30 Minutes NetWorking
No.RT13

30Minutes NetWorking

BSCI

第13回EIGRP(3) DUAL

■ FDとAD

スーパーインター博士

さて、前々から言葉がでてきていた、DUALを今回は説明する。

ハイパーネット助手

でゅある?

スーパーインター博士

Diffusing Update ALgorithm、拡散アップデートアルゴリズムと訳す。
EIGRPのアップデートだな。

ハイパーネット助手

ははぁ。
拡張ディスタンスベクタというぐらいなんですから、普通にルーティングテーブルをやりとりはしないんですよね。

スーパーインター博士

うむ。
まず、DUALで使われる用語の説明をしよう。まずFDADだ。

ハイパーネット助手

えふでぃー、えーでぃー。

スーパーインター博士

EIGRPは拡張とはいえ基本はディスタンスベクタだ。
なので、ネイバーが知るパスを教えてくれる。そのメトリックがADだ。

AD

[FigureRT13-01:Advertised Distance]

ハイパーネット助手

ははぁ。
宛先ネットワークとネイバーとの距離ってことですか?

スーパーインター博士

そう、ネイバーが通知(アドバタイズ)してきた距離、つまりAD(アドバタイズドディスタンス)ってことだな。
そして、もうひとつがFDだ。

FD

[FigureRT13-02:Feasible Distance]

ハイパーネット助手

こっちは、自身から宛先ネットワークまでの距離ですね。

スーパーインター博士

そういうことだ。宛先ネットワークまでパケットを送ることがフィージブル(実行可能な)距離、FD(フィージブルディスタンス)だ。

ハイパーネット助手

ふむふむ。
で、このFDとADは何に使うんですか?

スーパーインター博士

サクセサフィージブルサクセサを計算するのに使うのだ。

ハイパーネット助手

さくせさ?
成功者?

■ サクセサ

スーパーインター博士

成功する[succeed]の名詞形が成功[success]だが、successor は「後任、後継者、後に来るもの」の意味がある。
ともかく、サクセサとはベストパスのことだ。

ハイパーネット助手

べすとぱす? 最適経路ですよね。

スーパーインター博士

うむ、ルーティングテーブルに記載される最適経路だ。
さてネット君。EIGRPのルーティングテーブルはどう作る?

ハイパーネット助手

えっと、ネイバーから教えてもらった経路がすべて載ったトポロジテーブルから、ベストパスを抜き出して、作られます。

スーパーインター博士

そうだ、前回出てきた図であったな。

トポロジテーブルとルーティングテーブル

[FigureRT12-02:トポロジテーブルとルーティングテーブル]

ハイパーネット助手

あ〜。ここにFDとADが出てる。

スーパーインター博士

うむ。図を見てわかるように、最小のFDを持つパスがサクセサになり、ルーティングテーブルに記載されるわけだ。

ハイパーネット助手

じゃ、ADは何に使うんです?
それと、フィージブルサクセサって何です?

スーパーインター博士

まぁ、まて。一気に言うな。順番に行こう。
フィージブルサクセサは代替パスのことだ。

ハイパーネット助手

代替パス?
最適パスに対する、代わりのパスですか?

スーパーインター博士

うむ。バックアップルートのことだな。

フィージブルサクセサ

[FigureRT13-03:Feasible Successor]

ハイパーネット助手

はぁ。宛先ネットワークまでの別のパスですね。
サクセサが駄目になった時に使う、と。

スーパーインター博士

そうだ。だが、サクセサと別のパスがあったからといって、なんでもかんでもフィージブルサクセサにはならない。
サクセサ以外の条件を満たしたパスのみがフィージブルサクセサになる

ハイパーネット助手

条件?

スーパーインター博士

うむ、以下のような条件だ。

  • サクセサのFD > フィージブルサクセサ(候補)のAD
ハイパーネット助手

サクセサの宛先ネットワークまでのメトリックより、フィージブルサクセサ(候補)までのメトリックの方が小さい?

スーパーインター博士

そうだ。ちょっとわかりづらいので図で示そう。

[FigureRT13-04:フィージブルサクセサの計算]

ハイパーネット助手

ははぁ。なんでこんな面倒な条件をしてるんでしょうか?
素直に、サクセサ以外のパスはバックアップ、としてしまえばいいのに。

スーパーインター博士

確かにそうだが、実を言うと、これがDUALの「ルーティングループ」を防ぐための手段なのだよ。

ハイパーネット助手

そうなんですか?

スーパーインター博士

うむ。それについてはまたいずれ話そう。
さて、この条件でいけば、メトリック的に変な状況にもなりうる。

フィージブルサクセサ?

[FigureRT13-05:Feasible Successor?]

スーパーインター博士

FDは遠いネイバーCのパスがフィージブルサクセサに選ばれてしまう、このようなこともありえるわけだ。

ハイパーネット助手

あ〜、そういえばそうなりますよね。
なんでですかね?

スーパーインター博士

基本的にディスタンスベクタなEIGRPは、ディスタンスベクタの基本概念である「ネイバーからの通知」を重視する。
なので、フィージブルサクセサを選ぶ場合は、通知してきた距離(AD)を使う。

ハイパーネット助手

は〜、なんか納得いかないような。

スーパーインター博士

うむ。正直知らんのだ、あまりツッコむな。

ハイパーネット助手

ほほ〜。博士の敗北宣言とは珍しい。
じゃ、この話はここまでにしときましょう。

■ ACTIVE

スーパーインター博士

さて、サクセサをルーティングテーブルに記載する
サクセサのダウン時は、フィージブルサクセサがサクセサに昇格する。この2点はいいな。

ハイパーネット助手

はい。サクセサが最適経路、フィージブルサクセサはバックアップのパスですね。

スーパーインター博士

問題は、フィージブルサクセサがない状態で、サクセサがダウンした場合だ。

[FigureRT13-05:Active State]

ハイパーネット助手

結局、フィージブルサクセサでなかったパスが、サクセサになっちゃうんですね。

スーパーインター博士

うむ。バックアップのルートとしては遠すぎるなぁ、と感じていたパスだが、結局それしかないから仕方がない。という感じかな。
ポイントはいくつかある。まずQueryとReplyだ。

ハイパーネット助手

「問い合わせ」「応答」ですね。

スーパーインター博士

そうだ。DUALはルーティングループが発生しないと以前話したが、理由はこのQueryとReplyだ。
ネット君、ルーティングループは何故発生する?

ハイパーネット助手

それは、え〜、トポロジの変更情報が届かないうちに、他のルータへ誤ったトポロジ情報を通知するから。
あとは、変更情報が届かないうちに、パケットを転送するからなかな。

スーパーインター博士

よしよし。だが、EIGRPの場合、トポロジの変更が起きた場合、フィージブルサクセサがあればそちらをすぐ採用して使う。
ループは発生しないな?

ハイパーネット助手

そうですね。
違うルートがあるんですから、誤ったルートへは送られないですよね。

スーパーインター博士

フィージブルサクセサがない場合、Qurayを送る。Queryを送るとACTIVEになってルーティングは保留になる
正確なトポロジ情報が入ってくるまで、つまりコンバージェンスに達するまで行動を控えるわけだな。

ハイパーネット助手

は〜。
ということは、誤ったトポロジ情報を使わないってことですよね、なるほど。

スーパーインター博士

そういうことだ。
あと、Query/Replyに関してはポイントが2つある。

[FigureRT13-06:Active解除の条件]

スーパーインター博士

確実にコンバージェンスに達するため、すべてのネイバーから通知をもらうまでACTIVEは続くってことだな。

ハイパーネット助手

ん〜、確かに正確さを求めるためにはそうでしょうけど。
もしなんらかの原因でReplyが帰ってこなかったらどうなるんです?

スーパーインター博士

例えば、Queryを受け取った直後にダウンしたとかか?
3分以内にReplyが帰ってこなかった場合、そのネイバーはダウンした、と判断する。

ハイパーネット助手

なんだ、ちゃんと考えられているんですね。

スーパーインター博士

うむ。そのReply待ちについては先でまた説明する。
もう1つのQuery/Replyのポイントは、以下の通りだ。

[FigureRT13-07:サクセサからのQuery]

ハイパーネット助手

サクセサからのQueryもダウンと判断する?

スーパーインター博士

その通り。考えてみれば当然だ。上の例でいえば、ルータBはネイバーのルータAから教えてもらったルートを使っている。
それなのに、その当のルータAから「αへのパスを知りませんか?」ときたら、おかしいなと思うだろ?

ハイパーネット助手

あ〜、確かに。
「お前から教えてもらったのに、(αへのパスを)知らんとはどういうこっちゃ?」と思いますね。

スーパーインター博士

そういうことだ。

ハイパーネット助手

ディスタンスベクタに似てると言えば、似てるけど。
なんかいろいろ考えられてますねぇ。

スーパーインター博士

拡張ディスタンスベクタだからな。
さて今回はこれぐらいにしておこう。

ハイパーネット助手

いぇっさ〜。
30分間ネットワーキングでした〜♪

FD
[Feasible Distance]
AD
「Advertised Distance]
サクセサ
[successor]
フィージブルサクセサ
[Feasible suuccessor]
以下のような条件
この条件のことをフィージビリティコンディション[Feasibility Condition:FC]とも言います。
3分
この時間のことをアクティブタイマ[Active Timer]と言います。
Reply待ちの3分間、ACTIVEのままでいることをSIA[Stuck In Active]状態(アクティブのまま固まる)と言います。
ハイパーネット助手ハイパーネット君の今日のポイント
  • べストパスをサクセサ、バックアップルートをフィージブルサクセサという。
    • サクセサ、フィージブルサクセサは、FD、ADの2つの値から計算される。
    • サクセサがダウンした場合、フィージブルサクセサがサクセサに昇格する。
    • フィージブルサクセサがない場合、サクセサがダウンするとQueryでネイバーに問い合わせる。
    • Queryを受け取ったネイバーはサクセサ(フィージブルサクセサ)を通知する。
    • Queryを受け取ったネイバーもサクセサがない場合は、さらにネイバーへQueryを送る。

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管理人:aji-ssz(at)selene.is.dream.jp