2023/05/28 作成
erudition-0801
ミルチェスティ基本設定(メガ・ネタバレ)

 「ミルチェスティ」は拙著(SF小説)『星々の彼方にきっと彼は住み給う』(文芸社)の中の用語である。  その用語をより良く理解するために、以下のように省略した語を用いる。

  • 『星々の彼方にきっと彼は住み給う』……以下、『星々』と記載
  • (私の不注意により運営により削除された)なろう小説(SF)『ヴィツェプレミエールの回想』……以下、『回想』と記載
  • 上記2作の大本となった(しかも原稿散逸した)未刊行SF小説『ミルチェスティ』……以下、『原著』と記載
『星々』にも言及はあるが、ミルチェスティとは「МИР(ミール、世界・村・平和)」「ЧЕСТИ(ЧЕСТЬの(生格)、栄誉・女性の純潔の)」の2語から合成した造語である(なお、『回想』の中では「ミルチェスティ」の語は割愛し、すべて「銀河帝国」と表現してある)。
 刊行元の企画はミルチェスティを「惑星の名前」と誤解したが、実はそのミルチェスティ帝国の皇帝が創造した(棒状かもしれない)渦巻き型銀河島宇宙の名前である。『星々』の中の、とある登場人物は「ミルチェスティに弄ばれているように感じ」ているが、極度に科学技術が発達して
  • 重力を制御している。
  • それどころか、実は空間も時間も、割と制御している(いわゆる「どこでもドア」を科学的に実現、各地点を自動的に結びつける「ドアライン」が構築済み)。
  • そんな有様だから、当然、生物の合成など朝飯前。
  • 生物の合成が朝飯前なついでに、不老不死も実現している。
  • さらに、ついでに、誰か個人の概念を「概念伝達システム」で別人の概念や機械のAIに伝えるのも朝飯前(*cf. 0805)
 なので、「弄ぶ」というよりも、ミルチェスティ人以外は、皆、「釈迦の手のひらのうえの孫悟空」状態といっても良い。
 以上で、ほぼほぼ「基本設定」の話は終わってしまうのではるが、以下に長々と、各用語・設定を羅列していく。
主要登場人物一覧
皇帝(『星々』『回想』); 安宅博重(『回想』); 小隅昂宏(『原著』):
 見かけ30〜50代男性(でも数十億年は生きている)、目は細めで黒目がち、口ひげあり。髪の毛と口ひげの色は、いわゆる"ロマンスグレー"。グレーの詰襟状(に見える)服に黒のベルト、黒いマントに見える生体保護ケープを背中にかぶり、金色の(非常に質素な)冠に見える生体維持システムを頭に載せている(頭蓋に取り付けてあるので「見えないようにする」ことはできても「取り外す」ことができない)。
 身長(可変だが大体)170cm。穏やかだが、怒ると静かに極端に厳しい態度を取る(『回想』)。
 趣味は料理らしく作る寿司は職人技(『回想』)。
 恋人のイシス(後述)のために銀河を作った(『回想』『原著』)が、基本的に「銀河のこと」については放置プレイ(『星々』では、とある件を後述の副宰相に一任している)。ではあるが、あまり「不法移民が自分の銀河にやってこられる」と「気に入らんな」と気分を害することがある。なお、ミルチェスティ名は「デオヌス」(『原著』)であったが、『回想』で自身の娘(後述のアルファ)が「安宅博美」と名乗ったことに合わせて「安宅博重」とも名乗るようになった。「本名」として戸籍に登録された名前は小隅昂宏であるが、これとても彼自身が時間操作した結果である。
 ちなみに、「自分自身が自分自身の父親でありかつ母親である」という設定がある。
イシス:
 見かけ20代女性(でも数十億年は生きている)、目は細め、ただし虹彩はライトブルーに寄る(母方に白人の血が僅かに混じるという設定)。セミロングの髪の毛は銀〜金色。染めたのではなく、ミルチェスティに入ってから脱色されてしまったという設定。
 身長(可変だが大体)160cm。貧乳というか俎板というか。大体薄着であるが、イシスも皇帝同様の冠状の生体維持システムを頭に載せている(皇帝とイシスより後のミルチェスティ人は、超空間経由で生体保護が維持されている)。
 常に穏やかで小隅を愛していたが、皇帝と呼ばれるようになった彼が秘書・メッセンジャー的存在としてアルファを合成した際に、かなり拗ねて某所に引きこもってしまう(『原著』)。
 ミルチェスティ名がイシスではあるが、本名「和泉恭子」という設定がある。
『原著』では、小隅との間柄が両者の死の直前まで復旧しない。
 が、『回想』では彼女の初恋の男の子(副宰相、後述)との再会により、急激に皇帝との間柄も改善され、「結婚」という制度のなかったミルチェスティに「結婚」を持ち出した副宰相によって、皇帝と結婚する。
 また、アルファに「後日、必ず義母と呼びます」と約束されるぐらい、アルファとの仲も改善される(『回想』)。
 ただし、この人を出すと「お話が長くなる」ので『星々』から「イシス」の登場シーンは割愛した。
アルファ(『星々』); アルファ・アイ・アルファ(『回想』『原著』):
 見かけ16〜26代女性(でも6億年は生きている)、目は大き目で黒目がち。鼻筋通っているので顔立ちは美しいが、小顔なので比較的幼く見える。ショートカット〜ボブカット〜ややセミロング(長さ可変)の髪の毛は黒色をベースとするが、遺伝子操作された際の名残の赤毛が混じる。
 身長(可変だが大体)157〜159cm。B97というか巨乳というか、ぼっきゅんぼん、というか。日常的にアトムコート(後述)というレオタードもどきを着用する。メインの赤い部分(正確な色味はR139G0B0のダークレッド、そのようになっていなければ単に私の着色ミス)と白い部分がある。が、白い部分は「I」の文字の意匠となっている(なお白の部分が一定しないのは、「可変」という設定のほかに、私の画力の問題や設定不足の問題がある)。そして、首元〜鎖骨〜胸元の間にダークレッドで小文字のαが描かれる(これまたサイズや場所が可変)。なお、ミルチェスティのアルファ階層のマナーとして、左腕・肩下の部分(正面から見て左180度)に個人登録コード末尾(彼女の場合ならばα小文字)、右腕・肩下の部分(正面から見て右180度)に銀河帝国ミルチェスティの国章を浮かび上がらせるのが礼儀(実は同じような顔が百数十人いるが、そうでもしなければ誰が誰だかわからなくなる)。だが、ときどき忘れるのは私が描き忘れるだけでなく、本人たちもよく忘れているからである←アトムコートのAI(後述)が着用者の概念を読み取って、どの部分にどういうデザインをするか、常に色彩等を変更している。
 皇帝直属親衛隊隊長兼創造企画庁長官兼帝国生物化学局長官。つまりは「生物の創造」が仕事でも趣味でもある
(彼女の自室はベッドとデスクしかなく毛布すらないという殺風景ではあるが、超空間の収納スポットにイーゼル・ハープ・グランドピアノを置くなどするし、『回想』ではコスプレしたりワインや紅茶やらの生産を「楽しみ」として起業したりしているので、かなりの多趣味とも言える)。
 重度のファザコンというかエレクトラコンプレックスというか、単に趣味・仕事という範疇を超えて、自身の遺伝子と皇帝の遺伝子をかけ合わせた少年の合成をしている(『原著』『回想』)。この場合の少年は「弟」というか「息子」というか何というか……。それはともかく。
 先頭のアルファは「アルファ階層」(後述)の人間である、という意味。末尾のアルファは「アイ」シリーズの合成人間の最初の個体という意味。そして「アイ」とは、inverted(反転)。何が反転かというと、皇帝は自分自身の男性の遺伝子を操作して性別を男性から女性に"反転"させてから遺伝子を色々改変して、彼女を合成したからである(厳密には、遺伝子を実際に「反転」させたわけではない)。漫画『怪人開発部の黒井津さん』登場のベートみたいではあるが、アルファの場合、自意識自体が「女性」に設定されたため、(自身に混入した)皇帝の記憶に少々困惑するのみである(ベートみたいにアイデンティティ崩壊の危機にまでは至らない)。
『星々』の編集時、編集担当者は『アルファ=ガンマ』という等式を当初誤読(?)したが、個体名のアルファと階層名のガンマ(後述)が違うので、「ミルチェスティ的」には「全くの誤解」ということになる。
『原著』においては、未婚処女のまま終盤に戦死する。
 が、『回想』において、副宰相と婚約・結婚し、副宰相との間に長女を、次いで長男を設けている。
『星々』においては、『回想』の婚約直後の時期にあたる (『星々』は『回想』のサイドストーリーである)。
 なお、彼女と同一遺伝子をクローンした妹が十数人、彼女の遺伝子を元に別途創造された妹のオメガにはさらにクローンされた妹が百数十人いる。
オメガ; アルファ・アイ・オメガ1(『回想』『原著』):
 見かけ20代女性(でも『回想』『原著』では、お話進行途中で合成されるので、生まれたてのほやほや)、目は大きいが、「幼く」「穏やかに」見えるアルファと異なり、「成人で」「厳しそうに」見える。ショートカット〜ロング(長さ可変)の髪の毛は銀色をベースとするが、遺伝子操作前の黒毛が混じる。
 身長(可変だが大体)195〜210cm。巨乳ではあるが、アルファより背が高いためか、胸はアルファより薄いと思われている。もっとも副宰相からは「完璧な胸の形」と思われている(『回想』)。アルファ同様、日常的にアトムコートというレオタードもどきを着用する。メインの赤い部分はアルファと同じ。ただし白い部分は銀色。そして、首元〜鎖骨〜胸元の間にダークレッドで大文字のΩが描かれる(これまた場所が可変)。
 没個性で無趣味の権化(自室にベッドもデスクもなく、超空間経由の収納スポットに置いたものもほとんどない)であったが、副宰相がミルチェスティにやって来てから、副宰相所有の(電子版)同人誌やら何やらを(無断で)盗み見て、興味を持つ。あまつさえ、自分自身をモデルとしたR18GレートのCG集を作っては「どうよ」と副宰相に感想を聞いたりする。
 帝国宇宙軍参謀長官。身体能力抜群で文武両道・スポーツ万能。ビームセーバー剣道においては、あまりにも激しい攻撃に思わず(有段者の)アルファをして「バックハンド」の反則技を導き出して勝ってしまう(そのため、アルファのほうは、文武両道抜群ではあるがオメガにかなわないとよく卑下している)。
 『原著』においては終盤、アルファの死後にアルファと皇帝の子「ホルス」と結婚して戦死する。
 『回想』においては終盤、(後述)エカチェリナと同性婚する。
 なお、『回想』を公表時、「バトルものかと思ったが違った」という感想が寄せられた。
あ、ミルチェスティのバトルものにすりゃ面白いかも
 と考えた私は各知的生命体を考案し、そいつらと副宰相が帝国宇宙軍(つまりはオメガたち)と協同で戦う『ヴィツェプレミエール戦記』の構想をし始めた。
……いや、このままだと、『原著』や『回想』同様、物凄く長くなるな。
 と考えた私は、オメガも宇宙軍もバッサリカットし、『星々』に改変したのである(当初は『星々』に副宰相も登場しない予定だった)。なお、前述のとおり、オメガにはクローンされた妹たちがいる。そして、帝国宇宙軍の各部隊を指揮したり自らビームセーバー(後述)を奮って戦ったりしている(『回想』)。
宰相(『星々』); 宰相ハルサフェス(『回想』『原著』):
 見かけ50〜70代男性(でも7〜9億年生きている)、白人でオールバックの白髪・白い口ひげに白い顎髭を持ち、「剛直な印象を受ける」(『回想』)。手っ取り早くは、プレステ版「CIVILIZATION」(1)の、「新技術紹介プレゼンター」を思い浮かべれば、概ねイメージどおり。
 身長(可変だが大体)180〜190cm。ビームセーバー剣道も嗜むが、「身体格闘術のほうが合う」という脳筋な面も持つ。ベータ階層(後述)のトップ。
 日常的に(ファッションとして)トガを愛用している。が、緊急呼び出しなどで急いで来たときは、他の提督たち同様のダークグリーンの詰襟(状の服)で現れる。
 国家運営会議(後述)において議長席の左手すぐに座る。反対側の席に副宰相が座る前は、副宰相側の席の人々と折り合いが悪かった。細かい失言を拾い出しては国立図書館(後述)に記録し成績を減点していたからである(副宰相がミルチェスティに来てからは、副宰相が良く取りなすので、「失言拾い」も以前ほど厳しくはなくなった)。
 自室に入ると、かなりの観葉植物が置かれている。のみならず、「かわいいぬいぐるみ」が所狭しとと飾られている(『回想』)。
 ミルチェスティ名の「ハルサフェス」は古代エジプトの神の名から。そのため、日本人の耳には「ハルサフェス」にも「エリシエフ」にも聞こえる(『回想』)。
G(『回想』); 副宰相ヴィツェプレミエール(『星々』『回想』):
 40代男性身長170cm、というかぶっちゃけ我門隆星本人がモデルで外観的・内面的にはもう少し悪くした状態(誰ですか、「副宰相のほうが我門隆星よりも格好いい」とか言う人は)。少女アニメ「リボンの騎士」登場のジュラルミン大公を少しだけ細めにした感じ、と言ったところか(因みに人前に出るときには、ダークグリーンのスーツ上下で現れ、ネクタイをつけていたりつけていなかったりする)。
 少々ややこしいが、『回想』は『原著』を含めたメタフィクションでもある。私なる「G」とい う人物が『原著』の小説を持ったまま『原著』の世界に巻き込まれてしまったのが『回想』だからである(因みに「なろう」とかでありがちな「トラック衝突による転生」の類ではなく、ミルチェスティのドアラインによる事故に、各パラレルワールドの住民たちが巻き込まれてしまい、ミルチェスティに滞在せざるを得なくなる、という始まり方をする)。
 ドアライン事故に巻き込まれた各パラレルワールド住民たちは下記に分類される:
  • 大正世界: 「大正二十二年」の世界からやってきた家族の4名(もちろん現実の大正は15年で終わる)。
  • 光輝世界: 「大正二十二年に社会主義革命が起こり、『光輝』という元号の採用された世界」からやってきた人が1名。
  • 民国世界: 「慶応」もしくは「明治」から枝分かれし1922年に共産革命が起こり最後の「国王」睦仁退位後に日本が「大和民国」となった世界からやってきた兄妹の2名(もちろん、その世界の「明治天皇」相当の人物は、史実よりもかなり長生きしている)。
  • 高麗世界: 全地球が共産化し、数10年たち、「宗教復活ルネッサンス」が叫ばれ、東アジア全体が漢字・儒教圏となり、「高麗語」という名の韓国語ベース(朝鮮語ではない)の言語が東アジア共通語となった「大漢民国」から団地ごと
  • 「聖ヤコブ世界」: 日本列島が「聖ヤコブ諸島」と改名され、ヘルヴェティア帝国の白人たちの植民地(しかも黄色人種は絶滅危惧種)となっている世界から団地ごと。因みに、その世界にカトリックはなく、正教の総本山がモスクワにあるため、ロシア語がその世界の宗教界の公用語となっている。さらに因みに、ヘルヴェティアとは現実のスイスに相当する。
  • 太古のオパビニアが進化して別の(蜘蛛にも見える)生物となった挙句知性を持った世界から不明数
  • 猫が知性を持ち漢字の読み書き可能な世界から1匹
  • カラスが知性を持ちPC生産・操作が可能な世界から不明数
 現実の我門隆星同様、Gも作曲を嗜み、自身の第三交響曲をミルチェスティで披露している。
 因みに、我門隆星交響曲第三番の副題は「ミルチェスティ」である。
クヌム(『回想』『原著』):
 総督(後述)の一人(『原著』)だった(『回想』)。
 国立図書館(後述)の司書を兼任していたが、文書改ざんを繰り返していた。
 のみならず、とある知的生命体を大々的に操作してミルチェスティに反旗を翻す(『原著』)。
 が、クヌムの反乱は、原著者のGがミルチェスティにやってきたことによって、未然に防がれた(『回想』)。
Y(『回想』); 和泉 清(『原著』):
 日本国連大学・天体物理学教授、地球脱出移民団司令、和泉恭子(イシス)の実父。
 同じ飛行機に乗っていて墜落事故が起こり、G一家は全滅したが彼自身と彼の娘は助かった(彼の妻は助からなかった)。
 「初恋の子(昭和世界のG)が死亡した」ことに落ち込んでいた恭子の気分が小隅に会って和らいでいくのを見て、彼は少し安心した。もっとも小隅との対立により恭子は父親ではなく恋人の小隅に立たれて、余計に不安になるが(『原著』)。
 1982年に地球を襲う(昭和世界の)宇宙的災厄から「外宇宙に」「コールドスリープ」して逃げようというのだから、1960年代の(劇画調になりかけた)手塚漫画でもなければ無理といえぱ無理である。
 他に菅沼良充(S)・早川重有(H)といった昭和世界の人(地球脱出移民)たちと住んでいたが、イシスが数十億年ぶりに(清から見れば百数十年ぶりに)会いに来て、和解した(『回想』)。
 因みに、元々「谷泉」と書いて「やいずみ」と読ませるつもりだったが、少々無理やりにすぎたため、「和泉」に変更した(『回想』における「プライバシー配慮のための仮名」が「Y」となっているのは「やいずみ」と読ませる設定の名残である)。
エカチェリナ(『回想』『原著』):
 和泉恭子の姪、恭子の弟・健太郎とロシア系愛人との娘(『原著』)、金髪美少女(『回想』)。
『原著』ではミルチェスティに迎えられることなく、地球脱出移民団が偶然(?)たどり着いたミルチェスティ銀河のとある恒星系の惑星カナンに生まれてそのまま死んでしまう(どうかすると、『原著』には台詞すらなかった)。が、『回想』ではイシスがミルチェスティの本部にエカチェリナを迎えており、祖父の清と一緒に暮らしていた(清たちはエカチェリナがミルチェスティに招いた。つまり、菅沼を除いた清たちはミルチェスティに招かれないまま、『原著』において悲劇の死を迎えることになる)。また、彼女は、我門隆星が小説『原著』を書いたことと同様に、恭子が「我門隆星を主人公とする小説を書いていた」ことをGにばらす。
ミルチェスティの社会
階層 あるいは「国民」「臣民」「帝国市民」と「一般市民」「非承諾生物」の区別
 ミルチェスティは、内部管理する知的生命体を「階層(class)」で、まずカテゴライズする。
 なお、ミルチェスティにおいて「性交」「分娩」は一切なく、すべての生命体は工場にて合成されていた(『原著』)。
 が、副宰相の滞在により、これら「先史時代的な行動」は、「特別の条件下においてのみ」許容されるようになった(『回想』)。
  • アルファ階層
  • ベータ階層
  • ガンマ階層
  • デルタ階層
本当はもっと色々あるが、ここでは上記4つに限定する。
 アルファ階層は、皇帝もしくは皇帝と同族(扱い)の先史時代(後述)からのミルチェスティ人である。
 その構成要員は、皇帝、イシス、(個体としての)アルファ(とクローンたち)、オメガ(とクローンたち)、アルファと皇帝と遺伝子をかけ合わせて合成された男子(『原著』『回想』)およびアルファと副宰相の間の長女(『回想』)である。
 ベータ階層は、アルファ階層の構成要員が補佐のために工程管理・合成したヒューマン型知的生命体である。
 その構成要員は前述の宰相・クヌム他各総督(後述)・提督(後述)(『原著』)と副宰相および副宰相とアルファとの間の長男(『回想』)である。
 本来、副宰相は「帝国市民」(後述)の扱いであったが帰化するにあたり、本人の希望により、ベータ階層に位置付けられた。当初は反発する臣民(後述)もいたが、とある事件(『回想』)により(個人の)アルファが治療の一環として副宰相の遺伝子を操作せざるを得なかったため、(階層としての)アルファによる「工程管理」が認められたので、反発も収束していくことになった。
 なお、『星々』においてホモサピエンスの漢字に「智人」と書いてあるが、中国語でホモサピエンスは「智人」と書く。
 上記アルファ階層およびベータ階層を、ミルチェスティでは「国民」(The National)と定義している。

 ガンマ階層とは、要するにAI(後述)・コンピューター・ロボット等である。
 つまり、道具扱いの「人工物」がガンマ階層に位置づけられる(『原著』)。「国民」およびガンマ階層を、ミルチェスティでは「臣民」(The Subject)と定義している。

 
 デルタ階層は、その他知的生命体のうち、帝国により「認知され」「生存を許可され」「その情報が国立図書館(後述)所蔵の戸籍登録されたもの」であり、「帝国市民」と「一般市民」に分かれる。  
 「帝国市民」は帝国のための労働の対価として、帝国から俸給(後述)を受ける市民である。「一般市民」は帝国のための労働を提供しない(もしくは、提供としてみなされない)ため、帝国より俸給を受けない。
 因みにミルチェスティの管理外に自然(?)発生した知的生命体については、戸籍認定してからは「一般市民」と登録される。
ミルチェスティが「認定しない(有害等の状況でできない)」知的生命体を「未承諾知的生命体」と呼ぶ。  
国家運営会議:
 ミルチェスティ帝国には議会もなければ閣議もない(全国民が二百数十人程度の「国」である)。が、「人が三人集まれば政治が発生する」のたとえどおり、「ミルチェスティの運営方針を決定する」のが(建前の)会議である。
 一応、皇帝が議長を勤め、宰相が副議長を務めることにはなっている。が、長年長年の会議を経るにつれ、その様相は、「そんな会議する暇があるなら何か別のことをするほうがマシな、よくありがちなシステム開発の際の進捗会議」と同等の無意味なミーティングに堕してしまっている(「出席するのが無意味な会議に出席した経験」があるならば、アレと似たもの、と考えて支障なし)。
 議長席の左傍らには副議長の宰相が座り、宰相の反対側にはかつてクヌムが座っていた(『原著』)。が、クヌム失脚後は、代わりにその席に副宰相が座っている。なお、国家運営会議は、議長としてアルファ階層から1名(よく、個人としてのアルファが皇帝代理として出席させられている)、宰相、総督たちと提督代表者たちから構成される。
総督:
 どうしようもなければ英訳はgovernorでも良いが、ミルチェスティ人たちは露語もどき造語で「vladiet」と言っている。それはともかく。
 恒星系(単数もしくは複数)の空域をベースとして、各資源・エネルギーを管理し、「なるべく不用意な生命体の発生を抑制する」のが任務のミルチェスティ・ベータ階層の人間、となる。因みに、副宰相は総督も兼任している(宰相は兼任していない)。成績いかんによっては俸給にボーナスが加算されたり減額されたり、あまり酷いと後述の「提督」に降格されるものもいる(『原著』)。
提督:
 こちらは、英訳もadmiralで良い。というのも、ミルチェスティの本部←→各総督支配の空域を往復し、物資輸送監視・辺境パトロール(何か見つければ宇宙軍が対処)という役割だからである。ただし、語感と相違し、実際に「宇宙船に座乗」して「艦隊を率いる」わけではない(やらないわけでもないが)。むしろドアラインの調子の悪い空域に飛んでいく航宙ユニットやらドアライン間の輸送状況を監視する(いや、もしかして、それも、後述のAIで良いのでね?)という、地道なお仕事がメインとなる。一応、「提督」の代表者が数人、前述の国家運営会議に参加している。
俸給:
 ミルチェスティに通貨はなかった(『原著』『回想』)。
「俸給」と呼ばれるのは、仮想的な概念である。そもそも本来、ミルチェスティ人に食事は不要。というのも、超空間経由で生体維持される、ということは超空間経由で必要なエネルギーが直接肉体に供給されるからである(ちなみに一般の「市民」がそれを享受しようとすると精神的なダメージを被ることがあるので、本来推奨されてはいない)。
 各個人に供給される(あるいは供給予定)のエネルギーを、ミルチェスティでは「俸給」と呼んでいる。「最貧提督」とも呼ばれる、ドアライン事件を起こした、とある提督は、始終陰鬱に「きつそう」にしている。身体維持のためのギリギリの俸給で過ごしているからである。いっぽう(個体としての)アルファは、勝手に生物を生成することができたり、その気になれば恒星の一つや二つ、気軽に作ったり消したりするぐらいの「俸給」を享受している(そのため、いわゆる地球で言う「金銭感覚」というものが、ミルチェスティでは微妙に異なってくる)。
 もっとも、「ドアライン事件」で複数パラレルワールドを巻き込んだ際は、各世界からの滞在者の「売買」という習慣を当面維持させるため、帝国円および帝国フランという通貨が発行された。紙幣・硬貨がある。因みにたぶん書いていないと思うのだが(だいぶ昔の小説でしかも原稿はA4で965ページあり、「1冊に印刷しようとすると広辞苑の厚さを超えてしまい、今の日本での印刷は無理」と出版社に言われた)、紙幣にはセルロース(要するに紙)にプラスチックの成分が混ぜてあり、硬貨はプラスチック性である。
 ↑金属を扱う工房も複数団地と一緒に滞在しているので、硬貨・紙幣の偽造対策のつもりだと。
 ↑それでも偽造を試みたイタリア系住民が出たのだが(これまた書いていないはず)。
先史時代:
 要するに「ミルチェスティ建国以前」ということになるが、それだけでは不正解。  不老不死の国においては、下記のような珍問答が発生しかねない
「BC7億6543万2109年11月1日に上奏した件はいかがなりましたでしょうか?」
「その件ならばBC6億5432万1098年12月1日に、陛下に採可されましたよ」
 ……顔を洗って出直せ、としか言いようがない。
 そこで、ミルチェスティは24進法やら60進法やらを諦め、下記のようにシンプルに整理した:
1年 = 1000か月;
1か月 = 1000日;
1日 = 1000時間;
1時間 = 1000分;
1分 = 1000秒
 これを帝国中央時間(ICT)と言う。ミルチェスティの言う先史時代とは、ミルチェスティ建国以前「もしくは」ICTが負の数となる時間以前のことである。
 因みに地球時間との対応は、だいたい下記のとおりとなる。
  • 1年=2億2500万地球年
  • 1月=2万2500地球年
  • 1日=225地球年(地球時間の82179日11時間52分48秒とする)
  • 1時=地球時間82日4時間18分28.308368秒
  • 1分=地球時間1時間58分20.308368秒
  • 1秒=地球時間7.100308368秒
 なお、ときどき改訂されることがある(『原著』)ので、
ICT1年=約2億地球年、ICT1日=約200地球年、ICT1秒=約7地球秒
 と考えれば良い。上記の例で言うと、アルファは「約3歳」となる。
 なお「1日が200年だから」とイシスのように100年寝るミルチェスティ人もいるが、アルファは律儀に、「約8分間寝て、約16分間起きる」という、生理時間(≒地球時間)どおりの生活を堅持している。
国立図書館:
 日本語では他に訳しようがなかったので、「国立図書館」となっている。要するに、"National Library"の和訳である。
 別に、「図書館」という建物があるのではなく、電子データおよび物件保管庫という感じで、ミルチェスティ帝国の行政文書データのすべて(いな、文字どおり「全文書」)を記載することを主任務とする。
 のみならず、(『回想』にはあまり書いていなかったと思うが)、全国民の「記憶のバックアップ」も保存する。
「記憶のバックアップ活用」には、下記の用例が考えられる:
  • 一応「不老不死」を維持してはいるが、何らかの事情により(たとえば未承諾知的生命体との戦闘)身体に回復不能なダメージおよび遺伝子に対する改変汚染を被ってしまった
  • 「再構成処理」の同意を本人から取り付ける
  • 回復不能な身体を破棄する
  • 新たな身体を合成し、国立図書館所蔵の該当記憶を新たな体に設定する
  • 遺伝子的にも網膜や虹彩も指紋も、全く同一の新たな個体が、再構成前の人間として継続して生き続ける
「いやいや、その『再構成前』の人間と、『再構成後』の人間との間に、深刻な断絶があるではないか。「持続できた人間とはみなせない」
 と、みなす人間も、ミルチェスティにはいる。
 なお、この「再構成」は上記の医療行為として実施されるのみならず、「刑罰」として実施されることがある
(クヌムが反乱しようとしたのは、刑罰としての「再構成」を忌避したためである)。
追放刑:
 刑罰としての「再構成」よりも重いのが「追放刑」である。「より徹底したダムナティオ・メモリアエ(記憶の抹消)」というべきか。
  • 該当個体の身体を廃棄する。
  • 該当個体の所有物・付着指紋等をすべて抹消する。
  • 国立図書館の該当個体の記憶を廃棄する。
  • のみならず、全国民の記憶から、可能な限り概念操作により該当個体に関する記憶を破棄し、なおかつ国立図書館上の全国民の該当個体に関する記憶を削除する。
 なお、『回想』に、追放刑のシーンが登場する。
その他の用語
"AI"について
#やっと"AI"と書いても不自然にならない時代になったぞ、と。
 今日で言うAIと「ほぼ」同じである。
 相違点としては
  • 「おさかなくわえたどら猫追いかける陽気なサザエさん」と言われても「笑顔で走るターバン巻いた男」を描いたりしないだけの、気の利いたことはする(かもしれない)← 個体差がある: 『回想』に詳しい。
  •  今日で言う"AI"は、もちろん、Artificial Intelligenceの略である。
     が、ミルチェスティでは、これを"Artificial Intelligenceoid"という造語で呼び、和語として「人工知能体」と呼んでいる。
ビームセーバーについて
 正しくは、「スタイラス」の「ビームセーバーモード」と言う。
 スタイラスは、のっべりとした、白い円筒状でサイズ可変の物体である。
 もちろん(フリクションのように)筆記具としても用いることができる。
 スタイラスのビームセーバーモードには、下記の二種類がある。
  • 「実戦モード」
  • 「ビームセーバー剣道モード」


 実戦モード:
 要するに、敵と戦うための、実戦モードである。そのため、「対戦相手を利するための視覚効果」(後述)は省略される。
 ビームセーバー剣道モード:
 あくまでも「ビームセーバー操作」を競い合うためのモードであるため、「私(スタイラス)の使用者は、今まさに、こんな形の光線を出していますよ」と対戦相手に「見せる」のである(つまり実戦モード時は、可視光線による視覚効果が隠蔽される)。ただし、それも、「使用者の概念」に依存する。たとえば、ビームセーバー剣道の試合中であっても、「光線の隠蔽」は、可能ではある(ただし、光線隠蔽は、反則として相手に得点がついてしまう)。
 スタイラスに、セーフティーもなければスイッチもない。中にあるのは「人工知能体」だけであり、概念伝達システム(*cf. 0805)により使用者の指示する大きさ・圧力の光を発生させる。なお、もちろん、そのためのエネルギーは、スタイラス内部には【存在しない】。スタイラスが必要とするエネルギーは、超空間経由で、スタイラスの(つまりはスタイラス使用者の)指示した方向に、放出される。
因みに、『回想』では徹頭徹尾「ペン」と表現していた。
ミルチェスティ式敬礼について
 ミルチェスティ式敬礼は、下記のような動作である。
  • 両足の踵を無音できっちりとくっつけ、左手をぴたりと自身の体につける。そのまま
  • 右手の薬指と小指を折り曲げ、残りの指を延ばした状態で自らの人差し指を自分自身の額に当てる(なるべく、親指は自身の口から浮かせるように)
  • 右腕の指を軽く握りながら、「握りこぶし」となった状態で、左肩を軽く叩く
  • 背伸びしながら(両踵を浮かしながら)、右腕を斜め下、俯角約60度ぐらいのところに持っていき、一瞬静止させる。
  • 静かに右腕を引き、背伸びを解除しながら右腕をぴたりと体に付け、直立不動の状態に静止させる。
アトムコートについて
 レオタードもどきである。より正確には、任意の分子・原子を任意の厚さで体にまとう
(ノリとしてはボディペインティングに近い)。
 が、そのままズバリ描こうとすると、いろいろモザイクをかけねばならない事態になりかねないので、性器・乳首が浮き上がらないようにコートの厚さを調整する(本人たちも、よほどのことがない限り、「形が浮き上がらないように」配慮している)。
 なお、アトムコートには、体の線を自動的に整える。したがって、ブラジャーをつける必要がない(描くときは下着の線を浮き上がらせないように)。
 ついでに下着や靴も不要である
(アルファやオメガの足の先が白いのは、デザインであって靴ではない。なお、上記と同様の理由で、足の指を描いても描かなくても良い←「浮き出ない」配慮が、足の指先までに及ぼすことで、「出会う相手への礼儀」とみなす者が多数)。
以上。

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