● 第8話 思い出のペンダント ●
<あらすじ>
今は別れ別れに暮らしているお母さんからもらった、手染めのスカーフ。
メモルの大事な思い出の品を見たマリエルは、
お父さんから手渡してもらったという青いペンダントをメモルに見せます。
ところが、メモルはうっかりそのペンダントを窓から落としてしまいます。
大事なペンダントは、いつの間にやらおそろしいタカの巣の中へ…
マリエルのために、知恵と勇気を振り絞ってペンダントを取り戻したメモルたちですが、なんだかマリエルの顔色が冴えません。
「ごめんなさい、あれは、思い出の品でもなんでもないの」
マリエルは、メモルがお母さんの思い出の品を持っているのがうらやましかったのです。
それで、ついウソをついてしまったのでした。
メモルたちは、かんかんに怒って帰ってしまいます。
しかし、リュックマンにさとされて、マリエルの気持ちがやっとわかりました。
メモルはマリエルに謝り、二人はすんなり仲直り。
メモルたちが命がけで取り戻してくれたペンダントは、本当の「思い出のペンダント」になったのでした。
<甘辛コメント ●「甘」●〜萌えドコロ> さて今回は、「はじめての仲違い」編ということになります。 付き合いが深くなってくると、いつもいつも仲良しではいられない。たまにはウソもつくし、カッとすることもある…。 そうやってまたお互いをより深く知ることになった二人のお話です。 ●マリエルのウソ 冒頭、マリエルが青いペンダントをメモルに見せるシーンを、マリエルがこのときウソを言っているという見地から見直してみましょう。 メモルがしみじみお母さんのことを思い出している傍らで、マリエルは仰向けに寝転んでじっと天井を見ています。 「マリエルは、なにかお母さんの思い出、持ってる?」 「…」 物思いに沈んでいるマリエル。 「…あ!いっけない」(このときのメモルめちゃくちゃかわいい!!) 「そんなものありっこないわよね、ごめんね〜、だれもいない人にこんなコト言っちゃって…」 おいおいおい、そこまで言うかメモル。 そりゃあ傷つくよ、ていうか意地の一つも張りたくなるよなあ。 案の定、 「あら、あたしにだって、お父さまがいるわよ」 マリエルはさっきかくれんぼをしている時に目に止まった青いペンダントを、「お父さんの思い出のペンダント」だとウソをつきます。 「お父様からじかに手渡してもらったの。送ってきたんじゃないのよ」 「お父様は私を抱き寄せてこういったわ。『お父様の目の色と同じだろ。さびしくなったらこれをお父様だと思って、しんぼうしておくれ』…」 「お父様の目の色と同じだろ」云々というセリフはマリエルの空想です。 つまり、マリエルが父親にいってほしい言葉そのものなのでしょう。 このペンダントは小さい頃買ったおもちゃだということですが、現在でも鏡台の中に大切にしまっているところから考えて、「思い出の品」ではなくてもマリエルがこれをそれなりに大切にしていたことがわかります。 あるいは、幼いマリエルは「お父様の目の色と同じだわ」という理由でこれを買ったのかもしれません。 それがとっさにこういうウソとして口をついたのかも。 いや、この子ってほんとにいじらしいです。 マリエル父、こんなかわいい子をほっぽっといて、まったくどこに行ったんだろ! 見せて見せてとねだるメモルに、ペンダントを渡すときのマリエルの、得意そうな表情。 本当に「思い出の品」なら、マリエルの性格上もうちょっとていねいに扱いそうなものですが、ちょっと投げ与えるみたいなしぐさ。 このときマリエルがウソを言っているのだという見地から見ると、このシーンのマリエルはなんだか印象に残ります。 彼女もいっぱしの虚栄心があるのだなというあたり、結構リアルでいいと思います。 (メモルがペンダントをもって、キラキラ青い反射光を振りまいているところはとっても美しいですねえ) そしてメモルはペンダントを落としてしまいます。 「気にしないでいいのよ、お父様からの贈り物はあれが最後ってわけじゃないもの」 本当に父親の思い出の品だったらすっごく落ち込むだろうに、わりとドライなマリエルですが、これがウソなのだとしたらうなずけますよね。 ●「マリエルの思い出を拾いに」 マリエルのウソを本当だと思いこんでいるメモル。 ひとりでボオボオを探していると、ポピットたちがあらわれます。 ポピット:「メモル、また何かあったな?」 ルパング:「水臭いぜ、 話せよ」 このチームの結束の固さは並みじゃありません。 だれしも「こんな友だちがいたら」と思ってしまう、タイミングのよさです。 そして彼らの作戦会議はいつもおやつ付きなのが萌えます(笑) そして勇気と知恵を振り絞り、命の危険すらおかしてペンダントを取り戻したメモルたち。 今回の敢闘賞は別にあんまり責任はないのに メモルの「ちょっとは責任感じなさいよねッ!」の一言でタカに羽根をむしられたボオボオにささげましょう(哀)。 (メモルたちの一回目のトライでぼろぼろになり、二回目の作戦会議の間に逃亡したらしい:二回目のトライはバオバオが担当でした) ●ルビーのペンダント 今回話をとてもわかりやすく、印象的に仕上げているのは、やっぱりこのルビーのペンダントの存在です。 こっちは本当に「お父様からもらったペンダント」であり、本物のルビーでできた豪華なものですが、マリエルはニコリともしません。 こともあろうに、これをスープの中に捨ててしまいます。 マリエル:「お昼食べないわ」 ペーさんへの反抗だんだん堂にいってきてます。 いっぺんでいいからやってみたいお嬢様ぶりです。(笑) 「ポシェット」のときも、マリエルのところには新しい洋服が送られてきました。 でもマリエルは笑顔の一つも見せず、「まるで私のパパは、郵便小包」とうそぶきます。 本物の父親から送られてきた、高価なプレゼントと、 メモルたちがその手で届けてくれる心づくし。 この二つを対比する構図が繰り返され、マリエルがどちらに感動するかを描くことによって、彼女が何に飢えているのか、はっきりわかるようになっています。 それにしても、ペーさんの 「ルビーなんて、私も持ってないのに」 は名言です(笑)。 ●マリエルの告白 たいへんな思いをして「一本杉の女王」からペンダントを取り戻したメモルたち。 でもマリエルは浮かない顔で、ベッドに座りこみます。 「ごめんなさい、あれ、ウソだったの」 「このペンダント、お父様のプレゼントなんてウソ。本当は小さい頃お祭りで買ったおもちゃなの」 思いもかけない告白に、驚きとともにだんだん怒りがこみ上げてくるメモルたち。 ポピット:「ひどいじゃないか、おもちゃだと知ってたら、僕たちあんなことしなかったぞ!」 ルパング:「どうしてウソなんかついたんだ!?」 マリエル:「だって、だって…、…言えないわ…!」 メモルは、じっとそのやり取りを見つめていましたが、やがて一言、 「あたし、帰る!」 「僕も」 「俺も」 こうして彼らははじめて仲違いをします。 さて、ちょっと考えてみてください。 マリエルは、ウソをつきとおすこともできたことに気が付きませんか。 「お父様の思い出のペンダント、取り戻してくれてありがとう、メモル」 とでもなんとでも言って、ほんとうに大事なもののような振りをして… 良心の呵責をちょっと押し込めれば、メモルたちをだますことなんて簡単だったはずです。 でも、マリエルはそうしませんでした。 たとえ怒らせることになっても、大事な友だちにウソを突き通すことができなかったマリエルの性根のよさにちょっと感動します。 ●「愛のかたち」 今までどんなことがあってもマリエルから離れることのなかったメモルの心。 今度ばかりは自分が寄せた好意を裏切られたと感じ、リュックマンに傷ついた自分の心をぶつけます。 事情を感情的に説明するメモルに、リュックマンは意外な言葉で切り出します。 「世の中には、いろいろな愛のかたちがある」 「…愛のかたち?」 一瞬何の関係が?と思うセリフに、メモルばかりか、視聴者もひきつけられます。 (こういうところが彼はうまいと思う。話術というか…もちろん脚本なんでしょうけどね) 「マリエルのウソも、お父さんへの愛のかたちなんだ…。 マリエルは、一度もお父さんから贈り物を手渡された事がなかった。 メモルのスカーフを見て、マリエルがどんなにうらやましかったか、わかるかい。 マリエルも一度持ってみたかったんだ、お父さんからもらったスカーフを。 たとえ自分でこしらえあげてもね」 マリエルの気持ちを思いやることの大切さを淡々と諭すリュックマン。 「マリエルは、ほんのちょっとの間夢を見ただけなのさ」 「夢…」 これこそリュックマンの説得術。 自分たちが傷ついたことで頭がいっぱいのメモルに、マリエルが言わなかった心のうちを気づかせます。 先ほどまでの怒りのかわりに、メモルの表情にマリエルへの気遣いが戻ってきました。 その場にいたわけでもないのにここまで的確にマリエルの心情を説明できてしまうリュックマン、やはりただものではありません。 ●そして仲直り 「メモル、あなたの優しい気持ち、忘れない…」 あまりのことに、マリエルは別れを覚悟していました(その割には表情や演技に悲壮さがないのが私は不満。マリエルにとっては、身を切られるような覚悟のはず)。でも、 「ひとこと、言わなくちゃと思って…」 夜も遅いのに、メモルはマリエルのところへ謝りに来ました。 「ごめんなさい、マリエルの気持ち、ちっともわからなくて…」 このひとことで全てが元通り。 いいえ、二人の絆はいままでよりさらに強くなりました。 「私にも、本物の思い出のペンダントができたわ」 正真正銘父親からもらった、本物のルビーのペンダントよりも、 メモルたちが取り戻してくれたおもちゃのペンダントの方が「本物」の思い出。 マリエルが一番欲しい思い出、それは、誰かが自分のために心を砕いてくれているという実感なのではないでしょうか。 今のマリエルにとって、それはまちがいなくメモルです。 ここに至って、マリエルのプライオリティは、ほとんど父親からメモルにうつったように見えます。 |
<甘辛コメント ●「辛」●〜つっこみドコロ> 野暮を承知で。 メモルで動きのあるシーンを描くとき、バッチリ成功するときとかなりしょっぱいときがあるんですけど、今回は残念ながら後者かな。 お分かりかと思いますが紛失から奪回作戦に至るまでのペンダントにまつわる動きのことです。 映像の力のおかげでむりやり説得できてしまっていますが、はっきりいってデタラメです。 あんまりねちねちいうのもなんだと思うのでひとつだけ。 最後にタカを撃退したあの木の実のリアリティのなさは何? (↓図) あ、あと、 ボオボオ、肉食猛禽類のクセにいつもいつもタカに襲われてるんじゃない!! 一本杉の女王よ、ヒカリモノに目をかけるなんてあんたはカラスか!! (ひとつじゃないじゃん>私) * それからね、わたし今回見なおしてはじめてわかったことがあるんです。 ルパング:「(一人でマリエルに会いにいったメモルに)そういうのナシって言ったろ!」 ピー:「りんご!」 …? ? ? …ああ、ナシとリンゴでダジャレなんですか!!? 判りづらッ。 そういえば前回によくわからない類似のシーンがあったような…(巻き戻し巻き戻し) メモル:「私、不幸になるんだって」 ピー:「(顔を触りながら)フコウ、フコウ」 ルパング:「そのフコウじゃない!」 … …えーと、「不幸」を「拭こう」とかけているのデスカ? とどめは再び第8話の後半から。 ルパング:「俺もなんだか闘志がわいて来た!」 ピー:「北風!」 … … …ピーのナイス言語センスに脱力。 ●おまけのはみ出しツッコミどころ ・傷心のメモルが帰ってくる昼の食卓、シーンによって食器の色が違います(笑;) ・リュックマンの口が見えてるの、思い出せる限りではこの回だけ。 (他にあったら教えてくださいね) |
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●勝手に総合評価(★5つが最高評価) ストーリー:★★★☆☆ 萌え度:★★☆☆☆ 作 画 :★★★☆☆ マリエルの素直さとかメモルの真剣さが印象的で、ストーリーだけなら★4つあげたいところ。 でも演出とか展開にやや難があるので、ひとつ減らしました。 ちょっと今回は厳しいかな、好きな話ではあるんだけど。 |
2003.05.25 記
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