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今年読んだ本。
- 『季節の中で』/保坂和志
- 「僕」と息子クイちゃん、近所に住む人々とのほのぼのとした日常。生活自体は何の変哲も無いけど、クイちゃんのイノセントな発想と共に哲学的とも言える思索が展開される。ゲイの二階堂君や四国で旅館を経営するエビちゃんなどのエピソードもいい味出している。意識は「自分」と「世界」の間を自由に彷徨い、季節は静かに移ろいゆく。読後感も素晴らしい一冊。お勧めです。
- 『もう一つの季節』/保坂和志
- 『季節の中で』の続編。こちらも素晴らしい。
- 『残響』/保坂和志
- 保坂和志の作品の中では最も異色な作品だと思う。収録された2作品とも、妙にメランコリックな哀愁の色が濃い。悲しい事は何も無いのに。果敢無げで美しい雰囲気。こういうタイプの作品も結構好きです。
- 『もののたわむれ』/松浦寿輝
- 松浦寿輝の処女短編集。後の『幽』や『花腐し』に通じる世界観は既に確立されている。美と毒の官能。体に直接訴えかけるような描写。痺れます。
- 『ねじの回転』/恩田陸
- 2.26事件を舞台に、タイムスリップが絡むSF小説。歴史と時間を題材にしたスケール感のある意欲作だが、読み味は軽い。個人的にはもっと重厚に、もっと濃密に、もっと示唆に富んだ内容だったらなぁ、と思った。一言で言えば、漫画を読んでいる感覚に近く、もの足りない感じ。今はこういうスタイルの方が好まれるのかな。
- 『<私>という演算』/保坂和志
- 保坂和志の非小説作品。大阪から東京に帰る新幹線の中でさくっと読了。ボリュームは小さいが、中身はたくさんの思想、考え方が凝縮された一冊。とくに最後の編で語られる「死」に対する洞察は秀逸。この本は小説ではないのに、どうしても小説のような雰囲気になってしまうところも、保坂和志らしく、好感が持てる。
- 『生きる歓び』/保坂和志
- 瀕死の底から再び生き延びようとする幼い猫と、人間味溢れる印象と記憶を残して逝った小説家。「生」と「死」を真正面に扱った「小説」。それぞれの出来事に直面した筆者の巡る思いや複雑な心境、そして、それを決してペシミスティックにならずに消化して、受け入れていく過程。その真摯さに感動します。目立たない作品ですが、これも素晴らしい作品です。
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