べっ甲について
接着剤のなかった昔、材料自身が接着する(ニカワ質の為)牛の角や馬の爪、
亀の甲等を利用して髪飾り等の装飾品が作られてきました。しかし材料が日本
にないにもかかわらず、亀の甲で作るべっ甲が現在までも皆に親しまれ使われ
てきたのは甲の持つやわらかさ、色合い、軽さ等が日本人の肌に一番合ったの
ではないからでしょうか。べっ甲で作られたクシ、かんざしを頭にさすと頭の熱を
吸収し頭痛が解消されますし、眼鏡等もその人になじんで使い良くなってきます。
べっ甲細工は日本で古くは正倉院に納められている品々にも加飾のため用い
られ、あたたかみのある材料として馴染んできました。当工房では先代より受け
継いだ技術を使い、お客様が楽しんでお使いいただけるアクセサリーを中心に
日々、新鮮味のある製品づくりに取り組んでいます。
ちょっとした歴史
べっ甲とは温かい海に生息するタイマイという海亀のことです。日本には古くは
奈良時代頃から入ってきており、江戸時代までは玳瑁(タイマイ)と呼ばれていま
した。これを「べっ甲」と呼ぶようになったのはいつ頃かははっきりしませんが、徳
川家慶の時代に贅沢を制限する奢侈禁止令が出されたため、その制限をまぬが
れるために「べっ甲」と呼ぶようになったとも言われています。
ちなみに正倉院の宝物の中には「玳瑁竹型杖」や「玳瑁螺鈿八角箱」などべっ甲
を使った製品があります。現在べっ甲細工はおもに東京、長崎、大阪などでおこな
われております。当工房は代々、時代に合った製品を生み出し現在に至ります。
〜亀の背中の甲羅はまだら模様の自然な色合いです〜
亀の甲羅を材料とするべっ甲の製品は、数枚の甲羅を重ねる事により厚みを
出します。
その時に必要とされるのは「水」と「熱」と「圧縮」、そして「職人のカン」です。