30 Minutes NetWorking
No.RT15

30Minutes NetWorking

BSCI

第15回EIGRP(4) SIA

■ ACTIVE

スーパーインター博士

今回は、まず復習からだ。
ネット君、EIGRPのアップデート、QueryとReplyは覚えているな?

ハイパーネット助手

くえり、りぷらい?
え〜っと、EIGRPパケットでしたっけ?

スーパーインター博士

うむ、ルート問い合わせにつかうパケットだな。

[FigureRT13-05:Active State]

ハイパーネット助手

そうそう、ダウンしたルート以外のルートを探し出すためのパケットでしたよね。

スーパーインター博士

そうだ。サクセサがダウンしてフィージブルサクセサがない状態で使う問い合わせだったな。

ハイパーネット助手

そうでした。

スーパーインター博士

この現在問い合わせ中の状態をACTIVEという。

ハイパーネット助手

「行動中」って意味ですかね。
ACTIVEの間はルーティングを行わないんですよね?

スーパーインター博士

そうだ。正しいルート情報を手に入れ、コンバージェンスに達するまでルータはルーティングを中止する。
ルーティングループを防止するためのDUALの動作だが、これには困ったことがある。

ハイパーネット助手

困った事?

スーパーインター博士

うむ。SIAという状態になってしまうのだよ。

ハイパーネット助手

えすあいえー?

■ SIA

スーパーインター博士

SIAは[Stuck In Active]の略で、stuckは「行き詰まり」とか「はまりこむ」という意味がある。

ハイパーネット助手

ACTIVEの行き詰まり?

スーパーインター博士

そうだ。以下のような状態だな。

[FigureRT15-01:Stuck In Active]

ハイパーネット助手

誰もReplyを返さないから、次から次へとルータがACTIVEになっていくんですね。

スーパーインター博士

うむ。ルータがACTIVEにはまりこんでしまうのだな。だから、Stuck In ACTIVEで、SIAだ。

ハイパーネット助手

それは大変ですね……、あれ?
でもBSCI第13回のDUALの説明の時には、「3分以内にReplyが帰ってこなかった場合、そのネイバーはダウンした、と判断する。」と

スーパーインター博士

うむ、その通り。

ハイパーネット助手

ということは、ず〜っとACTIVEのままってわけじゃないですよね?

スーパーインター博士

そうだ。
だが、その「3分間Replyがなかったら、ネイバーをダウンとする」というのもまた厄介の種なのだよ。

ハイパーネット助手

厄介の種?

スーパーインター博士

EIGRPでは、ネイバーがダウンするとそのネイバーがトポロジテーブルから削除されるのだよ。
トポロジテーブルから削除されると何が起こる?

ハイパーネット助手

何が起こるって、トポロジテーブルはルーティングテーブルの元ですよね。

トポロジテーブルとルーティングテーブル

[FigureRT12-02:トポロジテーブルとルーティングテーブル]

ハイパーネット助手

ということは、そのルータをネクストホップとするサクセサがなくなるってことですか?

スーパーインター博士

うむ。特にそのルータをネクストホップとしないと到達しないネットワークは完全にダウンした、と判断されるわけだ。
先ほどの例だと、こうなる。

SIAによるダウン

[FigureRT15-02:SIAによるダウン]

ハイパーネット助手

…。
どこにも繋がらなくなってしまいましたよ?

スーパーインター博士

そうだ。そういう可能性もありえるわけだ。

ハイパーネット助手

直らないんですか?

スーパーインター博士

これはあくまでもSIAによるダウンだから、ルータB自体は生きている。よって定期的なHelloが送信され、それによりまたネイバーに戻ることができる。

ハイパーネット助手

あぁ、そうなんですか。ならいいじゃないですか。

スーパーインター博士

よくはない。一時的にせよ本来ならば到達できるはずのネットワークが繋がらないというのは安定性に欠けたネットワークということになる。

ハイパーネット助手

確かにそうですね。

■ SIAの防止

スーパーインター博士

というわけで、SIAを防止しなければならない。
その方法は。

ハイパーネット助手

方法は?

スーパーインター博士

ない

ハイパーネット助手

はい?

スーパーインター博士

ない。

ハイパーネット助手

ないって、えっと。…ない?

スーパーインター博士

ないといったらない。

ハイパーネット助手

そうなんですか?
でも、ないってことは、これは致命的なエラーを内包するってことじゃないですか?

スーパーインター博士

いやいやいや。この「ない」というのは、何か便利な機能でSIAを防ぐとか、そういう手段がない、という話だ。
ルーティングループのスプリットホライズンや、ホールドダウンタイマのような手段が「ない」のだよ。

ハイパーネット助手

あ〜。そういう意味ですか?
じゃあ防ぐ手立てはあるんですね?

スーパーインター博士

うむ。適切なIPアドレッシングを行い、Queryの届く範囲を限定することで防ぐことが可能だ。

ハイパーネット助手

Queryの届く範囲を限定する?

スーパーインター博士

例えばこうだ。

[FigureRT15-03:SIAの防止]

ハイパーネット助手

あれ? 「知らない」というReplyもアリなんですか?

スーパーインター博士

もちろんアリだ。
このように、集約を使うことによって、SIAを回避できる。

ハイパーネット助手

192.168.0.0/16という集約ルートは知っているけど、192.168.1.0/24というルートは知らないってのも変な話ですね。

スーパーインター博士

SIAは、(フィージブルサクセサがない場合に)自身のサクセサの消失によって起きるQuery送信から発生する。
なので、もともと192.168.1.0/24へのサクセサがないから、ルータBは他へQueryを送らないのだよ。

ハイパーネット助手

192.168.0.0/16の集約ルートは知っているのに?

スーパーインター博士

うむ、知っているのに、だ。192.168.0.0/16という集約ルートは192.168.1.0/24以外も含むから、192.168.1.0/24がダウンしたからといって、192.168.0.0/16をダウンさせるわけにはいかないだろう?

ハイパーネット助手

そういわれればそうですね。

スーパーインター博士

他にも、スタティックルートを使ったり、ルートフィルタリングしたりすることにより、Queryを限定することによって防ぐことができる。

ハイパーネット助手

るーとふぃるたりんぐ?

スーパーインター博士

特定の宛先へアップデートをアドバタイズしないためのフィルタだな。
詳しくは先のディストリビュートリストで説明する。

ハイパーネット助手

ははぁ。

スーパーインター博士

というところで、EIGRPはこれでおしまいだ。

ハイパーネット助手

あらら、今回は短いですね。

スーパーインター博士

うむ、他にも色々あるといえばあるのだが。
まぁ、重要なポイントは大体説明できたかな、と思う。

ハイパーネット助手

了解です。

スーパーインター博士

EIGRPは高速かつ、負荷の少ない優れたルーティングプロトコルだ。

ハイパーネット助手

Cisco専用ですけどね。

スーパーインター博士

うむ。
ともかく、今回はここまで。

ハイパーネット助手

いぇっさ〜。
30分間ネットワーキングでした〜♪

SIA
[Stuck In Active]
ルートフィルタリング
[root filtering]
ルーティングアップデートを特定の宛先に送らないようにすること。
ディストリビュートリスト
[distribute list]
詳しくは後述。
ハイパーネット助手ハイパーネット君の今日のポイント
  • EIGRPではQueryの連続によるSIAが起こることがある。
  • SIAによりネットワークが不安定になることがある。
  • Queryの届く範囲を限定することにより、SIAを防ぐことができる。

30 Minutes NetWorking No.RT15

管理人:aji-ssz(at)selene.is.dream.jp