ナイトメア・・・悪夢








神の都





















勝負はあっけなくついた。
オズマの言葉通り、オズは姉に対して本気を出せないまま戦いに臨み、当然の如く負けた。

オズマの容赦ない魔法攻撃に防戦一方のオズのグラムロックをラプチャーロースが弾き飛ばし首に巻きついて・・・、
姉と弟の対決は終わった。

荊の鞭が首から放れていき、ぜいぜいと空気を吸い込むオズの足元にオズマは炎の戦斧を投げてよこした。
どすっと地面に刺さるそれをオズは慌てて避けた。

「・・・・・・・・・。」
鞭の跡がついた首をさすりながら恨めしそうな目で姉を見る弟にオズマがにやりと笑う。
「わたしの勝ちね、オズ。」
「姉さん相手に戦えるはずないだろう!」
オズが情けない顔でわめく。
「オレが戦いたいのは他の奴らだ!」
「わたしに勝てたらね。」
「だから、姉さんとは戦いたくないって言ってるだろうが!」
「だから、わたしに勝てたらね。」
「だから・・・!」
「お黙り、オズ!」
「・・・・・・・・・。」
姉に睨まれてオズは黙った。内心畜生と舌打する。
少しの沈黙の後、オズマが言った。
「ロスローリアンを甘く見るな・・・。」
「・・・姉さん?」
低く唸るような姉の声音にオズの身体が緊張する。
「おまえはロスローリアンが何をしているか知っているの?」
「教皇の警護・・・。」
弟の答えにオズマが笑った。
「権謀と血と粛清よ。」

・・・・・・辺境の地にもロスローリアンの噂は聞こえてきた。他の騎士たちから畏怖の念で恐れられる騎士たち。政治の裏で暗躍する血塗られた黒い鎧の・・・。

「オズ・・・、明日にでも仲間から毒を盛られるかもしれないところよ。わたしもおまえを殺すかもしれないわ。」
姉が弟の首に出来た鞭の跡をそっとなぞる。背筋がぞわりとした。
姉の目に浮かぶ自分への明確な――殺意に。

「オレは姉さんを殺せない。」
オズマの視線から逃れるようにして苦しげにオズが呟いた。
「わたしはおまえを殺せるわ。」
「姉さん?」
オズが驚いた表情で姉を見返した。

オズマが冷たく笑う。
笑みを浮かべたまま背伸びして、動かない弟の耳元で囁いた。

おまえが憎いから・・・・・・

だから、殺せるわ・・・・・・








姉の言葉にオズは足元から世界が壊れていくと思った。











 

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