保存車の世界

鉄道車両

トロリーバスの保存車

トロリーバスはトロリーポール(集電装置)から動力である電気を取り入れて走るバスのような乗物で、その外見からトロリーバスと通称されるものの、正式には「無軌条電車」と呼ばれる鉄道の仲間です。
1950〜60年代には東京から大阪までの主要都市で都市交通の一部を担っていましたが、自動車の増加による路面電車の淘汰の波に巻き込まれ、1972年の横浜市を最後に姿を消してしまいました。その一方、立山黒部アルペンルートでは、排ガスなどが発生しないことを買われて観光輸送に導入されました。しかし、それも電気バスに代替されるなど、現在では立山黒部貫光に残るのみになっています。
ここではそんなトロリーバスの数少ない保存車をご紹介します。

保存車
トロリーバス

撮影:森之宮検車場(2008.3.23)

大阪市交通局 200形(255号)

1970年限りで廃止となった大阪市のトロリーバスのうち1両が保存されていました。
三菱シャーシの200形のうち大阪車輌工業のボディを載せた1961年式の車両で、クロスシート、中ドア引き戸が特徴です。
なお、この車両は通常は非公開。地下鉄開業75周年の記念イベントの際に撮影しました。
2014年に大阪市指定文化財に。

保存車
トロリーバス

撮影:二子塚公園(2005.1.22)

川崎市交通局 100形(104号)
トロリーバス

撮影:二子塚公園(2018.8.28)

川崎市高津区に残るトロリーバス。川崎市のトロリーバスは1967年に廃止となりましたが、地元の好意で屋根までつけてこの場に保存されました。外装も1回塗り直されているそうです。
富士重工製の1963年式以降のボディで、バス車体ではR13に相当します。どうやら車体更新でこのスタイルになったもので、車齢はもっと古いようです。(注1)
当初は集会所として使用されていたようですが、2018年に訪問した時は、フェンスで囲まれており、今後が危ぶまれる状態でした。

トロリーバス

撮影:二子塚公園(2018.8.28)

2005年の時にはなかった説明板ができていました。
高津観光協会と高津区役所の名前があり、川崎駅から水江町まで7.30kmを結んだこと、工業都市川崎の復興に貢献したこと、「トロバス」と呼ばれて親しまれたことなどが書かれています。
ここに書かれている通り、貴重な遺産なので、何らかの方法で安心して永久保存できる方法が取れればいいと思います。

保存車
トロリーバス

撮影:ポンコツ屋赤木様(トロバス記念館 2020.11.30)

関西電力 300形(301号)
トロリーバス

撮影:ポンコツ屋赤木様(トロバス記念館 2020.11.30)

立山黒部アルペンルートの長野県側(扇沢〜黒部ダム間)で使用される関西電力のトロリーバスは、ルート開業の1964年から運行されていましたが、2018年を最後に運行を終了しました。車両は廃車されましたが、その中の1両が解体を免れ、2020年に扇沢総合案内センターに保存されました。併せて、センター内にトロバス資料館もオープンし、部品などの資料が保管されました。
保存されているのは、3代目車両である1993年製の300形で、大阪車輌工業製です。

(注1) 吉川文夫(1994)「日本のトロリーバス」によると、104号は1950年式の日野・東芝による試作車で、川崎市に転入したのは1954年だそうです。1963年に富士重工でボディ更新を行ったものの、1967年に用途廃止となりました。
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