、可愛いわよ、真央」
 真狐は口の端を歪ませ、そのままちゅっ、ちゅっ…と真央の体にキスの嵐を浴びせながら南下していく。
 顎、喉、鎖骨、胸、乳首、臍―――…マーキングでもするように強く吸い、唇を離した後は赤く痕が残っていた。
「やっっ…かあさまっ…そこやっっ…はぁんっっ!」
 真狐の髪を掻きむしり、真央が仰け反る。
 丁度、真狐の唇が恥丘を越えて真央の最も敏感な部位を捕らえたのだ。
「…嘘ばっかり。ここ舐められるの、大好きなクセに」
「いっっんっ……ッ! やっ…だ、だってっっひんぅぅっっ!」
 じゅるるっ、ぴちゃっじゅぶっずじゅるるるるっちゅっ!―――真央の反論を遮る程の音が突如鳴り響いた。
「い、イヤっっっ…かあさまっっやっっ…! 音、立てなっっ…嫌ぁあァッ!!! あんっぁっ…はぁっあふっぁっ…し、舌っ入れちゃだめっっあんンンぅッ!!!」
 真央が暴れるのも意に解さず―――という具合に真狐は真央の太股にしっかりと腕を回し、固定したまま逃がさない。 
 そのまま、両手の指ですっかり潤い、絶え間なく痙攣するクレヴァスを開き、奥まで舌を差し込んでヒクつく肉襞を丹念に舐め上げる。
「あっふぁっ…らめっ…らめっェェェッ! イクッ…また、イクっっゥううゥッ!!!」
 ピンと足先まで体を仰け反らせて、真狐の髪を掻きむしりながら、真央はイく。
「ぷはっ…んっ…ゴクッ…んっ」
 喉を鳴らす音。
 震える太股の合間で、真狐はぺろりと唇を舐める。
「凄いわぁ、真央。舐めても舐めても、いやらしい味の汁が溢れてきて…、ホント、エッチのことばかり多才なんだから」
 呟き、そしてまた、真央の股ぐらに顔を埋める。
「ぇっ…やっ、やあっ…イッ…ぁっはぁあああぁっ!!」
 先刻までよりも一層激しい舌使いが、真央を襲った。
 ベッドの上で身をよじりつま先立ちになり尻を浮かせ、声を枯らして声を上げ続けた。
 執拗な母狐の責め。
 絶頂と脱力、その繰り返し。
 思考はぼやけ、白い霧がかかったように何も考えられない。
 ただ、時折電撃のような快楽と絶頂、それに伴い、視界をはじけ飛ぶ火花が意識を失うことを許さない。
 どれほどその時間が長かったかは分からない。
 一時間かもしれないし、ほんの数分だったかもしれない。
 ぐったりと脱力しきった真央の耳に飛び込んできた言葉があった。
「くすっ…食べ頃、ね」
「ぁ………」
 囁かれた言葉に真央が反応するより早く、その体は凶悪な塊に貫かれていた。

 すっかり脱力した真央を抱きしめ、反転して自らがその下になる。
 真央の尻尾を掴み、尻だけを持ち上げるような格好にさせ、そして月彦に向かって誘いの言葉を唱えた。
「ほら、美味しそうでしょ?」
 月彦に見せつけるようにして真央のクレヴァスを艶めかしく指で開いてみせる。
 そこまでされて漸く、月彦は正気を取り戻した。
「へ…、あ、ああっ……」
 気のない返事はそれほど、絡む母娘の姿に熱中していたからだった。
 月彦は吸い寄せられるように二人の所まで来ると、真狐の指によって開かれたその場所をまず凝視した。
 暗い、月明かりしかない室内。
 本来ならばそのような状態で細部まで見えるはずはない―――だが、月彦の目には確かに見えた。
 ヌラついた蜜を涎のように零して、ヒクヒクと男を求めるように蠢く肉襞の動きが。
「真央…いく、ぞ」
 猛りきった剛直を宛い、尻の肉を揉みながら、月彦は一気に腰を打ち付けた。
「ぃいッッうッ…!!!」
 突然の事に悲鳴を上げたのは真央だ。
 びくんと背を仰け反らせる―――を、真狐が抱きしめ、
「ふふ、目…覚めた?」
 怪しく笑みながら、その唇を塞いだ。
 そしてそのまま、右手を真央の尻へと伸ばしてこしゅっ…と尻尾を擦る。
「ァッ…ァアあっあっ!!!」
 軽く触れただけで、尻を震わせて尻尾がギンとそそり立つ。
 それを、真狐は右手でクニクニと揉み、擦る。
「どう? 月彦、具合は」
「ああっ…凄…く、いい……」
 肉槍を根本まで真央の膣内なかに押し込みながら、月彦ははぁぁっ…と大げさに息を吐いた。
 実際挿入してみて真狐が言わんとしていたことが具に理解できた。
 膣内の具合が普段と全く違うのだ。
 キュウキュウと心地よく締め付けてくるのはいつもと同じ、だが、そこから先―――変幻自在に、まるでいくつもの舌に丁寧に舐められているような感触に月彦は唸らされた。
 熱く潤った、トロトロの蜜の満ち具合もまたいい。
 そして何より、さんざん焦らされた挙げ句の挿入ということで月彦自身の感度も格段に上がっていた。
「…たまんねぇっ……!」
 いつもなら絶対に出てこない言葉だった。
 そういうある種の”狂気”に走らせるほど、今日の膣内の具合は格別だった。
「当然よ」
 真狐が続けて、言う。
「誰が産んで、育てたと思ってるの?」
「……脱帽だ」
 月彦は愉悦の笑みを浮かべながら、真央の腰を掴み、ぐっと腰を引き、打ち付けた。
 こつんと膣奥を小突く―――と、真央は尻を振るわせて声を上げる。
 可愛げと艶が同居したような声だ―――そんな声がもっと聞きたくて、月彦は続けて腰を振るう。
「はぁっあンッ! あっっあっぁっ…と、父さまっ…ぁあっっあんっ…あンッ…あっ…あぁっあっあ、あァッ…!!!」
 可愛げのある狐耳をぱふぱふと立てたり閉じたりしながら、真央が蕩けた声を漏らす。
 開きっぱなしの唇からは涎を零し、目の縁からは溢れた、悲しみの為ではない涙が滴る。
 それを、真狐は舐め取り、さらに、
「あっ…ん、くうっ!!!」
 右手で真央の尻尾を擦り、左手は結合部、そこでぷっくりと勃ったままの淫核をくりくりと刺激する。
「あっ、ぁああッぁあああっいぃっ…ぁっ…か、かぁさまっっ…だ、だめっェェェ……!!」
 敏感な場所への同時責めに真央は声を震わせて体を強ばらせる―――を、ズンッと無理矢理屈服させるような勢いで、熱塊が突き込まれてくる。
「やんんぅううっ!!! あぁっはぁあっ…だめっ…だめっェ…父さまっ…母さまっ……こんなっ…ぁあっンッ…ぁっこんなのっっ……んっひぃうっあッはぁっ…ああああァあああァァァァッ!」
「くすっ…。ダメじゃないクセにぃ」
 意地悪な母狐が、一際強く尻尾を擦る。
「ふぁああっっあっ、らめっ…らめええっ、あんっ…ぁっ…コリコリしちゃ…らめっっぁっひぁああっっァはぁああぁああッッ!!!」
 尻尾と淫核への同時責め、真央はメス声を上げながら大きく仰け反り、イく。
 だが、絶頂の余韻に浸る間も無く、びくびくと痙攣する肉襞を黙らせるような質量がそこを蹂躙する。
「ぃひいいいぃっううううっ!!!」
 狭まろうとする肉の壁を無理矢理突破するような抽送。
 腰を振るう月彦の息もいつになく荒い。
「真央っ……真央っ…ッ!」
 尻を掴む手にも力が籠もる。
 ぐっ、ぐっ…と力強く突き込みながら、時折グリグリと掻き回すように腰を拈る―――そのたびに、真央の声はますます大きくなる。
「あはっ…こんなにサカッた声あげて。ホント淫乱なんだから、誰に似たのかしら?」
 先刻とは全く逆のことを呟きながら、真狐は悪戯っぽく笑った。
 なんだかんだで眼前で喘ぐ娘が可愛くてたまらない―――とばかりにギュウと両腕で抱きしめた。
 豊かな乳房が互いの弾力を尊重するように等しく潰れ合い、そそり立った乳首がツンと埋まる。
「はぁっ……はぁっ……か、さまっ…も、もう…………」
 真央も、縋るような手つきで、キュッと真狐の背中に手を回してくる。
 だが―――
「なぁに、”もっと”? もっとシてほしいの?」
 真狐は意地悪だ。
 態と聞き違え、ひっ…と恐怖に歪む娘の顔をさも愉快そうに見て、再びその尻尾を扱き始める。
「ち、違っっぁあ、ぁぁっ、ああァあッ!!!!」
 尻尾の毛を逆立たせながら、真央はイく。
 さらに追い込むように、勃起した淫核がくりくりと弄られた。
「あっ、あんっっ、ぁっ、あっ、ぁっ、ぁ、ぁぁ、っあっあァッああッ!!!!!」
 その愛撫から逃げようとするように、真央は尻を振る―――が、それは月彦が許さない。
 尻を捏ねていた手が止まったと思うと、よりしっかりと固定できる腰のくびれへと移動する。
「はぁっ…はぁっ……真央、膣内なかに、出す、ぞ……!」
「っっ……父さまっっ……んんんッッ……あんッ!!!!」
 ぱんっ!―――と尻と腰がぶつかる。
 さらに立て続けに、それまでの倍くらいのスピードで膣内を掻き回され、子宮口を突き上げられ、揺さぶられ、犯される。
「やっっうっ、いんっあっ、くっぃッ…んっぁっ…父さまっ…ぁっ…父さまっぁっっ…はあっ…あっ、くひっ…ぃッ…んんんっぷッ!?」
 喘ぐその口は、真狐に塞がれた。
 今までで一番、濃厚なキスだった。
「ッ……ま、おッ…―――ッ!!!!!」
 肉柱が一際深く、真央の膣内に埋まる。
「んっ…ん゛ん゛ンッッッ! んン゛ーーーーッ!!!」
 唇を奪われ、母狐の舌で口腔内を犯されながら、父親の肉柱で真央はイカされた。
 そして、膣内なかにどくどくとはき出される、牡の欲望汁のうねり。
「んむっ…ぁっ……はぁむっ」
 熱っぽい吐息は自分が漏らしたのか、母が漏らしたのか、真央には分からない。
 びゅっ…びゅっ、と止めどなく溢れては自らの胎内を陵辱する濃厚な精液の奔流に溶かされるように、真央は意識を失った。

「ふっ…う―――って、うわっっ!!!」
 射精を終えて一息ついたのもつかの間、唐突に月彦は後方に押し倒された。
「あーっ! もーだめ、我慢できないっ!」
 押し倒し、その腹の上にのってきたのはもちろん真狐だ。
「真央ばっかり…、ズルいわ月彦」
「ず、狡いって…あのな、殆どお前が―――」
「いーから、次はあたし。……ね?」
 最後の”ね?”だけ、妙に可愛らしく囁き、そして月彦に添い寝をするように横になった。
 エスコートは任せる、ということだろうか。
 月彦は体を起こしながら、チラリと真央の方を見た。
 ぐったりと俯せに寝たまま、呼吸のために微かに体が上下している以外はぴくりとも動かない。
 さっきみたいに邪魔されることは無さそうだ―――と、月彦は踏んだ。
「ほらっ…どこ見てるのよぉっ」
 真狐の方に向き直ろうとした矢先、その首が絡め取られた。
 そのまま、真央のそれよりも二回りは大きな胸元へと押しつけられる。
「そっちは一回出してスッキリしてるのかもしれないけど、あたしはもう疼きっぱなしなんだから…」
「っぷっ…はっ、わかったよ、ヤれば、いいんだろ」
 月彦は体を起こし、眼下の、見るからに腹立たしいその二つの塊を痛々しいまでに握りしめた。
 同時に―――
「あ、うっ、ンッッ!!!」
 猛る剛直を、いきなり根本まで埋没させる。
「くっっ…やっ、いきなっ……り、ふっっ………ンッ………!!」
 苦しげに呻く真狐に、体重をかけながら徐々に被さっていく。
「はぁああっあ、やっっ………お腹の奥、ぐいぐい押されて……あっっ……くッ………………!!」
 たまらず、真狐が逃げるように体を頭の方にずらす―――を、背中に回した月彦の手が、肩を掴むようにして遮る。
「やっ、やぁっ……あンッ!」
 体を密着させたまま、腰だけをくねらせる。
 ぎちぎちと、蜜壺を軋ませながら、捻りこむように。
「ふっ…うっ、やっぱり、膣内なかの具合は…こっちの方がイイ、な…」
 独り言のように、月彦は呟いた。
 先ほどの真央の膣内も確かに特上ではあったが、しかし真狐のそれはさらに上回る。
 肉襞の締まり具合、吸い付き具合、蜜のトロけ具合全てに置いて真狐の方が上なのだ。
 真央の窮屈な作りで、尚かつ強烈な締まりも確かにイイことはいいのだが、真狐の男を知り尽くした独特の肉襞のうねりには敵わない…と、月彦は思う。
「…よく、分かってる、じゃない」
 誇らしげに、真狐が鼻で笑う。
 余裕ぶってはいるが、言葉はとぎれとぎれ、呼吸も短く、浅いのは奥の奥まで月彦に突き込まれての圧迫感の為だろう。
「でも、どっちか選べって言われたら…やっぱり俺は真央、だな」
「月彦、あんたって…ロリコ―――んっっっ…!!!」
 急に月彦が体を起こし、抽送を開始した。
「やっ、あんっ…ズル、い…いきなり、動っっ…あンッ…ァッ…んっっ!」
 真狐の口調も憎まれ口から、急に可愛らしいイントネーションに変わる。
 その変化を口の端を歪めて見下ろしながら、月彦は腰を古い、たっぷたっぷと上下左右に揺れる塊に手を伸ばす。
「はぁあっぁっ…ンぁあっ、ふっ…んっ…ぁっあんっ…ぁっ、いいっ、わっ……もっと、捏ねてっっんっぁ…おっぱい…ぎゅうってシてェッ!」
「ッ…本当に、胸触られるの好き、なんだな」
 苦笑。
 ぐにぐにとパン生地でも捏ねるような手つきで柔らかい乳肉を好き放題こね回す。
「あぁんっ…! あっ…はぁっ…イイッ…いぃのぉっ…おっぱいイジられるの、凄く…気持ちいいのっ…」
「こっちより、好きなのか?」
 ずちゅっ!―――態と強く、肉柱を突き込む。
「はぁっはぁああっ…挿入いれられるのも好きぃぃぃ…気持ちいいコト、ぜんぶ好きぃっ…♪」
 うっとりと瞳を潤ませながら、甘えるように月彦に腕を搦めてくる。
 その顔にちゅっ、ちゅっとキスの嵐を浴びせ、ついでに月彦の耳にボソボソと何かを囁いた。
「…わかった」
 月彦は一端体を起こすと、真狐の両足を抱えるようにして一層深く腰を埋める。
「ひぐっっっうンッッ!!! はぁぁっっ…いいっ…あんっ…はっ、あ、はぁっ…んっ、あんっ、ぁっ…あンッ!」
 真央のように、声を抑えようとしない分大胆に、真狐は喘ぐ。
 余った両手で肩を抱くような仕草をする―――それが、結果的に豊満な乳を寄せて谷間を深く刻むことになる。
 態とか無意識の行為かは分からない…いや、多分前者だろう、そうすることで、ますます月彦が…目の前の牡がサカったように腰を振るうことを知っているのだ。
 そして、実際その通りだった。
「くっ…ふっ……ふっ………!」
 月彦は呼吸を荒げながらますます激しく腰を振るう。
 のの字8の字、真狐の求めるままにその剛直で極上の膣肉を掻き回し、その都度身震いするような快感を得た。
 絶頂に達してしまうのも、そうそう先のコトではなかった。
 月彦は予め耳打ちされた通り、一端真狐に被さり、その尻を持ち上げるようにして再び抽送を再開した。
「んっはっ…ぁっ…イキそう…なの?」
 真狐もしっかりと脚を絡ませ手を絡ませ、月彦に密着する。
 しがみつく、というのが正しい格好かもしれない。
「んっ…」
 月彦は頷き、そのまま二人は唇を重ねた。
 予め真狐が囁いたコトだった。
 今日は、キスをしながらイキたい―――と。
「んっ、ぁっ…ん、んんっんんんっっ!!!」
 ぴちゃぴちゃと舌を絡ませながらも、真狐の体を揺さぶる動きはますます早くなる。
 肉付きのいい尻をしっかりと掴み、上下に揺さぶりながら自らも胡座をかいたまま腰を前後させた。
「はぁぁっぁっ…いいっわぁっ…はぁっんっ…ぁっ、あんっ、あっあっぁっあァあっ……ぁあっ、ンッ…あっ…イクッ…ッッ…イク…ぅゥッ!!!!!!」
 のけぞり、叫んだ。
 それを追いかけ、月彦が唇に食らいつく。
 後頭部に片手を回し、逃げられないように舌を差し込む。
「ンッッッ………!!!!!!」
 真狐が噎んだ瞬間、その膣内なかでどろりとしたものが爆ぜた。
「ンンッ…んくっはぁっ…ああンッ…ぁっ……ンッ…ちゅっ…んふっ…!」
 膣内を満たしていく濃厚な牡液をさらに搾り取るように肉襞が収縮する。
 その痙攣めいた動きに合わせるように、尻尾がもびくん、びくんと小刻みに震えた。
「んはっぁ………………………月彦、このままもう一回…できる?」
 唇を離しての第一声がいきなりそれだ。
 月彦は露骨に嫌な顔をする。
「……やっぱり、まだやるのか?」
「当たり前じゃない。…あたし―――」
 真狐はキュッと、下腹に力を込めて月彦自身を締め上げる。
「―――ここに濃ぉい精液塗りつけられながらイクのも好きなの」
 うっとりと目を細めながら、渋る月彦を説得するようにちゅっ、ちゅっ…とその首にキスマークをつけていく。
「ね、お願い。イイでしょぉ…?」
「あーもう! わか―――ぐッ!」
 真狐の”おねだり”に屈服しようとした矢先、月彦はふいに言葉を詰まらせた。
「ダメ…」
 その呟きは月彦の真後ろから聞こえた。
 あっ…、と真狐もあっけにとられたように呟く。
「ダメッ…次は、真央とするの」
 月彦の背後からその首に腕を回しすり寄り、嫉妬丸出しの声で真央が呟く。
 恐らく、下半身にはまだろくに力が入らないのだろう、腕だけで体を支え、月彦の首に引っかかっているという状態だ。
「ま、真央ッ……苦しっっぐぶっ!」
 ただでさえ真央の腕が絡まり、呼吸を圧迫している首。
 それをさらに、真狐が自分の方へとたぐり寄せるものだからますます締まり…。
「だーめ、月彦はもう一回するって言ったんだから」
 真狐はんべっ、と舌を出し、シッシッと野良犬でも追い払うように手を振る。
 だが、真央も諦めない。
「父さまはそんなこと言ってないっ」
「言う前にあんたが首締めたんじゃないの!」
「………ッッ………ッ!!!!」
 言い争う母狐、子狐。
 その間で月彦がかくんとうなだれたのはすぐだった。
 そして月彦が再び目を覚ましたとき、互いに対抗心を燃やして前から後ろから迫ってくる娘とその母親に朝までつき合わされましたとさ…。




エピローグ 『きつねのおやこどんぶり』 END


 

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