■ IPアドレス拡張技術
IPアドレスの枯渇まであと358日!
…あの、ネット君?
いよし、勝った!
…。
「Webか、なにもかも懐かしい…。」
しまった。そっちを忘れてた。
挨拶代わりの軽いギャグの応酬はともかく。
はい。
前回に続いて、IPアドレス枯渇の問題を解決するための、拡張技術の話だ。
前々回がCIDR。前回がVLSMでした。
今回もまた謎な4文字アルファベットですか?
謎な4文字アルファベットとは言いえて妙だな。
今回は、特にそういうものは出てこない。
そりゃ安心というか、残念というか。
前回までの2つの技術、CIDRとVLSMで何が行えるかという話をしよう。
IPアドレスの拡張という話からはちょっとそれるが、覚えたうちに説明しておかないとな。
どうせ僕の記憶は揮発性ですからね。
すねるなネット君。男がすねてもかわいくないぞ。
む〜。
■ ロンゲストマッチ
今回話すのは、経路集約の話だ。
経路集約?
経路っていうと、パスですか?
確かにパスだが、それは「犬といえば、ドッグですか?」と言ってるのに等しいぞ。
何の説明にもなってない。
う〜。
まず、思い出してほしいのは、ルータの動作だ。ルータはデータを受け取ると、ルーティングテーブルを参照する。
この時のキーワードはロンゲストマッチだ。
ろんげすとまっち?
ネットワークアドレスが一致するものが、テーブルのエントリに2つ以上含まれていた場合、より多くのビットが一致する方を選ぶというルールだ。
?
たとえば、以下のようなルーティングテーブルを持つルータがあるとする。
宛先ネットワーク | ネクストホップ | |
---|---|---|
entry1 | 192.168. 1.0/24 | 210.31.100.2/24 |
entry2 | 192.168.1.192/26 | 210.31.100.2/24 |
entry3 | 192.168.1.208/28 | 210.110.100.2/24 |
[TableRT03-01:ルーティングテーブル]
ここに、宛先192.168.1.213のパケットが送られてきた場合どうなる?
え〜っと。
192.168.1.xですから、どのエントリにも当てはまりますね。
そうだ。だが第4オクテットのビットがもっとも一致するのは、entry3だ。
なのでentery3に送る。
は〜。なるほど。
■ 経路集約
これがルータの経路設定の方式だ。
うむ、これは頭に入れておくとして、下図を見てくれ。
ドメイン・アルファは10個のクラスCネットワークからなる。
内部に幾つかのルータがあるが、外のネットワークと接しているのはルータBだけだ。ルータBは、ルータAに対しどのようなルーティング・アップデートを送る?
え〜っと。
ドメイン・アルファ全体の情報、かな?
うむ。10個のネットワークを記載したルーティングアップデートだな。
そうすると、ルータAのテーブルは以下のようなエントリができる。
宛先ネットワーク | ネクストホップ |
---|---|
192.168. 1.0/24 | ルータB |
192.168. 2.0/24 | ルータB |
192.168. 3.0/24 | ルータB |
192.168. 4.0/24 | ルータB |
192.168. 5.0/24 | ルータB |
192.168. 6.0/24 | ルータB |
192.168. 7.0/24 | ルータB |
192.168. 8.0/24 | ルータB |
192.168. 9.0/24 | ルータB |
192.168.10.0/24 | ルータB |
[TableRT03-02:ルータAのエントリ]
なんとも無駄じゃないか、ネット君。
すべて同じネクストホップ宛なんだぞ?
確かにまとめてしまえば、いいですよね…。
…、そうか。これが経路の集約って意味ですね、博士?
そうだ。
ルータBが「私は192.168.0.0/16と接続しています」というルーティングアップデートを送ることにより、以下のようになる。
宛先ネットワーク | ネクストホップ |
---|---|
192.168. 0.0/16 | ルータB |
[TableRT03-03:ルータAのエントリ・集約]
なるほど、見事にまとまっていますね。
って、あれ? これはどこかで聞いた話のような…。
相変わらず、見事に揮発してるな。
忘却は救いというが、君はずいぶん救われてるうらやましい人間なのかもしれん。
う〜ん。う〜ん…。
そうか、CIDRの時だ!
ようやっと思い出したか。
では、CIDRの制約はなんだった?
覚えてますよ、博士。
プレフィックス長を含むアップデートが可能なルーティングプロトコル、ですね。
よしよし、ちゃんと覚えていたな。
そうだ、ルーティングアップデートの時にプレフィックス長を教えなければならない。
受け取った側がデフォルトマスクやインタフェースの情報から判断しては困るのだよ。
なるほど。デフォルトマスクで判断しちゃうと、192.168.0.0/24という1つのネットワークにしか見えませんからね。
■ 経路集約の利点と弱点
うむ。
経路を集約すると、以下のような利点がある。
- テーブルのサイズが縮小することにより、必要メモリ、ルーティング時のテーブル検索にかかるプロセッサのパワーなどが小さくてすむ
- アップデートのサイズの縮小により、トラフィック量が減少する
は〜、こりゃ便利。
だが、なんでもかんでも集約すればいいわけではない。
例えば、下の図だ。
[FigureRT03-01:経路集約・間違えやすい例]
まずはドメイン・ベータから考えてみよう。
さてネット君。どう集約する?
そうですね。
第3オクテットが、65〜72なので。192.168.64.0/20です。
よし。ルータBは、ルータAに対し「192.168.64.0/20が接続されている」と送る。
次は、ドメイン・ガンマだ。
え〜っと。
第3オクテットが、75・76だと。192.168.72.0/21になります。
…なんかおかしいな。
ふふふ。ともかく話を進めてみよう。
したがって、ルータAのルーティングテーブルには以下のようにエントリされる。
宛先ネットワーク | ネクストホップ |
---|---|
192.168. 64.0/20 | ルータB |
192.168. 72.0/21 | ルータC |
[TableRT03-04:ルータAのエントリ]
あれ?テーブルだけみるとそんなにおかしくないな。
さて、宛先ネットワーク192.168.72.0がルータAに送られてきた。
ネクストホップはどちらだ?
72.0はドメイン・ベータにあるから、ルータBです。
それは俯瞰してみることのできる人間の判断だ。
ルーティングテーブルのみで判断しなさい。ロンゲストマッチだぞ、忘れたのか
192.168.64.0/20も192.168.72.0/21もどちらも当てはまるけど。
最長一致するのは192.168.72.0/21…?
そうだ、ネクストホップは、ルータCになる。
はぅ。
たしかに経路集約は、ルータやネットワークの負荷を減らす有益なテクニックだが。
上手く集約しないと逆に宛先がおかしくなる可能性も含んでいるのだ。
はわ〜。
説明はここで終わりだ。
了解。
30分間ネッ…
■ 経路集約・問題
まぁ、待てネット君。
慌てるガンジーは悟りが少ない、というぞ。
いいません。
それに「じ」しかあってません。
そうか? 「慌てる小島秀夫」だったか。
それはともかく、ちょっと待ちたまえネット君。
なんですか?
経路集約は、慣れが必要だ。
というわけで、以下の図だ。
[FigureRT03-02:経路集約・問題]
192.168.100.0のクラスCアドレスをあげよう。
サブネットワークA〜Dの4つのネットワークと、Eのルータ間のネットワークにアドレスを割り振りなさい。
VLSMの問題ですね。
うむ、かつサブネットEを矢印方向に流れるアップデートと、外にでる時のアップデート、この2つのアップデートにどのような集約した情報を載せるか、答えなさい。
うへぇ。
ま、宿題だな。▼ link
はぁ、やっときます。
30分間ネットワーキングでした〜♪
- あと358日
- やっぱり嘘です。信じないように。
- 謎な4文字アルファベット
- ネットワーク用語にかぎらず、情報処理系の単語は4文字のアルファベットが多いですね。
- パス
-
[path]
ルータがパケットを宛先に届けるため選択する経路。
- ロンゲストマッチ
-
[longest match]
最長一致。
- エントリ
-
[entry]
登録。
おもにルーティングテーブルや、ARPキャッシュなどのテーブルに記載された情報のことを指す。
- もっとも一致する
-
第4オクテットのみ表記すると。
packet:11010101
entry 1:00000000
entry 2:11000000
entry 3:11010000
- ルーティングアップデート
- ディスタンスベクタとリンクステートで中身の違いはありますが、結果として表のようなテーブルができます。
- 65〜72
-
65:01000001
66:01000010
67:01000011
68:01000100
69:01000101
70:01000110
71:01000111
72:01001000
- 75・76
-
75:01001011
76:01001100
- 最長一致する
-
packet :01001000
64.0/20:01000000
72.0/21:01001000
- 小島秀夫
- 「メタルギア・ソリッド2」は慌てて出したんでしょうか?
- 宿題
-
インター博士は宿題を出すとほったらかしにする悪い癖があります。
なので解答のページを作っておきました。参考リンクを見てください。
- ハイパーネット君の今日のポイント
-
- VLSMやCIDRにより、経路を集約できる。
- 経路を集約すると、ルータやネットワークの負荷が軽減できる。
- 経路集約は注意深くやること。
30 Minutes NetWorking No.RT03
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