30 Minutes NetWorking
No.RT11

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BSCI

第11回EIGRP(1) 特徴・概要

■ EIGRPの特徴

スーパーインター博士

まだまだルーティングプロトコルの話は続く。
今回からはEIGRPだ。

ハイパーネット助手

えんはんすど あいじーあーるぴー、ですよね。

スーパーインター博士

そうだ。Enhancedは「高める」「増やす」の意味がある。つまり高機能版IGRPと思ってもらえばいい。

ハイパーネット助手

へへぇ、高機能版なんですか。どんな風に高機能なんですか?

スーパーインター博士

まぁ、それを今から説明していくわけだ。いくつか特徴を説明しよう。
まずIGRPがそうであったようにEIGRPもCisco独自のルーティングプロトコルである、という点だ。

ハイパーネット助手

独自仕様のルーティングプロトコルなんですよね。
Ciscoルータ以外では使えないというなんとも思い切ったプロトコルという。

スーパーインター博士

CCNPではシスコ認定資格というぐらいだから、独自仕様だろうがなんだろうが設問の対象になる。
ともかく、次の特徴は、もとからマルチプロトコルルーティングプロトコルとして作られている、という点だ。

ハイパーネット助手

まるちぷろとこるるーてぃんぐぷろとこる?
ルーティング対象プロトコルが複数あるって奴ですよね。それって特別なんです?

スーパーインター博士

うむ。OSPFはIPしか対象にしていないし、RIPはIP用のIP-RIPとIPX用のIPX-RIPがある。
だが、EIGRPはIPIPXAppleTalkを対象として作られている。

ハイパーネット助手

ははぁ。
でももうIPXもAppleTalkもいいじゃないですか。そろそろレガシープロトコルと呼ばれる頃合ですよ。

スーパーインター博士

まあそう言うな。まだ使ってるところだってきっとある。
そして、ディスタンスベクタを基本とした拡張ディスタンスベクタ型ルーティングを行うという点だ。

ハイパーネット助手

また、えんはんすど、ですか。

スーパーインター博士

うむ。
そうだな、ディスタンスベクタを基本にリンクステートの良い所を加えたプロトコルとでも考えてくれるといい。

ハイパーネット助手

そういえば、別名ハイブリッドルーティングだって3分間ネットワーキング第32回で言ってましたっけ。

■ 拡張ディスタンスベクタ

ハイパーネット助手

で、博士。どんなプロトコルなんですか?

スーパーインター博士

そうだな。EIGRPの話をする前に、もう1度ディスタンスベクタとリンクステートの話をまとめておいた方がいいだろう。
ネット君。ディスタンスベクタの利点と欠点は?

ハイパーネット助手

ディスタンスベクタの利点と欠点?
え〜っと。簡単で明快。だけどコンバージェンスに時間がかかるってところですか。

スーパーインター博士

うむ、ちょっとまとめすぎだが間違ってはいない。
一方のリンクステートの場合はどうだね、ネット君?

ハイパーネット助手

コンバージェンスが早いし、帯域もあまり使わないけど。
高性能ルータでなければやってられない。

スーパーインター博士

ふむ、なかなか面白くまとめるな。ネット君にこんな才能があったとは。

ハイパーネット助手

えへへ。

スーパーインター博士

ま、あまり役に立ちそうにない技能だがな。
ともかく、欠点と利点をまとめて表にしてみよう。

 ディスタンスベクタリンクステート
コンバージェンス遅い早い
ルータの必要スペック低い高い
アップデートの頻度定期的イベントトリガ
アップデートの帯域幅大きい小さい

[TableRT11-01:ルーティング方式の違い]

スーパーインター博士

主要な欠点と利点を並べるとこうなるな。

ハイパーネット助手

ん〜っと。つまりディスタンスベクタとリンクステートのいい所をとると。
コンバージェンスが早く必要スペックが低くアップデートはイベントトリガ帯域をあまり使わない

スーパーインター博士

そうだ、それが拡張ディスタンスベクタ、EIGRPの特徴だ。

ハイパーネット助手

なんか、いい所ばっかりですね。

スーパーインター博士

伊達にハイブリッドと呼ばれていないわけだよ。
簡単に言うと、アップデートはリンクステート計算はディスタンスベクタだ。

ハイパーネット助手

アップデートがリンクステートってことは。
変更部分のみをイベントトリガして、フラッディングするってことですか?

■ EIGRPのアップデート

スーパーインター博士

変更時に変更部分のみをアップデートで送るが、フラッディングはしない。
隣接ルータのみに送る

ハイパーネット助手

隣接ルータのみに送るっていうことは、隣接ルータがさらに隣接に送って…、ってことですか?
それってディスタンスベクタの方式ですよね。

スーパーインター博士

そうだ。だから拡張ディスタンスベクタだ。

ハイパーネット助手

でもそれじゃあ、コンバージェンスが遅くなりませんか?

スーパーインター博士

確かに一気にフラッディングするOSPFに比べれば遅くもなるが。
ディスタンスベクタが遅い理由は、定期アップデートとホールドダウンタイムにある。

ハイパーネット助手

定期アップデートと、ホールドダウンタイム?
ホールドダウンタイムといえば、ルーティングループを防ぐために必要でしたよね。

スーパーインター博士

うむ。
だが、EIGRPのパス計算のアルゴリズムはDUALというアルゴリズムでループが発生しない

ハイパーネット助手

へへぇ。

スーパーインター博士

なので、イベントトリガ時にディスタンスベクタのようにゆっくり運ばずに、あっという間に次から次へとわたることになる。
さらに、バックアップルートを保持している

ハイパーネット助手

バックアップルート?
メインが駄目だった場合の、予備のルートですか?

スーパーインター博士

そうだ。
トポロジによっては予備のルートを作れないが、ある場合はバックアップが即座に反映される

ハイパーネット助手

即座に、って。
じゃあすぐコンバージェンスになるってことですか?

スーパーインター博士

うむ。
これは先のサクセサの所で話そう。

ハイパーネット助手

さくせさ?
なんだろう?

スーパーインター博士

まぁ待て、それは先で話すと言っているだろう。
ともかく、要約すると、変更分のみをイベントトリガアップデートするディスタンスベクタってところだな。

ハイパーネット助手

なるほど。

■ EIGRPのメトリック

スーパーインター博士

EIGRPで使われるメトリックについても話しておこう。
帯域幅遅延信頼性負荷MTUの5つだ。

ハイパーネット助手

聞き覚えある…、というかもしかしてIGRPと同じですか?

スーパーインター博士

よしよし、よく覚えていた。
ただしIGRPのメトリックはEIGRPの1/256とみなされる

ハイパーネット助手

なるほど。

スーパーインター博士

メトリックはK値という値を使って計算される。
これはデフォルトでは帯域幅と遅延のみを使ってメトリックを計算するようになっている。

ハイパーネット助手

あれ? じゃあ他の3つは?

スーパーインター博士

他の3つをつかってもよい。ただし変更する際は同じネットワーク内では同じK値を使うこと

ハイパーネット助手

違うK値を使うとどうなるんですか?

スーパーインター博士

K値が異なるということは、物差しが違うということだ。
10mmを1cmとする物差しと、50mmを1cmとする物差しの2つで同じものを比較するのは無意味だ。

ハイパーネット助手

50mmのものが、5cmと1cmになっちゃいますものね。
そりゃ無理な話ですね。

スーパーインター博士

うむ。
なので、K値が異なるルータとはネイバーになれない

ハイパーネット助手

ははぁ。
って、またネイバーって言葉がでてくるんですか? OSPFみたいですね。

スーパーインター博士

拡張ディスタンスベクタは、リンクステートの良い所を加えたディスタンスベクタといっただろう?
隣接関係を使ったルーティングプロトコルなのだよ。

ハイパーネット助手

ははぁ。
ということは、またこんにちはパケットですね。

スーパーインター博士

こんにちはパケットだ。
まぁ、それは先で話そう。

■ ルート自動再配送

スーパーインター博士

EIGRPの特徴をもう1つ話しておこう。
EIGRPは特定のルーティングプロトコルとの自動再配送が可能になっている。

ハイパーネット助手

自動再配送?
再配送って、違うルーティングプロトコルの情報を、そのルーティングプロトコルで流すってことですよね。

スーパーインター博士

うむ。
通常は手動設定が必要なのだが、以下の場合のみEIGRPは設定しなくても再配送する。

  • IGRP
  • IPX-RIP
  • AppleTalk RTMP
スーパーインター博士

ただし、IGRPは同じAS番号でなければならない。

ハイパーネット助手

ふむふむ。
エンハンスドIGRPっていうだけあって、IGRPとは仲がいいんですね。

スーパーインター博士

まぁ、そういうことだ。
さて今回はこれぐらいにしておこう。

ハイパーネット助手

了解です。
30分間ネットワーキングでした〜♪

EIGRP
[Enhanced Interior Gateway Routing Protocol]
IPXーRIP
Novell-RIPとも言う。
IP-RIPはメトリックにホップしかつかわないが、IPX-RIPはホップとティックス(時間遅延)を使います。
拡張ディスタンスベクタ型ルーティング
[Enhanced Distance-Vector Routing]
ハイブリッドルーティング
[Hybrid Routing Protocol]
Hybridは混合、複合の意。
DUAL
[Diffusing Update Algorithm]
拡散アップデートアルゴリズム。
サクセサ
[Successor]
EIGRPでのパスを示す言葉。詳しくは後の回で。
1/256
EIGRPはIGRPと同じ値からメトリックを出しますが、IGRPの256倍の精度で計算するのでIGRPのメトリック×256でEIGRPのメトリックと同等になります。
RTMP
[Routing Table Maintenance Protocol]
RIPに似たディスタンスベクタ型のAppleTalk用ルーティングプロトコル。
RIP同様ホップカウントを使う。
ハイパーネット助手ハイパーネット君の今日のポイント
  • EIGRPはシスコ独自の高機能なルーティングプロトコル。
  • IP,IPX、AppleTalkを使えるマルチプロトコルルーティングである。
  • 拡張ディスタンスベクタ型というルーティングプロトコルである。
    • 基本はディスタンスベクタ。
    • アップデートはリンクステートに近い形で行い、早いコンバージェンスが可能。
  • 帯域幅、遅延、信頼性、負荷、MTUをメトリックとして使う。
  • IGRP、IPX-RIP、AppleTalk-RTMPは自動再配送する

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管理人:aji-ssz(at)selene.is.dream.jp