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今年読んだ本。でも古いのが好きなので新刊はほとんど無い。すんません。
- 『建築とデザインのフラクタル幾何学』/カーク ボーヴィル
- 自然や建築、音楽に至るまで、そのリズムの美しさを数学的に解析しようと試みている、ちょっと変わった書。数学的な証明などは良く分からない所があったけど、とても興味深い本でした。タフで貪欲なデザイナーの人は読んでみてはいかがでしょうか。
- 『日本文学大系72』/石川淳、安部公房、大江健三郎
- この3人の書く小説はもっと難解でとっつきにくい物だと思ってました。でも意外に読みやすく、且つ、ずっしりとした手応えの残る、いい作品ばかりでした。それぞれの作品の中で特に印象に残ったのは、「鷹」(石川淳)、「壁」(安部公房)、「芽むしり、仔撃ち」(大江健三郎)。
- 『集落の教え100』/原宏司
- 新しい京都駅を作った建築家の集落研究をまとめたもの。まず写真がきれいで、添えられた“教え”も簡潔で説得力がある。私のような建築初心者でも非常にわかりやすくて面白い。腰巻きのコメントは何と大江健三郎のもの。
- 『リング』/鈴木光司
- 4作目が出るみたいだけど私は最近やっと1作目を読んでみた。思ってたよりもずっと面白かった。やっぱり発想がすばらしく良いと思う。緊張しながら一気に読めた。
- 『日蝕』/平野啓一郎
- 正確には「蝕」は旧体字です。この人はいわゆるオタクでナルシストのようです。題材自体は目新しいものではないけど、格調のある文体で読ませます。ミスもたくさん犯しているし、全体的に言っても、主題に対して広がりが感じられない。でも同じ世代の人がこういう作品を書いたという事が嬉しいし、羨ましい。
- 『春昼・春昼後刻』/泉鏡花
- やっぱり私は泉鏡花に完全に溺れてしまっているようです。ほんとに。読んでいて、その世界に引きずり込まれて読むのが辛くなったりするけど、それでも読まずにはいられない。こんな小説を書ける人は他に知らない。
- 『小僧の神様』/志賀直哉
- 読んだ事無いと思ってたけど読んだ事があるのが2編あった。簡潔で歯切れの良い文章だけど無機質にならずに逆に印象が豊かになっているとこがすごいと思う。(ドキュメンタリーではなくて)ドキュメンタリー映画の感覚。
- 『20世紀との訣別』/蓮實重彦 山内昌之
- 20世紀に別れを告げるにあたって、歴史の視点からこの時代を振返る対談集。何よりもこの2人の博学と洞察の鋭さに驚かされます。自分に理解できる事は半分もなかったけど、それでも随分たくさんの事を学ぶ事ができました。歴史とは何か、というようなシンプルで難解な問いに対しての2人の議論は凄く刺激的でしたし、後半の、日米安保から天皇制を経て教育問題に至る題目に対しても今までに無かった視点とアプローチを提起していてとても新鮮でした。特に蓮實さんは、政治経済の枠の中で収まってしまいそうな問題に映画産業や文学界の流れを重ねて語るあたり、物凄い人だなと思った。とても面白い本です。
- 『絡新婦の理』/京極夏彦
- “単に普通のミステリーに妖怪やら神話伝説やらを盛り込んだ本”くらいに思ってたけど、もっと全然凄かった。普通のミステリーは主なプロットが1筋だけで、主人公がそれに近づいて行く過程が面白いかそうでないか、というレベルだけれども、この本にはそういったプロットが幾筋もあってそれらが複雑に絡み合っている。スティーブン キングを彷彿とさせる程恐ろしく巧妙なミステリーです。しかも1センテンスの短い文章スタイルで、テンポよくどんどん読めてしまいます。したがって、その分厚さに敬遠してしまうにはあまりにも勿体無い本なのです。
- 『変身』/カフカ
- 超有名な作品ですね。3、4年前に買ったのに読んでなかったので読んどいた。なんか、小説の抜け殻みたいな小説です。すごく淡々としてて、いまいち盛り上がらずにあっけなく終わってしまうけど、その中に自分や自分の周りの環境を投影する事で何かしらの意味を持ち始めてきます。そういう意味でやっぱり抜け殻って感じがします。この本は読む人によっても全く違う本になるだろうし、10年後くらいに読み返しても、初めて読んだような感覚を覚えるのではないでしょうか。あ、そうか。この本自体が「変身」しているんですね。あ、ちがう。自分が「変身」するのか。うん、よくわからん。
- 『一瞬の光、一瞬の闇』/斎藤忠徳
- 著者の旅した東ヨーロッパのフォトエッセイです。日本ではあまり知られていない土地ですが、これを読めばその土地の生活観が伝わってきます。思うのは、当然ながら普通の人間がそこにもいるんだな、という事。そして、「民族」という日本人では計り知れない壁の存在。その二つが特に印象に残り、何か複雑な気持ちになりました。
- 『泉鏡花集成1』/泉鏡花
- 中毒がいまだに治らないので全集に手を付け始めてしまいました。全部読み終わったら鏡花のページでも作ろうかな。
- 『姑獲鳥の夏』/京極夏彦
- 『絡新婦の理』が意外に面白かったので処女作を読んでみました。京極小説の原形は既に確立されているし、レギュラー登場人物の描写も1作目だから細かく描写しているし、後の作品への伏線にもなっているので、初めて読む人はこれから読むのがいいんじゃないでしょうか。(京極作品の中では)短めだし。でも、『絡新婦の理』の方がストーリーも文章も洗練されて完成度が高く、面白い。
- 『共同幻想論』/吉本隆明
- 人間社会を3種類の「幻想」に解体して分析する書。この考え方はありとあらゆる社会の事象を矛盾や齟齬を孕まずに単純化できるのでかなり視界がクリアになります。でもやっぱり難しかった。今私が読んでこんなに新鮮なのに、これが自分の生まれる前に書かれたとは。こういう本を読むと自分の知性があまりにも貧弱なことが良く分かる。
- 『Number 9』/セシル バーモント
- 任意の数のそれぞれの桁の数を足し合わせる作業を繰返して1桁の数(シグマコード)にすることを使って、数の、特に9の不思議な動きを紹介している。簡単な数学の絵本という感じでなかなか楽しい本です。これを書いた人は建築構造家で、腰帯に言葉を寄せている建築家磯崎新と仕事をしたこともあるという人です。
- 『泉鏡花集成2』/泉鏡花
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