たんぼの記録 2004成熟期
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     7月12日 出穂


  平年より10日以上早く出穂しました。

  今年の稲刈りは8月お盆前後から始まりそうです。

  慣行稲の穂は葉と同じ色で目立ちません。

  下葉の枯れと共に、過剰に分けつしていた茎も退化し
  最終的に出穂した穂数は20本前後です。

  親茎が主体の株構成で、上位分けつが退化したため
  着葉数が多く、倒伏に関わる下位節が多くなっています。
  またその分不必要な葉面積にもなっています。

  穂が小さいため、出穂開花後もしばらく直立姿勢を
  保ちます。

    
写真は拡大できます。


  肥効の落ちていない稲の穂は葉色より淡い為
  よく目立ちます。

  タイムラグなく生育してきたため下葉の枯れは
  少なく、穂数は25本前後で停止しています。

  分けつ茎主体の株構成で着葉数が少なく、株は大柄
  ですが無駄の無い姿になっています。

  穂が大きく、出穂開花と共に順次頭を垂れ始めます。

      
      
写真をクリックしてください。
 

     7月17日 出穂後5日目


 写真左 出穂後5日経過し、への字稲は開花しながら
       穂を垂れ始めました。

 左下  慣行稲は全体の出穂・開花が終りました。
      これから一斉に穂を垂れ始めます。

 右下  への字稲は出穂・開花時期が茎によって違う
      ため、出穂揃いまでに時間がかかります。

     

       写真は拡大できます、クリックしてください。

     7月23日 出穂後10日目


 出穂開花時に並んでいた草丈が、再度逆転しました。
 への字稲は止葉の間に穂が沈みこみ、みかけの
 派手さはなくなります。

 下左 慣行稲も傾穂期に入り穂が垂れてきました。
     止葉の上に穂が出ているので姿勢が高く、
     一見にぎやかに見えます。

 下右 への字稲の穂は止葉の下まで垂れて実ります。
     『実るほど頭を垂れる稲穂かな・・』の言葉が、
     田んぼを横から見るとよく判ります。


 直立した姿勢の慣行稲はこの時期でも条間に隙間が
 あり遠くまで確認できます。
 
 穂は高い位置で実るのでにぎやかです。

 指導書によれば、この姿が理想の受光体制であると
 されていますが。

 
 
 開張した姿勢のへの字稲は、早い時期から条間が
 塞がり目立たなくなります。

 穂は止葉の下に垂れ下がるので、一見葉っぱばかり
 の田に見えます。

 どちらの受光体制が合理的でしょうか?
 
 


      慣行稲とへの字稲の構造上の違い


  稲は出穂・開花が終ると節間伸長が止まり、傾穂期・
  登熟期に向かいます。

  慣行稲・への字稲共に草丈は110センチになりました。
  への字稲の草丈としては平年並みですが、慣行稲の
  草丈としてはやや高すぎるようです。

  慣行稲(左2本)は親茎主体の株構成であることと、
  早い時期に分けつが終ることが原因で茎1本当たりの
  着葉枚数が多くなります。

  過繁茂の害もさることながら、伸長節の数が多くなり
  節間の伸びによる倒伏の可能性が高くなります。

  への字稲(右2本)は分けつ、特に高位分けつ主体の
  株構成になっており着葉数の少ないのが特徴です。

  背丈の割りに茎下部が太く、また、地際からの挫折倒伏
  に大きく関わるといわれる4・5節間がほとんど存在しない
  ため腰が低く、安定した姿になっています。
  


  倒伏の可能性の指標は穂首節の位置にあります。

  穂首節から穂先までの長さと穂首節から地面までの
  長さが同じであれば倒伏の限界であるとされており、
  穂首節で稲を折り曲げることで確認できます。。

  慣行稲(左)は限界線上にあり、穂肥の量と天候
  次第では倒伏の危険があるということになります。

  への字稲(右)は節間の数が少ないこともあり、充分な
  余裕があるため、湾曲はしても挫折倒伏の危険が
  少ないと言えます。

 
  への字稲(左)は穂と止め葉が大きいのも特徴です。
   止め葉長 38cm  穂長 21cm  着粒数 140粒
   1次枝梗数 12本

  慣行稲(右)は
   止め葉長 25cm  穂長 17cm  着粒数 80粒
   1次枝梗数 9本

  この時点で今年の収量が予測できます。
  1次枝梗の本数がおおよその反当収量(12本=12俵)
  とされていますが、もう少し正確に式を立てて解くと、
 
  への字稲
  140(着粒数) X 25(1株穂数) X 45(坪株数)
  =
157500(着粒数/坪) X 20/1000(千粒重)/1000
  =
3.15(Kg/坪)X330X0.7(登熟率)X0.9(収穫ロス)
  =
655(反当収量 Kg)となります。

  同様に慣行稲は
  80(着粒数) X 20(1株穂数) X 70(坪株数)
  =
112000(着粒数/坪) X 20/1000(千粒重)/1000
  =
2.24(Kg/坪)X330X0.7(登熟率)X0.9(収穫ロス)
  =
466(反当収量 Kg)となります。 


     7月27日 出穂後15日目


 慣行稲はやっと穂が垂れ始めましたが、高温条件
 のためか下葉の枯れ上がりが急で、消耗が見られ
 ます。

 への字稲は穂先の籾が色付きはじめました。
 
 
 
 
 穂が比較的小さく止葉の上で実るので、見かけ上
 よく出来ているように見えます。
 
 あぜ際の稲は穂先があぜに付くほど湾曲しますが、
 環境が良いので倒伏しません。
 施肥時、あぜ際に多く肥料を撒くことで収量を上げる事が
 出来ます。
 大区画の圃場より小さな田んぼの収量性が高いのは、
 あぜ際の面積率が高い事が大きく効いています。


 田んぼの中央部の様子です。

 大きく黒い止葉でも直立していれば問題ありません。
 穂は条間・止め葉の下に隠れ、受光体制を悪くしません。

     8月2日 出穂後20日目


 今年は高温・多照の天候が続き、生育が平年に比べ
 10日以上早くなっています。

 への字稲は急速に色付いてきました。

      倒伏

            挫折倒伏
 台風10号の影響でコシヒカリに倒伏被害が
 出ています。

 今年のような高温年は稲の背丈が伸び、下位節間も
 長くなっているので、地際で節間が折れて倒れる
 挫折倒伏が多くなります。

 この後の登熟が悪くなり、刈り取りにも支障を
 きたします。

            湾曲倒伏
 への字稲は下位節間が比較的短く、倒伏には強い
 姿をしています。

 写真のような上位節間の湾曲倒伏や、湿田気味の
 圃場での根こそぎ倒伏が多くなりますが、共に自力で
 起き上がることが多く、被害は大きくなりません。


     他品種出穂期の様子

           どんとこい

 葉色が淡く短幹で、完全な穂数型の稲です。
 坪当たり1500本の穂数が立ちますので、中期以降の
 追肥に重点を置き籾の退化を防ぐようにします。

 倒伏の心配はありません。

 肥沃な圃場での多肥栽培に向きますが、痩せ地では
 イモチ病の発生が激しいので注意を要します。

           キヌヒカリ

 葉色が濃く短幹品種ですが分けつ性が悪く、穂数の
 確保に問題があります。
 
 痩せた圃場では植え付け株数を増やすか、元肥施肥
 の検討を要します。

 減数分裂期の籾退化が激しいので、早め(出穂25日
 前前後)の穂肥が重要です。



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