花北という地域
「花北(はなきた)」という名前にはいくつかの意味があるようです。ここでは、岩手県の広域的な地域名称として使われる「花北地域」で見られる風景をご覧に入れます。
ちなみに気象庁が天気予報などで用いる「花北地域」は、花巻市、北上市、西和賀町を指すとのこと。つまり、花巻と北上の頭文字をとった名称です。
花巻駅前
“その頃” 1987(昭和62)年
撮影:左党89号様(花巻駅 1987.10.31)
2007(平成19)年
撮影:左党89号様(花巻駅 2007.6.24)
2枚とも左党89号様撮影の写真ですが、花巻駅前に停車中の岩手県交通です。両方とも方向幕は「高村山荘」と出ています。 1987年のほうはまだ新車に近い部類だった1982年式のK-CCM370、2007年のほうはもう既に10年選手となったKC-LR333Jです。
駅前開発のためホテルなどが建設され、花巻駅前の様子もかなり変っています。
2024(令和6)年
撮影:花巻駅(2024.5.1)
昭和、平成と見てきたので、令和の花巻駅前を眺めに行きました。
バスが国際興業カラーのいすゞエルガに変わった以外は、あまり変化していませんでした。
撮影:花巻駅(2024.5.1)
昔と変わらない花巻駅舎。大きな三角の屋根が特徴です。
岩手県内の駅としてはかなり広い駅前広場ですが、バスの発着は少なく、閑散としている印象です。
広場に立つ塔には「みんなで守ろう! 釜石線」の文字が見えます。
マルカンビル
2016(平成28)年
撮影:とまります様(2016.7)
花巻市上町にあるマルカン百貨店は、2016年7月に閉店しました。
地元資本による1973年の開店以来、花北地域の象徴の一つでもあったデパートですが、耐震化工事が必要であることから、それを機に閉店を決めたとのこと。
6階の大食堂が地元民の人気でした。
撮影:とまります様
その「マルカン大食堂」の人気メニューの一つ、「マルカンラーメン」。あんかけの載ったボリューミーなラーメンです。このほか「ナポリカツ」も人気です。
なお、地元民の強いリクエストを受け、2017年2月から、大食堂のみ再開しています。
文化タクシーのレトロタクシー
撮影:花巻市(2019.7.20)
撮影:花巻市(2019.7.20)
その再開したマルカン大食堂でナポリカツを食べようと、都南村民様のご案内でマルカンビルを訪れた時、近くの文化タクシー車庫で見かけたレトロタクシーです。
なんでも1920年代の英国アスキス社製「ザ・マスコット」の復刻版で、宮沢賢治の大正ロマンをイメージしています。
「Wildcat House(山猫軒)」と名付けられ、「注文の多い料理店」をイメージした猫のイラストが描かれています。
もう1台はナンバーがありませんが、「セロ弾きのゴージュ」をイメージした車両です。
北上駅前
“その頃” 1986(昭和61)年の写真パネル
撮影:601号様(北上開発ビル内イベント 2017.6)
2022(令和4)年
撮影:北上駅(2022.12.24)
北上駅西口の正面には、1986年3月21日にイトーヨーカドーの岩手県第1号店である北上店がオープンしました。ワシントンホテルも併設した待望の駅前ショッピングセンターだったそうです。
しかし、自動車社会に対応した郊外型ショッピングセンターへと時代は変わっており、2000年1月に閉店してしまったそうです。このオープン時の写真は、2017年6月に東北新幹線開業35周年イベントとして、同ビル内で展示していた写真を撮影したもの。
現在では「おでんせプラザぐろーぶ」という名前で、居酒屋や公共施設、オフィスなどが入居しています。「千年の宴」「魚民」の大型看板は、現在の地方都市の駅前を象徴する光景となっています。
“その頃” 1986(昭和61)年
撮影:北上駅(1986.8.24)
2005(平成17)年
撮影:601号様(北上駅 2005.5.3)
北上駅前にある「のりば案内看板」の“その頃”と平成です。
右側の路線がかなり消されているほか、枝線もだいぶなくなっています。のりばごとの行き先案内も、一度貼り直されたようですが、それもまたかなり消されています。
「仙台」「池袋」など“その頃”にはなかったものが追加されているのが、せめてもの救いといえるでしょうか。
北上市本通り
“その頃” 1985(昭和60)年
撮影:北上市本通り(1985.8.27)
2004(平成16)年
撮影:601号様(北上市本通り 2004.4.28)
北上市本通り2丁目の風景です。
向かって左側にあったアーケードは再開発によって撤去され、再開発ビル(さくら野百貨店)が建っています。右側は手前に岩手銀行がある以外は変わっていないようですが、看板の数が減っており、閉店した店が多いことが伺えます。
日本の小規模都市の商店街というのは、大体どこもこんな感じになっています。
2024(令和6)年
撮影:本通り二丁目(2024.11.10)
やはり、昭和、平成と来たので、令和の風景を見に行きました。
道路右側のアーケードは完全に撤去されました。左側にバス停標識がありますが、「まちなかターミナル」として北向きの「本通り二丁目」バス停が整備されました。こちらに向かって走る路線バスはなくなり、ビルの反対側の道路に移りました。
撮影:北上市(2024.11.10)
「まちなかターミナル」の中心となる再開発ビルはツインモールとなっており、巨艦店のシルエットが朝日に輝きます。
元は「北上ビブレ」として2000年にオープンしました。バブル経済は既に崩壊しており、大店法改正によるショッピングセンターブームも沈静化している時期でした。さらに不運なことに2001年にマイカルグループが経営破たんしてしまい、2002年に青森県に本社を置く「さくら野百貨店」に変わりました。
その後、2012年に「まちなかターミナル」が整備され、横断歩道を渡らずにバスで行き帰りできる人に優しいバスターミナルとなり、2023年に「TM(ツインモール)さくら野」と名前を変えて現在に至ります。
残っていましたこんな物
電鉄タクシー
撮影:長谷川竜様(花巻市 2015.10.4)
撮影:長谷川竜様(花巻市 2015.10.4)
花巻市鍛治町にある電鉄タクシー。電鉄会社のない岩手県でこの名前を持つ理由は、1971年まで存在した花巻電鉄の系列だったから。公式サイトによると1964年設立ということなので、その時に花巻電鉄からタクシー部門を独立させたのだと思います。
その後の資本関係の詳細は分かりませんが、今では社紋も桜のマークに変わり、花巻電鉄の面影はありません。
そういえば、かつて存在した花巻バスのマークが桜の形でしたが、偶然だと思います。
花巻地区バス停路線図
主要バス停間の所要時間が記載されたかなり詳細な路線図で,北は日詰から南は北上まで,当時の花巻営業所の路線エリアと思われる地区が書かれています。
鉛温泉の奥の「豊沢湖レジャーセンター」,花巻空港の北側の「二枚橋駅前」(現花巻空港駅),北上駅近くの「北上営業所」など,80年前後と思われる表記が幾つも見られます。
もっとも,設置された当初は,かなり親切な路線図であったと思われます。
花巻地区バス停路線図
大迫の市外局番が6桁なので1980年代前半のものであるとは撮影者の推察ですが、そういえば5桁の市外局番は聞いたことがありますが6桁は初めて聞きました。
ほかにも、「花巻バスセンター」や北上駅の西隣の「北上営業所」など時代を知る手がかりはいくつかあります。
花巻バス仕様のバス停
撮影:岩手県交通ファン様(東和町 2005.2.12)
「上古田」というバス停がどこにあるのか、“その頃”のバス停一覧表で探してみましたが、「下古田」しか見つかりませんでした。
現在はスクールバスの停留所になっているそうです。
花巻・北上市境に密集する「花北」
岩手日野自動車花北営業所
撮影:北上市(2024.5.1)
国道4号線で花巻市と接する北上市北部に、「花北」を冠する支店・営業所を持つ企業が多く見られます。
この場所はかつての花巻バス本社で、1976年に「岩手県交通花北営業所」となった後、「花巻観光バス北上営業所」を経て、「岩手日野自動車花北営業所」となりました。
住所は北上市村崎野です。
いすゞ自動車東北花北支店
撮影:北上市(2024.5.1)
日野の向かいにはいすゞがあります。
いわゆる「花北地域」の営業拠点として花北の名称を付けたのだと思いますが、市境の花巻とも北上ともいえない場所にあるからこの名前にしたと、勘ぐりたくなってしまいます。
花北モータースクール
撮影:北上市(2022.12.24)
花北興産が経営する花北モータースクールも、この並びにあります。住所は北上市飯豊です。
写真は、旧車状態にある教習車で、元国際興業のいすゞP-LT312J
もう一つの「花北」
県立花巻北高校
撮影:花巻市(2018.10.2)
岩手県交通花巻営業所を撮った写真ですが、隣接する高台に見えるのは花巻北高校。これにも「花北」という略称があります。
ほかにも花北青雲高校、花巻市花北振興センターなど花巻市内に「花北」のつく組織がありますが、これは花巻市の北部という意味での「花北」です。