■ AS
ネット君。インターネットはネットワークの集合体だな。
え? あ、はい。そうですよね。インターネットは、まさしく「インターネットワーク」のネットワークですよね。
うむ。
その数多あるネットワーク達を結ぶの役割を担っているのが…。
ルータ。
で、ルータ間の情報伝達の方法が…。
ルーティングプロトコル。
であることは言うまでもない。
…、ネット君。なかなかいい合いの手だ。
えへへ。
まぁ、これぐらいはしてもらわんと、促成培養した甲斐がない。
ともかく、インターネットは星の数ほどあるネットワークを結ばなければならない。よって、ASというより大きなネットワーク群を使う。
えいえす。
自律システムでしたよね。
うむ。同一の管理組織によって管理されるネットワーク群だな。昔は同一のルーティングプロトコルを使うネットワークという意味もあったが、今は同一の管理ポリシーを使い、外部からは1つの単位として扱われるネットワークという意味で使われる。
1つの単位として扱われる?
そうだ。ASという単位で複数のネットワークを1つにまとめ、より効果的なルーティングをするわけだ。
つまりASの相互接続した姿こそがインターネットということだな。
ははぁ。
ASはAS同士で接続したり、IXという接続点を使って接続したりしている。 ▼ link
[FigureRT16-01:AS間接続]
もちろん、このAS間でもルーティングが必要だ。経路を制御しなければならないからな。
このAS間のルーティングプロトコルをなんというか、覚えているか、ネット君?
EGP、でしたよね。
3分間ネットワーキングの32回で出てきましたよね。
うむ。その通り。EGPではちょっと間違えやすいので今後はEGPsというが、EGPsとIGPの関係はそうだな、ネットワークアドレスとホストアドレスの関係に近い。
ネットワークアドレスとホストアドレス?
IPアドレスの?
そうだ。IPアドレスでいうところのホストアドレスと同様に、AS内で使用するIGPは各ASが決める。
じゃ、EGPsはIPアドレスのネットワークアドレスのようにネットワークの管理組織が決める?
まぁ、管理組織があって決めているわけではないが、EGPsはASで共通のものを使う。それが今回から説明するBGPだ。
びーじーぴー。
■ AS間ルーティング
さて、そのEGPsだが、IGPとは一味違う形にしなければならない。
一味違う?
つまり、複数のネットワークの集合体であるAS、このAS間のルーティングということは膨大なネットワーク間のルーティングをしなければならない、ということだ。
複数のネットワークをまとめたものが、AS。
AS間でルーティングをするには、そのASが持つ複数のネットワークの情報が必要ってことですか?
まぁ、そういうことだな。
IGPではこのような膨大なネットワークを処理するようには作られていない。
そうなんですか?
RIPはともかく、OSPFとかは結構大規模にも使えそうですけど。
いやいや、OSPFは確かにそれなりの規模のネットワークをルーティングできる。特にマルチエリアOSPFならなおさらだ。
だが、簡単に言うと、OSPFは、というよりもIGPは詳細すぎるのだな。
詳細すぎる?
うむ、膨大なネットワークを管理するにはIGPは事細かすぎて、ルータの負荷があまりにも大きくなってしまう。
じゃあ、EGPsは大雑把なんですか?
う〜ん。大雑把と言い切ってしまうにはちょっと問題があるが。
例えばだ、IGPでは「ココからネットワークA(宛先)へ行くには、ルータαへ送る」と覚えている。
そうですね。
一方、EGPsでは「ココからネットワークA(宛先)に行くには、ASのB番へ送る」と覚える。
……、なんか違いが?
ASという単位でネクストホップを考えているのだよ。
ASというネットワーク群が念頭にあってのルーティング、なのだ。
え〜っと。つまり、もとからASという概念があるから、より大きなネットワークに対応しているのがEGPsってことですか?
うむ、そういうことだな。
規模的に小さいネットワークならば、例えばASの数が少ないネットワークならば、IGPでAS間を接続するのも可能だろう。
ふむふむ、そういうものですか。
■ AS番号
このAS間のルーティングで重要なキーワードとなるのが、AS番号だ。
えーえす番号。
IPアドレス同様ICANNによって割り振られる番号で、16ビット0〜65535までの番号がある。
へへぇ。どういう意味で重要なキーワードなんですか?
先ほども話したように、EGPsはASを基準としてルーティングを行う。
その識別に使用するのがAS番号だ。
識別に利用する?
うむ。これは先で説明していくが、送信元・宛先・経由ルータがどのASに所属しているかというのをポイントとしてルーティングするのだよ。
…う〜ん、わかったようなわからないような。
ま、それはおいおい説明していこう。
それでだ、このAS番号はインターネットに接続しているすべてのASでユニークな番号が割り振られる。▼ link
ICANNが管理して、一意に割り振るんですね。
そうだ。IPアドレス同様インターネットに接続するにはAS番号がなければならない。
そうなんですか?
じゃ、僕がインターネットに接続したらAS番号はいくつになるんだろう?
パソコンにAS番号が割り振られているわけではない。所属するプロバイダに割り振られているのだよ。
[FigureRT16-02:プロバイダというAS]
あぁ、なるほど。
■ インターネットへの接続
プロバイダがAS番号を持ち、インターネットへ接続するのだが。
今後説明するBGPでは、以下のように接続形態を区別している。
[FigureRT16-03:シングルホーム・マルチホーム]
しんぐるほーむとまるちほーむ?
外部との接続を1つしかもたないASをシングルホームという。
複数持つASをマルチホームという。
シングルホームはOSPFのスタブエリアみたいですね。
そうだな、似ているといえば似てるな。
シングルホームの場合、無理にグローバルIPアドレスやグローバルAS番号を取得しなくても、インターネットへの接続点であるASが割り当てるプライベートのものでもいい。
ははぁ。直接インターネットへ接続していないからですか。
そうだ。さらに言えば、EGPsなんか使わなくてもデフォルトルートだけでなんとかなる場合も多い。
まぁ、そういえばそうですね。
もう一つ接続形態としては、トランジットと非トランジットがある。
とらんじっと?
[FigureRT16-04:トランジットAS]
他ASの情報を他に送ることにより、自ASの通過を認めるASがトランジット。その逆が非トランジットだな。
ははぁ。
っていうことは。さっきのシングルホームASとインターネットを接続していたASはトランジットASってことになるわけですか?
うむ。その通り。
なるほどです。
さて、今回はここまでにしておこう。
次回からは本格的にBGPを説明する。
了解。
30分間ネットワーキングでした〜♪
- インターネットワーク
-
[Internetwork]
ルータ等で相互接続された、単一のネットワークとして機能するネットワーク群。
インターネット[internet]と略される。
くどいようだが、一般的なインターネット[Internet]とは違う、一般名詞。(Intenetは固有名詞)。
- AS
- [Autonomous System]
- IX
-
[Internet eXchange]
インターネット相互接続点。複数のASを結ぶ拠点。
日本では、WIDE[Widely Integrated Distributed Environments]プロジェクトが持つNSPIXP-1,2,3や、JPIX[Japan Internet eXchange Co., Ltd.]、MEX[Media EXchange Inc.]がある。
- EGP
-
[Exterior Gateway Protocol]
外部ゲートウェイプロトコル。
- BGP
- [Border Gateway Protocol]
- AS番号
-
[Autonomous System Number]
「ASN」と略される。
0〜65535までの番号で、64512〜65534はプライベートASN。
0と65535はICANNに予約済み。
- トランジット
-
[transit]
「通過」の意味。
- ハイパーネット君の今日のポイント
-
- 同一の管理ポリシーを使い、外部からは1つの単位として扱われるネットワーク群をASという。
- AS間のルーティングにはEGPsを使う。
- ASにはAS番号が割り振られ、EGPsはAS番号を基としてルーティングを行う。
- 外部との接続が1つしかないASをシングルホームAS、複数あるASをマルチホームASという。
- 自ASをパケットが通過するASをトランジットAS、通過できないASを非トランジットASという。