この世で最も高貴な人。
あなたに世界は似合わない。
あなたに感情は似合わない。
あなたに友人はいらない。
あなたに賛同者はいらない。
あなたはいつでもひとりきり。
あなたはこの世の人ではないのだから、
あなたはこの世界を飲み込めるけど、
そんなものはいらないと吐き捨てる。
本物は欲しない。
いらないものだけを集めた世界に彼は住んでいる。
あなたは本物だから、
何かを手に入れることはない。
あの時、確かにあなたは私を見た。
他の誰とも接触のないあなたが、隣りにいる友人ではなく、私を。
それは引き金となった。
あなたは、私を見た。
それだけが真実。
その時私は初めてあなたがとても美しい目をしているのだと知った。
普段ならば前髪で隠れていて見えない、
それは透き通った赤に近い瞳。物語に出てくる魔女のような瞳、
人を捕らえるもの。
その瞳が私だけに笑いかけ、やめた。
あなたはとても綺麗な人。
なのにあなたは私と友人に向かって嗤った。目の隠れたそれは、
呪いをかける瞬間のように、背筋を凍らせた。
足早に私の腕を引く友人を少し恨んだ。
あなたを近くで見てみたい。
あなたをずっと見ていたい。
曲がり角に至った時、あなたは私をはっきりと見て、
赤い口唇の端を少しだけあげる。そのまま口を開き何かを伝えようとした。
あなたの望みを叶えたい。
あなたが私を望むなら、
私はあなたの望みを叶えよう。
あなたは私を選んでくれたのだから。
あなたは私だけに笑ってくれたのだから。
あなたはとても綺麗な人。
あなたはとても綺麗で、
あなたはとても繊細で、
あなたはとても残酷で、
あなたはとても明晰で、
あなたはとても優しくて、
あなたはいつもひとりきり。
あなたは孤独だった。
これからは私がいるから、
私があなたのすべてになるから。
あなたはひとりきりじゃない。
あなたの望みはすべて叶える。
きっと私はその時のために生きてきたのだ。
本当にそれで幸せ?
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