■ ACTIVE
今回は、まず復習からだ。
ネット君、EIGRPのアップデート、QueryとReplyは覚えているな?
くえり、りぷらい?
え〜っと、EIGRPパケットでしたっけ?
うむ、ルート問い合わせにつかうパケットだな。
[FigureRT13-05:Active State]
そうそう、ダウンしたルート以外のルートを探し出すためのパケットでしたよね。
そうだ。サクセサがダウンしてフィージブルサクセサがない状態で使う問い合わせだったな。
そうでした。
この現在問い合わせ中の状態をACTIVEという。
「行動中」って意味ですかね。
ACTIVEの間はルーティングを行わないんですよね?
そうだ。正しいルート情報を手に入れ、コンバージェンスに達するまでルータはルーティングを中止する。
ルーティングループを防止するためのDUALの動作だが、これには困ったことがある。
困った事?
うむ。SIAという状態になってしまうのだよ。
えすあいえー?
■ SIA
SIAは[Stuck In Active]の略で、stuckは「行き詰まり」とか「はまりこむ」という意味がある。
ACTIVEの行き詰まり?
そうだ。以下のような状態だな。
[FigureRT15-01:Stuck In Active]
誰もReplyを返さないから、次から次へとルータがACTIVEになっていくんですね。
うむ。ルータがACTIVEにはまりこんでしまうのだな。だから、Stuck In ACTIVEで、SIAだ。
それは大変ですね……、あれ?
でもBSCI第13回のDUALの説明の時には、「3分以内にReplyが帰ってこなかった場合、そのネイバーはダウンした、と判断する。」と
うむ、その通り。
ということは、ず〜っとACTIVEのままってわけじゃないですよね?
そうだ。
だが、その「3分間Replyがなかったら、ネイバーをダウンとする」というのもまた厄介の種なのだよ。
厄介の種?
EIGRPでは、ネイバーがダウンするとそのネイバーがトポロジテーブルから削除されるのだよ。
トポロジテーブルから削除されると何が起こる?
何が起こるって、トポロジテーブルはルーティングテーブルの元ですよね。
[FigureRT12-02:トポロジテーブルとルーティングテーブル]
ということは、そのルータをネクストホップとするサクセサがなくなるってことですか?
うむ。特にそのルータをネクストホップとしないと到達しないネットワークは完全にダウンした、と判断されるわけだ。
先ほどの例だと、こうなる。
[FigureRT15-02:SIAによるダウン]
…。
どこにも繋がらなくなってしまいましたよ?
そうだ。そういう可能性もありえるわけだ。
直らないんですか?
これはあくまでもSIAによるダウンだから、ルータB自体は生きている。よって定期的なHelloが送信され、それによりまたネイバーに戻ることができる。
あぁ、そうなんですか。ならいいじゃないですか。
よくはない。一時的にせよ本来ならば到達できるはずのネットワークが繋がらないというのは安定性に欠けたネットワークということになる。
確かにそうですね。
■ SIAの防止
というわけで、SIAを防止しなければならない。
その方法は。
方法は?
ない。
はい?
ない。
ないって、えっと。…ない?
ないといったらない。
そうなんですか?
でも、ないってことは、これは致命的なエラーを内包するってことじゃないですか?
いやいやいや。この「ない」というのは、何か便利な機能でSIAを防ぐとか、そういう手段がない、という話だ。
ルーティングループのスプリットホライズンや、ホールドダウンタイマのような手段が「ない」のだよ。
あ〜。そういう意味ですか?
じゃあ防ぐ手立てはあるんですね?
うむ。適切なIPアドレッシングを行い、Queryの届く範囲を限定することで防ぐことが可能だ。
Queryの届く範囲を限定する?
例えばこうだ。
[FigureRT15-03:SIAの防止]
あれ? 「知らない」というReplyもアリなんですか?
もちろんアリだ。
このように、集約を使うことによって、SIAを回避できる。
192.168.0.0/16という集約ルートは知っているけど、192.168.1.0/24というルートは知らないってのも変な話ですね。
SIAは、(フィージブルサクセサがない場合に)自身のサクセサの消失によって起きるQuery送信から発生する。
なので、もともと192.168.1.0/24へのサクセサがないから、ルータBは他へQueryを送らないのだよ。
192.168.0.0/16の集約ルートは知っているのに?
うむ、知っているのに、だ。192.168.0.0/16という集約ルートは192.168.1.0/24以外も含むから、192.168.1.0/24がダウンしたからといって、192.168.0.0/16をダウンさせるわけにはいかないだろう?
そういわれればそうですね。
他にも、スタティックルートを使ったり、ルートフィルタリングしたりすることにより、Queryを限定することによって防ぐことができる。
るーとふぃるたりんぐ?
特定の宛先へアップデートをアドバタイズしないためのフィルタだな。
詳しくは先のディストリビュートリストで説明する。
ははぁ。
というところで、EIGRPはこれでおしまいだ。
あらら、今回は短いですね。
うむ、他にも色々あるといえばあるのだが。
まぁ、重要なポイントは大体説明できたかな、と思う。
了解です。
EIGRPは高速かつ、負荷の少ない優れたルーティングプロトコルだ。
Cisco専用ですけどね。
うむ。
ともかく、今回はここまで。
いぇっさ〜。
30分間ネットワーキングでした〜♪
- SIA
- [Stuck In Active]
- ルートフィルタリング
-
[root filtering]
ルーティングアップデートを特定の宛先に送らないようにすること。
- ディストリビュートリスト
-
[distribute list]
詳しくは後述。
- ハイパーネット君の今日のポイント
-
- EIGRPではQueryの連続によるSIAが起こることがある。
- SIAによりネットワークが不安定になることがある。
- Queryの届く範囲を限定することにより、SIAを防ぐことができる。