保存車の世界

鉄道車両

加悦SL広場の保存車

加悦鉄道は京都府北部の小私鉄で、戦前には丹後ちりめん輸送からニッケル鉱石の輸送などで活況を呈したこともありましたが、戦後は苦しい時代が続き、1985年に廃線となりました。古くから古典車両を数多く所有することで有名で、そのせいか営業時代から車両保存には力を入れていた私鉄です。
当初は終点加悦駅にあった「加悦SL広場」は、その後、旧鉱山駅跡地に移設されて現在に至ります。多くの保存車両を好コンディションで保存するとともに、保存を目的に車両を購入するなど積極的な姿勢が見られます。鉄道事業から撤退した後の社名はカヤ興産となっています。(2015年に合併により宮津海陸運輸となっています)
ここでは、主に加悦鉄道時代から所有していたものを中心に、また旅客車を主体に並べてみます。
(2020年3月に、加悦SL広場は閉園しました。その後、2022年4月に加悦鉄道資料館として移設オープンしています)

加悦鉄道出身車両

保存車
キハユニ51

撮影:加悦SL広場(2006.8.26)

加悦鉄道 キハ40900形(51号)

両端に荷物台を持つ気動車。芸備鉄道(後に国鉄買収)が新製し、国鉄移籍後キハニ40921となっていましたが、戦後に廃車となり山口県の舟木鉄道へ移籍。同鉄道の廃止により1962年に加悦鉄道へ再移籍しました。
写真で見る奥のほうにある荷物郵便室は加悦鉄道では客室として使用されていましたが、1985年の廃車後、1993年に復元工事を行いました。現在、実車の表記はキハユニ51となっています。

保存車
キハ101

撮影:加悦SL広場(2006.8.26)

加悦鉄道 キハ100形(101号)

両端に荷物台を持つ気動車で、片ボギー式が特徴。写真で見る右側がボギー台車、左側が単軸です。
1936(昭和11)年に加悦鉄道が発注したオリジナル車両。元はガソリンエンジンでした。

保存車
キハ083

撮影:加悦SL広場(2006.8.26)

加悦鉄道 キハ08形(8号)

客車を改造した気動車で、国鉄の北海道地区にのみ存在した貴重な車両。
戦後に木造客車を鋼体化したオハ62形客車(鋼体化:盛岡工場)を、動力近代化の流れの中で気動車改造したもの。両運転台のキハ08形と片運転台のキハ09形がありましたが、こちらは両運転台の車両です。
1972年に加悦鉄道入りし、廃線まで主力車両として活躍しました。

保存車
キハ1018

撮影:加悦SL広場(2006.8.26)

加悦鉄道 キハ10形(18号)

加悦鉄道としては最新型の車両で、1980年に国鉄から譲り受けたものです。加悦鉄道での活躍は、廃線までの5年間でした。

保存車
ハブ3

撮影:加悦SL広場(2006.8.26)

加悦鉄道 ハブ3

明治時代に製造された2軸客車です。ドイツ製で、九州鉄道(後に鉄道省に買収)が購入し、鉄道省への移籍後に伊賀鉄道(現在の近鉄伊賀線)を経て加悦鉄道入りしました。
1969年まで加悦鉄道で活躍の後、1970年の大阪万博のエキスポランドに期間中クラウス17号蒸気機関車とともに展示されたそうです。
前につながっているのはC形タンク機関車1261号
(ハブ3号は、2022年4月より加悦鉄道資料館で保存されています)

保存車
ハ4995

撮影:加悦SL広場(2006.8.26)

加悦鉄道 ハ4975形(4995号)

いわゆるマッチ箱と呼ばれる明治時代の2軸客車で、貫通路はなく、各座席ごとに出入戸がついているのが特徴。
1893(明治26)年に旧逓信省鉄道庁新橋工場で製造され、1928(昭和3)年に加悦鉄道入り、1935(昭和10)年には早くも廃車となりましたが、加悦駅構内で台車をはずされ倉庫となりました。1970年に同形車の台車と組み合わせて復元されたと言う歴史には驚きます。
側窓下の赤い帯はかつて3等車(現在でいう普通車)に入れられていた帯の色です。
前に連結されているのは重要文化財の2号機関車。イギリス製で日本で2番目に古い蒸気機関車だそうです。
(2号蒸気機関車とハ4995は、2022年4月より加悦鉄道資料館で保存されています)

保存車
ハ21

撮影:加悦SL広場(2006.8.26)

加悦鉄道 ハ20形(21号)

元は上の車両と同形車で、国鉄ハ4999号。加悦鉄道移籍後の1935(昭和10)年に、車体を新製し現在のスタイルに生まれ変わりました。
1980年には東北新幹線開業記念鉄道博に出展されたそうです。
(2022年に、1261型蒸気機関車とともに、姫路市の阿保神社へ移転保存)

保存車
ハ10

撮影:加悦SL広場(2006.8.26)

加悦鉄道 ハ10形(10号)

大正末期のボギー客車。伊賀鉄道(現在の近鉄伊賀線)が発注したものを、加悦鉄道が創業の際に新車で譲り受けたもの。以来、外形を変えることなく1968年まで使用されてきました。
現役時代は2,3等室の仕切りを取り外して使用していましたが、1995年に仕切りを復元、現在車体の帯も2等の青と3等の赤をまとって展示されています。

保存車
DC351

撮影:加悦SL広場(2006.8.26)

加悦鉄道 DC35形(1号)

青森県の南部鉄道(現在の南部バス)から購入したディーゼル機関車。日本治金工業の貨物専用線で使用されていたようです。
(2022年に、青森県五戸町のごのへ郷土館に移転保存)

動態保存車
DB201

撮影:加悦SL広場(2006.8.26)

加悦鉄道 DB201形(201号)

蒸気機関車の足回りを利用したB形ディーゼル機関車。森製作所製。
後ろは2軸木造客車のハブ2号

保存車
4号機関車

撮影:加悦SL広場(2006.8.26)

加悦鉄道 4号機関車

長野県の河東鉄道(現在の長野電鉄)から譲り受けたC形タンク機関車。

利用(カフェ)
サハ3104

撮影:加悦SL広場(2006.8.26)

加悦鉄道 サハ3100形(3104号)

東京急行電鉄から譲受した付随車で、元は電車ですが加悦鉄道では客車として使用されました。あまり使用されずに廃車となり、早くからSL広場の休憩所となっていたようです。
現在では車体を大改造され、「カフェトレイン蒸気屋」になっています。東急時代のボディとはまったく異なり、もちろんこのスタイルで営業運転したこともありません。

加悦SL広場が展示用に譲受した車両

保存車
京都市電N5号
N5

撮影:加悦SL広場(2006.8.26)

加悦SL広場の入口を飾る路面電車。
日本最初の電車で、宝塚ファミリーランドで展示されていたもの。実車の旧番号は23号
(2021年に大阪府和泉市の叶シ鶴へ譲渡され、電車法要施設として活用)

動態保存車
加悦鉄道 DB201形(202号)
DB202

撮影:加悦SL広場(2006.8.26)

神奈川臨海鉄道で日本治金工業入換用として使用されていた機関車。
2両目のワブ3号は加悦鉄道オリジナルの貨車で、無蓋車を有蓋車に改造したもの。
(加悦鉄道保存会公式サイトによると、ワブ3号はNPO法人貨物鉄道博物館に譲渡され、三重県いなべ市の貨物鉄道博物館で展示されるとのこと)

保存車
103号機関車
103

撮影:加悦SL広場(2006.8.26)

アメリカ製の蒸気機関車で東洋レーヨン滋賀工場などで使用されていた。宝塚ファミリーランドで展示されていたものを譲受。
(2021年に、山口県下関市の長門ポッポを守る会に移転保存)

キ100形(165号)
165

撮影:加悦SL広場(2006.8.26)

ヨ2000形(2047号)
ヨ2047

撮影:加悦SL広場(2006.8.26)

国鉄から展示用に借用した車両。左はラッセル車のキ100形。右は車掌車のヨ2000形

C58390とC57189
C58とC57

撮影:加悦SL広場(2006.8.26)

加悦町が展示用に国鉄から借り入れた蒸気機関車2両。手前には機関車トーマスとアンパンマン。

休憩室
元南海電気鉄道 モハ1201形(1202号)
モハ1202

撮影:加悦SL広場(2006.8.26)

南海電鉄から譲り受けた電車で、カフェになった電車と連結されて止まっています。加悦鉄道で営業用に使われたことはありません。また、カフェにもならずに休憩室のように置かれている現状です。

参考文献
  1. 朝日新聞社(1974)「世界の鉄道'75」
  2. 白川淳(1998)「全国保存鉄道4」
  3. 加悦SL広場公式サイト(現在リンク切れ)
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