2023/05/28 作成
erudition-0805
(リンク切れかもしれないページ)概念伝達システムについて

 要するに、「視聴覚」にたよらず、超空間経由で個人の脳の思考を読み取ったり感覚を惹起させるシステムである。
 ミルチェスティ人は、下記のプロセスを許容する:

  • 脳の側坐核を中心とした部位に、超空間経由で受信器(レセプター)を(一時的もしくは恒久的に)転送させる。
  • 受信器(レセプター)は外部からの概念を受け取り、かつ、該当個人の概念を抽出し、適切な転送先に送信する。

 という仕掛けであるが。おそらく、ビームセーバー剣道のために呼ばれたゲストのなかには、たとえ一時的にでも、「そんなわけわかんないものに自分の頭をかきまわされるのはやだ」という人もいるであろう。そもそも、「ミルチェスティ人風の『見える器具を使わない』方式だと、稀に思考障害の残る可能性がある」と説明されると、尚更である。そこで、ミルチェスティでは、多様な形態の概念伝達システム送受信器を提供している。

  • ヘッドフォン型
    片耳もしくは両耳の耳たぶにひっかけて用いる。
    別に聴覚を用いるのではなく、外耳・三半規管経由で、小脳および大脳の脳波に干渉する(その技術は国家機密である)。
     メリット: とくに三半規管を安定制御するため、プレイ中の激しい回転を行っても、空間識失調の軽減が期待できる。
     デメリット: ただし、ミルチェスティ方式や後述の一部ヘッドセット型や下手をするとマウスピース型よりも通信速度が(ほんの僅かだけ)遅くなることがある。
     したがって、この形式は、「自身の回転によって(私みたいに)不用意な骨折(判定)を避けたい」防御重視のプレイヤーに向くだろう。
  • 帽子型
    帽子の形状だけではなく、冠・角あるいは頭につけた髪飾りも、「帽子型」に含まれる。ヘッドフォン型と異なり、頭蓋経由で大脳・小脳全体にまんべんなく情報を伝え、かつ「少しだけパワーアップ効果」がある。
     メリット: (デメリットかもしれないが)他の形式に比べて、「無意識の意志」を拾いやすい(意識にはレベルがあるが表層のみならずやや下の「意識下」に近いところまで掘り起こしてスタイラスの制御が行われることになる)。
     デメリット: 無意識に反則しがちになる。
     したがって、この形式は、「攻撃と防御のバランスを取りたいが、やや攻撃重視、勝ちたいのは勝ちたいが、むしろ負けたくない」という、直感的に動くことのできる人物に向くだろう。
  • ヘッドセット型・ゴーグル型
    ヘルメット形式・バイザー形式・モノクル形式等も含まれる。頭蓋経由の他に、補助手段として、視神経経由の特殊な光線をもって「単なる帽子型」よりも迅速かつ戦略的な大脳との通信を補完する。
     メリット: 戦術的かつ直感的な指示は大脳経由で、戦略的かつベースとなる計画のスタイラスへの伝達は視神経経由で行われる(大脳への負担が、わずかに少ない)。
     デメリット: アリーナのAIの時間遡行をもってしても、他形式よりも少し遅くなる傾向がある。
     したがって、この形式は、「沈思黙考ウォーロック」つまり小脳による瞬発・大脳による知覚・かつ、むしろ計画の策定・変更こそ光速で行いたい、という理知的かつトラブル対処に向くマネジメント巧者に向くだろう。
  • ネックレス型
    頭部に装着する以外の首にかける・腰につける(手足の場合は後述の腕時計型)タイプの機器である。が、この機器は、いわゆる装飾部分ではなく、結び目・接合部分にAIが位置し、大脳よりも小脳をターゲットとしている。
     メリット: 実は、個人の運動(小脳)のサポートに特化した形式である。つまり、「後衛型」であるとか(現在の私みたいに)運動神経が壊滅している場合において、「スタイラスの指示に大脳は特化し、運動はいっそAIに任せてしまえ」という、私のようなものぐさには持って来いである。
     デメリット: ただし、むしろ計画をこそAIに任せたほうが望ましい場合のほうが多い。したがって、「勝ちにくいうえに負けにくい」という「勝敗」を意識するならば避けたい方法ではある(純粋に初心者が「ビームセーバー剣道を楽しむ」のはアリ)。
     したがって、「ビームセーバー剣道に深入りしたくない、ただ、ちょっとやってみたかった初心者」に、大いに向くだろう。
  • 腕時計型
    「利き腕の反対側につけるのが基本」というのがミソである。ビームセーバー剣道プレイ中は全身が跳躍している。前記の方法に比べて、遥かに動く(ただし利き腕よりは少ない)。実は、ミルチェスティにおいて、「特に機器を用いなくても概念抽出が容易に可能」である。むしろ機器は、「概念送信(プレイヤーの受信側)」への万全を期するもののためのものである。
     本方式は、プレイヤーへの受信を犠牲にして、自らの運動能力に頼る方式とも言える。
     メリット: 利き腕側のスタイラスに能力が全振りされるので、「スポーツ熟練者」には、かえって使いやすいだろう。
     デメリット: 比較的(ほんの少しだけ)誤ったレベルで(アリーナAIの想定未満・あるいは超過の)疑似痛覚を発生させることがある。
     したがって、「試合中の不慮の怪我? それは当然でしょ?」というトップアスリート・プロスポーツ選手・剣道柔道合気道の有段者に向くだろう(残念ながら、空手については、一応理論書も読んでは見たが、私自身に充分な知見が不足すると考えるため、ノーコメントとしたい)。
  • マウスピース型
  • 実は、「たとえプレイヤーにボクシング経験があったからいって、人類にとっては最も不適切な方式」である。
    メリット この方式は、嗅覚神経および味覚神経経由で大脳・小脳への干渉をメインとする。
     ということは、他の方式よりもわずかにタイムラグがあるので、慣れると「あ・やられた」という時の疑似痛覚が発生する前に「来るだろうな」という心構えができるぐらい、である。
     デメリット 嗅覚は化学分子の知覚であり、鼻孔についた物質の感覚を内に伝えるものである。また、味覚も、味蕾経由での化学物質の感覚を脳に伝える。つまり、視聴覚に比べて遅い上に、不正確である。
     この方式が向く人類は、おそらくいないだろう(たとえ天才的な料理人や香道の達人であっても、他の方式を推奨する)。が、本方式が存在するのは、「チーラ対策」のためである。フォワードのSF小説に『竜の卵』というのがある。その小説に、中性子星に住むチーラ(元々はインドのパンケーキの種類の名前からネーミングした、らしい)という生物は視聴覚の他に、味覚も重要な感覚に位置づけている。なんと、「味覚による画像」を作るのみか「味覚を介したテレビ」まで作っている有様である。ということで、本方式は、あくまでもチーラのための方法である(なお、ミルチェスティは、他の方法でも色々準備するであろう)。



以上。

(ホサ〜ホソの)蔵書一覧へ   「我門 隆星マルチバース」ページへ   (R15G?)SF小説『回想』のPDFページへ   蘊蓄一覧表     メニュー