● 第9話 マリエルの目玉焼き ●
<あらすじ>
人間の暮らしに興味津々なのは、メモルたち子どもだけではありませんでした。
リルル村の村人の間では今、卵を「コンコン(と割って)、ポシャン(と落として)、ジュー(と焼く)」でできる、
世にも簡単で美味しい料理「目玉焼き」のうわさで持ちきりです。
村で唯一の科学者、コロンパスさんは、科学の力で目玉焼きを作ろうと張り切っています。
しかし、メモルの祖父であるリルル村長は、村の動物たちと今後も仲良く共存するためには、
卵を食べることにみんなが興味を持つのはよくないと考えています。
そんな中、村の湖に、「丸くて軽くてつなぎ目のある卵」が打ち上げられました。
亀の卵だからそっとしておいてあげなければならないという村長と、
卵が孵らなかったら研究材料にするというコロンパス。
マリエルはこの話を聞いて、謎の卵の正体を突き止めます。
コロンパスはついに、本物の卵そっくりの「コロンパスの卵」を発明し、
メモルたちはマリエルと一緒に、リルル村式目玉焼きを楽しむのでした。
<甘辛コメント ●「甘」●〜萌えドコロ> 今回は、リルル村の人々が主役です。 とくに、インチキ科学者(笑)コロンパスさんと、その恋人ミーサさんを中心として、 好奇心旺盛なリルル星人たちの目玉焼きフィーバー振りを描いています。 こんな些細なことにここまで夢中になれる村人たち。 彼らがいかに平和で、ヒマしてるのかがよくわかります(笑)。 そんなリルル村のほのぼのエピソードを、今回はめいっぱい楽しんでいきましょう。 ●リルル星人のメンタリティ リルル村長は、もともと、村人を人間の生活からはなるべく離れさせようとしていたきらいがあります。 たとえば第1話に登場する風車小屋は、村で唯一鍵がかかる建物なのですが、そこにあるのはメモルたちの体の大きさの 何倍もある革靴や、パイプや、香水ビンなど、人間の持ち物ばかり。 ここの鍵を管理していた村長は、このような大きな品物を使う大きな人間の存在を、かなり以前から知っていた、 あるいは想像できていたと考えられます。 天敵ゴロニャンだけでなく、未知の大きな人間についても、リルル村長は メモルがマリエルに出会う以前から漠然と警戒感を持っていたのではないかと、私は見ています。 しかし村長は、そういう情報を村人に周知させて警戒させるのではなく、 風車小屋に鍵をかけて、まったく情報を村人に与えない方法を取りました。 その理由はおそらく、情報が漠然としすぎている段階で公開すると、 一般の村人たちの好奇心をいたずらに刺激してしまうと思われたからでしょう。 いつも何事にも慎重な村長ですが、それ以上に、村長はリルル星人の好奇心の強さを よくわかっていたからではないかと思います。 ●目玉焼き・導入 そんなリルル星人たちが出会った「目玉焼き」。 私たちにとってひじょうになじみの深い、珍しくもない当たり前のものが、 メモルたちにとってはとても目新しくて興味深い、というのが楽しいですね。 冒頭ペネローペさんが「お嬢様、お食事でございます」と持ってくる朝食のワゴンがとても美しくて、 それから「あら、卵のにおい」と窓際で朝日を浴びて振り返るマリエルがすっごく美しくて、 目玉焼きをとても上手く印象付けています。 目玉焼きに手を伸ばそうとするマリエルの手のストップモーションに タイトルがかかるのもとても上手な演出だと思います。 メモルが目玉焼きの話をするのを、バーバラとミーサ姉さんが熱心に聴いています。 この場面のさりげない情景描写もいいです。 湖の桟橋の上でお茶をしている大人二人(のどかだ)と、話をしながらも湖の中のお魚が気になって仕方がないメモル。 下を覗きこむメモルの髪がさかさまになっちゃってるところとか、レアです。 そいで、湖に大事な帽子を落っことして濡らしちゃったメモル。 「(帽子が)ゆるいの!少し!」 ああんこのいいわけ萌えるぅ。 濡れた帽子を小枝の先っぽに引っ掛けて歩くメモルも、 ためらいもなく頭を水に突っ込むメモルのおしりも、 かわいくてしかたありません。 ●目玉焼きとリルル星人 村中が「“ポシャン・ジュー”でもちきり」状態。 コロンパスさんはポピットと卵の大きさについて検討を始め、科学の力で卵を「作る」具体的な計画を立てています。 息ぴったりなコロンパスさんとポピットかわいいです。 この二人が仲いいって知りませんでしたが、凝り性同士気は合いそうです。 しかし村長は、目玉焼き=卵を食べる=動物との関係を壊しかねない、と考え、この目玉焼きブームを懸念しています。 なるほどねー、リルル星人ってベジタリアンなんですね。 そういえばリュックマンのバーベキューっぽい食べ物(第5話)にも肉っ気はなかったですね。 でも、それじゃあリルル村の人たちは、ぜんぜん動物性たんぱく質を食べてないのかなあ。 えーとシリーズを通じて魚や肉がどこにもリルル村の食卓に上っていなかったかどうか、ちょっと確信がありません。 今後ちょっと気を付けて見ていようと思います。 村長の「生き物でも卵でも、神様が作った物をわしらが作ることはあるまい」 というシンプルな考え方に対し、科学者コロンパスさんは、 「不可能を可能にするのが科学!すなわち私の力なのです!」 と、卵作りに突き進みます。 村長も、「研究のためとはいえ、命ある卵を壊してはならん」とは言うのですが、 結局、亀の卵ならぬピンポン玉をヒントにして作った、フェイクの卵の存在は許しています。 リルル星人たちの生活やものの考え方は、 マリエルと直接接触するメモルたちを通じて、少しずつ変化してきているかもしれません。 ●コロンパスとミーサ で、数ある人間世界のモノのうち、なんで目玉焼きなのかという話ですが、当然これはただ一点、 「コロンパスの卵」というネタをやりたかったためだけですよね。 そいで、このキャラクターをコロンパスという名前にしたのも、 今回の話を作りたかったためだけですよね。 いいと思います。メモルのそういう馬鹿馬鹿しいところが好きです。 このコロンパスさん、このネタだけのためのキャラかと思いきや、 なかなかちゃんとキャラ立ちしていて扱いやすいらしく、今回だけでなく今後何度かインチキ発明を披露してくれます。 また、機織り上手なミーサさんという恋人の存在も彼のキャラをおもしろくしています。 なにかにつけてラブラブぶりをアピールして、子どもたちにすらあきれられている彼らですが、 発明を「ミーサ姉さんのため?」と茶化されたコロンパスの一言 「科学と愛とは関係ありません。」 は、第9話の中では一・二を争う名セリフと言えましょう。 「コロンパスの卵」発表会(リュックマン君がなぜか助手というか手品のアシスタント的なポジション) よく見ると、会場の一番前の列の真ん中に、一つだけ明らかにVIP席と思われる立派な椅子があります。 これがミーサさんの席であることはいうまでもありません。 冷やかされても呆れ顔をされても、年齢的につりあっているのかどうかよくわからなくても 平気でラブラブぶりを披露する二人。 どうぞ末永くお幸せに。 リルル村には、シリーズ後半、このカップル以外にもう一組カップルができます。 人の恋路に口を出すのもナンですが、どうもリルル村の妙齢の女性は どうぞ末永くお幸せに。 ●マリエル それはともかく、今回のマリエルはよく見るとけっこうクレバーですてきです。 ドアの外でマリエルとメモルたちの会話に、聞き耳を立てているぺーさん(ペネローペさん)に気づいていたところ。 「丸くて、軽くて、つなぎ目のある卵」 と聞いただけで、「亀の卵」がピンポン玉だと見破ったところ。 リルル村長のメンツを守るためにピンポン玉に切れ目を入れて、割れたように見せるアイディア。 なにより、ボオボオにさよならを言っているところをペーさんに見咎められて 「空が青いから!青いから見てたの。それだけ!」 と、ポエミーにはぐらかす小気味良さがたまりません。 … … … いつもこうだといいのに。 |
<甘辛コメント ●「辛」●〜つっこみドコロ> さて、今回、いろんなつっこみドコロが、あるっちゃありますが。 まあ「目玉焼き」関連で言うと、いろいろ謎が多いですねえ。 バーバラさんどうやって木の実からあんなもの作れたんだろうとか コロンパスさん、ピンポン玉からヒントを得たと言うことは、 結局「割れるプラスチック」みたいなもので卵(の殻)を作って、 中身を入れてから外側の殻をつないだのかなあとか (「コンコン」しただけで割れちゃうプラスチックってどんなんだ…) ちょっと疑問に思っちゃいます。 それから、メモルの発言 「おじいちゃまは今まで一度も間違ったことを言ったことがないの」 は、いくらなんでも、あまりにも身内びいきに過ぎる(笑)と思います。 あるいは、終わりがけにマリエルが、自室のテーブルの上のアルコールランプ?で目玉焼きを焼きますが、 ペーさんの監視のもと、よく一人で火を使わせてもらえたなあと不思議に思ったりもします。 ですが、目玉焼きに興じるマリエルとメモルたちがあまりにもかわいらしいのでどうでもいいっちゃどうでもいいです。 ほかにも、 寝こけると首がなくなっちゃう人騒がせなコロンパスさんとか あるいは 紙一枚をベッチョリ湿らせるほど唾液の多いメモルとか あるいは 子ども相手に無意味にかっこいい登場をしてみたいお年頃のリュックマンとか あるいは 二階の窓から無様に落っこちる、猫とは思えない運動神経のジョジョとか あるいは マリエル目玉焼きにソース(※)かけすぎとか、 食卓に猫を上げるなよとか、 一瞬見えたマリエルのハートマークの前掛けはどこにいったんだろうとか、 いろいろありますけど、といっても、リルル村の牧歌的な雰囲気に飲まれて、 今回あまり辛らつに突っ込もうという気にはなりません。 それよりも、個人的に6話以降ずっとつっこみたかったのは ミーサ姉さんの眉毛はいったいどこにあるのかということです。 今後もミーサ姉さんが出てくるたびに、私は彼女の眉毛の所在が気になってしまうことでしょう。 ※放映当時、ファンの間で 「マリエルが目玉焼きにかけているのは ソースなのか はたまた醤油なのか」 と熱い論争が繰り広げられたということです。 そもそもフランス文化圏では目玉焼きをどうやって食するのかというところまで論議は及んだと、 ファンの方は語り継いでいます。 こんなくだらないことをも熱く議論できた当事のファンが、ちょっとうらやましい。 |
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●勝手に総合評価(★5つが最高評価) ストーリー:★★★★☆ 萌え度:★★★☆☆ 作 画 :★★★★☆ 全体的にニコニコしながら見ていられる、ほのぼのとコミカルな仕立てがメモルらしい話です。大好きです。 |
2008.05.10 記
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