30 Minutes NetWorking
No.RT10

30Minutes NetWorking

BSCI

第10回マルチエリアOSPF(3) 経路集約

■ マルチエリアOSPF

スーパーインター博士

さて、さっぱり君

ハイパーネット助手

だれが「さっぱり君」ですかっ。

スーパーインター博士

そんな事は言うまでもないことだと思うが。
私の口から直接告げた方がいいか?

ハイパーネット助手

結構です。
えぇ、どうせ僕は「さっぱり君」ですよ…。

スーパーインター博士

現状の正確な把握が出来たところで、話を進めよう。
マルチエリアOSPFにおけるルータタイプと、エリアタイプは理解できたかね?

ルータタイプ役割
内部ルータエリア内部のアップデートと、エリア外の集約アップデートを受け取る。
ABRエリア外のアップデートを集約してエリア内に送る。
ASBRAS外の経路情報を再配送してAS内に伝える

[TableRT08-02:ルータタイプ・役割]

エリア種別使われるLSAタイプ役割
バックボーンすべてすべてのエリア間トラフィックは必ず通過する。エリア0。
標準すべてLSAに制限のない、スタブ以外のエリア
スタブ1,2,3LSAタイプ5(外部ASルート)を受け取らないエリア。
TSA1,2エリア内部以外は受け取らないエリア。
NSSA1,2,3,7ASBRが存在するスタブエリア。タイプ7を使用する。

[TableRT09-01:エリア種別]

ハイパーネット助手

さっぱり君に何を期待してるんですか?

スーパーインター博士

いい歳をした大人がすねるな。可愛くないぞ
ともかく。今回はOSPFがらみのその他の話を行う。まず経路集約だ。

ハイパーネット助手

経路集約?
BSCI第3回でやってますけど、もう1度やるんですか?

■ ABRでの経路集約

スーパーインター博士

いや、今回話すのはOSPFでの経路集約の設定方式だ。
いくつか設定しないと経路集約が上手く動かない。

ハイパーネット助手

ははぁ。
経路集約はOSPFのウリの1つですからね。動かないとかなり悲しいですよね。

スーパーインター博士

うむ。
まず、経路集約を行うのはABRとASBRという事を思い出すのだ。

ハイパーネット助手

ABRがLSAタイプ3・4、ASBRがタイプ5を作ってフラッディングするんですよね。

スーパーインター博士

そうだ。
これらの設定をOSPFは手動で設定してやらねばならない。

ハイパーネット助手

ふむふむ。

スーパーインター博士

例を出した方がいいな。
以下のような構成だ。

経路集約・例

[FigureRT10-01:経路集約・例]

ハイパーネット助手

ネットワークアドレスは連続しているんですね。

スーパーインター博士

うむ。というよりも、OSPFを使うなら連続したアドレスにすべきなのだ。
もし新たにOSPFを導入しようと考えているなら、従来のアドレス構成を変更してでも連続させるようにしなければならない。

ハイパーネット助手

連続していないと集約できないですからね。

スーパーインター博士

その通り。OSPFを使うのに連続させないならば意味がない
さて、ネット君。集約したまえ。

ハイパーネット助手

はい。え〜っと。…第3オクテットを2進数にして…、こうなって…。
できました。こうですよね?

エリア1192.168.96.0/19
エリア8172.16.208.0/20

[Table10-01:経路集約]

スーパーインター博士

うむ、正解だ。

ハイパーネット助手

いぇい。

スーパーインター博士

さて、これをルータに設定していこう。

  • Router(config)#router ospf 1
  • Router(config-router)#network 192.168.96.1 0.0.0.0 area 1
  • Router(config-router)#network 172.16.208.1 0.0.0.0 area 8
  • Router(config-router)#area 1 range 192.168.96.0 255.255.224.0
  • Router(config-router)#area 8 range 172.16.208.0 255.255.240.0
スーパーインター博士

こうなる。
ポイントは4行目と5行目のarea rangeコマンドだな。

  • Router(config-router)#area area-id range ip-address subnetmask
ハイパーネット助手

くわぁ。
networkコマンドはワイルドカードマスクなのに、こっちはサブネットマスクですか。ややこしいなぁ。

■ スタブエリア設定

スーパーインター博士

さて、ついでにスタブエリアの設定も説明しよう。
まずスタブエリア内の内部ルータ・ABRに対し、以下のコマンドが必要だ。

  • Router(config-router)#area area-id stub
スーパーインター博士

トータリースタブエリアの場合、ABRでstubの後ろにno-summaryをつける。

  • Router(config-router)#area area-id stub no-summary
ハイパーネット助手

ん〜っと。とりあえず、スタブエリア・トータリースタブエリアにするには、ABR、内部ルータにarea stubコマンドが必要?

スーパーインター博士

うむ。

ハイパーネット助手

で、トータリースタブエリアの場合、ABRはarea stubの後ろに、no-summaryをつける?

スーパーインター博士

そういうことだな。

ハイパーネット助手

は〜。

スーパーインター博士

それでだ、ネット君。
スタブエリア・トータリースタブエリアの特徴はなんだった?

ハイパーネット助手

えっと。
スタブは外部ルートを、TSAは外部とエリア外ルートをデフォルトルートとしてABRから受け取るでしたよね。

スーパーインター博士

うむうむ。
なので、ABRはデフォルトルートのコストを設定することもできる。

  • Router(config-router)#area area-id default-cost cost
スーパーインター博士

デフォルトルートはLSAタイプ3として、エリア内にフラッディングされるということを覚えておくといい。

ハイパーネット助手

スタブエリア内部ルータからみれば、デフォルトルートに集約されてるって感じになるわけですね。

■ ASBRでの外部経路集約

スーパーインター博士

ABRがエリアを集約して送るように、ASBRは外部経路を集約して送る。

ハイパーネット助手

LSAタイプ5ですね。

スーパーインター博士

うむ。
よって、ASBRでは外部経路の集約設定を行う。

  • Router(config-router)#summary-address ip-address subnetmask
スーパーインター博士

これだ。
ただし、これにはルート再配送の設定が必要だ。

ハイパーネット助手

ルートの再配送…。
なんでしたっけ?

スーパーインター博士

他のルーティングプロトコルから得たルートを配布することだ。
これは先の回で説明する。OSPFではsummary addressコマンドが必要ということだ。

ハイパーネット助手

ははぁ。

■ 仮想リンク

スーパーインター博士

ついでにまとめてやってしまおう。
仮想リンクの設定の仕方だ。

バックボーンエリア・仮想リンク

[FigureRT09-04:バックボーンエリア・仮想リンク]

ハイパーネット助手

バックボーンエリアへの道ですよね。

スーパーインター博士

うむ。
他エリアへのトラフィックは必ずバックボーンエリアを通らなければならないというルールがあるからな。

ハイパーネット助手

でしたよね。
なんでこんな面倒な設定なんでしょうか。

スーパーインター博士

さてな。ProteonのJ. Moyにでも聞け▼ link
ともかく、そのような場合仮想リンクを設定する必要がある。

仮想リンク・設定

[FigureRT10-02:仮想リンク・設定]

スーパーインター博士

上のような構成の場合、以下のように設定する。
まず、エリア3のABRに対して。

  • Router(config-router)#area 1 virtual-link 172.16.32.2
スーパーインター博士

逆も行う。つまりエリア0のABRも以下の仮想リンク設定を行う。

  • Router(config-router)#area 1 virtual-link 192.168.1.1
ハイパーネット助手

仮想リンクの入り口と出口の両方のルータで行うってことですね。

スーパーインター博士

うむ。指定するIPアドレスはルータIDを使う。
指定するエリアは通過するエリアというのがまた間違えやすいので気をつけるように。

ハイパーネット助手

そうですね。この場合エリア3に仮想リンクが必要なんだから、エリア3を指定しちゃいそうです。

スーパーインター博士

一応仮想リンクを行えば、どのようにバックボーンエリアを設定してもよいが。
仮想リンクはなるべく設置しないようにネットワークを構成した方がいいだろう。

ハイパーネット助手

何故です?

スーパーインター博士

通過エリアに負荷がかかるからだ。
通常、バックボーン以外のエリアは自エリア宛か自エリアが元のトラフィックしか通らないが、仮想リンクを設定すると他のエリアのトラフィックが通過することになるからだ。

ハイパーネット助手

そういえばそうなりますね。

■ OSPF まとめ

スーパーインター博士

さて、今回はCiscoIOSの話ばっかりになってしまったが。
一応OSPFの話はこれで終了だ。ちょっと大雑把な説明だったが、概要だけでも掴むことができたかな?

ハイパーネット助手

う、う〜ん。
こんにちはぱけっと…。

スーパーインター博士

それしか覚えてないのか?
もちろん、それも重要だ。OSPFの初期動作だな。

ハイパーネット助手

こんにちはパケットで、ネイバーと隣接関係を結ぶんですよね。

スーパーインター博士

うむ。
DRによるフラッディングも忘れるな。

ハイパーネット助手

そのエリアのリーダーでしたっけ。
リーダーとだけ隣接関係を結んで、データベースの交換やLSUの送信量を減らすんでしたよね。

スーパーインター博士

うむうむ。
そして、エリアタイプルータタイプ

ハイパーネット助手

データベースとルーティングテーブルの肥大化の阻止、でした。

スーパーインター博士

そういうことだ。
OSPFは非常に優れたルーティングプロトコルであるが、高機能ゆえの弊害というのもある。そこらへんを忘れないように。

ハイパーネット助手

了解です。

スーパーインター博士

さて、次回は違うルーティングプロトコルの説明をしよう。

ハイパーネット助手

いぇっさ〜。
30分間ネットワーキングでした〜♪

OSPFは手動で設定
EIGRPは自動で集約してくれます。違いに注意。
連続している
エリア1は、192.168.96.0/24〜192.168.127.0/24まで。
第3オクテットのみ2進数にすると、0110000001111111
エリア8は、172.16.208.0/23から172.16.222.0/23まで。
第3オクテットのみ2進数にすると、1101000011011110
ProteonのJ. Moy
RFC1131(OSPF)、RFC1583(OSPFversion2)の執筆者。
この人がOSPFを作ったわけではないと思いますが。
ハイパーネット助手ハイパーネット君の今日のポイント
  • OSPFを使うならば、集約できるようにネットワーク構成を変える必要がある。
  • 集約は手動でルータに設定する。
  • 外部ルートはASBRで集約されてLSAタイプ5で再配送される。
  • バックボーンエリアに接続してないエリアは仮想リンクを設定する必要がある。
  • 仮想リンクは通過エリアに負荷がかかるので、なるべく設定しないようにネットワークを構成した方がよい。

30 Minutes NetWorking No.RT10

管理人:aji-ssz(at)selene.is.dream.jp